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労働新聞 2023年9月5日号 トピックス

世界のできごと

(8月20日〜8月29日)

BRICS首脳会議、加盟国拡大へ
 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)の5カ国は8月22〜24日、南アのヨハネスブルクで首脳会議を4年ぶりに開催した。グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の声を結集することを目指したメンバー国の拡大が議論され、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国の加盟が決まった。2024年1月に11カ国体制となる。またドル依存脱却に向けて貿易や金融取引における現地通貨利用を促進することでも合意した。24日には50カ国超の首脳らが参加する拡大会合も開かれた。加盟国の拡大によってBRICSの国際政治上の影響力はいっそう拡大する一方、主要7カ国(G7)の影響力の相対的低下は必至だ。

米商務長官が訪中、緊張回避狙う
 米国のレモンド商務長官が28日、北京で中国の王文濤商務相と会談、対立する半導体の輸出規制などで過度な緊張を回避するために両国が定期的に協議することなどで合意した。閣僚級の訪中は6月のブリンケン国務長官から始まり、レモンド氏が4人目。半導体や人工知能(AI)は先端軍事品の開発競争に直結し、双方ともに安易な譲歩は難しい。一連の閣僚級対話は、事態の根本的な解決というより、対抗措置が想定外にエスカレートしないよう関係を「管理」したい米国の狙いから行われている。米連邦議会では与野党が対中規制の強化を競っているが、経済界では相次ぐ対中規制によるビジネス機会の喪失に不満が高まっており、バイデン政権は大統領選を前に苦しい対応を迫られている。

ジャクソンホール会議、米利上げ注視
 米ワイオミング州で24〜26日、経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれ、主要国の中央銀行関係者や経済学者が「世界経済の構造転換」をテーマに議論した。25日には米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が講演、インフレ率について「依然として高すぎる。堅調な経済成長や労働需給の逼迫(ひっぱく)が予想を超えた場合は、さらなる金融引き締めが正当化される」と指摘、インフレ鎮圧には「まだ長い道のりがある」とした。グローバルサウスを中心に米利上げによって債務危機に陥る国が相次いでおり、米国が9月に決定する金融政策を各国が注視している。

米韓が合同で危険な大規模実戦訓練
 米韓日首脳会談の直後、米韓両軍は「朝鮮半島有事」を想定して「ウルチ・フリーダム・シールド」と名づけた定例合同軍事演習を21日から開始した。今回の演習では市街戦や上陸訓練など去年の2倍以上にあたる38の野外機動訓練が行われた。また今回「国連軍」の名目で英軍やカナダ軍も参加しているが、国連軍の参加はきわめて異例。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は演習を「実戦的な侵略演習」として批判している。韓国は米国と歩調を合わせて朝鮮敵視をエスカレートさせているが、軍事的緊張を高める蛮行だ。

ウクライナ戦争1年半、長期化さらに
 ロシアのウクライナ侵攻から24日で1年半が経過した。ウクライナは6月から「反転攻勢」として東・南部で反攻を強め、ロシアに占領された地域の奪還を目指しているが、戦線は膠着(こうちゃく)、長期化の様相を呈している。8月以降、ウクライナによるクラスター弾の使用やロシアへの無人ドローン攻撃、クリミアへの攻撃も目立つ。サウジアラビアなどの和平を探る動きとは裏腹に、米欧はロシアへの圧力をいちだんと強め、ウクライナへのF16戦闘機や戦車などの供与で戦争を長期化・泥沼化させている。

人民のたたかい

(8月20日〜8月29日)

 韓国のソウルで26日、4野党と90を超える市民団体が「福島核汚染水海洋投棄中断、投棄容認尹錫悦政権糾弾、汎国民大会」を開き、海洋放流を糾弾した。共に民主党の李在明代表は「日本が超えてはならない限度を超えた。核汚染水放流は太平洋沿岸国に対する戦争を宣布したもの」と批判した。集会には5万人が参加した。
 米国3大自動車メーカー(ビッグ3)で働く全米自動車労組(UAW)は25日、組合員97%の賛成を得て、新たな労働契約について現契約が切れる9月14日までに合意できない場合はストを実施することを決めた。UAW側は46%の賃上げや新規雇用者と既雇用者の賃金格差の解消、生活費補助制度の復活といった要求を掲げている。
 首都ワシントン中心部で26日、マーティン・ルーサー・キング牧師らが人種差別撤廃を求めた「ワシントン大行進」から28日で60年を迎えるのを前に、数万人が参加する大規模なデモが行われた。キング牧師の長男が演説、根強く残る差別に触れ「米国は後退している。民主主義を守り、広げなければならない」と訴えた。


日本のできごと

(8月20日〜8月29日)

原発汚染水の放出強行、約束反故
 岸田首相は8月22日、東京電力福島第1原発の汚染水(ALPS処理水)の海洋放出を24日に開始すると表明、東電は同日放出を開始した。首相は21日に全漁連の坂本会長らと面会、坂本氏は「放出反対にはいささかも変わりない」と明言したが、首相は面会をアリバイに放出を決定、8年前に漁業者と交わした「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束を反故(ほご)にした。これでは岸田首相が今回強調した「漁業が継続できるよう政府が全責任を持って対応」との口約束も破られるのは時間の問題だ。原発建屋内への地下水流入を止める手立てを打たず、モルタル固化案など海洋放出を回避する手立ても打たないなど、国や東電の福島原発の廃炉に向けた対応はあまりに無責任だ。

海洋放出受け中国が水産物輸入禁止
 中国政府は24日、日本産水産物の輸入を全面的に禁止した。原発汚染水の海洋放出への対抗措置で、日本側は中国に対し「科学的根拠に基づいた議論を」などと注文を付けたが、中国をはじめアジア太平洋の複数の国々との合意なしに放出を強行したことは批判を免れない。ALPS処理水には、セシウムやストロンチウムなど、トリチウム以外の放射性物質が含まれていることは日本政府も認めており、「科学的に安全」かどうかは大いに疑問。日本政府が行うべきは、放出に抗議する国内外からの声に応えて海洋放出を中止・回避することだ。「中国からの嫌がらせ」などと問題をすり替えて中国側を批判、「世界貿易機関(WTO)協定違反で提訴すべき」などと敵視をあおる与野党の姿勢も犯罪的だ。

殺傷兵器の輸出解禁急ぐ岸田政権
 自公与党は23日、防衛装備移転3原則の運用指針見直しに関する実務者協議を再開した。岸田首相が協議の早期再開を指示したことを受けたもので、秋以降の予定を前倒しした。協議では政府側からの見解が示され、現行ルールで安全保障面で協力関係のある国に対し輸出が可能な「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5類型に該当する目的であれば、殺傷能力のある武器を搭載した装備品の輸出を認める考えを示した。また英伊と共同開発する次期戦闘機を念頭に、共同開発した装備品の第三国への輸出は可能との考えも示した。岸田政権は殺傷兵器の輸出解禁を強行しようと前のめりだ。

渉外知事会がPFOS対策で要請
 米軍基地を抱える15都道府県でつくる渉外知事会(会長・黒岩神奈川県知事、副会長・玉城沖縄県知事)は23日、政府に対し基地問題の解決を要請した。基地周辺で人体に有害な有機フッ素化合物(PFOS)等が高濃度で検出されている問題について、過去の汚染を確かめるための立ち入り調査実施や結果の早期公表、国外の動向に留意することなどを求めた。また沖縄県は、PFOS等対策として浄水場に設置している水道水浄化のための粒状活性炭交換について、県の負担増大が国の交付金の対象外となっていることを説明、新たな負担増に対する地域振興策も含めた財政措置の新設や、地域の負担に見合った十分な予算措置など負担軽減措置の拡大なども求めた。

辺野古不承認訴訟で最高裁が不当判断
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、軟弱地盤改良工事に伴う沖縄防衛局の設計変更申請を不承認とした県の処分に対し「承認するよう求めた国交相の是正指示は違法な国の関与」だとして県が取り消しを求めた訴訟で、最高裁は24日、結論変更に必要な弁論を開かずに判決期日を指定、県の請求を棄却した今年3月の福岡高裁那覇支部の判決が維持される見通しとなった。「国交相の是正指示は適法」として県側の敗訴が確定した場合、県側は設計変更を承認する義務を負う。軟弱地盤の存在を隠し続けた政府の詐欺的手法を最高裁が追認するもので、不当判断そのものだが、県民の闘う姿勢は揺らいでいない。

米海兵隊オスプレイ、またも墜落事故
 オーストラリア北部準州メルビル島で27日、米海兵隊のオスプレイが訓練中に墜落、3人が死亡した。米海兵隊は、昨年6月に米カリフォルニア州で起きた兵士5人が死亡するオスプレイ事故についての調査、部品交換などを経て今後事故の発生する可能性を「 %減らした」と説明し、普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属機は飛行を続行していた。対策を施していたにもかかわらず起きた墜落事故に県民の危機感は強まる一方だ。日本には米軍と自衛隊合わせて44機のオスプレイが配備されており、国民の命と安全を脅かすオスプレイは全て撤去するべきだ。

ジニ係数が過去最高水準、格差拡大
 厚労省は22日、世帯ごとの所得格差を示す2021年の所得再分配調査の結果を発表した。所得格差を示すジニ係数は0から1の値で示され、格差が大きくなるほど1に近づくが、税金や社会保険料を支払う前の所得にあたる当初所得で0・57となり、過去最大だった14年と同水準となった。厚労省は「高齢化が進み、当初所得が低い人が増えたことが要因」としている。


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