ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2024年1月1日号 トピックス

世界のできごと

(12月10日〜12月19日)

COP28、あいまい成果文書で閉幕
 アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開かれていた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は12月13日、温暖化ガスの排出削減策について「化石燃料からの脱却」などを盛り込んだ成果文書を採択して閉幕した。化石燃料の削減を初めて明記したが、石炭火力廃止や新規建設停止などを含めた「段階的廃止」は産油国の反対などで見送られ、海面上昇などの被害に直面する島しょ国などは厳しく批判した。実質的な排出削減を率先して実現させることは、これまで大量に温暖化ガスを排出してきた米国をはじめとした先進国の責任である。

米とイスラエルの孤立さらに鮮明に
 イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区などでの虐殺行為が続く中、12日に開かれたガザ情勢に関する国連総会緊急会合で、「人道的即時停戦」を求める決議が圧倒的多数の賛成で採択された。前回10月の「人道的休戦」を求める決議は121カ国が賛成したが、今回の決議には153カ国が賛成した。前回反対や棄権した国の中からも北大西洋条約機構(NATO)加盟国や米国と軍事同盟を結ぶ日本や韓国、オーストラリアなども賛成に回った。反対は米国やイスラエルなど10カ国にとどまった。攻撃を続けるイスラエルとその後ろ盾となっている米国の国際的孤立が際立つ形となり、米国内でもイスラエル寄りの姿勢をとり続けるバイデン政権への批判が強まっている。

米利上げ終結、高金利の転換点か
 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は13日、公開市場委員会(FOMC)後の会見で、追加利上げを3会合連続で見送り、利上げの終結を強く示唆した。FRBが2022年3月に始めた利上げは事実上終結し、今後の市場の関心は24年の利下げ時期に移ると見られている。今回の利上げ期間は1年4カ月と01年以降最短で、5・25%の利上げ幅は1980年代以降で最大だった。相対的には高金利の状態が続いているが、インフレ上昇率は依然目標の2%を上回っており、インフレ再燃の可能性もある。米金利の動向は世界経済、とりわけ新興国・途上国経済を不安定にしかねない。

英仏、移民問題で内政は迷走
 英スナク政権が提案した、同国に「不法入国」した移民をアフリカのルワンダに強制移送する法案が12日、英議会で審議入りした。国会では与党内からも法案への異論が噴出、成立は不透明になっている。同法をめぐっては英最高裁も11月に人権上の懸念からルワンダへの移民の移送を違法とする判決を下しており、否決されればスナク政権の求心力の低下は避けられない。またフランスでもマクロン政権による新しい移民法案が迷走、罪を犯した外国人の国外追放を迅速化する一方で人手不足の分野では滞在許可を取得しやすくするという、規制強化と受け入れ促進を併せ持った内容だが、左右両派の反発を招いている。英仏に限らず欧州各国は激増する移民問題で政権基盤を揺さぶられ続けている。

中越、両国関係の格上げで合意
 中国の習近平国家主席は6年ぶりにベトナムを訪問し、12日からベトナム共産党のチョン書記長、チン首相らと首脳会談を行った。発表された共同声明では「包括的戦略的」と位置づけていた両国関係を「戦略的な運命共同体」と格上げした。ベトナムは9月以降に米国と日本との関係を「包括的戦略的」と最上位に格上げしたが、中国との関係もさらに高めた。ベトナムは中国にとって世界第4位の貿易相手国で、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国では最大と、外交上重要。これは中国の米国によるASEAN分断政策をけん制する動きでもある。

人民のたたかい

(12月10日〜12月19日)

 ベルギー・ブリュッセルで12日、欧州連合(EU)首脳会議の開催を前に、欧州労連(ETUC)が緊縮反対のデモを行い、30カ国から1万5000人が参加した。
 スウェーデンの運送業労働者組合は13日、米電気自動車(EV)大手テスラの廃棄物の収集を24日から中止すると宣言した。同国では、テスラに労働協約の締結を求める労組のストが広がっている。
 米国の自動車労組(UAW)は11日、全米労働関係委員会にホンダと現代自動車、フォルクスワーゲン(VW)がUAWによる労組結成を妨害する不当行為を行ったと申し立てた。


日本のできごと

(12月10日〜12月19日)

臨時国会閉幕、内閣不信任決議案も
 第212臨時国会は12月13日、会期末を迎えて閉幕した。通常国会からの継続審議だった2本を含む計14本の法律と物価高対策を盛り込んだ経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算が成立した。「政治とカネ」をめぐる不祥事などで会期中に副大臣2人と政務官1人が辞任、また自民党派閥による政治資金パーティー収入の裏金疑惑をめぐっては13日に内閣不信任決議が提出されるなど、国会は機能不全も同然に。決議案は自公与党の反対多数で否決されたが、閉会直前に報道各社が行った世論調査では時事通信と毎日新聞の調査で支持率が2割を切るなど、09年に自民党が下野する直前の麻生政権と大差ない水準にまで落ち込んだ。

裏金問題で4閣僚交代、家宅捜索まで
 自民党の裏金疑惑をめぐり、岸田首相は14日、安倍派に所属する松野官房長官や西村経産相ら4人の閣僚と5人の副大臣を一斉に交代させた。岸田氏は「信頼回復のため火の玉となる」などと述べたが、疑惑解明とは無関係の対応で小手先のゴマカシに過ぎない。この問題で東京地検特捜部は19日、安倍派と二階派の事務所を政治資金規正法違反容疑で家宅捜索に踏み切った。派閥事務所への強制捜査は19年ぶり。党全体で組織的・継続的に裏金づくりを行ってきた疑いは濃厚で、徹底捜査と全容解明が第一に求められている。

被害者支援法、財産隠し対策不十分
 旧統一教会の被害者救済に関連する法が13日の参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。国が裁判所に解散命令を請求した宗教法人の資産状況を適時把握できるよう、不動産処分前の行政機関への届け出や3カ月ごとの財産目録提出を義務付ける。また日本司法支援センター(法テラス)の業務を拡充、被害者が民事訴訟の支援などを受けられるようにする。3年後をめどに財産保全のあり方も検討する。同教団の被害者を支援する弁護団は同法を一定評価しつつ、財産隠し対策が不十分だとも指摘した。引き続き財産保全の法整備を含めた被害者対策が求められていると同時に、自民党と同教団との癒着関係の徹底究明が必要だ。

改悪国立大学法成立、国の介入拡大も
 国立大学法人法改定案が13日の参院本会議で自公与党などの賛成多数で可決、成立した。事業規模の大きい国立大学法人を「特定国立大学法人」に指定、その上で学長と3人以上の委員でつくる「運営方針会議」の設置を義務づけて中期計画や予算・決算を決定する権限を与えるが、委員は学長が任命する前に文科相の承認が必要で、政権の意に沿った少数者による大学支配に道を開く内容。国策に沿った学術研究が強要される恐れもある上、大学の自治や研究・教育の自主性を制限し、国際的に落ち目となっている日本の研究力をいっそう低下させることにもつながる。大学教授や学生ら現場からの不安や反対の声を踏みにじって成立を強行した岸田政権の蛮行は許しがたい。

マイナ総点検完了、保険証廃止強行へ
 相次いだマイナンバーの誤登録を受けて発足した政府の「マイナンバー情報総点検本部」は12日、総点検を完了させた。1万5907件のひも付けの誤りが判明したが、河野太郎デジタル相は「判明した誤登録は全体の0・01%にとどまった。極めて少なかった」などと開き直った。これを受けて岸田首相は「予定通り現行の健康保険証の発行を来年秋に終了する」と表明した。だが総点検後もマイナカードを保険証として利用する「マイナ保険証」のトラブルが引き続き報告されるなど、システムは万全とは程遠い。国民の生命と健康に関わる深刻な事態も危惧され、強行廃止は許しがたい。

与党税制大綱決定、「減税」前面に
 自公両党は14日、24年度の与党税制改正大綱をまとめた。1人当たり4万円の所得税などの定額減税や企業に賃上げを促す税制の強化、子育て支援措置、投資減税の創設、減資による課税回避防止策などを盛り込んだ。政府は大綱をもとに税制改定案をつくり1月召集の通常国会に提出する。「減税」を前面に打ち出す一方、岸田政権がもくろむ防衛大増税については「増税に政権の力が必要。今は自民党に厳しい風が吹いている」(宮沢自民税調会長)と、2年続けて開始時期の決定を見送った。岸田政権は22年末に「安保3文書」を閣議決定したが、それに基づく軍拡を強行する力がないことを自己暴露する大綱となった。

ASEAN特別首脳会議、2つの焦り
 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との「友好50周年」に合わせた特別首脳会議が16日から東京で行われた。経済や安全保障など幅広い分野での協力を示した共同声明を採択、対等に豊かな経済・社会を創る「共創」との理念も打ち出した。ASEAN加盟10カ国の総人口は6・8億人で平均年齢も若く、域内の経済規模は30年前後に日本の国内総生産(GDP)を上回るとの予測もある。会議には、ASEANとの関係を強める中国に対抗する思惑に加え、成長するアジアで取り残されることへの焦りも透けて見える。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2024