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労働新聞 2023年10月5日号 トピックス

世界のできごと

(9月20日〜9月29日)

気候サミット、異常気象の深刻さ反映
 米ニューヨークでの国連総会に合わせて9月20日、「気候野心サミット」が開かれた。11月にアラブ首長国連邦(UAE)で開かれる国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)を見据えて開かれたサミットは、各国の「経済力順」に発言機会を配分する従来形式ではなく、気候変動への取り組みで「先行し行動する者」(グテレス国連事務総長)とされた国・地域、自治体、国際機関のトップら約 人のみが発言者として招かれた。グテレス氏は、異常気象が世界で頻発していることに言及して、「化石燃料から莫大(ばくだい)な利益を得る既得権益者たちによる対応の遅れ、圧力、むき出しの強欲によって失われた時間を取り戻す時だ」と訴えた。異常気象は貧しい国の人びとにより深刻な被害を与えており、グテレス氏の危機感と新たな試みはその現状の反映だ。

遠のくFRB利下げ、途上国に打撃
 米連邦準備制度理事会(FRB)は20日の公開市場委員会で政策金利の据え置きを決めた。FRBは2022年3月以来合計11回の政策金利引き上げを実施してきたが、夏以降の原油価格の上昇など米国経済を取り巻くインフレ懸念は想定以上に強く、発表した見通しでは今年中の追加利上げの可能性が大きいと示唆した。米国経済に減速の兆しが見られるなか、市場には利上げ打ち止め・利下げへの転換を期待する声もあるが、利下げの時期は遠のいた格好。米欧中銀の金利引き上げは新興国・途上国の債務問題を深刻化させるなど世界経済に大きな影響を与えているが、特にグローバルサウスは米欧への不満を募らせている。

UAWのスト拡大、バイデン氏苦慮
 米自動車大手3社の従業員約15万人が加盟する全米自動車労働組合(UAW)は29日、一斉ストの対象が3工場から5工場に拡大、組合員全体の2割弱にあたる2万5000人の参加を発表した。ストの現状を見てバイデン大統領は26日、UAWの本拠地である米中西部ミシガン州デトロイトを訪れてUAWへの支援を表明した。現職大統領のスト参加は初めて。来年の大統領選を見据えた行動だが、一方でバイデン氏は巨額の補助金で米自動車産業の電気自動車(EV)化を後押しし、生産工程減少や雇用縮小をあおってもいる。これを見透かしたトランプ前大統領は「自動車労働者を失業に追いやっている」などと攻撃し、バイデン政権にとって大きな痛手となっている。

ニジェールから仏軍撤退、米にも痛手
 マクロン仏大統領は24日、7月のクーデターで軍部が政権を掌握した西アフリカのニジェールに駐留する仏軍を年内に撤退させると発表した。これに対し軍事政権は「主権回復への新たな一歩。ニジェール人の決意と意思を示す歴史的な瞬間」との声明を発表した。ニジェールでは、ウラン鉱山事業の利益を仏政府が筆頭株主である原子力企業に独占されるなど、フランスに富を奪われ最貧国とされてきた不満が高まっていた。仏軍はすでにマリやブルキナファソからも撤退に追い込まれており、テロ対策を口実にニジェールに1100人の米軍を駐留させている米国にとっても大きな痛手だ。

中国にらみ米がPIFと首脳会議
 米国のバイデン大統領は25日、ホワイトハウスで、太平洋の16カ国・2地域で構成する地域機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」との第2回首脳会議を開いた。気候変動や違法漁業対策など多分野での連携強化に向けた共同声明を発表、また会議に合わせクック諸島、ニウエを国家承認し国交を樹立した。太平洋地域で影響力を増す中国を念頭にPIFとの関係を強化する思惑だが、ソロモン諸島とバヌアツの首脳は代理を派遣するなど冷淡で、他の首脳にも米国が太平洋で繰り返した核実験に対する補償などを巡って不満もある。米国のにわかなPIF重視姿勢は各国に見透かされている。

人民のたたかい

(9月20日〜9月29日)

 英国南東部にある英空軍のレークンヒース基地で23日、米軍核兵器の同基地への再持ち込みに反対する抗議デモが行われた。同基地にはかつて米軍の核兵器が配備されていたが、反対運動で08年に撤去された。
 米国ハリウッドの脚本家ら1万1500人でつくる全米脚本家組合(WGA)は、製作会社を代表する全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)との新たな労働協約で暫定合意、5月から続けてきた大規模ストを27日に終結すると発表した。組合は3年間で12%超の賃上げのほか、健康保険や年金への拠出拡大、人工知能(AI)を巡る対策など全面的な譲歩を勝ち取った。


日本のできごと

(9月20日〜9月29日)

解散にらみ経済対策で「減税」強調
 岸田首相は9月29日、新たな経済対策の財源を裏付ける2023年度補正予算案を10月20日召集の臨時国会に提出する意向を表明した。岸田氏は経済対策について「経済の好循環に向けあらゆる手法を動員する」とし、賃上げや投資の促進策への減税措置を列挙したが、貧窮する国民を直接支援する政策は依然として乏しい。規模については自民党内から「少なくとも15兆円、できれば20兆円」(世耕参院幹事長)などの声が出ており、財界への巨額のバラマキを決めて解散・総選挙に打って出る疑念も。この政権の下では国民生活の改善は期待できない。

日銀が緩和維持、長期金利上昇も円安
 日銀は22日、金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を全会一致で決めた。長期金利の事実上の上限を1%とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)やマイナス金利政策などの現行の緩和策を続ける。7月の前回会合では長期金利を低く抑える枠組みを柔軟にしてある程度の金利上昇を容認、その後長期金利は上昇したが、日米の金利差で円安はむしろ加速し、物価高は一段と進んだ。7月の実質賃金は前年同月比2・7%減で16カ月連続でマイナスとなり、8月の企業倒産は17カ月連続増でコロナ禍後最大となるなど、国民生活の悪化と国民経済の疲弊に歯止めがかかっていないが、依然として岸田政権は無策だ。

デジ庁行政指導、個人情報軽視の指摘
 マイナンバーの公金受取口座に別の人の口座が登録されるミスが相次いだ問題で、政府の第三者機関である個人情報保護委員会は20日、デジタル庁や国税庁、システム運用会社などにマイナンバー法と個人情報保護法に基づく行政指導を行った。同委員会は7月にシステム全体を管理するデジタル庁に立ち入り検査を実施、事実関係を調べてきた。指導では、22年に共用端末の操作ミスを起因とした公金受取口座の情報漏えいが立て続けに起きた後も同庁がリスク対策見直しを検討せず、組織内での情報共有も適切に行われていなかったとした。デジ庁が個人情報保護の重要性を理解していないことが断罪された形。岸田政権に「デジタル行財政改革」を推進する資格はなく、マイナカード強制はやめるべきだ。

米オスプレイ、各地で相次ぐ緊急着陸
 米海兵隊オスプレイ1機が21日、鹿児島県奄美市の奄美空港に「予防着陸」(緊急着陸)した。けが人は出ていない。奄美空港には14日にもオスプレイ2機が緊急着陸し、同日に新石垣空港(沖縄県石垣市)に2機、16日には大分空港(大分県国東市)に1機が緊急着陸するなど、1週間余りのうちに6機が緊急着陸している。オスプレイは根本原因が不明な墜落事故を繰り返しているが、相次ぐ緊急着陸は米軍による空港使用に慣れさせるための地ならしとの指摘もある。住民・国民の安全と生命が危険にさらされていることに変わりはなく、オスプレイの日本全土からの撤去が求められている。

杉田氏「人権侵犯」認定も自民は厚遇
 自民党の杉田水脈衆院議員によるアイヌ民族差別投稿について、札幌法務局が「人権侵犯の事実があった」と認定したことを、人権救済の申し立てをしていたアイヌ女性が20日に公表した。杉田氏は16年の国連女性差別撤廃委員会に参加したアイヌ女性らを「民族衣装のコスプレおばさん、完全に品格に問題」などとあざ笑う文章をブログやSNSに投稿していた。同氏はこれまでも性暴力被害者や性的少数者に対する差別発言や歴史修正発言を繰り返しているが、自民党は同氏を厚遇し続け、29日には党環境部会長代理に起用した。攻撃的な差別扇動者が高く評価される党が政権を担うなど言語道断で、公党の資格もない。

水俣病認定で国の是正求める判決
 水俣病の未認定患者救済のため09年に施行された特別措置法に基づく救済策から漏れた128人が、国や熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は27日、原告全員を「症状は水俣病以外に説明できない」として水俣病と認定し、損害賠償をするよう被告側に命じた。水俣病被害を矮小(わいしょう)化し続けてきた国に対し、患者認定基準や救済対象を限定した特措法の根本的是正を迫る判決。同様の裁判は東京、新潟、熊本の各地裁でも争われているが、多くの原告は高齢で、国は解決を先延ばしせず全ての被害者を救済するべきだ。

万博費用1000億円上振れも
 日本維新の会の馬場代表は28日、25年大阪・関西万博の建設費用が当初の1250億円から二度の上振れで1000億円以上膨張すると見通されていることについて「見積もりが甘かったと言われるが、社会的要因で増えるのは当然」と開き直り、「名称は大阪・関西万博となっているが国のイベント。主体的に国が費用負担していく」などと無責任な姿勢を示した。万博の会場建設費は、国と経済界、大阪府・市が3分の1ずつ負担することが決まっているが、開催誘致を主導した維新と関西財界が「身を切る」べきだ。


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