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労働新聞 2024年1月15日号 トピックス

世界のできごと

(12月20日〜1月9日)

ガザ攻撃開始3カ月、死者2万人超に
 イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃が始まって1月7日で3カ月が過ぎた。住宅の7割が損壊し住民の8割に当たる190万人が避難を強いられている。イスラエル兵の死者176人に対し、パレスチナ側の死者は9日に2万3200人を超えた。この悲惨な現状に対し、南アフリカ政府が12月29日に「ジェノサイド(大量虐殺)を繰り広げている」として国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルを提訴するなど、グローバルサウスを中心に批判が強まっている。国際社会は米国の後ろ盾があるためイスラエルが蛮行をやめないことを知っており、米国への批判も強まり続けている。

イスラエルのガザ攻撃、中東に飛び火
 イスラエルによる攻撃がパレスチナ周辺にも広がっている。イスラエル軍は1月2日にレバノンをドローン(無人機)で空爆し、8日にはイスラム教シーア派組織ヒズボラの司令官がイスラエル軍の空爆で殺害された。また4日にはイエメンの武装組織フーシ派が無人水上艇でイスラエルを攻撃した。こうしたさなか、米国のブリンケン国務長官は4日から中東諸国を歴訪、各国首脳らにガザの民間人犠牲者を減らす必要性を強調して「穏健な姿勢」を印象付ける思惑だったが、各国でイスラエルを止められないことに注文が付けられた。戦闘拡大はスエズ運河回避などの形で世界の海運にも影響を与えており、米国に向けられる世界の視線もいっそう厳しくなっている。

米欧のウクライナ支援、先細り顕著
 米政府は2023年12月27日、ウクライナに2億5000万ドル(約355億円)の追加軍事支援を行うことを発表した。今回でウクライナ支援に回す米軍在庫を補充するための予算は底を突き、追加支援は困難な状況で、防衛産業から新規に調達して供与するための基金も枯渇した。バイデン政権が議会に求めている支援を含む610億ドルの追加予算は、共和党内から不法移民対策強化などを交換条件に慎重論が出され承認の見通しが立っていない。欧州連合(EU)でも2024年から4年間で500億ユーロ(7兆7500億円)のウクライナ支援がハンガリーの反対で合意できず、ウクライナの戦争継続に黄信号がともっている。

イラク、駐留米軍の撤収求める
 イラク首相府は1月5日、イラクに駐留する米軍主導の有志連合軍を撤収させる手続きに着手すると表明した。スダニ首相は「有志連合軍が駐留する正当性はなくなった。駐留を終わらせるという確固たる立場を強調する」と語った。米軍は現在イラクに2500人の部隊を駐留させているが、イラク民兵組織による米軍攻撃への報復攻撃で民兵組織の幹部を殺害したことなどに対し、イラク政府は「主権侵害で、テロ行為と変わりない」と反発していた。米国防総省は駐留を継続したい考えを示しているが、継続できなければ中東での影響力を急速に失いつつある米国にとって大きな痛手となる。

24年経済見通し、国連・世銀とも鈍化
 世界銀行は9日、世界経済の成長率見通しを公表した。24年は2・4%と23年の2・6%から低下、3年連続で減速する。米国が2・5%から1・6%、23年に0・4%まで落ち込んだユーロ圏は回復するものの24年も0・7%の低成長にとどまる。また国連はアフリカの成長率を3・5%と予測するが、地政学的不安定、多発する自然災害や気候変動危機などの影響に加え、世界的な成長鈍化や米欧の金融引き締め、インフレ率の上昇も重なって、アフリカ54カ国のうち18カ国が23年に債務残高がGDP比70%を超えたとしている。途上国、特に最貧国は多大な債務を抱え、3人に1人が食料へのアクセスが危うい状況にある。米国の利上げに振り回され続けている。

人民のたたかい

(12月20日〜1月9日)

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで2023年12月27日、就任したばかりのミレイ大統領が打ち出した財政再建や規制緩和への抗議デモに、労働者や市民数千人が参加した。労組はさらに全国ストなどを検討している。
 ブラジル最大都市サンパウロでは1月4日、地下鉄や近郊電車の料金値上げに抗議するデモが行われた。  英国イングランドで3日、「ジュニアドクター」と呼ばれる若手医師らが賃上げを求めて6日間のストライキに突入した。医療従事者のストとしては国営の「国民医療サービス」(NHS)が1948年に創設されて以来、過去最長になる見通し。


日本のできごと

(12月20日〜1月9日)

能登半島地震、国は救援に全力を
 石川県の能登半島を震源とする最大震度7の地震が1月1日に発生した。建物の倒壊や火災、土砂崩れが相次ぎ、沿岸部には津波も押し寄せた。道路が土砂に埋まり孤立する地域も多発、水道や電気などライフラインの寸断も深刻な状況となった。避難者は避難所で「体育館で雑魚寝」「不衛生なトイレ」などの劣悪な環境に置かれ、自然災害多発国にふさわしく備える責任を政治が果たしていない現状が改めて浮き彫りになった。国には被災者救援に全力を尽くす責務があると同時に災害関連死を防ぐ対策が急がれる。

辺野古の埋め立て承認、国が代執行
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、斉藤国交相は2023年12月28日、県に代わって軟弱地盤改良の設計変更を承認した。国が地方自治体の事務を代執行したのは初。訴訟で福岡高裁は県に対し承認するよう命じていたが、玉城知事が応じていなかったため、国が手続きを強行した。この暴挙は沖縄の地元2紙が「史上初の代執行をすれば強権発動で地方自治を押しつぶしたとして岸田内閣は歴史に汚点を残す」(琉球新報)、「代執行による新基地建設は米国統治下に吹き荒れた『銃剣とブルドーザー』による強制土地接収の再現」(沖縄タイムス)などと批判するように、歴史に刻まれる蛮行だ。

殺傷武器の輸出解禁へ運用指針改定
 政府は22日、臨時閣議と国家安全保障会議(NSC)で、防衛装備品の輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則と運用指針の改定を決定した。外国企業から許可を得て日本国内で製造する「ライセンス生産品」のライセンス元の国への輸出を可能にする。「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に関わる武器の輸出は「本来業務」や「自己防護」に必要であれば殺傷能力のある武器も搭載が可能となる。国際共同開発品の部品は第三国への輸出も解禁する。また指針改定に合わせて米国企業のライセンスに基づき生産している地対空誘導弾パトリオットを米国に輸出することもNSCで決めた。国際紛争を助長するだけでなく、東アジアの緊張をあおる危険な決定だ。

上川外相がウクライナに53億支援表明
 上川外相は1月7日、ウクライナを訪問しクレバ外相と会談した。北大西洋条約機構(NATO)の基金に日本円で約53億円を新たに拠出、同国に対無人航空機検知システムなどを供与すると表明した。米国や欧州連合(EU)のウクライナ軍事支援が細る中、率先して米国にとっての「模範的」役割を演じた形だが、先立つ12月27日にロシアは、日本がパトリオットの米国への提供を決めると、「日本のミサイルがウクライナに渡る可能性もある。そのような行動はロシアに対する明確な敵対行為」などとけん制している。今回の決定は日ロ関係をいっそう悪化させる危険な結果となりかねない。

こども未来戦略、インボイス正当化も
 岸田政権は12月22日、「次元の異なる少子化対策」の実現に向けた「こども未来戦略」を閣議決定した。2024年度からの3年間で集中的に取り組む加速化プランに年3・6兆円を投じる。児童手当の支給対象を「中学生まで」から「高校生の年代まで」に広げ、所得制限を撤廃するほか、親の就労状況にかかわらず保育園を利用できる仕組みの創設なども盛り込んだ。政府は同日、10月から始まったインボイス(適格請求書)制度による消費税増収分を児童手当拡充など少子化対策に使うと表明、どさくさ紛れにインボイス増税を正当化した。増税や物価高で生活に苦しむ国民が増える中での少子化対策に成果は期待できない。

診療・介護報酬の改定率決定、不十分
 武見厚労相と鈴木財務相は20日、24年度の診療報酬や介護報酬の改定率を決定した。医療職の人件費などに充てる本体部分を0・88%、介護サービスの公定価格になる介護報酬を1・59%引き上げる。だが診療報酬は薬の公定価格「薬価」の引き下げを含めた全体ではマイナス改定で、14年度改定の消費税増税対応分を除けば全体で6回連続の引き下げ。介護報酬は00年の制度創設以来7回中4回がマイナス改定で、今回も1%台の微増にとどまる。医療・介護職の人手不足や長時間労働の是正につながる改定とは程遠い。

再稼働ありきの柏崎刈羽運転禁止解除
 国の原子力規制委員会は27日、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に出している事実上の運転禁止命令の解除を決定した。福島第1原発で世界最悪レベルの事故を起こした東電だが、同原発では不正侵入を検知する設備の故障を放置したり、社員が他人のIDカードを不正使用して中央制御室に入るなど、テロ対策上の重大な問題が相次いで発覚、規制委は東電に対し事実上の運転禁止を命令し検査を続けてきた。しかし検査中も未許可のスマートフォン持ち込みや薬物検査で陽性反応が出た社員の入域などの違反は絶えなかった。今回の運転禁止解除はGX(グリーントランスフォーメーション)などの口実で再稼働を急ぐ岸田政権の意を受けた、再稼働ありきの決定だ。


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