ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2024年3月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月1日〜3月9日)

大統領選、トランプ氏の再対決確実に
 米大統領選挙に向けた共和党の候補指名争いは3月5日、予備選が集中する「スーパーチューズデー」が行われ、トランプ前大統領が15州のうち14州で圧勝し、ヘイリー元国連大使は選挙戦からの撤退を表明した。これで本選でトランプ氏とバイデン大統領が再対決する構図がほぼ確実となった。だが、前回大統領選で引き起こされた議会突入・占拠事件に象徴される分断と対立は4年前より深刻化しており、両者の激突で米国社会の分断がますます修復不可能となることは避けがたい。

一般教書、大統領選にらみ対決姿勢
 バイデン米大統領は7日、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。11月の大統領選でトランプ前大統領との再対決が見込まれる中、報道各社の世論調査ではバイデン氏は劣勢。バイデン氏は演説で終始トランプ氏を批判、支持拡大に躍起となった。トランプ前政権が大企業や富裕層に対し大減税したことを取り上げ、「2020年には合わせて400億ドル(約6兆円)以上の利益を上げた55の大企業が所得税を全く支払わなかった」と指摘、大企業の最低負担税率を15%から21%に引き上げると述べた。またバイデン氏は傍聴席に全米自動車労組(UAW)のフェイン議長を招待、労働者へのアピールに血眼となったが、その姿勢は大統領選での苦境の反映でもある。

米韓軍事演習、規模拡大し緊張高める
 在韓米軍と韓国軍は3月4日、朝鮮半島有事を想定した合同軍事演習「フリーダム・シールド(自由の盾)」を開始した。演習では、昨年の2倍の兵士が参加、実戦を想定した野外機動訓練が行われた。韓国は尹政権になってから米韓の演習規模を拡大し、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対する軍事挑発を強めている。これに対し朝鮮国防省は談話を発表、「無分別な軍事演習を強く糾弾し、これ以上の挑発的な行動を中止するよう厳しく警告する」と要求した。米韓は東アジアの緊張を高める挑発をやめるべきだ。

EUが加盟国一体で防衛力強化へ
 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5日、初の防衛産業戦略を公表した。ウクライナ支援や域内の防衛で不足する兵器や弾薬の増産などをEUレベルで支援し、30年までに少なくとも防衛装備品の4割を共同で調達する目標を示した。EU加盟国はウクライナ支援で防衛装備品を1千億ユーロ(約16兆2870億円)以上費やしたが、うち米国からの調達が6割を占めた。戦略は米国への依存度を下げることを狙う。「安保・防衛はNATOに任せ、EUは経済政策などに専念」といったこれまでの役割分担を徐々に変えようとしている。

ガザ停戦交渉に進展なく死者3万人超
 パレスチナ・ガザ自治区で続くイスラエルによるジェノサイド(大量虐殺)は7日で5カ月が経過し、ガザの保健当局は死者が3万800人となり、餓死者は少なくとも20人に上ったと発表した。休戦協定をめぐるイスラエルとガザ地区を実質統治するハマスとの協議は平行線をたどり、イスラム教のラマダン(断食月)前の妥結は困難となった。イスラエルの後ろ盾となっている米国は、カタールを交えてエジプトのカイロで戦闘休止交渉を行ったが不発で、ジェノサイドが続いていることへの米国の責任を問う国際社会の声はますます強まっている。

人民のたたかい

(3月1日〜3月9日)

 マーシャル諸島のビキニ環礁で米国が行った水爆実験から70年を迎えた1日、首都マジュロで追悼式が開かれ、住民や被曝(ひばく)した日本人漁船員の遺族ら約500人が出席した。ビキニに加え「死の灰」が降ったロンゲラップ環礁でも島民帰還は実現せず、地域社会が壊れつつある。式典ではハイネ大統領が演説、核実験が行われた米ネバダ州からも汚染土が大量に持ち込まれ投棄されたと米国を批判した。
 ドイツで1日、気候危機の打開を求める「未来のための金曜日(FFF)」とドイツの統一サービス産業労働組合(ベルディ)がドイツ国内100カ所以上でデモ行進を繰り広げた。環境団体と労組の共同行動は「新しい抵抗運動の幕開け」だと評された。
 ポーランドの農民数万人が6日、全国から首都ワルシャワに結集、政府やEUの農業政策に抗議した。ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援策として、EUが23年にウクライナ農産物の輸入割り当てと関税停止をしたことで、ポーランド農民は自らの生計が脅かされていると主張、またEUの温室効果ガス排出削減措置「グリーンディール」も農家への負担が大きいと撤廃を求めた。


日本のできごと

(3月1日〜3月9日)

現職首相初の政倫審、裏金幕引き図る
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会(政倫審)が3月1日まで開かれた。岸田首相が現職首相として初めて出席、また安倍派や二階派の事務総長経験者ら5人も出席したが、これまでの焼き直し答弁に終始し、新たな事実は何一つ明らかにされず、裏金づくりが違法であるとの認識さえ示されなかった。しかし岸田首相は、政倫審開催をアリバイにして翌2日の衆議院本会議に新年度予算案採決を持ち込み、憲法の規定による予算案の年度内成立を確保した。だが、事実解明にはほど遠い結果となった政倫審によって、国民の岸田政権不信は一層深まっている。

改定地方自治法案、危険な指示権拡大
 岸田政権は1日、自治体に対する国の指示権拡大を柱とする地方自治法改定案を閣議決定した。国の指示権は現在は災害対策基本法など個別法に規定があれば行使できる。改定案では個別法に規定がなくても「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と国が判断すれば指示権の行使が可能となるが、基準があいまいで乱用が懸念されている。改定案には、全国知事会から「国と地方の対等な関係が損なわれる」などの懸念が、日弁連から「自治体を国の判断に従うよう義務づけるのは誤り」と反対の意見書が出されている。沖縄県名護市辺野古の新基地建設をめぐって国が設計変更承認を代執行したように、自公政権が牛耳る国の強権を肥大化させることは危険極まりない。

共同親権導入案、DV被害者懸念
 岸田政権は8日、離婚後の父母双方に子の親権を認める共同親権の導入を含む民法などの改定案を閣議決定した。現在は、婚姻時は父母双方に親権を認め、離婚後は父母のどちらか一方にしか親権を認めない単独親権制度がとられている。離婚後共同親権に対しては、家庭内暴力(DV)や児童虐待の被害者などから「離婚した相手との関係が強制されかねない」との不安が上がっているほか、法曹関係者や医療関係者などからも導入は拙速との懸念が出されている。離婚後共同親権は宗教右派などが導入に熱心だが、すでに導入されている欧米などでは「子どもの利益を損ねる」と見直しが始まっており、改定は出直すべきだ。

米事情でオスプレイ飛行再開表明
 鹿児島県・屋久島沖で昨年11月に墜落し、全世界で飛行停止となっている米軍輸送機オスプレイについて、在日米軍と防衛省は8日、停止措置を解除すると発表した。木原防衛相は会見で「安全に再開できると判断した」と説明したが、墜落事故の原因については「米国内で訴訟の可能性がある」などと米軍の都合を理由に公表を拒否、また飛行再開を急ぐ理由を問われて「米側の事情もある」と漏らすなど、米軍の意向を丸のみする日本政府の従属姿勢を露呈させた。原因や再発防止策が示せない以上、安全性への懸念はぬぐえず、飛行を再開すべきでない。日本政府の米軍言いなりは容認できない。

実質賃金22カ月連続減、消費減も続く
 厚労省は7日、1月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。1人当たりの賃金は物価を考慮した実質で前年同月比0・6%減り、マイナスは22カ月連続となった。減少率は前月より縮小したものの、物価高に賃金上昇が追いつかない状況が続いている。また総務省が8日に発表した1月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は28万9467円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比6・3%減少し、マイナスは11カ月連続となった。下げ幅は2021年2月(6・5%)以来約3年ぶりの大きさに。実質賃金の目減りから消費を切り詰めている国民の生活実態が改めて浮き彫りになった。

生活保護申請4年連続増、今後も増か
 厚労省は6日、23年の生活保護の調査結果を公表した(速報値)。生活保護申請件数は25万5079件で、前年比で7・6%増加した。また同年12月分の申請件数は前年同月比5・6%増の1万8695件(速報値)で、前年同月を上回るのは12カ月連続となり、12年度に現行調査が始まって以来最長を更新した。同省は、コロナ禍に物価高の打撃が重なって貯蓄が減少したことから申請を選択する人が増えており、増加傾向は当面続くとみている。円安による物価高は第2次安倍政権以降の政治によって引き起こされたもので、貧困問題には政権が責任を持って対応することが求められている。

沖縄県議会が超党派で陸自施設に反対
 沖縄県議会は7日、防衛省がうるま市のゴルフ場跡に建設を計画している陸上自衛隊の訓練場について、白紙撤回を求める意見書を自公両党を含めた全会一致で可決した。ゴルフ場跡は、自然体験学習の場として年間4万人もの児童らが宿泊合宿などで利用する県立青少年の家に隣接しており、玉城県知事や地区の全区長も白紙撤回を求めていた。うるま市では既にある陸自勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊を配備する計画あり、重くなる基地負担に対する怒りや不安の声が高まっている。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2024