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労働新聞 2024年2月25日号 トピックス

世界のできごと

(2月10日〜2月19日)

ミュンヘン安保会議、EU独自路線も
 世界の約50カ国の首脳や外相、国防相らが参加して外交・安全保障問題を話し合うミュンヘン安全保障会議が2月18日に閉幕した。会議に合わせて欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は記者会見し、EU共通予算を活用して域内の兵器・弾薬を増産するなどのEUの防衛産業戦略を公表した。ロシアとの対立の長期化を念頭に、加盟国の個別の防衛産業政策から欧州共通の防衛産業支援・抜本強化にカジを切る。ウクライナ戦争の長期化や激化する中東情勢に加え、米大統領選の行方もにらみ、EUは独自の安全保障政策を強めている。

NATO体制揺さぶるトランプ発言
 トランプ前米大統領は10日、大統領選で再選した場合、北大西洋条約機構(NATO)加盟国への防衛義務について、自国の国防費を国内総生産(GDP)比2%以上にする目標が未達の加盟国を念頭に、「ロシアが望むことを何でもするよう奨励する」と発言した。トランプ氏は大統領時代からNATOに加盟する欧州各国の国防費負担が少ないと問題視してきた経過があり、トランプ氏が再選した場合、米国が欧州安保への関与にさらに消極的になる懸念から、NATO加盟各国は安全保障政策の見直しを急いでいる。

独・仏が相次いで安保協定締結
 ドイツのショルツ首相は16日、訪独したゼレンスキー・ウクライナ大統領と会談、ドイツのウクライナへの軍事支援継続と10年間の安全保障を約束する2国間協定を締結した。協定は昨年7月の主要7カ国(G7)の共同宣言に基づくもの。また同日にはフランスも同様の2国間協定を締結、マクロン仏大統領は、今年中に30億ユーロ(約4800億円)の追加軍事支援を行う方針を明らかにした。ウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)加盟が実現するまでの措置として、NATO加盟とは別の「保証」を求めており、協定は1月の英国に続いて3カ国となった。米国のウクライナ支援が危うくなる中、英独仏にとって長期の協定は大きな重荷にもなりかねない。

世界の軍事費9%増、米が元凶
 英・国際戦略研究所(IISS)は13日、2023年の世界の軍事費が前年比9%増の2兆1999億ドル(約329兆円)と過去最大を更新したと公表した。ウクライナ戦争開始前の21年と比べると15%増加した。うち約4割は米国で、前年比8%増やした。ウクライナを支えるNATO加盟国も増額基調で、ポーランドは8割増額した。東アジアでも、台湾は19%増となり、韓国は22、23年に4%増額する。中東情勢の悪化でサウジアラビアは国防費を6%増額した。IISSは24年も最大を更新するとみている。世界各地で対立をあおる米国によって各国の軍事費が増大する一方、米軍需産業は空前の利益を上げている。

インドネシア、非同盟外交継続へ
 インドネシア大統領選挙が14日投開票され、民間調査機関や現地メディアによるとプラボウォ国防相が58%を獲得して勝利を確実にした。大統領就任は10月の予定。同氏はジョコ大統領が進めてきた外交政策を継承し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の最大国、かつグローバルサウス(新興・途上国)の中心国のひとつとして、米中どちらにもくみしない独自の外交政策をいっそう進めるものとみられる。世界第4位の2億7300万人の人口を抱え、世界最大のイスラム国家であり、経済成長も著しい同国の国際的影響力は今後いっそう高まる見通しだ。

人民のたたかい

(2月10日〜2月19日)

 米国ウーバーテクノロジーズの運転手が14日、全米10以上の都市で待遇改善を求めストを実施した。ギグワーカーの権利を要求する「アプリ労働者のための公正」や「ライドシェア運転手連合」が呼びかけ、ストは英国にも広がった。
 韓国の尹政権が発表した大学医学部の入学定員増に反対する大韓医師協会傘下の16市・道の医師会は15日、全国各地で集会を開いた。ソウルにある5つの大型病院に勤務する専攻医(研修医)全員もいっせいに退職届を提出する方針を固め、さらに医大生の間でも「同盟休学」の動きが出始めている。
 インドでは13日、農作物最低価格をめぐる政府と農民労働組合との交渉が決裂したことを受け、数千人の農民がデリーに向けデモ行進を開始した。翌日には治安部隊に行く手を阻まれ衝突した。農民は政府が21年に確約した農作物の買取価格引き上げを守っていないと抗議している。


日本のできごと

(2月10日〜2月19日)

少子化対少子化対策決定、「負担なし」破綻
 岸田政権は2月16日、目玉と位置付ける少子化対策に関する改定法案を閣議決定した。2023年12月に決定した「こども未来戦略」に盛り込んだ児童手当の拡充や全ての子育て世帯が保育を受けられる「こども誰でも通園制度」の創設のため、子ども・子育て支援法や児童手当法、健康保険法など関連法の改定を今国会でめざす。財源の一部として公的医療保険料に上乗せ徴収する「子ども・子育て支援金制度」を創設するが、岸田首相は財源について「歳出改革と賃上げによって実質的な負担は生じない」と繰り返してきた。だが実質賃金目減りが続く労働者に1人当たり最大月500円弱の保険料負担増を求めるとしており、「負担なし」はもはや破綻した。

GDP2期連続減、世界4位へ転落
 内閣府は15日、23年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0・1%減で、2期連続のマイナス。また23年の日本の名目GDPは前年比5・7%増の591兆4820億円(4兆2106億ドル)で、ドイツの4兆4561億ドルを下回り、米国、中国、ドイツに次ぐ4位となった。円安も手伝って株式市場は日経平均株価がバブル期の最高値に迫るなど「活況」だが、株高が実体経済にほとんど寄与していないことが示された形。こうした現状でも岸田政権は「資産運用立国」を掲げてさらに金融資本に尽くそうとしている。

ウクライナ復興会議、特需狙う日企業
 日ウクライナ経済復興推進会議が19日、東京で開かれた。日ウクライナ両政府、日本経団連、日本貿易振興機構(ジェトロ)が共催した。基調講演で岸田首相は、日本企業のウクライナ投資を促進するため、新たな租税条約や投資協定の交渉開始や政府開発援助(ODA)の活用、首都キーウへのジェトロ事務所の設置などに取り組むと表明した。ウクライナ侵略から2年となるのを前に、日本の独自支援をアピールすると同時に、ウクライナの復興特需を貪欲に取り込む思惑もある。

島サミット準備会合、影響力低下露呈
 上川外相は12日、フィジーの首都スバで開催された「太平洋・島サミット」の中間閣僚会合に出席した。今夏に東京で開催する同サミットの準備会合との位置づけで、上川氏のほか南太平洋にある18カ国・地域から外相らが参加する予定だったが、日本以外で実際に外相が参加したのはパプアニューギニアやパラオ、ミクロネシアなど6カ国にとどまった。米日両国は太平洋島しょ国への影響力を強める中国を警戒、対抗外交を強めているが、今回の会合で日本は影響力のいっそうの低下を露呈させた。日本は米国追随・中国対抗の外交を改めるべきだ。

診療報酬改定、病院の縮小再編狙う
 中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)は14日、保険医療の公定価格である診療報酬の24年度改定の内容を決定した。初診料が30円増、再診料が20円増となることに加え、医療関係者の賃上げ原資としてさらに上乗せできる「ベースアップ評価料」を新設する。入院基本料や入院時の食費も上がる。患者の支払いは増える一方、急性期病棟の平均入院日数基準の短縮や、地域包括ケア病棟の早期退院強化、回復期リハビリ病棟の運動器リハ制限強化など、看護体制の縮小を促す内容も多い。報酬を抑制して医療機関の縮小再編をもくろむことが国の狙いだ。

住民避難訓練、自衛隊増強の地ならし
 国と沖縄県、石垣市は12日、国民保護法に基づき、弾道ミサイル飛来を想定した住民避難訓練を石垣市内で実施した。訓練は22年11月に与那国町、23年1月に那覇市でも実施され、今回で3回目。模擬の全国瞬時警報システム(Jアラート)を聞いた参加者が市民会館に移動、ホール内で頭部を守る姿勢を取るという内容だが、これでミサイルから安全を守ることなどできない。中国や朝鮮に対する恐怖心を植え付ける狙いは明白。沖縄・南西諸島で強行される自衛隊基地強化のための地ならしで、行われるべきでない。

核のごみ処分地、次段階の候補公表
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向けて北海道寿都町と神恵内村で実施されている「文献調査」について、処分を実施する原子力発電環境整備機構(NUMO)は13日、報告書原案を経産省の審議会に示した。ボーリングなどを行う第2段階にあたる「概要調査」の候補地として、寿都町では「町全域および、その沿岸海底下」、神恵内村では周辺にある火山・積丹岳から「15キロ以内の範囲を除いた範囲」とした。だが日本地質学会の会長経験者を含む研究者らが昨年10月に「世界最大級の変動帯の日本に地層処分の適地はない」との声明を発表するなど、NUMOの調査結果はうのみにできない。対象自治体には段階に応じた交付金が用意され、文献調査では最大20億円、概要調査では最大70億円が支払われるが、これと引き替えに自治体に核のごみを押し付けることは許されない。


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