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労働新聞 2023年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

イスラエルが攻撃再開、米英が後押し
 イスラエル軍は12月1日、戦闘中断合意を破棄し、パレスチナ・ガザ地区への攻撃を全面再開した。パレスチナ側の死者は2万人に迫っている。この状況に国連のグテレス事務総長は6日、国連憲章99条に基づき国連安保理に人道的停戦を求める要請をした。「事務総長最強の手段」とされ、グテレス氏が2017年に就任して初めて発動する異例の手段。これを踏まえ、人道目的の即時停戦を求める決議案をアラブ首長国連邦(UAE)が8日、安保理に提出した。アラブ諸国や中ロなど100カ国以上が共同提案者となった決議案だが、常任理事国の米国が拒否権を行使し否決された。英国は投票を棄権した。イスラエルとともに米英の世界的孤立が進んでいる。

温暖化対策で先進国への不満あらわ
 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が11月30日、UAEのドバイで開会した。12月1日からの首脳級会合で演説した国連のグテレス事務総長は「地球のバイタルサイン(生命兆候)は破綻しつつある」と危機感をあらわにし、温暖化対策の加速を訴えた。だが対策をめぐる新興・途上国の先進国への不満は大きく、初日に演説したインドのモディ首相は、先進国が過去に排出した温暖化ガスによって途上国が苦しんでいると訴え、「気候変動資金と技術はグローバルサウスにとって非常に重要」と、途上国を先進国が支援するよう求めた。だが最大の温室効果ガス排出国である米国はバイデン大統領が出席を見送るなど依然として対策に冷淡で、米国を中心とした先進国と新興・途上国との間の溝が深まっている。

米のウクライナ支援が途絶も
 米政府は4日、ウクライナ支援の予算が「年内に枯渇する」と連邦議会に警告する書簡を送り、追加予算案の早期可決を求めた。ウクライナ支援を盛り込んだ法案が移民対策をめぐる共和党と民主党の対立で審議入りできず、ホワイトハウスは予算案を承認するよう上下両院に求めているが打開のめどは立っていない。ウクライナの最大の後ろ盾となっている米国の軍事・財政支援が途絶する可能性に加えて、欧州各国で「反移民」など自国第一を唱え、ウクライナ支援にも消極的な極右政党が躍進しており、米欧によるウクライナ支援の前途は危うい。

米「EV立国」推進政策、矛盾拡大
 バイデン米政権は1日、電気自動車(EV)を購入する際の新たな税優遇措置について、24年からバッテリーに含まれる中国産材料を制限する規則を発表した。米EV供給網の中国依存からの脱却が狙い。だが中国産EV材料の調達変更による鉱山開発などで生じる環境破壊に民主党内部から批判が上がり、また全米自動車労組のストライキなど「EVシフト」への労働者の反発も根強い。肝心のEV販売も鈍化し「EVが売れずに駐車場に山積みされている」と全米約3900のディーラーがEV推進策の修正を要求するなど、中国をにらんだバイデン政権の「EV立国」推進政策は随所でほころびがあらわになっている。

中国・EU首脳ほぼ5年ぶり対面会談
 中国の習近平国家主席は7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京で会談した。習氏は広域経済圏構想「一帯一路」をEUと協力して進める意向を示した。一帯一路にはEU加盟国のうちオーストリアやハンガリー、ポーランドなど17カ国が参加している。EU側は「中国とのデカップリング(切り離し)は望まない。中国との持続可能な関係発展を期待する」などと、気候変動対策や人工知能(AI)の分野で協力を探る意向を示した。中国は米国との関係をにらみながら対欧州外交を活発化させている。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中のCOP28の会場で3日、市民団体代表らが集会を開き、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃を非難した。参加者約200人は「今すぐ停戦して占領者は撤退しろ」とイスラエルに要求した。
 紙ワシントン・ポストで記者ら従業員約750人が7日、今後3年間で1年に4%の賃上げを要求、24時間のストライキに踏み切った。同社での大規模ストは48年ぶり。
 ニュージーランドで5日、10月の総選挙で誕生した新政権が打ち出した先住民マオリ支援縮小政策への抗議活動が行われ、議会前や各地の広場で行われたデモに数千人が参加した。


日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

政治資金問題、政府・党の中枢も
 岸田首相は12月7日、自民党派閥パーティーで政治資金のキックバックがあった疑惑をめぐり、自身が会長を務める岸田派を離脱すると表明した。「より中立的な立場で国民の信頼回復に努めたい」などと釈明したが、疑惑解明から逃げたとしか理解できない。また6日には各派閥に政治資金パーティーを当面自粛するよう指示したが、その場しのぎに終始する姿勢に与野党から批判が相次いだ。自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)の裏金問題では、松野官房長官や西村経済産業相、自民党の萩生田政調会長や高木国対委員長なども1000万円超の未記載キックバックを派閥から受けていた疑惑が浮上、政府と党の中枢がこぞって組織的裏金づくりに関与していた事実が明らかになれば、政権に残された道は総辞職では済まされない。

米軍「日本からの公式停止要請ない」
 米軍は6日、先月鹿児島県屋久島沖で発生した米空軍オスプレイの墜落事故を受け、米軍の全同機の運用停止を発表した。事故の初期的調査の結果、機体の欠陥が墜落原因になった可能性があり原因究明の調査を行うためとしている。この決定は日本政府の飛行停止要請を受けたものではなく、逆に米国防総省は「日本からの公式の停止要請はない」などと言い放つなど、米軍の横暴ぶりに加え、日本政府の弱腰ぶりが改めて露呈した。同機は事故多発で世界的な調達が伸びず2026年に製造ライン閉鎖が予定されている。欠陥機であることは明白で、運用停止にとどまらず全機撤去を求めることは国民の安全を守る上で必須だが、岸田政権は無策・無力だ。

COP28で日本またも「化石賞」
 アラブ首長国連邦で開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、環境NGOの国際ネットワーク・CANインターナショナルは5日、気候変動対策に後ろ向きな国に与える「化石賞」に日本を選出した。受賞は4回連続。岸田首相は1日の首脳級会合で日本の脱炭素対策として「排出削減対策の講じられていない新規石炭火力発電所の建設終了」を訴えたが、これが「全く的外れ」と評された。また日本のエネルギー基本計画において、30年度の電源構成比でも石炭火力を19%も使い続け、段階的廃止の期限も示されていないことなども指摘された。岸田政権の対策への無責任ぶりがまたも国際的に批判された。

核兵器禁止条約会議、日本再び不参加
 米ニューヨークの国連本部で開かれていた核兵器禁止条約第2回締約国会議は1日、「核リスクの増大と危険な核抑止の永続化を傍観しない」などの政治宣言を採択して閉会した。ドイツなどは米国の核の傘の下にあっても同会議にオブザーバー参加し活動を模索するが、日本政府は今回も関係者を派遣しなかった。岸田首相は自らが提唱した核軍縮「国際賢人会議」を8日から長崎市で開催することで「核兵器のない世界」実現に向けた意欲を演出したが、同会議は核軍縮への道筋を何ら示せず、血税の無駄遣いに終わった。

生活保護訴訟で国に初の賠償命令
 安倍政権時代の13〜15年に国が生活保護基準額を引き下げた決定の是非が争われた訴訟で、名古屋高裁は11月30日、原告13人全員に慰謝料を支払うことを国に命じた。同様の訴訟で、国家賠償を認めた判決は初めて。減額を行った厚労相に「重大な過失があり、違法性が大きい」と断じた。物価高騰などで生活困窮に追い込まれる人が増える中、国は判決を真摯(しんし)に受け止め、生活保護制度の改善・拡充を図らなければならない。

物価高の弊害、生活・経済の随所に
 厚労省は12月8日、10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)を発表した。1人当たりの賃金は実質で前年同月比2・3%減で、マイナスは19カ月連続に。また総務省が8日に発表した10月の家計調査では、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は物価変動の影響を除く実質で前年同月を2・5%下回り、8カ月連続減に。支出の3割を占める「食料」は4・4%減で、物価上昇で食料品の切り詰めが進んだ。さらに東京商工リサーチが8日発表した11月の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は前年同月から38・9%増の807件で、20カ月続けて前年水準を上回った。「物価高」が理由の倒産は54件(前年同月は39件)で大幅増加した。

PFASリスクに国は危機感希薄
 全国の米軍施設などで相次いで検出されている有機フッ素化合物(PFAS)の人体への危険性について、世界保健機関(WHO)の専門組織・国際がん研究機関(IARC)は1日、PFASの代表的な物質で有害とされるPFOAなどの発がん性に対する評価を引き上げた。PFOAは、喫煙やアスベストなどと同じ4段階中最も高い「発がん性がある」に分類された。国は汚染が疑われる地域での健康診断などを急ぐべきだが、IARCの引き上げについても「リスクの大きさを示すものではない」(伊藤環境相)などと危機感と国民を守る意識が希薄だ。


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