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労働新聞 2024年4月25日号 トピックス

世界のできごと

(4月10日〜4月19日)

米・イスラエルが中東で戦火拡大
 イスラエルによるシリアのイラン大使館への攻撃に対し、イランは4月14日、ドローンなどで反撃を行った。イスラエル支援として米英軍がこれを迎撃するなど地域の緊張は一気に高まった。イランの反撃は抑制的だったが、先進7カ国(G7)は直ちにイランを非難する首脳声明を出し、また欧州連合(EU)や米英はイランへの制裁拡大を決めた。だが発端はイスラエルのイラン攻撃にあり、米欧の対応は筋違い。米国はイランへの攻撃には加わらないとしているが、米欧のイスラエルへの説得は口先だけで、イスラエルは19日にイランに報復攻撃を行った。事態のさらなる緊迫化の責任はイスラエルとそれを支援する米欧にある。

全米で反イスラエルの抗議デモ拡大
 米国各地で15日、イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への攻撃に対する抗議活動が相次いで行われた。サンフランシスコではゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)が朝からデモ隊によって封鎖され交通が遮断された。「ガザのために世界を止めろ」「今すぐガザの包囲を終わらせろ」などと書いた横断幕を掲げたデモ隊が橋の上で警察と衝突した。シカゴではデモ隊がオヘア国際空港の入り口を通行止めにしたが、多くの空港利用者がデモ支持を表明した。また18日にはコロンビア大学で抗議活動を行っていた学生108人が逮捕された。これまで民主党を支持してきた多くの若者や学生の間に「パレスチナの人びとをイスラエルが虐殺している」「ガザの戦争に米国の納税者の税金が使われている」などとバイデン政権に対する批判の声が広がり、政権基盤を揺さぶっている。

米日比首脳会談、対中対抗強化へ
 バイデン米大統領とフィリピンのマルコス大統領、日本の岸田首相が11日、初の三国首脳会談を行った。米比両軍と自衛隊の海上共同訓練の拡充で一致した。また翌日、米比の外務・防衛閣僚に国家安全保障担当大統領補佐官を加えた初の「3プラス3」を開き、米比両軍の相互運用性を向上させることなどで合意した。米国は米比相互防衛条約が比軍や公船、航空機、沿岸警備隊への武力攻撃に適用されると改めて表明、南シナ海での中国の行動をけん制した。米国はフィリピンを新たに軍事同盟に引き入れ中国への対抗と軍事挑発を強めようとしている。

韓国総選挙で与党大敗、米戦略に打撃
 韓国の総選挙(1院制、定数300)が10日に投開票され、革新系の最大野党「共に民主党」が系列政党を含めて175議席を獲得し過半数を制した。尹大統領の与党「国民の力」は系列の政党を含め108議席と大敗した。物価高対策など経済政策への不満や、国民との意思疎通を欠く尹氏の姿勢に対する批判などが敗北の要因。任期(5年)の3年目に入る尹大統領は引き続き少数与党として厳しい国政運営を迫られる。悪化していた日韓関係を修復させ、米韓日で中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への対抗を進めてきた米国の戦略にも打撃だ。

中独首脳会談、経済関係重視
 ドイツのショルツ首相は16日、中国の北京で習近平国家主席と会談した。ショルツ政権は、対中依存の軽減を目指しつつも、国内の景気対策から中国との関係を前進させたい考えで、今回の訪中でも自動車大手社長ら独企業トップも帯同した。習氏は会談で「中独のサプライチェーン(供給網)は深く絡み合っており、両国の市場も高度に相互依存している」「中独の協力は『リスク』ではなく、両国関係の安定を保障し、未来を創造する機会だ」と強調した。各国の国内事情からも中国との経済関係を重視せざるを得ない状況も見ながら、中国は積極的な対欧州外交で米国に対抗している。

人民のたたかい

(4月10日〜4月19日)

 ギリシャの最大民間労組のギリシャ労働総同盟(GSEE)が17日、物価上昇に見合う賃上げを求める全国ストを実施、港湾や鉄道の労働者、バスやタクシーの運転手もストに参加した。首都アテネでは、数千人の労働者や学生、年金生活者が賃上げを求めてデモを行った。
 チリで11日、ボリッチ政権が掲げる国民向け施策の実現を妨害している右派勢力に抗議し、経済格差の縮小や国民生活改善など改革の前進を求める一斉ストライキが全国各地で行われた。中央統一労働組合(CUT)が呼び掛けた。ストには学生や大学教員らの団体、空港関係者や医療関係の労組員なども参加した。


日本のできごと

(4月10日〜4月19日)

日米首脳会談、米戦略にいっそう従属
 岸田首相とバイデン米大統領による首脳会談が4月10日、米ワシントンで行われた。両首脳は幅広い分野での「協働」で合意、安保面では、自衛隊と米軍を一体運用するための「指揮統制」見直し、AUKUS(米英豪)への日本の協力拡大、米艦船の日本での補修、武器の共同開発・生産、沖縄県名護市辺野古の新基地建設の「着実な実施」などを確認した。また先端半導体の開発、サプライチェーン構築、核融合や環境技術での協力など、経済など広い分野での協力で一致した。合意は日本の進路を米戦略にいっそう縛り付ける内容だ。

青書、日中「戦略的互恵関係」復活
 上川外相は16日、2024年版外交青書を閣議報告した。日中の「戦略的互恵関係」に19年版以来5年ぶりに触れ、「建設的かつ安定的な日中関係を双方の努力で構築」と記した。記述の復活で対立激化を回避する意図をにじませたが、一方、中国の軍事力強化を「日本と国際社会の深刻な懸念事項で、これまでにない最大の戦略的挑戦」と記述、中国包囲を念頭に置いた「同志国」との連携強化の一環として、他国軍に装備品を移転する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」に初言及、その着実な実施を明記した。青書について中国側は「挑発や陣営対立をつくり出すのをやめるべき」と批判している。日本は記述復活などで済まさず挑発そのものをやめるべきだ。

地域ぐるみの闘い、うるま訓練場断念
 木原防衛相は11日、沖縄県うるま市石川のゴルフ場跡地への陸上自衛隊訓練場の新設について、「住民生活と調和しながら訓練所要を満たすことは不可能」として白紙撤回を表明、陳謝した。訓練場新設をめぐって、防衛省は地元住民や自治体に全く知らせずに計画を公表、住宅地や教育施設に隣接していたこともあり、地元自治会をはじめ保革を超え多くの住民が反対の声を上げ、同省は断念に追い込まれた。一方で同省は「沖縄本島に訓練場が物理的に不足する。あらゆる選択肢を排除せずに再検討する」とし、訓練場を建設する意向は変えていない。今後の基地機能強化に警戒が必要だ。

NTT法改悪、民営化と緩和さらに
 NTT法改定案が17日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。現行のNTT法では固定電話などの全国一律のサービスの提供義務や株式の3分の1以上は政府が保有することなどが定められているが、改定法では義務や規制の一部を緩和、研究成果の開示義務が廃止されるほか、外国人役員の規制が緩和される。社名の「日本電信電話」の変更も可能となる。付則では25年の通常国会に向けてNTT法廃止も含めた検討を進めると明記した。歴代自民党政権は、国民共有の財産である電信電話公社を民営化し、電気通信による国民の利便性確保と公共の福祉増進をなげうって巨額の利益を得てきた。今回の改定はさらなる民営化と規制緩和でユニバーサルサービスを後退させることにつながる改悪だ。

不十分な「住まいの貧困」対策法改定
 生活困窮者自立支援法等改定案と住宅セーフティネット法改定案が17日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。生活保護受給世帯から経済的に自立する子どもに最大30万円の準備金を支給、収入の減少などで住居を失う恐れがある人に家賃相当額を支給する住居確保給付金を拡充する。また居住支援法人による居住者死亡後の残置物処理の仕組みづくりや家賃保証業者の認定制度を創設する。高齢化で「住まいの貧困」問題はいっそう深刻となるが、改定法は住まい確保をもっぱら民間の支援団体などに任せるなど不十分な内容。公共住宅の拡充や公的な家賃補助制度の創設など、国・地方公共団体の公的責任を明確にして抜本的に対策を強化するべきだ。

日本人83万人減、落ち込み最大
 総務省は12日、23年10月1日現在の外国人を含む総人口が、前年比59万5000人(0・48%)減の1億2435万2000人だったと発表した。13年連続の減少。死亡数が出生数を上回る「自然減」は17年連続で、減少幅は83万7000人で比較可能な1950年以降で最大を更新した。入国者が出国者を上回る「社会増」は 万2000人で2年連続で増加、外国人の社会増は24万人だった。75歳以上は初めて2000万人を超え、歴代政権の失政によって人口減少と高齢化がさらに進んでいる実態が浮き彫りとなった。

円安加速、約34年ぶりの水準に
 円相場は16日、東京外国為替市場で一時1ドル=154円台半ばに下落し、90年6月下旬以来、約34年ぶりの円安水準を更新した。発表された米国の先月の小売業の売上高が市場予想を上回った結果、米国の長期金利が利下げ開始時期のずれ込み観測から上昇、日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが続いた。円安と物価高騰の終わりが見通せないなか、庶民減税、貧窮国民への直接支援など、政府のやるべきことは多い。中小零細企業を含めた全ての労働者の賃上げも必要だ。


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