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労働新聞 2024年3月25日号 トピックス

世界のできごと

(3月10日〜3月19日)

中国全人代、5%成長目標可決し閉会
 中国の国会にあたる第14期全国人民代表大会(全人代)第2回会議の第2回全体会議が3月11日、今年の経済成長率目標を5%前後とした政府活動報告などを可決して閉幕した。国務院(政府)が「中国共産党の指導を堅持する」「政務の公開を堅持する」ことなどを明確化した国務院組織法改定案なども可決した。閉会あいさつで趙楽際・全人代常務委員長は、習近平国家主席を核心とする共産党中央の下に団結し、米欧と異なる「中国式現代化」を推進しなければならないと呼びかけた。米国による対中抑止攻撃や内需不振などによる経済低迷に対して、共産党の指導を強めて5%前後の成長をめざす姿勢を明確に示した。

ロシア、プーチン大統領5期目に
 ロシアの大統領選挙の投票が17日に締め切られた。プーチン大統領が87・8%を獲得して通算5期目の当選を果たした。投票率は74・22%で、2018年の67・5%を上回った。投票は14年にロシアが併合したクリミアと、22年以降に併合したウクライナ東・南部の4州でも行われた。プーチン氏は演説で、ウクライナでの「特別軍事作戦」に関する課題の解決を優先して軍を強化すると表明、「結束すれば誰もわれわれを威嚇したり抑圧したりすることはできない」と強調した。ウクライナを前面に立たせてプーチン政権の弱体化をもくろんだ米欧にとっては望まぬ選挙結果となった。

ポルトガルで左派与党敗北、極右躍進
 ポルトガルの総選挙(一院制、定数230)が10日実施され、与党の社会党は過半数以下の77議席、第2党だった中道右派・社会民主党の連立会派は第1党に立ったが79議席と、いずれも過半数に届かなかった。一方、第3党で新興の極右政党・シェーガが改選前の12議席から48議席に4倍増した。新政権は不安定な政権運営を迫られる。1970年代から「安定」した二大政党的状況が続いてきたポルトガルでも、頻発する政治家の汚職や低成長、住宅価格の高騰などに対する有権者の不満を背景に極右政党が躍進した。極右政党がフィンランドで政権入りしたり、オランダで第1党になったりする中、6月の欧州議会選でも極右会派が議席を伸ばすとみられ、欧州連合(EU)の政治方向への影響は必至だ。

欧州議会、世界初のAI規制法を可決
 欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会は13日、人工知能(AI)の開発や利用を巡る世界初の包括規制法案を賛成多数で可決した。法案は起草から3年が経過しているが、その間にオープンAIの「チャットGPT」やグーグルの「ジェミニ」などの生成AIシステムが産業や人びとの生活に浸透、同時に誤情報やフェイクニュース拡散への懸念も高まった。同法は、生成AI提供企業に透明性の担保を求め、違反企業には巨額の制裁金を科す内容。EUには、同法でいち早くAI規制の基準をつくり、世界標準づくりで米中をリードしたい思惑がある。

世界の武器輸出入、過去5年間で倍増
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が11日に発表した2019年から23年までの世界の武器輸出・輸入量に関する調査結果によると、14年から18年までの5年間と比較した輸出・輸入量は94%増で、ほぼ2倍の市場規模になった。輸出量1位の米国は17%増となり、世界の武器輸出全体に占める割合は34%から42%に上昇した。欧州諸国の武器輸入の55%が米国からとなった。ロシアが戦闘による自国兵器の消耗などで輸出量をマイナス53%と減らした一方、フランスがこれまでロシアの輸出先だった中東やインドなどへの輸出を47%増加させ、世界第2位の武器輸出国となった。そのほかイタリア(86%増)、韓国(12%増)が輸出増となった。ウクライナ戦争の長期化で米国など世界の軍需産業の懐は潤うばかりだ。

人民のたたかい

(3月10日〜3月19日)

 インドの首都ニューデリーで14日、多くの農民団体が結集する統一農民戦線(SKM)が呼びかけた大規模集会が開かれ、数千人が農産物の最低価格保障の実現などを要求した。労働組合中央組織10団体もメッセージで「大企業優遇とヒンズー至上主義が、インドの民主主義や表現の自由を脅かしている」と連帯の意を表明した。
 フィンランドの公共・福祉部門、運輸、電気、建設、サービス連合など国際運輸労連(ITF)に加盟する産別労組が11日にストを開始、港湾での貨物取り扱いを全面的に閉鎖し鉄道の貨物輸送を停止した。中道右派政権が始めた労働者のスト権や社会保障制度への攻撃に抗議するもの。


日本のできごと

(3月10日〜3月19日)

次期戦闘機輸出で自公合意、拡大続く
 自公両党は3月15日、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機について、日本から英伊以外の第三国への輸出解禁で合意した。岸田政権は輸出方針を閣議決定し、防衛装備移転三原則の運用指針も改定する。両党は、輸出の際の個別案件ごとの閣議決定や、対象の次期戦闘機への限定などが「歯止め」としている。だが、第2次安倍政権が2014年に決定した三原則によって武器輸出が解禁された際には殺傷能力のある武器の輸出は禁じていたが、岸田政権は昨年12月に三原則と運用指針を改定、他国から技術を得て生産した武器(ライセンス品)の輸出を解禁し、地対空ミサイル・パトリオットの米国への輸出に踏み切るなど、輸出可能な範囲を拡大し続けている。岸田政権は日本を「死の商人」の国へと変え、国の形も変えようとしている。

賃上げ33年ぶり高水準も物価上昇以下
 連合は15日、24年春闘の第1回回答の集計結果を公表した。ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率は平均5・28%で、過去の最終集計と比較べ、5・66%だった1991年以来33年ぶりに5%を超えた。だが実質賃金が22カ月連続でマイナスとなる中、物価高騰を上回るには10%以上の賃上げが必要との試算もあり、また他の先進国と比べても日本の賃上げ率は際立って低い。中小企業の回答はこれからで、連合の芳野会長は「今回の流れを中小企業や労働組合のない職場にどれだけ波及させられるかが私たちに課せられた使命」と語った。その言葉通り、全労働者の大幅賃上げを勝ち取るためにナショナルセンターとしての責務を果たすことが求められている。

異次元緩和を転換、17年ぶり利上げ
 日銀は19日、金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定した。利上げは17年ぶりで、短期金利を0〜0・1%に誘導する。長期国債の買い入れは継続するものの長短金利操作(YCC)は撤廃する。リスク資産の買い入れも終了する。日銀の植田総裁は、大規模緩和は「役割を果たした」とした一方、「当面は緩和的な金融環境が継続する」とも述べ、異次元緩和からの軟着陸をめざす。決定の判断材料となったのは15日に連合が発表した5%超の賃上げだが、中小企業の回答はこれからで、利上げによる中小の資金繰り悪化が賃上げに水を差すことなどあってはならない。異次元緩和は、大企業や富裕層の富を増やす政策で、労働者・国民大多数には物価高などの弊害が押し付けられただけだった。緩和脱却の犠牲も労働者に押し付けられるような事態は許されない。

自民党大会、執行部への不満続出
 自民党は17日に定期党大会を開いた。党総裁の岸田首相は演説で、政治資金パーティー収入を巡る裏金問題について、安倍派幹部らの処分を「幹事長に結論を得るよう指示をした。厳しく対応していく」と明言した。前日に開かれた全国の都道府県連幹部を集めた会議では執行部を批判する発言が続出、岸田氏は「地方議員も同じように見られている。誰が責任をとるのか」「野党になったときよりも状況が悪い」などと集中砲火を浴び、4月に行われる3つの衆院補欠選挙前に「政治とカネ」に結論を出すことが迫られた。自民党大会は「屋台村」が出店するなどお祭りムードとなることもあるが、今回は出店はなく、補欠選挙に向けたガンバロー三唱もなく、不満と危機感に満ちた意気の上がらない大会となったことで岸田氏の基盤のガタガタぶりを示す結果となった。

同性婚否認は「違憲」、初の高裁判断
 同性婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反するとして北海道内の同性カップルが国を訴えた訴訟で、札幌高裁は14日、規定は憲法に違反するとの判断を下した。現行制度は法の下の平等を定めた憲法14条、婚姻の自由を保障した同24条に反するとし、憲法は同性間でも異性間と同程度に婚姻の自由を保障しているとの踏み込んだ判断を示した。全国で6件起こされている訴訟で初の高裁での違憲判決となったが、地裁でも5件で「違憲」か「違憲状態」と判断されている。立法府である国会には同性婚を法制化する責務があるが、その前には自民党が最大の抵抗勢力として居座っている。

日産が巨額の減額強要、国にも責任
 日産自動車の内田社長は13日、下請け法(代金減額の禁止)違反で公正取引委員会から勧告を受けたことについて謝罪した。同社は21年1月から23年4月にかけて下請け企業36社に約30億円の減額を強要したとして、公正取引委員会に下請法違反で勧告を受けていた。減額総額は下請法が施行されて以来過去最高額。同社はすでにこれを返金したというが、減額が数十年にわたり続いていたことは濃厚で、過去最高額の減額でさえ氷山の一角。社長の謝罪と再発防止策策定の約束などでは済まされない。政府には同社の過去の取引全体の調査に加え、専任の下請け検査官の大幅増員などの体制強化や不公正取引への罰金額の大幅引き上げ、被害救済制度の創設など、下請け圧迫を防止するための抜本的対策着手が求められている。


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