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労働新聞 2023年9月25日号 トピックス

世界のできごと

(9月10日〜9月19日)

G20、グローバルサウスが存在感増す
 インドで開かれた20カ国・地域(G20)サミットは9月10日に閉幕した。今回新たにアフリカ連合(AU)が参加国として認められた。グローバルサウスの発言力が増す決定で、先進国側は妥協を余儀なくされた形。またキューバのハバナでは新興・途上国でつくるグループ「G77プラス中国」首脳会議が16日に閉幕したが、中南米の反米左派政権を中心に114カ国の首脳や閣僚が参加し、米国の経済封鎖に苦しんでいるキューバと足並みをそろえた。一連の会議でグローバルサウスの影響力増大がさらに鮮明となった。

米が「南シナ海」で対中包囲網強化
 米国のバイデン大統領は10日、ベトナムのハノイでグエン・フー・チョン共産党書記長と会談した。両国関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすることで合意した。両国はオバマ政権下の2013年に「包括的パートナーシップ」協定を締結、今回さらなる協力関係の強化を目指す。また米国はフィリピンへの接近も強め、今年2月の2国間の協定で米軍がフィリピン国内で使用できる拠点を5カ所から9カ所に増やすことで合意するなど、「南シナ海の領有権問題」をダシに対中包囲網の強化を進めているが、これはアジアの平和に逆行するものだ。

欧州中銀10会合連続利上げ、金利最高
 欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、10会合連続の利上げを決めた。利上げ幅は0・25%で、昨夏から累計の利上げ幅は4・50%。主要政策金利は1999年の単一通貨ユーロ誕生以降で最高に。欧州景気の後退懸念が強まるなかでもインフレ抑制のために追加の金融引き締めを迫られた。直近のインフレは鈍化するも、サウジアラビアなど主要産油国の減産継続で資源高は再燃が懸念され、ドイツ経済の後退に見られるように各国の国民生活はいちだんと厳しさを増している。米国も資源高によるインフレと景気後退の両にらみで、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを見送るとみられるものの追加利上げはくすぶり続けている。米欧とも利上げの終着点は遠く金融政策のかじ取りはより複雑で難しい局面に立たされている。

EU、ウクライナ穀物輸入めぐり亀裂
 欧州連合(EU)が認めているポーランドやハンガリーなど5カ国へのウクライナ産穀物の輸入禁止が15日に期限切れとなり、今後の対応をめぐりEU内の亀裂が深まっている。安価な穀物流入で自国の農業が打撃を受ける中東欧諸国は輸入禁止の継続を主張する一方、他の加盟国はウクライナ支援の観点から輸入再開を求めている。ウクライナはポーランドなどの対応を「絶対に容認できない」(ゼレンスキー大統領)と批判、18日には輸入規制を独自に延長したポーランド、スロバキア、ハンガリーの3カ国を世界貿易機関(WTO)に提訴した。戦争の長期化で欧州諸国には厭戦(えんせん)気分が広がっており、ウクライナと近隣3カ国の関係悪化で欧州によるウクライナ支援の結束はさらに乱れている。

EV加速、自動車ビッグ3で一斉スト
 全米自動車労組(UAW)は15日、米自動車大手との労使交渉の決裂を受けてストライキに入った。ゼネラル・モーターズ(GM)など「ビッグ3」に対する一斉ストは初めて。UAWは特定の生産現場で順次断続的にストを行う。スト対象3社の組合員数は約15万人で、UAWのストはGMに対して行った 年以来となる。労組側は今回4年間で %を超える賃上げなど抜本的な待遇改善を求めている。背景には自動車産業が電気自動車(EV)に移行する構造変化で雇用確保をめぐって組合側に不安が広がっていることも。自国メーカー主導でEV普及を進めてきたバイデン政権にとっても支持労組のストは痛手だ。「米史上最も労組寄りの大統領」を自称するバイデン氏だが、今回のストで目算が外れた。

人民のたたかい

(9月10日〜9月19日)

 国連総会が行われている米国のニューヨークで18日、気候変動への対応強化を訴え数万人がデモ行進した。約700の団体が参加、「バイデン、化石燃料廃止を」「山火事と洪水に投票した覚えはない」などと書かれたプラカードを掲げた。
 韓国の全国鉄道労働組合(鉄道労組)は14日から4日間の全面ストライキを行った。鉄道労組は高速鉄道のKTXとSRT車両の統合運行や相互連結のほか、安全性を高めるための4組2交代勤務制の全面実施などを求めて各地で集会を開いた。


日本のできごと

(9月10日〜9月19日)

岸田再改造政権発足も解散戦略描けず
 岸田首相は内閣改造と自民党役員人事を行い、第2次再改造政権が9月13日に発足した。閣僚19人のうち11人が初入閣で、女性は過去最多に並ぶ5人を起用するなど「刷新」を演出した。しかし官房長官や財務相など政権の骨格は維持し、副大臣と政務官計54人のうち女性の起用はゼロ、党人事でも副総裁や幹事長、政調会長を続投させ、むしろ停滞やマンネリの印象に。2024年秋の自民党総裁選挙をにらみ挙党体制を強く意識、各派閥に配慮した人事とはなったが、マイナカードをめぐるトラブルや統一教会問題で失った国民からの支持回復は望めない結果で、任期折り返しが近付く衆院の解散戦略は描けていない。苦境打開のため岸田政権がいっそう米国と財界の意に忠実となることには警戒が必要だ。

玉城知事が国連で平和への権利訴え
 沖縄県の玉城知事は18日、スイス・ジュネーブで開催中の国連人権理事会に出席・発言した。沖縄県知事の国連人権理事会出席は15年の翁長前知事以来8年ぶり。玉城氏は日本政府が固執する名護市辺野古の新基地建設で「平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている」とし、16年に国連総会で採択された、平和を人権として宣言する「平和への権利」が沖縄で具体化されるよう「関係政府による外交努力の強化を要請する」と訴えた。一方、斉藤国交相は19日、新基地建設の軟弱地盤改良工事のための設計変更に対する県の不承認処分訴訟で最高裁が敗訴判決を出したのを受け、玉城知事に設計変更を承認するよう勧告した。国の三権分立が形骸化するなか、県は国際社会への訴えを強めている。

日米共同訓練に米揚陸艇部隊が初参加
 陸上自衛隊と米陸軍が北海道と沖縄など南西地域で実施する共同訓練「オリエント・シールド23」が14日から始まった。今年春に横浜ノース・ドック(横浜市)で新編された米陸軍揚陸艇(LCU)部隊が初めて参加、同部隊傘下の揚陸艇が訓練の一環として沖縄から奄美大島(鹿児島県)に高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)や物資などを輸送した。南西地域への戦時投入を想定した同部隊と陸自部隊との初の連携訓練も予定されている。「沖縄を再び戦場にさせない」との県民の切実な願いとは裏腹に、日米両政府は南西諸島が戦場となることをいとわない軍事要塞(ようさい)化と軍事訓練強化を進めている。

運動監視の土地利用規制法、指定追加
 政府は11日、「安全保障上重要な施設の周辺や国境の離島」を対象とする土地利用規制法に基づく第3回指定候補として、全国25都道府県の180カ所を示した。内訳は「特別注視区域」が46カ所、「注視区域」が134カ所で、呉第六突堤や広弾薬庫(広島県)、福岡空港内にある板付基地(福岡県)など6カ所が米軍基地として初めて対象となったほか、伊方原発(愛媛県)や玄海原発(佐賀県)など3カ所の原子力施設も対象となった。区域指定されれば、周囲1キロが監視対象となり、「阻害行為」が確認されれば国が中止を勧告・命令、従わなければ刑事罰が科される。国はこれまでに219カ所を指定したが、今年度中に600カ所もの指定をもくろんでいる。

農基法改定答申、食料自給率は格下げ
 農水相の諮問機関である食料・農業・農村審議会は11日、食料・農業・農村基本法改定へ向けた答申を農水相に提出した。地球温暖化やウクライナ戦争で不安定化する食料安保を意識し内容を充実させた一方、食料自給率については「目標の一つ」に格下げした。生産現場から要望が強い適正な価格転嫁についても国が責任を持つ中身はなく、「生産性の高い経営体」の育成や農産物の輸出、「スマート農業」の推進などの旧来の政策が並んだ。何より、歴代政権の農政の検証・総括がなく、これでは国内農業・農村を犠牲にしてきた米国追随の農産物輸入自由化政策からの転換は期待できない。

関電が全原発稼働、岸田政権が後押し
 関西電力は15日、高浜原発(福井県高浜町)2号機の原子炉を起動した。原則40年に制限されている運転期間を超えて再稼働するのは全国で3例目。これにより関電は運転可能な原発7基全てを再稼働、稼働率は東日本大震災前の水準に戻る見通し。岸田政権は5月にGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法を成立させ、稼働から60年を超えた原発の運転も可能とするなど、高騰する燃料費負担の削減も狙って原発再稼働を加速させているが、福島原発事故の被害や教訓に背を向けた危険な策動だ。

経団連が税制提言、消費税増税を主張
 経団連は11日、24年度の税制要望を発表した。岸田政権がもくろむ防衛費大幅増額の財源について「全ての個人・法人が広く負担すべき」としながらも、法人税については「主要先進国の中では依然として高い水準」として慎重な検討を求め、暗に反対した。また「異次元の少子化対策」を含めた社会保障政策の財源については、消費税率の引き上げが「有力な選択肢の1つ」だとして消費税増税を求めた。


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