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労働新聞 2023年12月5日号 トピックス

世界のできごと

(11月20日〜11月29日)

イスラエル戦闘中断、世界の声が制止
 イスラエル軍とパレスチナ・ガザ地区を統治するハマスは11月22日、24日から4日間の戦闘中断で合意した。1カ月以上続いた戦闘のなか、中止で合意するのは初。4日の間にハマスが人質解放、その数に応じてイスラエルがパレスチナ人収容者を釈放することなどが決められた。カタールやエジプトなどの仲介もあり合意の大枠は守られ、その後の延長につながった。だがイスラエルのネタニヤフ首相は「われわれの目的は人質の解放とハマスの完全な排除」と強調、合意期間終了後にはガザ全域を攻撃すると語り、米国のバイデン大統領も恒久的停戦には反対の意を示して後押ししている。イスラエルによるパレスチナ攻撃やめよとの世界の声が一時的攻撃停止を勝ち取ったが、イスラエルやその後ろ盾である米国は残虐な本音を隠していない。

中国、アラブの「即時停戦」を支持
 中国の王毅外相は20日、訪中したアラブ・イスラム諸国の外相らによる合同代表団と北京で会談した。代表団にはパレスチナのマリキ外相をはじめサウジアラビア、ヨルダン、エジプト、インドネシアの外相とイスラム協力機構の事務局長も参加した。王氏はパレスチナ情勢を協議し、「われわれはパレスチナ人民が正当な民族的権益を回復する大義を断固として支持してきた」と述べ、即時停戦を要求するアラブ諸国を断固支持すると表明し、「今後もアラブ・イスラム諸国と共に努力したい」とも強調した。民間人の虐殺拡大などでイスラエルの後ろ盾となっている米国への批判が強まる中、中国はパレスチナやアラブ・イスラム諸国の側に立つ姿勢を鮮明にしている。

オランダ総選挙、極右が第1党に
 オランダの総選挙(下院、定数150)が22日投開票され、反移民や反欧州連合(EU)を掲げる極右の自由党が37議席を獲得し初めて第1党となった。中道左派の労働党などの左派連合が25議席で続き、自民党は10議席減の24議席にとどまった。欧州では今年、中東や北アフリカからの移民や難民が急増、100万人以上が流入した「2015年の再燃」との様相が強まっている。自由党が他党と連立政権を発足できるかは不明で今後の政権のありようは見通せないが、欧州に広がる右派ポピュリズム(大衆迎合主義)政党の台頭の動きは、来年、欧州議会選挙を控えるEUの結束にも影響を与える。

スペイン新政権、4カ月の空白後発足
 スペインで21日、再任されたサンチェス首相率いる中道左派の社会労働党と左派連合スマールの連立内閣が発足、7月の総選挙後4カ月に及んだ政治空白は幕を閉じた。下院で16日に行われた信任投票でサンチェス氏はカタルーニャ自治州の独立派政党から支持を得て僅差で続投を決め、17日首相に就任していた。首相は優先課題として雇用の確保や福祉強化など挙げるが、上院では最大野党の中道右派・民衆党が過半数を握るねじれ状態で、政権の前途は多難。さらにウクライナ「支援疲れ」に物価高騰も加わり、欧州各国の政権は揺さぶられ続けている。

独が財政支出「凍結」、欧経済に打撃
 ドイツ政府は21日、予算のうち未執行の大半の財政支出を凍結した。新型コロナウイルス対策で使わなかった600億ユーロの予算の気候変動対策への「転用」を「違憲」とした15日の憲法裁判所による判決がきっかけ。ドイツは基本法で財政赤字を国内総生産(GDP)の0・35%までとする「債務ブレーキ」を定めるが、コロナ禍の緊急措置として債務ブレーキを3年間棚上げしていた。既存の債務支払いは継続される見込みだが、一般歳出で不足する予算の代替財源を早期に埋めるために債務ブレーキ停止を延長できるかは不透明。この混乱により不況のドイツ経済がさらに減速すれば、欧州経済全体に大きな影響を及ぼし得る。

人民のたたかい

(11月20日〜11月29日)

 米アマゾンの出荷拠点がある英独伊などでブラックフライデーの24日、労働者が賃上げを求めてストを行った。英コベントリーにあるアマゾンの倉庫では200人を超える労働者がストで時給を15ポンド(2808円)へ引き上げるように要求した。
 国連(UN)が定めた女性に対する暴力撤廃の国際デーの25日、世界各地でデモが行われ、女性への暴力根絶を求めた。南米チリの首都サンティアゴでは、パレスチナのガザ地区への空爆で多くの女性が犠牲となっていることから、「チリはイスラエルと断交を」などのプラカードも目立った。


日本のできごと

(11月20日〜11月29日)

米オスプレイ墜落、国内初の死亡事故
 米軍横田基地所属のCV22オスプレイが11月29日、鹿児島県の屋久島沖で墜落した。搭乗員は8人で、少なくとも1人が死亡した。オスプレイによる国内の死亡事故は初めて。米軍オスプレイの墜落では、今年8月にオーストラリアで3人が死亡したほか、昨年3月にノルウェーで4人が、6月に米カリフォルニア州で5人が亡くなった。今回の事故を日本政府は「不時着水」と表現するなど、国民の安全より米国の顔色うかがいを重視する奴隷根性をあらわにした。米軍は事故後も日本政府の一時的停止要請さえ無視しオスプレイを飛行させるなど言語道断で、自衛隊機も含めたオスプレイの国内全面撤去が求められている。

補正予算成立、国民直接支援はわずか
 2023年度の補正予算案が29日、参院本会議で自公与党や日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決・成立した。新たな経済対策の裏付けとなる総合経済対策経費は一般会計で13兆1992億円で、その7割に当たる8兆8750億円を新規国債の増発で賄う。経済安全保障の名目で半導体産業に1兆5445億円を、また防衛関連にも8130億円を計上、米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)移転に向けた馬毛島(鹿児島県西之表市)での施設整備費に2684億円を充てる。一方、物価高騰に困窮する国民への直接支援は住民税非課税世帯への7万円給付に1兆592億円を充てるのみで、政権の無策が続いている。

対面での日中韓外相会談も成果小
 日中韓3カ国の外相会談が26日、韓国・釜山で開かれた。対面では約4年ぶり。人的交流や科学技術、経済・貿易や平和・安全保障など6つの分野で協力を進めることなどを確認したが、同じく4年間開かれていない日中韓首脳会談については「なるべく早期で適切な時期」の開催に向けて準備を加速することで一致したものの、具体的な時期は提示されなかった。共同声明の発表はなく、予定されていた共同会見や夕食会は中国側の都合で中止となった。米国が主導する対中包囲網形成に前のめりな日韓の現政権に対する中国側の不信感がにじみ出た形だ。

「貯蓄から投資へ」誘導する法成立
 金融商品取引法(金商法)改定案が20日、衆院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。家計の貯蓄を投資に誘導するための「金融経済教育」を進める方針を国が策定し、その実施機関として金融庁が所管する「金融経済教育推進機構」を創設する内容を含む。公教育の場を企業の投資勧誘に利用させることにつながり、身の丈に合わない投資や投資詐欺による被害が増大する状況も危惧される。岸田政権が掲げる「資産運用立国」は、庶民のなけなしの貯金を金融資本の手中に誘導させることが狙いで、国民大多数には物価高騰や格差拡大を招くだけの悪政に終わりかねない。

技能実習代替の政府案、転職制限緩和
 外国人労働者受け入れを議論する政府の有識者会議は24日、最終報告書をまとめた。現行の「技能実習」を新制度「育成就労(仮称)」に改め、原則禁止だった転職を、技能検定合格や一定の日本語能力を条件に、就労から1年を超えれば同一業種内で可能とする、などの内容。だが表現にあいまいさを残し、「看板の掛け替え。議論が後退しており、実習生の人権を守ろうとしていない」(指宿昭一弁護士)との評価も。転職の自由は労働者の権利で、外国人にも日本国籍を保有する労働者と同じ権利が認められるべきだ。

物価26カ月連続で食料や必需品ほど増
 総務省は24日、10月の全国消費者物価指数(20年=100)を発表した。価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106・4と、前年同月比2・9%上昇、伸び率は2・8%から拡大した。上昇は26カ月連続、拡大は4カ月ぶり。生鮮食品を除く食料は7・6%上昇と食料が高止まりし、家計調査で「年15回以上購入」とされた44品目では、トマトが41・3%、鶏卵が28・3%など、8・3%上昇した。また携帯電話の通信料は、7、10月に一部事業者で料金プラン変更があり、10・9%伸びた。生活に身近な品を中心に高い値上がりが続くが、国民の苦境を岸田政権は放置し続けている。

富裕層の申告漏れ、2年連続最高更新
 国税庁が6月までの1年間に実施した所得税の税務調査で「富裕層」の申告漏れ所得が前年比16・8%増の980億円に上ったことが22日までに分かった。同庁は有価証券や不動産の大口所有者、所得が継続的に高額な個人などを富裕層と定義し調査、申告漏れ総額は調査を始めた09年度以降で最も高く、2年連続で最高を更新した。うち514億円(52・4%)が海外投資などを行っている富裕層のもので、各国税務当局との金融口座に関する情報交換の連携強化により海外投資に絡む申告漏れが多く発覚した形。インフルエンサーによる広告収入などネット関連取引に対する追徴課税も目立った。発覚した税逃れは氷山の一角で、国はさらに調査を強化するべきだ。


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