ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2024年3月5日号 トピックス

世界のできごと

(2月20日〜2月29日)

ウクライナ侵攻から2年、米欧に焦り
 ロシアのウクライナ侵攻から2年たった2月24日、主要7カ国(G7)首脳はオンライン会議を開いた。ウクライナのゼレンスキー大統領も出席して支援継続を強く訴え、参加国も結束を強調したものの、最大の支援国である米国は議会の予算案審議が停滞、軍事支援は年明けから完全に暗礁に乗り上げている。こうしたなか、フランスのマクロン大統領は26日、パリで開催したウクライナ支援の国際会合で、地上部隊をウクライナに派遣することについて「何も排除すべきではない。ロシアが勝利しないよう、われわれは必要なことを全て行う」と発言した。これを他国政府は即座に派兵を否定、ウクライナ支援の乱れに米欧首脳が焦りを募らせている現状を露呈させた。

伯がパレスチナ問題解決へ積極外交
 ブラジルが議長国となって初の主要20カ国・地域(G20)外相会合が21日からブラジルのリオデジャネイロで開催された。イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への攻撃が始まって以降、国連では停戦などを求める決議案に米国が4回も拒否権を行使していることから、ブラジルのビエイラ外相は国連安保理を含む国際機関の改革を議題に、9月の国連総会に合わせて2度目の会合を開くことを提案し、承認された。ブラジルはG20議長国としてパレスチナ問題の解決に向けた積極外交を展開し、存在感を高めている。

スウェーデンのNATO加盟承認
 ハンガリー議会は26日、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を承認した。これによりスウェーデンは200年にわたる中立政策を放棄、32カ国目の加盟国となる。ハンガリーのオルバン首相はこの間、同国がハンガリー政府を「中傷」しているとして加盟批准手続きを先送りしてきたが、補助金凍結などで圧力を加えてきた欧州連合(EU)から譲歩を引き出したり、スウェーデン製戦闘機の購入で合意するなど「実利」も得たりしたことで加盟承認に至った。武器大国スウェーデンの軍需産業にとっても加盟は願ってもない商機。これで全バルト海沿岸諸国がNATO加盟国となり、ロシアにとっては大きな脅威となる。地域の緊張を高めているのは米国が主導するNATOの側だ。

イスラエル軍がラファ侵攻実行言明
 イスラエルは26日、ガザ地区の南部ラファへの侵攻計画を作成したと発表した。ラファでは約140万人が避難生活を余儀なくされている。イスラエルはガザ地区を統治するハマスとの休戦交渉も進めているが、ハマスが恒久的な停戦を求めているのに対し、「ハマス壊滅」を掲げるイスラエルは拒否している。一方、26日にバイデン米大統領が「戦闘休止は近い」と述べたのに対し、ハマスの幹部は「新たな提案は受け取っていない」と交渉の進展を否定した。人類史上まれに見る蛮行を行おうとしているイスラエルだが、政治・軍事・経済面で結びつきの強い米国はそれを放任しようとしている。

拡大続ける米労働者のストライキ
 米労働省が21日発表した報告によると、2023年には米国で計33件の大規模ストライキが起き、46万人が参加した。同省は1000人以上が参加するストを「大規模ストライキ」と定義しているが、件数では39件発生した00年以来の多さ。夏には全米自動車労組(UAW)やハリウッドの全米脚本家組合(WGA)、米映画俳優組合―米テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG―AFTRA)によるストが続き、10月にはカイザー・パーマネンテに対する米医療業界で史上最大規模のストが闘われ、成果を勝ち取った。スト活性化の背景には、物価高騰などによる生活の困窮や賃金低迷、記録的な企業利益と経営者の巨額報酬への怒りがある。

人民のたたかい

(2月20日〜2月29日)

 アルバニアで20日、政府与党の汚職疑惑に対し数千人がデモで政府庁舎に押しかけ、火炎瓶を次々と投げ込んだ。首相や政府高官が関与したとされる汚職疑惑の調査委員会について、与党の一部が設置を拒否していることへの怒りを爆発させたもの。
 米国の首都ワシントンのイスラエル大使館前で25日、米空軍に所属する 歳の男性が焼身自殺した。
 韓国政府による医学部増員計画に抗議する医師や研修医は20日にストを開始、国内研修医の約64%に相当する8400人以上が参加した。参加者はソウル市内でデモも行い、「政府は医学生を増やす前に給与を上げろ」などと訴えた。


日本のできごと

(2月20日〜2月29日)

農基法改定、自給格下げ、戦時も想定
 岸田政権は2月27日、農政の基本指針を定めた食料・農業・農村基本法の改定案と関連法案を閣議決定した。「食料安全保障」を「国民一人一人が良質な食料を入手できる状態」と定義、この確保を明記したが、一方で現行基本法で唯一の目標として掲げていた「食料自給率」を数ある指標のうちの一つに格下げした。また、コメ、麦、大豆などの食料が大幅に不足する恐れがある場合、国が生産者などに増産や生産転換などを指示できる食料供給困難事態対策法案も決定した。対米追随で農業を犠牲にしてきた戦後政治への反省もなく、また今後米国の先兵となって他国と戦火を交える事態も織り込むなど、許しがたい内容だ。

「経済版秘密保護法」を閣議決定
 岸田政権は27日、重要経済安保情報保護法案を閣議決定した。今国会での成立をめざす。国家機密の漏えいに罰則を科す秘密保護法制を経済・技術分野に広げ、国が保有する経済安保情報の取り扱いを有資格者に限定するセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度を創設する。漏えいには最長5年の拘禁刑か500万円以下の罰金を科す。軍事を巡る企業の国際共同開発を円滑に進めるための布石だが、基本的人権を侵害する身体・思想調査が横行しかねず、国による恣意(しい)的な運用で経済秘密が肥大化する懸念も免れないなど、問題の多い法案だ。

株価34年ぶり最高値も実体経済は停滞
 東京株式市場で22日、日経平均株価の終値がバブル期の最高値を超え、34年ぶりに最高値を更新し、初めて3万9000円台に乗った。米国の株高や中国からの資金シフト、円安、日銀の緩和継続姿勢などで起こった「活況」だが、株高が実体経済の活況には結びついていない。アベノミクスの異次元緩和が10年以上続く間、株価は4倍近く値上がりした一方、国民経済は回復には程遠い状況に置かれ続けているが、岸田政権は「バブル超え」に味を占め「貯蓄から投資へ」をさらに推し進める思惑で、格差は拡大の一途だ。

IPEFが供給網で発効、今後霧散も
 日米やオーストラリアなど14カ国が参加する経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」のサプライチェーン(供給網)分野の協定が24日、発効した。米国主導で2022年5月に発足したIPEFの具体策第1弾で、供給網に関する初の多国間協定。加盟国はそれぞれの重要品目の供給網強化に取り組む。だが、今年11月に行われる米大統領選の有力候補であるトランプ前大統領はIPEFに批判的で、同氏が返り咲けばIPEFの霧散は必至。日本は米バイデン政権の意を受けてIPEF発効に多大な外交努力を行ってきたが、トランプ政権発足で米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した時と同じく、外交努力が徒労に終わる可能性は高い。

住民犠牲が前提の大規模日米訓練
 陸上自衛隊と米海兵隊は25日、大規模な共同訓練「アイアン・フィスト(鉄の拳)」を開始した。同訓練は06年からほぼ毎年のように米カリフォルニア州の訓練場で行われてきたが、日米共同訓練の強化が明記された安保3文書に基づき、昨年初めて日本国内で行われた。今年の訓練も沖縄・九州などの各地で実施され、鹿児島県の沖永良部島でも初めて行われた。陸自の「日本版海兵隊」である水陸機動団など日米で計約2100人が参加、民間地を使用した海や空からの上陸訓練や陸上戦闘訓練、米海兵隊F35戦闘機の爆撃訓練など、実戦を想定した訓練が行われる。「離島奪還」などの名目だが、南西諸島の戦場化を想定しており、住民犠牲も前提の訓練だ。

海自幹部も靖国「公式」参拝
 海上自衛隊の酒井海上幕僚長は20日、司令官ら165人が昨年5月に靖国神社を集団参拝していたことを認めた。「隊員個々人の自由意思で行った私的参拝」などと説明したが、制服姿で本殿を参拝し玉串料を納めた正式参拝であり、公的な行為であることは明白。靖国神社を巡っては、今年1月に陸自幹部が公用車を使って集団参拝していたことも問題視されており、組織的な参拝が慣例化していることがうかがえる。憲法の政教分離原則に違反するうえ、靖国神社は戦前の日本が行ったアジア太平洋への侵略戦争に国民を動員する精神的支柱としての役割を果たし、戦後も侵略戦争正当化の拠点となっている。自衛隊幹部の「公式」参拝は容認できない問題だ。

出生数が過去最少更新、今後さらに
 厚労省は27日、23年の出生数(速報値)が前年比5・1%減の75万8631人だったと発表した。8年連続で減少し、過去最少となった。婚姻数が48万9281組で、戦後初めて50万組を割って最小となり、今後の出生数はさらなる減少が見込まれる。国は「前例のない規模で対策」(林官房長官)などと危機感を示したものの、背景には国民の貧困化と根強く残るジェンダーギャップなどがあり、「やってる感」を演出するだけの岸田政権の少子化対策で出生数が上がることはない。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2024