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労働新聞 2024年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月10日〜1月29日)

台湾総統選挙後も米の干渉続く
 台湾総統選挙が1月13日に投開票され、民進党の頼清徳氏が当選した。米国は総統選にも強く干渉してきたが、投票率は71・9%と前回より3ポイント下がり、当選した頼氏の得票率は40・05%にとどまった。同時に行われた立法委員(国会議員)選挙では国民党が52議席で第1党となった。与党・民進党は51議席と過半数を失い第2党に転落、与野党ねじれとなり、民進党政権は不安定化した。15日には米国の「非公式」代表団が訪台して頼氏と面会、米国が台湾への関与を続けることを確認するなど、引き続き中国への内政干渉とけん制を続けている。

パレスチナ、米英が地域の緊張を拡大
 イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への攻撃開始から15日で100日が経過した。ガザ地区での無差別虐殺で、すでに2万5千人以上が犠牲になった。医薬品・食料不足などの人道状況も悪化の一途だ。イスラエルはガザ南部への攻撃の拡大だけでなくヨルダンやシリアなどへの越境攻撃も繰り返しており、イランなど周辺国との緊張も激化させている。さらに米英軍も、12日から紅海での船舶攻撃への報復としてイエメンの親イラン民兵組織フーシ派の拠点攻撃を繰り返すなど戦闘を拡大させている。パレスチナの和平どころか、中東地域全域に緊張を拡大している米英の責任は重大だ。

国際司法裁、ガザ虐殺に防止措置命令
 オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は26日、パレスチナ・ガザ地区へのイスラエルの侵攻がジェノサイド(集団殺害)条約に違反するとの南アフリカの提訴を受け、暫定措置を出した。暫定措置はイスラエルに対し、ジェノサイドを直接実行したり扇動したりする全ての行為を防止する措置や、人道的な支援提供確保のため迅速で効果的な措置などを取るよう要求した。ICJは国連の最高司法機関ととして国家間の紛争を仲介する機関。命令には法的拘束力があるが、決定を当事国や第三国に執行させる能力はない。決定は南アが求めた即時停戦には触れなかったが、イスラエルや後ろ盾の米国の犯罪性はさらに明白となり、国際的批判はいっそう強まっている。

力不足露呈、存在感薄まるダボス会議
 世界の政財界人など約2800人が参加して15日からスイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」が19日閉幕した。ウクライナ戦争の長期化や中東情勢が悪化する中で開かれた今年の会議では、ウクライナへの米欧の支援疲れや、パレスチナでの戦闘激化や米英のフーシ派攻撃などについて議論されたが、解決のための有効な方向は示されなかった。国際関係の分断・対立が深まる中、世界の政治指導者や金融エリート、富裕層が集まるダボス会議だが、世界がますますかれらの思い通りにはならなくなっている現実が浮き彫りとなった。

ドイツ、農民の抗議が政権揺さぶる
 ドイツ・ショルツ政権による農業用ディーゼル補助金削減や増税に反対するドイツ農民連盟(DBV)の大規模抗議デモが年初から全土に拡大、15日には約1万人がトラクター5000台でデモを行い、道路の封鎖などで首都ベルリンはマヒ状態に陥った。ショルツ政権は昨年、政府の財政措置が憲法裁判所に違憲と判断され、予算の穴を埋めるため補助金削減に乗り出していた。年初に計画を一部修正したが、農民団体は完全撤回を求めて抗議行動を強めている。こうした農民の反発に呼応して極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が早期解散を要求して支持を拡大させている。6月の欧州議会選挙を前に欧州各国で右派が国民の不満をひきつけ支持を広げている。

人民のたたかい

(1月10日〜1月29日)

 アルゼンチン最大労組の労働総同盟(CGT)は24日、ミレイ新大統領が計画する国営企業の民営化、選挙制度改悪、セーフティーネットの縮小などに反対する12時間のゼネストを行った。同国のゼネストは2019年以来。全国でデモが行われた。
 スペイン・ガリシア州で21日、マイクロプラスチック汚染から海を守れと環境保護団体や市民団体、漁業者ら約2万人がデモを行った。州政府に対し海や河口の衛生計画の作成や海洋汚染の防止策を取るよう求めた。
 米国最大の大学であるカリフォルニア州立大で22日、教員らの組合が5日間のストライキに入った。米国では大学教員による最大のストとなった。教員組合(約2万9千人)は年12%の賃上げなどを要求しているが、大学側の回答は5%の昇給にとどまっている。


日本のできごと

(1月10日〜1月29日)

国会開会、「政治とカネ」で幕開け
 第213回通常国会が1月26日、開会した。自民党派閥の裏金事件で閣僚の辞任や安倍派議員らの逮捕・起訴が続く中、通例は国会召集日に行われる首相の施政方針演説が先送りされて「政治とカネ」に関する集中審議が衆参予算委員会で行われる異例の事態となった。自民党は派閥の解散や「刷新本部」設置で国民の目先をそらすもくろみだが、真相究明と責任追及を求める国民の声は増大する一方だ。能登半島地震の被災者支援や復旧・復興など重要課題の議論も遅れており、国会運営責任を果たせない岸田政権は即刻退陣すべきだ。

国が辺野古の大浦湾側工事に強行着手
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、防衛省沖縄防衛局は10日、大浦湾側の埋め立て工事に強行着手した。斉藤国交相が埋め立て予定海域にある軟弱地盤の改良工事に必要な設計変更の承認を代執行したことを受けたもの。沖縄県の玉城知事は「ジュゴンやサンゴなど大浦湾の自然環境の保全や地盤沈下など災害の防止に十分配慮されておらず、いつ完成するかも不確実で普天間基地の危険性の早期除去にはつながらない」などと承認していなかった。岸田政権は完成の保証のない工事に最低1兆2200億円もの血税を注ぎ込む蛮行を続けている。

能登半島地震を非常災害指定、4例目
 岸田政権は11日、激甚災害と特定非常災害に指定すると閣議決定した。激甚災害は地域を限定しない本激とし、道路や港湾、学校、農地といった広範な復旧事業への国の補助率を引き上げる。特定非常災害指定により運転免許証の有効期限延長や破産手続きの延期など行政上の特例が被災者に適用される。また19日には同地震を非常災害に指定すると閣議決定した。指定は2016年の熊本地震などに続き4例目。これにより道路や橋、河川、港湾、漁港、海岸などの自治体が管理するインフラの復旧工事を国が代行可能となる。発災からほぼ1カ月が経過しても避難所での劣悪な生活を強いられる被災者は多く、震災関連死も後を絶たない。国のさらなる対策が急がれる。

上川外相、台湾総統選めぐり内政干渉
 上川外相は13日、台湾総統選で与党・民進党の頼副総統が勝利したことに「祝意を表する」「台湾は基本的価値を共有する極めて重要なパートナーで大切な友人」などとする談話を発表した。談話では「台湾をめぐる問題については、対話により平和的に解決されること、また地域の平和と安定に寄与することを期待」なども言及、言外に「中国の脅威」をにじませた。この談話を在日中国大使館は「重大な内政干渉」「『台湾独立』勢力にいかなる誤ったシグナルも発さず、台湾海峡の安定や中日関係を妨害しないよう厳しく促す」などと厳しく批判した。総統選の結果をめぐっては、バイデン米大統領でさえ「台湾の独立は支持しない」と確認している。日本政府のぶしつけぶりは際立っている。

年金増も物価・賃金上昇に追いつかず
 厚労省は19日、24年度の公的年金の支給額を23年度に比べて2・7%引き上げると発表した。物価や賃金の伸びを反映して2年連続増額となったが、年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」も2年連続で発動、増加率は実際の賃金の伸びに比べて0・4ポイント目減り、実質的に削減される。国はこの実質年金低下を「年金財政の健全化」「世代間のバランス」などと正当化するが、物価高騰のしわ寄せを高齢者に強いている実態は隠せない。実質賃金低下を押し付けられ続けている労働者以上に苦境が続くことになる。

企業倒産、3割増で8年ぶり高水準
 東京商工リサーチは15日、23年の企業倒産件数(負債額1000万円以上)を発表した。前年比35・2%増の8690件で、15年(8812件)以来8年ぶりの高水準だった。1992年以来31年ぶりに調査対象の10産業全てで前年を上回り、原材料などの物価高に起因する倒産は645件と前年の2倍強に増加、人手不足関連倒産は158件で2013年の調査開始以降で最多となった。実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」を利用した企業の倒産も1・4倍の631件に拡大した。商工リサーチは「4月に民間金融機関からの融資返済がピークを迎え資金繰りは一段と厳しくなる」と指摘する。

自社株買い最高、株価つり上げ顕著
 SMBC日興証券は10日、23年の上場企業の自社株買いが金額ベース過去最高を更新したと発表した。東証株価指数(TOPIX)構成企業の自社株購入額は計9兆3860億円。企業が自社株買いを決議すると、資本効率を示す指標の改善が見込まれるため、株価が上昇する傾向にある。東証が23年3月に上場企業に資本コストや株価を意識した経営を要請したことを機に自社株買いが増加、株主が企業に対し還元強化策として求めることも増えている。自社株買いで株価をつり上げ「景気の好循環」をおう歌しているが、金融資産を持つ余裕のない大多数の労働者・国民に恩恵が及ぶことはない。


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