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労働新聞 2023年11月15日号 トピックス

世界のできごと

(10月30日〜11月9日)

ガザ侵攻1カ月、イスラエルと米孤立
 イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃が始まってから11月7日で1カ月となった。空爆と地上攻撃は日ごとに激化、死者は1万1000人を超え、うち4500人以上が子どもだ。この虐殺の後ろ盾だとして内外からの厳しい批判にさらされている米国のバイデン大統領は、停戦ではなく3日間の戦闘休止とのアリバイ的な要求を行ったが、これさえイスラエルのネタニヤフ首相は拒否した。南米のボリビアがイスラエルと断交、トルコなど大使を召還する国も増えるなど、イスラエルやそれを支持する米欧の国際的孤立が深まっている。

FRBが連続金利据え置き、リスクも
 米連邦準備理事会(FRB)は1日、2会合連続で利上げを見送った。昨年3月に始まった利上げによって住宅ローン金利などが上昇、倒産が増えるなど、長期金利の上昇が家計や企業にとって負担となっていることが理由で、基調的な物価上昇率が低下傾向であることも受けた決定。一方、中東情勢悪化による原油価格上昇や予算を巡る米議会混乱と政府機関閉鎖などのリスク要因も多く、FRBのパウエル議長は「次回12月の利上げもあり得る」と示唆した。米国内だけでなく、米国の利上げによる物価高騰や債務増大などに苦しんできた途上国なども「米国のリスク」に戦々恐々としている。

UAWなど米で労組のスト勝利続く
 全米自動車労組(UAW)は10月30日、米国のゼネラル・モーターズ(GM)など「ビッグ3」に待遇改善を求めたストライキを終えた。UAWは9月に史上初の3社同時ストを開始、段階的に規模を広げ、スト参加者は3社の組合員約15万人のうち4・5万人以上に拡大、各社から4年半で25%の大幅賃上げ回答を引き出し勝利を宣言した。一方、人工知能(AI)の活用によって失職の恐れがあるハリウッドの全米映画俳優組合も7月からストで闘ってきたが、8日に交渉相手の全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)から最賃増額やAIの脅威から組合員を守る確約を勝ち取りストを終了した。米国でスト勝利が広がっている。

トルコ、中央アジアでの影響力拡大
 トルコが主導する地域協力機構「チュルク諸国機構(OTS)」の第10回首脳会議が3日、カザフスタンの首都アスタナで開かれた。会議はスローガン「チュルクの時代」を掲げ、経済、政治、安全保障、文化など幅広い分野での協力拡大をうたった首脳宣言や の合意文書を採択した。ウクライナ戦争の長期化でロシアの影響力が低下するなか、米欧もユーラシアの要衝である中央アジア諸国への影響力拡大に乗り出しているが、地域大国トルコが先んじて影響力を拡大させ、世界の「多極化」を印象付けている。

米の中南米政策、協調難しく
 米国は3日、昨年12カ国で発足させた中南米諸国との経済協力構想「経済繁栄のための米州パートナーシップ(APEP)」の初の首脳会合を開催した。会合にはチリ、コロンビア、カナダなど11カ国の首脳らが出席した。APEPは「不法」移民が米国を目指さないように本国での生活水準向上を目指すのが主眼。主宰したバイデン大統領は急増する移民の抑制への協調を求めたが、中南米諸国には移民が安価な労働力として米国経済に貢献しているという意識もあり、抑制措置強化に強く反発した。また、チリやコロンビアの大統領はパレスチナ問題への米国の対応を非難した。パレスチナ問題は米国の中南米政策にも波及、米国の影響力はいっそう低下している。

人民のたたかい

(10月30日〜11月9日)

 ベルギーの運輸労働者が加盟するベルギー運輸労組(BTB)など4つの労働組合は10月31日、イスラエルへの武器輸送を拒否すると表明した。「パレスチナでジェノサイド(集団虐殺)が進行しているなか、武器の積み降ろしをすれば、罪のない人びとを殺傷する能力の提供を助けることになる」として、加盟労組や組合員に対し武器輸送を取り扱わないように求めた。
 米国オレゴン州・ポートランドで11月1日、約4000人の教職員が初のストライキに立ち上がった。最初の1年での8・5%の賃上げや1学級の生徒数の上限設定などを要求した。
 世界各地で4〜5日、イスラエルによるパレスチナ人虐殺に抗議し、即時停戦を求めるデモが行われた。ナチス時代のユダヤ人虐殺への反省からイスラエル寄りの外交が目立つドイツでも首都ベルリンなどで大規模なパレスチナ連帯デモが行われた。


日本のできごと

(10月30日〜11月9日)

経済対策決定も支持率は低下の一途
 岸田政権は11月2日、総合経済対策を閣議決定した。物価高対策として所得税3万円、住民税1万円の定額減税や住民税非課税世帯への7万円の給付、ガソリンなど燃料油価格や電気・ガス料金の抑制策の2024年4月末までの延長などが柱。合わせた規模は17兆円台前半、財源の裏付けとなる23年度補正予算案の一般会計追加額は13兆円台前半。実質賃金が1年半も減少する中、1回だけの減税や給付は焼け石に水で、与党内からも批判の声が続出している。首相は年内の衆院解散断念を表明し「経済対策に専念」を演出するが、支持率下落で解散戦略を描けない苦境の自己暴露でしかない。

日銀が政策修正、長期金利1%超容認  日銀は10月30日、金融政策決定会合で大規模金融緩和策の一部修正を決めた。7月会合に続く修正で、長短金利操作の運用を柔軟化し、長期金利の事実上の上限としてきた1%の水準を一定程度超えることを容認、これまで実施してきた1・0%の利回りで10年物国債を無制限に原則毎日買い入れる指し値オペをやめる。これまで日銀は物価上昇を一時的と見て大規模緩和を継続してきたが、「見通しの誤り」(植田日銀総裁)を認めたがゆえの修正だが、物価上昇による生活や経営の悪化を招いた日銀の責任は大きく、異次元緩和 年の総括も求められる。

岸田訪比、中国にらみOSA初適用も
 岸田首相は11月3〜5日、フィリピンとマレーシアを訪問した。フィリピンのマルコス大統領との会談では、価値観を共有する国の軍に防衛装備品の無償供与などを行う「政府安全保障能力強化支援」(OSA)を適用、フィリピンに6億円相当の沿岸監視レーダーを供与することで合意した。これは日本政府がOSAを適用する初の事例に。マレーシアのアンワル首相との会談でもOSA活用に向けた調整加速を確認した。いずれも中国をにらんだ軍事的な関係強化だが、福島原発の汚染水放出などで中国との関係が悪化する中、また中東情勢の悪化などで中国の国際的な影響力が増す中、中国挑発外交は日本の国益とはならない。

G7外相会合と日英2+2、中国対抗
 主要7カ国(G7)は7〜8日、東京で外相会合を行った。共同声明は、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃の人道的休止を支持したものの、イスラエル非難はなく、パレスチナのハマスだけを非難する一方的な内容。また会合には中央アジア5カ国をオンライン招待し、中国やロシア、イランなどに囲まれた地域への関与強化をもくろんだ。7日には対面では6年ぶりとなる日英外務・防衛閣僚会合(2+2)を開催、10月に日英円滑化協定が発効し自衛隊と英軍の往来手続きが緩和されたことを踏まえて共同訓練の拡充を申し合わせた。岸田外交の米国追随・中国敵視ぶりは目に余る。

実質賃金18カ月連続減、消費も連続減
 厚生労働省は7日、9月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金は前年同月比2・4%減と18カ月連続で減少した。基本給と残業代などを合わせた9月の名目賃金は労働者1人当たり平均で1・2%増だったが、9月の消費者物価指数は3・6%上昇した。また総務省が同日発表した9月の家計調査では、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2・8%減少、7カ月連続で減少した。食料支出は購入量(実質値)が3・7%減少する一方、支払った金額(名目値)は5%も増えた。賃金が目減りする中、消費の切り詰めも限界に達しつつある。

辺野古の軟弱地盤、国は申請前に把握
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設のために日本政府が県に埋め立てを申請する6年前には建設予定地である辺野古・大浦湾の海域に軟弱地盤が存在することを認識していたことを示す報告書が9日に国会で示された。沖縄防衛局が07年にまとめた調査報告書には「軟弱な沖積層が広く、厚く分布している」と明記され、今後追加してボーリング調査を実施すべきだと提案されていた。だが同局が13年に県に提出した埋め立て申請書には「長期間に渡って圧密沈下する軟弱な粘性土層は確認されてない」と記載していた。軟弱地盤は確認されていないと偽って沖縄県の仲井真知事(当時)から承認を得ていたことになる。虚偽申請で承認された建設計画の白紙撤回は当然だ。

国立大学法改悪案、国の介入拡大も
 岸田政権は10月31 日、国立大学法人法「改正」案を閣議決定した。事業規模の大きい国立大学法人を指定し、学長と3人以上の委員でつくる運営方針会議の設置を義務づけて中期計画や予算・決算を決定する権限を与える。だが委員は学長が任命する前に文科相の承認が必要で、政権の意に沿った少数者による大学支配が可能に。軍事研究が強要される危険性もある上、学術研究の自主性制限で国際的に落ち目となっている日本の研究力がいっそう低下することにもつながる改悪だ。


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