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労働新聞 2023年11月5日号 トピックス

世界のできごと

(10月20日〜10月29日)

イスラエルがガザ地上侵攻の蛮行
 イスラエルのガラント国防相は10月28日、「戦争の新たな段階に進んだ」と述べ、パレスチナ・ガザ地区への地上侵攻を開始したことを事実上認めた。同時に空爆も強め、ガザの保健当局は29日に死者数は8000人を超えたと発表した。膨大な数の犠牲者が出続ける中、イスラエルとその蛮行を支える米バイデン政権への非難・抗議が世界中に広がっている。

ウクライナ協議不調、中東情勢飛び火
 ウクライナが提唱するロシアとの和平案「平和の公式」について話し合う協議が28日、66の国や国際機関の代表らが参加して地中海の島国マルタで開かれた。参加国は原子力や食料安全保障などの分野での連携強化を確認したが、ウクライナが目指した共同声明の発表は見送られた。前回参加した中国やエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)などは欠席、インドやトルコの代表は「ガザ地区でも国際法を順守すべき」「ウクライナ侵攻を続けるロシアを非難する一方、イスラエルの立場を擁護するのは欧米側の二重基準」などと米欧を批判した。イスラエル・パレスチナ情勢は米欧が肩入れするウクライナ支援にも飛び火している。

スロバキア新政権、武器供与停止へ
 9月に行われたスロバキア総選挙で第1党となった左派「スメル(道標・社会民主主義)」と中道左派「声・社会民主主義」、親ロシアの民族主義党「スロバキア国民党」との3党連立政権が発足し、新政権のフィツォ首相は26日、ウクライナへの武器供与停止を正式に表明した。人道支援は継続するとしたものの、「戦闘の即時停止がウクライナにとっての最善策」と強調、対ロ経済制裁への反対も訴えた。またフィツォ氏は同日出席した欧州連合(EU)首脳会議でも軍事支援の継続や対ロ制裁は支持しないと発言、ハンガリーとともにウクライナの汚職を問題にし金融支援にも難色を示した。これまでもロシア寄りの姿勢を示してきたハンガリーに加えて、スロバキアが新たに軍事支援停止を打ち出すなど、EUのウクライナ支援は「支援疲れ」でいっそう足並みが乱れている。

ECB、11会合ぶりに利上げ見送り
 欧州中央銀行(ECB)は26日の理事会で、利上げの見送りを決めた。政策金利を据え置くのは2022年7月の利上げ開始から初めてで11会合ぶり。物価上昇率が鈍化基調に転じ、また欧州経済が過度に冷え込む懸念も強く、見送りを判断した。今回の理事会はイスラエルとハマスの軍事衝突が始まってから主要中銀による初の政策決定で、ラガルド総裁は「将来の不確実性が成長を一段と鈍化させる恐れがある」と指摘、地政学的リスクの高まりが「短期的にエネルギー価格を押し上げる可能性がある」との認識も示した。中東情勢の緊迫化はECBのかじ取りをいっそう難しくしている。

中南米首脳、米に移民政策撤廃求める
 中南米の十数カ国の首脳らは22日、メキシコ・チアバス州で移民問題に関する国際会議を開き、移民が目指す国(米国)に対して「一方的で一貫性のない政策をやめるよう求める」共同宣言を発表した。11月3日に米国で予定されている米州首脳会議を前に、トランプ前大統領が始めたメキシコ国境の壁建設再開を発表したバイデン政権の移民制限政策に反発の声を上げたかたち。米国を目指す移民は23年会計年度も247万人を上回り3年連続で過去最多となっているが、背景には米国のベネズエラへの経済制裁による経済の悪化などもある。米外交に振り回される中南米各国の不満が高まっている。

人民のたたかい

(10月20日〜10月29日)

 イスラエルによるパレスチナ攻撃への抗議行動が世界中で行われている。英国ロンドンでは28日、集会とデモが行われ数万人が参加、バーミンガムやグラスゴー、ベルファストなどでも同様のデモが取り組まれた。
 ブラジルのサンパウロ州にある米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の3工場で、1200人もの大量解雇に反発した1万2000人の労働者が、23日から無期限ストに入った。
 アイスランドで24日、男女の賃金平等を訴えるストライキが行われ、首都レイキャビクに10万人が結集した。同国は「男女平等ランキング」で14年連続1位だが、スト主催者は「いまだに女性には賃金差別の影響がある」として完全な男女平等の実現を訴えた。


日本のできごと

(10月20日〜10月29日)

臨時国会召集、政権は立ち往生
 第212臨時国会が10月20日に召集され、第2次岸田再改造政権は発足後初の本格的論戦の舞台を迎えた。岸田首相は23日に所信表明演説を行い、「経済、経済、経済」と連呼し経済重視の姿勢を演出したが、経済対策として掲げた「供給力の強化」は内容に乏しく、「国民への還元」としてぶち上げた所得税減税については与野党から異議や批判が噴出した。これまで掲げてきた「新しい資本主義」にも言及せず迷走を印象付けた。「新たな経済ステージ」「消費と投資の力強い循環」などと力説したものの、国民が苦しむ物価高騰を打開する内容もなく、政権運営の行き詰まりは隠せなかった。

衆参2補選で与党後退、低支持率反映
 衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の補欠選挙が22日に投開票された。いずれも与野党一騎打ちの構図となり、2016年の参院選から合区となった徳島・高知選挙区ではこれまで3回連続で自民が勝利、強固な保守地盤を誇っていたが、今回は野党候補に惨敗した。長崎4区では自民候補が世襲ながら薄氷を踏む勝利となった。投票率はいずれも過去最低を更新し、有権者の政治不信があらわになった。岸田政権の支持率低迷が大いに影響した結果で、これを受けて政権の求心力がさらに低下することは避けられない。

G7貿易相会合、中国対抗むき出し
 大阪市と堺市で開かれていた主要7カ国(G7)貿易相会合は29日、共同声明を採択して閉幕した。声明内容は中国への対抗意識で貫かれ、重要鉱物などで強固な供給網構築に向けてG7だけでなく資源の豊富なグローバルサウスとの連携強化を掲げる一方、中国を念頭に「経済的依存関係の武器化」「経済的威圧」「不透明な補助金や強制的な技術移転」に懸念を示し、名指しは避けたものの中国による日本産水産物の禁輸措置の撤廃を求めた。中国に理不尽な経済戦争を仕掛ける米国を中心としたG7による盗人猛々しい声明だ。日中両国は23日に日中平和友好条約発効45周年を迎えたものの祝賀ムードとはほど遠いが、その責任は日本政府が問われるべきだ。

国連総会の人道休戦決議、日本は棄権
 国連総会の緊急特別会合は27日、イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への攻撃をめぐり、「即時、永続可能、持続的な人道的休戦」を求める決議を採択したが、日本は棄権した。アラブ諸国が主導した同決議で、投票総数の3分の2以上の121カ国が賛成したが、日本は「決議にはハマスによるテロ攻撃への強い非難がなくバランスを欠いている」(岸田首相)と賛成しなかった。日本は18日に国連安保理でブラジルが提出した戦闘一時停止を求める決議案には賛成したが、姿勢が後退した。米国の顔色をうかがいパレスチナ人民の生命を軽んじる岸田政権の外交は激しく批判されるべきだ。

日本のGDP、独に抜かれ4位転落
 日本のドル換算での名目国内総生産(GDP)が23年にドイツを下回って4位に転落する見通しであることが、23日までに国際通貨基金(IMF)が公表した経済見通しで示された。23年の日本の名目GDPはドルベースで前年比0・2%減の4兆2308億ドル(約633兆円)となり、人口が約3分の2のドイツ(8・4%増の4兆4298億ドル)に55年ぶり抜かれる。円安によるドル換算での目減りやドイツの高インフレの影響も大きいが、長期的な日本経済の低迷の反映であることは間違いない。米国や多国籍大企業の利益のために国民経済の発展を犠牲にしてきた歴代与党の悪政の結果だ。

消費者物価25カ月連続増、食品で特に
 総務省は20日、9月の全国消費者物価指数(20年=100)を発表した。価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105・7と前年同月比で2・8%上昇した。上昇は25カ月連続。政府の負担軽減策などで電気・ガス代が下落したものの、食料は高い伸びが続き、生鮮食品を除く食料は8・8%上昇、原材料価格や飼料価格の上昇などで菓子類が11・6%、乳卵類が20・6%上昇するなど、幅広い品目で高い伸びとなった。食料を中心に生活に身近な品目の値上げが続き庶民生活は限界だが、岸田政権の対策は補助金などを企業へ交付するばかりで、苦しい家計を直接温める対策はほとんどない。

性別変更要件、最高裁大法廷が「違憲」
 最高裁大法廷は25日、自認する性に合わせて戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を要件とする性同一性障害特例法(特例法)の規定について、19年の「現時点では合憲」との最高裁判断を変え、「違憲で無効」と判断した。特例法が制定された03年当時は「性同一性障害」は医学的疾患とされていたが、以降医学的知見が進み、19年には国際疾病分類において性同一性障害は病気や障害ではないとされ、名称も「性別不合」に変更された。今回の判断変更はそうした知見に沿ったもの。特例法が違憲との決定を受け入れ、法改正と国民への正しい理解促進、適切な社会のルールづくりを行うことは政治の役割と責任だ。


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