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労働新聞 2023年9月15日号 トピックス

世界のできごと

(8月30日〜9月9日)

ASEAN関連首脳会議、実利優先
 インドネシアのジャカルタで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国および日米韓、中国、インドなど18カ国が参加するASEAN関連首脳会議が9月7日、閉幕した。一連の会議では経済分野を中心に議論、日中韓3カ国はASEAN加盟国が投資を集中する電気自動車(EV)関連の技術移転を約束、カナダはウクライナ戦争以降需要が急伸する肥料の工場への投資を打ち出した。経済関連イベントも相次ぎ、初めて開催された官民による「インド太平洋フォーラム」では計382億ドル(約5兆6000億円)の投資が募られた。米国は南シナ海の領有権問題などでASEANと中国の間に対立を持ち込む思惑だったが、実利優先で独自外交を貫くASEANは外交・安保論議を素通りし、米の策動は空振りに終わった。

米、ウクライナに劣化ウラン弾初供与
 米国のバイデン政権は6日、ウクライナへの新たな軍事支援として、対戦車弾として使用される劣化ウラン弾を供与すると発表した。米国による供与は初で、英国に次ぐ。クラスター爆弾供与に続く非人道的兵器の供与に。劣化ウラン弾は米英軍がイラク戦争でも使用、ウラン微粒子が人体に入り込んで体内被ばくを引き起こし、イラクでは子どもの先天性異常が多発した。ウクライナに長年にわたり多大な犠牲をもたらす蛮行で、米国は同国国民を消耗品としか考えていない。

アフリカで政変の連鎖、米仏に不満
 西アフリカの産油国ガボンで8月30日、軍部がクーデターを起こし、国家機関を制圧、26日に行われた大統領選挙と議会選挙結果の無効を宣言した。ガボンではボンゴ大統領父子による半世紀以上にわたる長期独裁政権への批判や不正選挙を指摘する声が高まっていた。2020年以降、西アフリカでは、マリ、ブルキナファソ、チャドなどで不満の矛先が旧宗主国のフランスに向けられ、若手将校らの軍事クーデターが連鎖している。これらの国は金やダイヤモンドなど鉱物資源が豊富だが、親欧米型の政府は腐敗、国民生活は向上せず、世界最貧地域となっている。7月にもニジェールでクーデターが起こり、駐仏軍や米軍基地が撤退を迫られるなど、この地域での米仏の存在感は一段と低下している。

サウジ原油減産、ロシア輸出制限延長
 サウジアラビアは9月5日、7月から実施している日量100万バレルの原油の自主減産を 月まで延長すると発表した。ロシアも石油輸出削減を12月まで継続する。価格引き上げによって自国の財政を下支えする狙いがある。主要産油国が供給減の延長を決めたことで、国際的な原油価格の指標は10カ月ぶりの高値をつけた。世界的な金融引き締めによってインフレが鎮静化に向かうなか、来年以降に石油輸出国機構(OPEC)プラスが減産幅の削減を見送った場合、いっそうの資源高がインフレを再燃させ、世界経済が揺さぶられるリスクは高まる。

日中韓首脳会議に向け中韓が外相会談
 中国の王毅外相と韓国の朴振外相は8月31日、電話会談を行った。会談では4年前から開かれていない日中韓3カ国の首脳会議再開に向けて協力することで合意した。韓国の尹政権は18日の日米韓首脳会談で「日米同盟と米韓同盟の戦略的連携を強化し、日米間の安全保障協力を新たな高みへと引き上げる」と確認していたが、中国との深い経済関係を軽視できず、また韓国内で高まる「退陣運動」もあり、米国の言いなりに対中敵視姿勢を続けることもできない。日米韓同盟を中国対抗の砦(とりで)としたい米国の思惑は早くも崩れかけている。

人民のたたかい

(8月30日〜9月9日)

 南米コロンビアで8月30日、右派政党が提出した教員の労組活動を制限する法案に抗議する24時間ストが闘われ、全国各都市で数千から数万人の教員らがデモ行進をした。
 英国で9月1日、16社で働く1万3000人の運転士を組織する鉄道運転士労組(ASLEF)が24時間ストを実施、2日には時間外労働を拒否し、賃上げ要求に背を向ける列車運行会社と政府に交渉の席に着くよう求めた。
 オーストラリアにある米シェブロンの液化天然ガス(LNG)施設2カ所で8日、労組連合「オフショア・アライアンス」は最大11時間以上の時限ストを開始した。
 西アフリカのニジェールで2日、クーデターで追われた親米欧派のモハメド・バズム大統領への支持を表明し約1500人の部隊を展開している仏マクロン政権に抗議するため、数千人の市民が仏軍基地前に集まり、「フランスは出て行け」と書かれたプラカードを掲げて抗議デモをした。


日本のできごと

(8月30日〜9月9日)

海洋放出で損失拡大、中国逆恨み
 岸田政権は9月5日、福島第1原発汚染水の海洋放出に伴い水産関係者を支援する経費として、2023年度予算の予備費から計207億円を追加支出することを閣議決定した。中国による日本産水産物の輸入禁止措置によって各方面に損失が拡大しているためで、これで計1007億円の対策に。危機感を募らせた岸田政権は、同日から始まった東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議で中国の禁輸措置を批判、同調する国を募ったが、海洋放出には東南アジアからも不安の声が出ており、場違いな中国批判は不発に。損失拡大はまだ途上で、政権の責任が真に問われるのはこれからだ。

林外相「新BRICS切り崩し」狙う
 林外相は3日から中東や欧州を訪問、4日にエジプト、6日にサウジアラビアを訪れた。両国は中国やロシアなどで構成するBRICSへの新規加盟が決まった6カ国の一角で、日本や米国はBRICS拡大によって相対的に国際的影響力が低下することに危機感を募らせていた。林外相の訪問はいわば「新BRICS切り崩し工作」。また林外相は9日にウクライナを電撃訪問してゼレンスキー大統領らと会談、追加支援を表明した。また楽天グループの三木谷会長らを同行させ、同国の復興特需に日本の財界が参入できるよう橋渡しした。

概算要求が過去最大に、防衛費突出
 財務省は5日、24年度予算の概算要求総額が一般会計で114兆3852億円と過去最高となったと発表した。岸田政権は「新しい資本主義」関連政策の特別要求枠や物価高騰対策などで要求段階では金額を示さない「事項要求」を幅広く認めており、総額はさらに膨らむ見込み。なかでも防衛費は突出して増加、防衛省は過去最大だった前年度予算を9166億円上回る7兆7385億円を求めたが、米軍再編関連経費は事項要求としており、総額のさらなる増加をもくろむ。岸田政権は安保3文書に基づき23年度から5年間で防衛費43兆円を確保する方針だ。

実質賃金16カ月連続減、消費も連続減
 厚労省は8日、7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金は、前年同月比2・5%減で、マイナスは16カ月連続。減少幅は6月の1・6%から拡大した。名目賃金は労働者1人当たり平均で1・3%増の38万656円だったが、実質賃金の算出に用いる7月の消費者物価指数は3・9%上昇、食料などが上がり名目賃金の伸びを上回った。また総務省が5日発表した7月の家計調査では、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は28万1736円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比5・0%減少し、マイナスは5カ月連続に。食料が魚介類や肉類などを中心に2・8%減となった。庶民生活の悪化が際限なく続いている。

倒産17カ月連続増、コロナ禍後最大
 東京商工リサーチが8日発表した8月の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は前年同月比54・5%増の760件で、17カ月続けて前年同月を上回った。増加率は20年のコロナ禍以降で最大を更新した。15年ぶりに20産業すべての倒産件数が前年同月を上回り、最も多かったサービス業で43%増の238件、建設業は73%増の157件、製造業は71%増の89件。従業員数の規模別では、5人未満が562件と全体の7割強を占めた一方、300人以上の倒産はゼロ。実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」返済の本格化に加え、物価高や人手不足で経営環境の悪化は続いており、東京商工リサーチは「企業倒産は秋口以降、増勢ピッチを強める可能性が高い」とみている。

そごう・西武スト、百貨店で61年ぶり
 そごう・西武労働組合は8月31日、西武池袋本店で24時間ストライキを敢行した。大手百貨店でのストライキは1962年の阪神百貨店以来約61年ぶり。同労組は店舗売却計画によって生じる雇用不安に対する経営側の説明が不十分であることからスト権を確立していた。同日、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは組合員の声を無視して投資ファンドへの売却を強行したが、ストへの社会的関心は高く、投資ファンド側は従業員に向けて雇用維持の表明を迫られた。ストが労働者の当然の権利であり、また大きな力となることを世に示した意味でも意義の多いストとなった。

松野長官、朝鮮人虐殺「記録ない」
 関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺事件について、松野官房長官は30日、「政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と述べた。事件については内閣府の中央防災会議が2009年に関東大震災に関する報告書を提出、軍隊などが朝鮮人の虐殺を直接行ったことが史料に基づいて記されているなど、数多くの公文書にも記されている明らかな史実。100年前と同じく国が率先してデマを流した格好。公権力が差別・排外主義をあおる歴史歪曲(わいきょく)を率先することは危険で犯罪的だ。


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