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労働新聞 2023年10月15日号 トピックス

世界のできごと

(9月30日〜10月9日)

政府機関閉鎖回避も混迷続く米政界
 米連邦政府の2023会計年度末を迎えた9月30日、議会上下両院は11月半ばまでのつなぎ予算案を可決、政府機関の閉鎖は土壇場で回避された。だが下院本会議は10月3日、共和党のマッカーシー議長解任動議を可決した。共和党保守強硬派が解任支持に回った。史上初の下院議長解任は米国内の分断と対立の深刻さの反映で、議会混迷は政権運営に影を落としている。共和党の反対でつなぎ予算からウクライナへの追加支援が除外され、政策継続にも暗雲が漂うなど、米国とバイデン政権の前途は内外政治ともに難問山積の様相を深めている。

ハマスとイスラエルが衝突、ガザ深刻
 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスは7日、イスラエルに対し大規模ミサイル攻撃などを開始した。イスラエルも大規模に報復攻撃し、ガザ住民はきわめて危険な状況に置かれている。衝突の根本原因はイスラエルのパレスチナ占領政策にあり、日本のマスコミが使用する「暴力の応酬・悪循環」などの表現は問題の本質を見誤らせるものだ。

公約撤回し「国境の壁」建設再開
 バイデン米政権は5日、メキシコとの国境に壁を建てるトランプ前政権の看板政策を引き継ぎ一部の壁の建設再開を決めた。バイデン氏は20年の大統領選で「もう1フィートの壁も造らせない」と明言、壁建設中止を打ち出していたが、公約を事実上撤回した。テキサス州のアボット知事(共和党)らが移民希望者をバスで民主党支持者の多いニューヨークやシカゴなどに送り続け、同地で移民受け入れ態勢がパンク、民主党関係者からも批判が出ていた。しかし政策転換によって民主党内のみならずトランプ前大統領からも批判され、新たな墓穴を掘った形に。

スロバキア政変など欧州政治流動化
 9月30日投開票された中欧スロバキアの総選挙で、ウクライナへの軍事支援停止を掲げた左派政党「スメル」(道標・社会民主主義)が第1党となった。また10月8日投開票されたドイツのバイエルン州とヘッセン州の州議会選挙で、ショルツ首相の社会民主党(SPD)など連立3党は両州で惨敗した。移民受け入れ反対の極右「ドイツのための選択肢」(AfD)が最大野党に躍進した。AfDはウクライナ支援に批判的。物価高で生活苦にあえぐ国民の批判の矛先が移民問題や長期化するウクライナ支援に向けられ、欧州各国で政治を流動化させている。

英が主要政策を転換、成長戦略足踏み
 スナク英首相は4日の保守党大会で同党政権が進めてきた主要政策の転換を表明した。イングランドの主要都市を南北に結ぶ高速鉄道「HS2」計画では、建設コスト倍増のため建設が始まっていない北部区間の中止を表明した。また30年までとしていたガソリン車とディーゼル車の新車販売の禁止目標を35年に先送りした。世界に先んじて脱炭素の旗を振ってきたジョンソン元首相の環境政策を転換した形。物価高と国民の生活苦により、気候変動対策を主導し次世代産業を育成するグリーン成長戦略は、英のみならず欧州各国で足踏みを強いられている。

アフガン地震、米が被害拡大の元凶
 アフガニスタン西部で7日、マグニチュード6・3の地震が発生し、死者は8日で2445人に上った。アフガンでは昨年6月にも南東部での地震で1000人以上が亡くなっているが、膨大な犠牲者を生む背景には、01年の米国を中心としたアフガン侵攻がある。戦闘による国土荒廃と経済崩壊、政治混迷によって地震被害が拡大、被災者救助もままならない現状がある。被害拡大は人災で、元凶は米国だ。

人民のたたかい

(9月30日〜10月9日)

 ポーランドの首都ワルシャワで1日、愛国主義を掲げる保守与党「法と正義(PiS)」の政策に抗議する集会とデモに100万人が参加した。15年から政権を率いるPiSのメディア規制や中絶禁止、反移民、LGBTQなど性的少数者に対する差別的政策に反発が高まっており、インフレ下での生活苦も問題となっている。
 ブラジルで3日、サンパウロ州政府知事(共和党)が進めようとしている民営化に反対してサンパウロ市地下鉄、サンパウロ都市圏鉄道会社、州水道会社の労働者と労働組合が24時間ストを敢行した。
 米国の医療・保険大手カイザー・パーマネンテで働く看護師や薬剤師、医療技術者ら約7万5000人が4日、人手不足解消や賃上げなどを求めて3日間のストに立ち上がった。医療分野のストとしては過去最大規模。


日本のできごと

(9月30日〜10月9日)

長距離巡航ミサイル配備前倒しで合意
 木原防衛相は10月4日、米国防総省でオースティン国防長官と会談した。反撃能力(敵基地攻撃能力)の運用に向けた日米間の調整を加速、米国製長距離巡航ミサイル「トマホーク」を予定より1年前倒しし2025年度から取得することで一致した。自衛隊が24年度に東京・市谷に置く常設の統合司令部に関して連携の具体策を詰めることも決まった。日米共同で情報収集、警戒監視、偵察(ISR)能力の向上をめざし、極超音速ミサイルの迎撃弾の共同開発で協力を深めることでも合意した。岸田政権は米国の先兵となって中国への先制攻撃も可能とする準備を加速させており、きわめて危険だ。

辺野古代執行へ国が提訴、横暴で無謀
 斉藤国交相は5日、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う軟弱地盤改良工事のための設計変更の承認を求める指示に対し、玉城デニー県知事が4日に「期限までの承認は困難」と回答したことから、代執行強行に向けて知事に承認を命じる判決を求める訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。建設反対の県の民意は繰り返し示されており、また軟弱地盤のため基地建設のめどが立たず、知事の判断は真っ当。これを一顧だにせず辺野古基地建設に固執する岸田政権は横暴で無謀だ。

内外の声よそに汚染水2回目放出強行
 福島第一原子力発電所の汚染水(アルプス処理水)について、東京電力は5日、2回目の放出を開始した。タンク10基分の汚染水およそ7800トンを17日間かけて放出する。8月に行われた1回目の放出開始後、中国は日本産水産物の輸入を全面的に禁止するなどして抗議、また米英仏の核実験に苦しめられた太平洋島しょ国などからも懸念が示されていたが、日本側は耳を傾けず2回目の放出も強行した。アルプス処理水の安全性については国内にも多くの懸念や反対の声があり、日本政府はただちに放出を中止し、改めて科学的検証をやり直すべきだ。

インボイス導入強行、すでに実害も
 政府は1日、インボイス(適格請求書)制度の導入を強行した。岸田首相は閣僚級の「インボイス制度円滑実施推進会議」初会合で新たな経済対策に負担増を懸念する小規模事業者への追加支援策を盛り込む方針を表明しているが、先に決めた「激変緩和措置」と同じく一時的でゴマカシに過ぎない。制度導入は小規模事業者狙い撃ちの庶民増税で、すでにフリーランスなどの中では取引先から除外されたり取引単価が引き下げられたりするなどの実害も出ている。今回の導入は将来的にもくろまれているさらなる消費税増税と複数税率の導入の地ならしでもあり、制度は即刻廃止するべきだ。

実質賃金17カ月連続減、消費支出も減
 厚労省は6日、8月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金は前年同月比2・5%減で17カ月連続でマイナスとなった。実質賃金の算出に用いる8月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3・7%上昇、食料に加えてガソリン代なども上昇し名目賃金の伸びを上回った。また総務省は同日、8月の家計調査を発表、2人以上の世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2・5%減少、マイナスは6カ月連続となった。魚介類や肉類を中心に食料は2・5%減少する一方、外出関連の支出が拡大し減少幅は前月(5・0%減)から縮小した。国民生活の貧窮に対し岸田政権は依然として無策だ。

連合大会に岸田首相出席、労組票狙う
 連合は6日に定期大会を開き、芳野会長の再任など役員を選出した。また自民党政権下の首相としては16年ぶりに岸田首相が出席し、大会冒頭のあいさつで「今春闘で高い賃上げが実現した。連合の皆さまの多大なご尽力に敬意を表する」などと持ち上げた。岸田氏の狙いが解散・総選挙をにらんだ労組票の切り崩しにあることは明らかで、岸田氏に「労働者に向けた政策を実現してほしい」などと期待を示し自公与党への幻想を助長する芳野会長の罪は重い。岸田政権の「構造的な賃上げ」などの労働施策は財界が要望する労働市場の流動化にほかならず、労働者は期待するべきではない。

アマゾン配達員に初の労災認定
 インターネット通販大手アマゾンジャパンの商品配達を請け負う個人事業主の男性が仕事中に負ったけがについて、横須賀労働基準監督署(神奈川県)が労災と認定したことを、弁護団と全国ユニオンが4日に明らかにした。アマゾンの配達を担う個人事業主がけがで労災認定されたのは初めて。男性はアマゾンの商品配達を担う運送会社から業務を請け負っていたが、昨年9月、配達中に階段から足を滑らせて転落、腰椎を圧迫骨折した。同労基署は、男性は勤務実態などから事実上の労働者に該当すると判断、約 日間の休業補償給付を決定した。全国のアマゾン配達員に対し、配達中の事故による療養や休業に保険金が給付がされ救済されることにつながる決定だ。


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