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労働新聞 2024年4月5日号 トピックス

世界のできごと

(3月20日〜3月29日)

国連安保理で初の停戦決議も米に批判
 国連安保理は3月25日、パレスチナ・ガザ自治区での戦闘をめぐり、イスラム教の断食月(ラマダン)期間中の即時停戦を要求する決議を採択した。決議は4月上旬までのラマダン期間中の即時停戦を通じ「永続し持続的な停戦」につなげるよう求めている。日本を含む非常任理事国10カ国が共同提案し14カ国が賛成した。米国はイスラエルを支えてきたバイデン政権に反対する国内世論に押されて拒否権を行使できず棄権に回った。イスラエルのガザ攻撃が始まって以降、安保理決議で初の「停戦」決議だが、イスラエルは米国の支持がなくてもラファへの地上攻撃に踏み切る構えで、結局はイスラエルを容認する米国に国際社会からの批判はいっそう高まっている。

広がるパレスチナ支援の国際的な動き
 国際司法裁判所(ICJ)は28日、パレスチナ・ガザ地区住民の生活状況が深刻に悪化しているとして、イスラエルに対し緊急な人道支援が滞りなく提供されるようあらゆる措置を講じることを命じた。今回の措置は、イスラエルがガザでジェノサイド(大量虐殺)を行っているとして提起した訴訟の一環で南アフリカが要求していた。また国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出停止問題では、15日にオーストラリア、22日にフィンランドが再開を発表した。各国がパレスチナ支援に動くなか、米国とイスラエルの孤立は深まっている。

民主主義サミット、早くも形骸化
 バイデン米大統領が主導し、2021年に始まった民主主義サミットの3回目が18日から韓国で開かれた。バイデン氏の狙いは中国に対抗し「民主主義の価値観を共有する国・地域の結束」を演出する枠組み。しかし「かえって世界の分断をあおっている」との批判が初回から噴出、各国の重要閣僚派遣は減り続け、3回目で早くもサミットは形骸化した。米ピュー・リサーチ・センターが28日に発表した世論調査では「自国の民主制に不満を抱いている」との回答が米国では66%で昨年より4ポイント拡大した。国民すら自国の民主主義制度を信任していない国が「民主主義」を掲げることの不条理はもはや米内外で自明だ。

欧州極右政党、移民抑制で強硬姿勢
 欧州各国の極右政党が23日、イタリアのローマで会合を開き、欧州への移民を抑制し、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長の2期目続投に反対する方針を表明した。昨年 月に続く2回目の会合。ウクライナ戦争長期化による物価高や農家への補助金削減など国民生活に広がる不満を背景に、6月の欧州議会選挙で民族主義政党や極右政党が躍進する可能性が高いことが各種世論調査で示されている。欧州議会内の極右系の会派「アイデンティティーと民主主義(ID)」は現在6番目の勢力だが、調査では支持率が4番目に上昇している。一方、ドイツなどでは極右政党が画策する移民排斥計画に反対する大規模デモが行われるなど、極右勢力の増長に対する反発や抗議の声も広がっている。

米欧が巨大IT企業への包囲網強化
 米司法省は21日、スマートフォン市場で独占的地位を乱用し公正な競争を阻害しているとして米アップルを反トラスト法(独占禁止法)違反の容疑で提訴した。同省と連邦取引委員会(FTC)は20年以降、大手IT企業への規制を強化、GAFA4社すべてを提訴した。欧州連合(EU)も21日、米巨大IT3社(アルファベット、アップル、メタ)に対しデジタル市場法(DMA)の義務違反の疑いで調査を始めたと発表した。課税逃れや市場の独占、個人情報の保護などをめぐる巨大IT企業による優越的な地位を利用した企業活動に対し、各国当局も規制に取り組まざるを得なくなっている。

人民のたたかい

(3月20日〜3月29日)

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで24日、軍事独裁下(1976〜83年)で起きた殺害・拷問・誘拐といった残虐行為を昨年大統領に就任した右派のミレイ政権が軽視しているとして、数万人規模の市民がデモ行進で抗議した。デモには国内の主要労働組合も加わり、ミレイ氏が打ち出した緊縮政策にも抗議した。
 米国ニューヨークで28日、バイデン米大統領が開いた選挙資金集めのイベント会場の外でパレスチナ・ガザ地区での停戦を訴える数百人が抗議活動を繰り広げ、「バイデンは戦争犯罪者だ」「恥を知れ」などと叫んだ。


日本のできごと

(3月20日〜3月29日)

24年度予算、2年連続110兆円台
 政府の2024年度予算が3月28日、参院本会議で可決、成立した。一般会計は112兆5717億円で、23年度に続く過去2番目の規模で、2年連続で110兆円台に。防衛費は7兆9172億円と10年連続で過去最大を更新、昨年比で16・6%増加した。一方で中小企業対策費は前年度当初予算から11億円減の1693億円で、半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)1社に投入される補助金の7分の1に過ぎない。社会保障費は37兆7193億円で過去最大となったものの自然増から1400億円圧縮された。軍事や大企業のために国民を犠牲にする岸田政権の姿勢が鮮明に表れた。

子育て支援、負担年1万1400円も
 こども家庭庁は29日、少子化対策の財源確保のために公的医療保険料と併せて徴収する子ども・子育て支援金の、保険別の月平均負担額の試算を公表した。26年度から3年かけて段階的に引き上げ、最も負担が大きくなる28年度に1人当たりの負担額が最も大きいのは公務員など共済組合で、月950円、年額で1万1400円となる。試算では所得や世帯構成に応じた具体的な金額は示されなかった。岸田首相はこれまで少子化対策財源について「歳出改革で確保する」「実質的な負担増にならない」などと繰り返してきた。税ではなく医療保険で負担することの道理もなく、二重のペテンだ。

九州・沖縄で進む自衛隊増強の動き
 陸上自衛隊の水陸機動団(本部・長崎県佐世保市)の3つ目の水陸機動連隊(水機連)が21日、竹松駐屯地(大村市)に発足し、同団の配備が完了した。「日本版海兵隊」とも言われる同団は18年3月に発足、基幹となる水陸機動連隊の3つ目が発足したことにより、ローテーションによって常に1個連隊は即応できる体制となった。また同日、陸自勝連分屯地(沖縄県うるま市)に新たな地対艦ミサイル連隊を発足させた。沖縄本島に相手国の艦艇を狙うミサイル部隊が設置されるのは初めて。さらに同日には与那国島の陸自駐屯地で電子戦部隊も発足するなど、九州・沖縄で南西諸島の戦場化を前提とした自衛隊増強が強行されている。

33年ぶり円安、物価高継続は不可避
 東京外国為替市場の円相場は27日、一時151円97銭と、1990年7月以来約33年8カ月ぶりの円安水準を付けた。日銀の緩和的な金融政策を続ける姿勢をみて日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが強まった結果。日銀は17年ぶりの利上げで異次元緩和からの脱却を試みているが、「軟着陸」を意識した政策の小幅な変更により当面は円安が続く見通し。実質賃金のいっそうの低下など物価高による国民生活の悪化は避けられない。

株主還元が過去最高の25兆円、富集中
 上場企業の2024年3月期の配当と自社株買いを合わせた株主還元総額は約25兆円と2年連続で過去最高となるとの見通しを「日経新聞」が25日に報じた。3月期決算の2300社を対象に集計、配当総額は前期比6%増の約15兆9000億円、自社株買いは9%増の約9兆3000億円の見通しで、いずれも過去最高。東証プライム企業の24年3月期の純利益は前期比13%増と3年連続で過去最高となる見通しであることに加え、東証が株価純資産倍率(PBR)を上げるため企業に投資家の期待リターンを意識した経営に取り組むよう求めていることが背景。異次元緩和の下、金融資産を抱える者にさらに富が集中している。

機能性表示食品被害、規制緩和が遠因
 紅麹(こうじ)を原料に使った機能性表示食品を巡る健康被害問題を受け、自見消費者相は26日、届け出のある約7000件全てについて一斉点検を行うと表明した。機能性表示食品制度は15年に第2次安倍政権が規制緩和による経済成長戦略の一つとして導入した。それまで健康に役立つことを商品に表示できるのは栄養機能食品と特定保健用食品(トクホ)の2種類で、国が食品1点ごとに審査し許可していたが、安倍政権は企業が安全性・機能性の研究に費用をかけずに市場に参入できるようにした。届け出のみで国の審査のない機能性表示食品の安全性は制度発足前から懸念されていたが、今回その制度的欠陥があらわになった形で、国や自公与党の責任は重大だ。

水俣病訴訟で地裁が救済に背
 水俣病被害者救済法の対象から外れた熊本県や鹿児島県の住民らが国と熊本県、原因企業のチッソに損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は22日、請求をいずれも棄却した。昨年9月に大阪地裁は国などの賠償責任を認めており、判断が分かれた。大阪地裁は診断時に使われた「共通診断書」による結果をもとに全員を水俣病と認定したが、熊本地裁は共通診断書だけではなく公的検診などの所見が必要とした。また一部原告については水俣病と認定したが、不法行為から20年で損害賠償請求権が失われる「除斥期間」を適用して退けた。患者が高齢化し猶予がないなか、国と県、チッソは裁判をやめて即時全患者を救済すべきだ。


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