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労働新聞 2023年11月25日号 トピックス

世界のできごと

(11月10日〜11月19日)

米中首脳会談、協調見いだせず
 米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は11月15日、米サンフランシスコ近郊で1年ぶりの首脳会談を行った。米国の中国への抑止と挑発が強まる中、中断していた国防トップや軍高官の対話再開や偶発的な軍事衝突回避で合意した。だが習氏が台湾統一をめぐる中国の立場を強調し米国の台湾への軍事支援停止を求めた一方、米国は先端半導体などの対中輸出・投資規制を続ける姿勢を崩さないなどすれ違いも多く、米側にとって会談の成果は最小限にとどまった。バイデン氏は大統領選挙を来年に控えて国内の対中強硬論にも配慮せざるを得ず、米国の中国敵視政策が緩和することはない。

イスラエル、ガザ南部へ侵攻拡大表明
 イスラエルはパレスチナ・ガザ地区での侵攻を拡大、15日には多数の住民も避難するシファ総合病院へ軍を突入させた。ガザでは食料・飲料・燃料・医薬品などすべてが欠乏、地獄の様相を呈している。国連安保理は同日、緊急会合を開き、人道支援を目的とした戦闘の「休止」を求める決議を採択したが、イスラエルはこれを拒否、ガラント国防相は「ガザ市でわれわれが行ったことがガザ全域で起きる」などと侵攻拡大を表明した。米国は安保理の停戦決議に賛成せず棄権、また「ハマスは病院の下に本部などを隠している」などと病院での作戦を擁護、イスラエルによる虐殺に加担している。

ガザ侵攻めぐり米欧への反発広がる
 アラブ連盟(22カ国・機構)とイスラム協力機構(57カ国・地域)は11日、サウジアラビアの首都リヤドで異例の合同首脳会議を開き、イスラエルのガザ侵攻を非難し即時停戦を求める決議を採択した。決議は「イスラエルの占領をやめさせなければ永続的で包括的な平和は達成できない」と強調した。また17日にはインドが1月に続いて「グローバルサウスサミット」をオンライン開催し、モディ印首相は「民間人の死を強く非難する」として「対話と外交」を求める方針を表明、結束して発言力を強化することも訴えた。イスラエルを支持する米欧へのグローバルサウスの反発が広がっている。

APEC会合、米の議長声明に反発も
 米サンフランシスコで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が17日に閉幕した。米国が議長を務めた今年のAPECでは米国が首脳宣言を出すことを優先、ウクライナや中東情勢に言及しない宣言を採択して辛うじて体面を保った。バイデン大統領は議長の締めくくり演説で「アジア太平洋の包括的で持続可能な経済を構築するため協力した」と成果を強調したが、ガザを巡って議長声明とは異なる声明がインドネシアなど3カ国から出されるなど、APEC内で米国の姿勢への反発も公然化した。

IPEF閣僚会合、米とアジアに溝
 APEC首脳会議に先立って開かれていたインド太平洋経済枠組み(IPEF)参加14カ国による閣僚会合が14日に閉幕した。今年5月に実質合意した「供給網」を除く3分野のうち「脱炭素」と「公正な経済」の2つの柱で合意のメドがついたものの、貿易・投資を拡大するための貿易分野では米国とアジア諸国との溝は埋まらなかった。米国内には新興国製品の流入が国内製造業の衰退を招いたとの世論があり、12日には会場周辺でIPEF反対の大規模デモが行われた。来年の大統領選で共和党政権が誕生すれば米国の離脱の可能性もあり、そうなればIPEFというバイデン氏による中国対抗策の一角は瓦解することになる。

人民のたたかい

(11月10日〜11月19日)

 英国で10日、8つの労働組合がイスラエルへの武器供給の中止を求め、イスラエル軍のF35戦闘機の部品を製造しているケント州にある英航空軍事企業の工場出入り口を一斉封鎖した。400人以上が「この工場がジェノサイドの武器を製造している」と訴えた。
 英国の首都ロンドンで11日、ガザ侵攻の即時停戦を求めるデモが行われ、最大規模の30万人が参加した。
 衣料産業の最低賃金引き上げを求める労働者のデモが続くバングラデシュで13日、首都ダッカ近郊の約250の縫製工場がデモの影響で一時閉鎖に追い込まれた。同工業団地は欧米のファッションブランドに製品を供給しており、労働者は月当たりの最低賃金を3000タカ(38ドル)から8000タカ(103ドル)に引き上げるよう要求している。


日本のできごと

(11月10日〜11月19日)

日中首脳会談、「融和」演出も成果小
 岸田首相は11月16日、米サンフランシスコ近郊で中国の習近平国家主席と会談した。両首脳の会談は2022年11月以来1年ぶり。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」の推進を再確認したほか、経済分野での問題解決や協力促進に向けて閣僚間で協議する「ハイレベル経済対話」の開催や、半導体の素材や重要鉱物などの輸出管理を巡る対話枠組みの新設でも一致した。経済面の一致で「融和」を演出した首相だが、福島原発の汚染水放出に端を発した中国による日本産水産物の輸入規制では「専門家レベルでの議論」で一致したにとどまり、拘束邦人解放などの課題でも譲歩を引き出せなかった。「得意」の外交で成果を上げ支持率アップを狙ったが不発に終わり、米国追随外交の限界を改めて示した形となった。

補正予算案、困窮国民への支援わずか
 岸田政権は10日、23年度補正予算案を決定した。「物価高から国民生活を守る」との総合経済対策経費は一般会計で13兆1272億円で、7割に当たる8兆8750億円を新規国債の増発で賄う。だが経済安全保障の名目で半導体産業に1兆5445億円を充てるほか、防衛関連にも8130億円を計上、米空母艦載機の着陸訓練(FCLP)移転などのための馬毛島(鹿児島県西之表市)での施設整備費に2684億円を、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設費に326億円を充てる。一方、物価高騰に困窮する国民への直接支援は住民税非課税世帯への7万円給付に1兆592億円を計上するのみで、実質賃金が1年半も減らされ続ける労働者は置き去りにされたままだ。

政権支持率が自民政権復帰後最低に
 岸田首相は13日、神田憲次財務副大臣を事実上更迭した。過去4回にわたる税金滞納が問題視され、与党内からも辞任を求める声が出ていた。臨時国会の開会から1カ月足らずで3人の政務三役が職を辞し、22年に閣僚4人が相次ぎ辞めた「辞任ドミノ」に再突入した様相。だが加えて柿沢未途前法務副大臣の公選法違反(買収)疑惑もくすぶるほか、自民党5派閥の政治団体による政治資金収支報告書への収入未記載問題で東京地検特捜部が任意の事情聴取を進めるなど、疑惑は底なし状態に。こうした中、時事通信が10日から実施した世論調査で岸田政権の支持率が21・3%と12年12月の自民党政権復帰以降で最低となり、解散戦略どころか与党内からも「岸田降ろし」の声が聞こえ始める事態となっている。

自衛隊が最大規模演習、実戦想定拡大
 陸空海3自衛隊は10日から自衛隊最大規模の実動演習を実施した。自衛隊約3万人に加えて米軍1万人が参加した。九州・中国地方の4つの民間空港では戦闘機の離着陸訓練が行われたが、自衛隊の戦闘機が民間空港で離着陸訓練をするのは軍民共用空港を除き初。演習は「台湾有事」に軍事介入した米軍を支援するため自衛隊が武力行使する事態を想定したもので、東アジアの軍事的緊張をあおる危険な蛮行だ。また17日には米政府が日本に対する米国製長距離巡航ミサイル「トマホーク」の売却を承認し議会への通知を発表するなど、主として中国を念頭に置いた敵基地攻撃能力(反撃能力)整備も急ピッチで進んでいる。戦争準備を加速させる岸田政権を打倒しなければ国の進路を誤る。

GDP3期ぶり減、消費など内需不振
 内閣府は15日、23年7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値を発表した。物価変動の影響を除いた実質で前期比0・5%減、年率換算で2・1%減となった。マイナス成長は3四半期ぶり。GDPの5割強を占める個人消費が0・04%減と、設備投資とともに2期連続で減少した。円安の影響で、輸出は0・5%増加したが、輸入が輸出を上回ったためGDPの伸びの足を引っ張る形となっている。雇用者報酬は2%の減少で、前年同期を下回るのは8期連続。物価高の影響で消費の低迷が続くなど内需の不振が主因で、消費税廃止などで国民生活を抜本的に底上げしない限り、労働者の実質賃金も上がらず、国民経済も停滞から抜け出せない。

政労使会議、連合取り込み策動さらに
 岸田首相は15日、首相官邸で経済界や労働団体の代表者と意見交換する政労使会議を開いた。首相や武見厚労相、経団連の十倉会長、連合の芳野会長らが参加した。連合から要請して8年ぶりに実現した3月の会議とは異なり、今回は首相側が開催を働きかけた。会議で首相は24春闘で前年を上回る水準の賃上げを実現するよう要請、また公取委の古谷委員長は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の骨子を示した。首相は10月の連合定期大会に自民党政権下の首相として16年ぶりに出席、また9月の内閣改造では連合傘下の民間労組出身で国民民主党前参議院議員の矢田稚子氏を首相補佐官に起用するなど、解散総選挙をにらみ連合取り込み策動を強めているが、一部大企業はともかく、首相頼みで労働者階級全体の底上げを達成できるわけもない。芳野会長は労働者に政権への幻想を植え付けることをやめ、闘いを呼びかけるべきだ。


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