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労働新聞 2024年2月15日号 トピックス

世界のできごと

(1月30日〜2月9日)

米の輸入相手国、17年ぶり首位交代
 米商務省が2月7日発表した2023年の貿易統計によると、米国の輸入相手国が、通関ベースで06年から17年ぶりに中国が首位から外れ、貿易協定を結んでいるメキシコが首位となった。米国は欧日を巻き込んでリスク回避(デリスキング)政策を強め対中貿易を縮小させている。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)など新興国・途上国の対中貿易は拡大し、グローバルサウスでの中国の影響力は高まっている。米欧日はグローバルサウス取り込み拡大で中国と争っているが、米欧日の世界貿易に占める割合は小さくなっており、国際政治上の影響力や存在感も縮小の一途だ。

EUがウ支援予算合意、米では否決
 欧州連合(EU)は1日の首脳会議でウクライナに対する500億ユーロ(約7兆9300億円)の支援予算案に合意した。だが欧州各国内にはウクライナ内政への不信も根強く、予算の円滑な執行には課題が多い。一方、米国のバイデン政権が米議会に求めているウクライナ緊急支援予算は下院での共和党の反対に加えて上院でも動議が否決されて実現の可能性はさらに遠のいた。米国が戦争をけしかけてきたウクライナのはしごを外せば、対立をあおってきた中台関係に与える影響も大きく、米アジア戦略は後退し得る。

農民の抗議デモ、欧州全域に拡大
 欧州各国の農民が1日、1000台のトラクターを連ねて欧州連合(EU)首脳会議が開かれているブリュッセルに集結、激しい抗議行動を展開した。EUは19年に環境規制「欧州グリーンディール」を策定、30年までに農薬使用を半減させ全農地の %を有機農業にすると定めたが、これは燃料高騰によるコスト負担増やウクライナなどからの安価な農産物輸入に苦しむ農民に追い打ちとなる。抗議デモは仏独伊をはじめスペイン、ルーマニア、ポーランド、ギリシャ、ポルトガル、オランダなど欧州全域に拡大しているが、6月の欧州議会選挙を控え、仏の「国民連合(RN)」や「ドイツのための選択肢(AfD)」など各国の極右政党はこの状況につけ込み農民の不満を取り込もうと画策している。

米英が親イラン組織攻撃、反発拡大
 米軍は2日、ヨルダンで米兵3人が死亡した攻撃への報復として、イラクとシリアでイラン革命防衛隊や親イラン武装組織に関連する標的を空爆した。また米英両軍は3日、イエメンにある親イラン組織フーシ派の拠点も攻撃した。米国防総省はイランとの戦争は望まないと表明したものの、サリバン米大統領補佐官は4日、中東でイランが支援する組織にさらなる攻撃を実施する考えを示した。イランのライシ大統領は米国の威圧には断固として対応すると述べ、自国内を攻撃されたイラクも米国への反発を強めている。イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への無差別攻撃に端を発した中東での紛争を米英がさらに拡大させている。

UNRWAへの非道な資金停止に批判
 先進7カ国(G7)や欧州連合(EU)など18カ国・地域は1月31日までにパレスチナ自治区支援を担っている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を停止した。UNRWA職員がパレスチナ・ガザ地区を統治するハマスのイスラエル攻撃に関与したとの口実。UNRWAは資金難で2月末にも活動停止を余儀なくされる。ガザ地区の直接統治をもくろむイスラエルにとってUNRWAは阻害物で、資金拠出停止はイスラエルへの側面支援そのものだが、これによりガザがいっそう地獄の様相を強めるのは必至で、非人道的な資金拠出停止に全世界で批判と怒りが高まっている。

人民のたたかい

(1月30日〜2月9日)

 豪州の海運労働組合は昨年10月から、DPワールドが運営するシドニーなど4つの港でストライキを闘ってきたが2日、4年間で23・5%の賃上げなどを勝ち取ってストは収束した。
 フィンランドで1〜2日、右派連立政権が計画する労働市場改革と社会保障制度の縮小に抗議し、フィンランド従業員同盟などの労働者約30万人がストを実施した。政府は財政赤字への対処として傷病休暇の手当や失業給付の削減、政治的要求に基づく政治ストの制限を提案しており、スト参加者は撤回を求めている。
 ドイツで極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭に反対する抗議デモが3日行われ、首都ベルリンの議会議事堂前には約15万人が集まったほか、全国で約20万人が参加した。


日本のできごと

(1月30日〜2月9日)

施政方針演説、政権の危機にじむ
 岸田首相は1月30日、衆参両院の本会議で施政方針演説を行った。能登半島地震については首相をトップとする復旧・復興支援本部の新設を表明して「実行力」を示そうとしたものの、自民党派閥による「政治とカネ」の問題を受けての政治改革については、連座制の導入や政策活動費の見直しといった抜本改革に踏み込まず、内容の空虚さを印象づけた。

文科相を旧統一教会が支援、責任重大
 盛山文科相が2021年の衆院選で旧統一教会の関連団体から選挙支援を受けたり事実上の政策協定を交わしたりしていたことを「朝日新聞」が2月6日に報じた。この件について盛山氏は国会答弁で「記憶にない」「よく覚えていない」「サインしたかもしれない」などの無責任な発言に終始した。盛山氏は自民党が22年に行った教団との接点に関する自主点検で選挙支援について申告していなかった。文科相は宗教法人を所管する国の責任者で、盛山氏は統一協会の解散命令請求を行った当事者だが、文科相と教団の関係が深いのであれば公正な審理は期待できない。岸田首相の任命責任は重大だ。

新技能実習制度案、依然転職を制限
 政府は9日の関係閣僚会議で、外国人技能実習に代わる新制度「育成就労制度」の創設方針を決定した。開催中の国会に関連法案を提出する。職種は介護や建設、農業など専門知識が求められる特定技能制度と同分野に限定し、現行の技能実習制度は廃止する。現在は原則認めていない本人意向の転職に関する制限は緩和するものの、転職制限期間を当面1〜2年の間で業種ごとに設定でき、労働者の基本的な権利である転職は依然として大幅に制限される。これでは国や財界の切望する「外国人に選ばれる国」など幻想だ。

TSMCが熊本に第2工場、問題多く
 半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)は6日、熊本県に第2工場を建設すると発表した。年末までに着工し、27年末までの稼働開始を目指す。第1工場でも出資したソニーグループとデンソーに加え、新たにトヨタ自動車も出資する。国は第1工場に最大4760億円の補助金を用意して誘致したが、第2工場向けには最大7700億円の予算を設ける。「経済安保」を口実に日米大企業への半導体の安定供給のために、さらなる巨額の血税が投じられようとしている。熊本県民の生活や他産業などに与える悪影響についても十分な配慮が必要だ。

23年の実質賃金、9年ぶりの下げ幅
 厚労省は6日、23年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)を発表した。1人当たり賃金は物価を考慮した実質で前年比2・5%減り、2年連続で減少した。下げ幅は消費税増税の影響で2・8%減だった14年以来9年ぶりの大きさ。実際に支払われた額を示す名目賃金は全ての月で増えたが、物価の変動を示す消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)の上昇率が3・8%と42年ぶりの高水準だったことが影響した。同時に発表された23年12月分(速報)の実質賃金は前年同月比で1・9%減少し、21カ月連続で前年を下回った。23年春闘では30年ぶりとなる高水準の賃上げが実現したものの、物価高はそれを上回った結果で、実質賃金のマイナス解消には中小企業を含む全ての労働者の大幅賃上げが求めらている。

農業資材価格最高も価格転嫁できず
 農水省は1月30日、23年の農業物価指数を発表した。生産資材全体で121・3(20年=100)と、統計が残る1951年以降で最高となった。肥料は147で、過去最高だった22年から16・2ポイント上昇した。飼料は145・8、農薬は112・9、農機具は105、種苗は106・6など、他の資材も軒並み上昇した。一方、農産物は107・8と資材に比べて上昇幅は小さく、生産コスト上昇分を農産物価格に十分転嫁できていない現状が示された。政府は昨年6月に適正な価格形成に向けて法制化の方針を示したものの、通常国会では関連法案の提出を見送るなど、食品価格上昇を恐れて消極的な姿勢。これでは離農にいっそう拍車をかけることになりかねない。

東京一極集中と地域衰退さらに
 総務省は30日、23年の住民基本台帳人口移動報告を発表した。都道府県別で転入超過となったのは埼玉、千葉、東京、神奈川、滋賀、大阪、福岡の7都府県で、転入超過数が最も拡大したのは東京だった。転出超過は40道府県で、宮城、茨城、山梨、長野は22年に転入超過だったが転出超過に転じた。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)では転入者が転出者を上回る転入超過が12万6515人で、2年連続で前年を超え、日本人に限れば28年連続の転入超過だった。コロナ流行前にあたる19年の85%まで戻ったことになり、東京一極集中が再び強まっていることを示す結果となった。過度な東京一極集中は地域衰退と表裏一体でもあり、また地震など災害時のリスクも高める。問題解決に向けて国はいっそう本腰を入れる必要がある。


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