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労働新聞 2023年8月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月30日〜8月19日)

日米韓、安保軍事協力の強化へ
 日米韓の首脳会談が、8月18日、米ワシントンのキャンプデービッドで開かれた。日米・米韓の2つの安保・軍事同盟の結びつきを強化し、インド太平洋さらに地球規模での3国の軍事協力を「前例のないレベル」に引き上げることで合意した。さらに3国の協力を経済安保面まで拡大、担当閣僚の協議を年1回以上定例化することも合意した。日米韓3カ国で「毎年、名称を付した複数領域に及ぶ3カ国共同訓練を定期的に実施する」とした。米国の狙いは、政権交代などで3国の協力体制が「後戻り」しないように同盟を「制度化」することだが、日米韓の同盟関係強化はアジア諸国の平和・共存の関係構築に背を向ける動きだ。

米国が投資分野でも対中規制強化
 バイデン米大統領は9日、先端半導体や人工知能(AI)、量子技術など特定のハイテク分野における対中投資を規制する大統領令に署名した。「中国の軍事力近代化に結び付く」として技術開発に米国の民間資本が投じられるのを阻止する狙い。米国はすでに先端半導体や製造装置などのモノの輸出を禁止しているが、さらに投資の規制も強め、輸出規制を資金面からも補強する。米国は2010年代後半から貿易、ハイテク分野など、さまざまな分野で対中規制強化を進めている。今回の投資規制についても、米国は主要7カ国(G7)など他国にも同様の措置を呼び掛ける方向で、欧州連合(EU)や日本も判断が迫られる。

米国債格下げ、市場に波及
 米格付け会社フィッチは1日、米国債の外貨建て長期債の格付けを最上位の「トリプルA」から「ダブルAプラス」に1段引き下げた。「今後3年間に予想される財政悪化」「高水準かつ増大する政府債務」「他国と比較したガバナンスの低下」などが理由。米財務省は2日、国債の大幅増発を発表したが、格下げを受け、長期金利は3日には今年最高の水準まで上昇、国債の増発は米国債のさらなる売りを呼び、ニューヨーク株の下落をはじめ世界の金融市場の波乱要因となっている。

ニジェール政変、米仏には大打撃
 西アフリカのニジェールで19日、7月に発生した欧米寄りのバムス大統領追放クーデターに関連し、軍事政権トップのチアニ将軍は演説で「民政移管は3年かけず実施する」と述べた。これに対し、周辺国でつくる西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は軍事介入をちらつかせ、権力放棄に応じない軍事政権へ圧力を強めている。米国は同国にアフリカではジブチに次いで大きな基地を置いており、この地域での足がかりを失う事態に直面している。周辺国のマリとブルキナファソでも20年以降、クーデターで発足した軍事政権によってフランスが追い出されたように、米仏のアフリカでの存在感は一段と影が薄くなっている。

異常気象、世界中で大規模山火事頻発
 欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」が8日、今年7月の世界の平均気温や海面水温について発表。7月の世界の平均気温は16・95度と、記録のある1940年以降、最も暑い月となった。また海面水温は今年5月半ば以降、異例の高温が続き、7月31日には20・96度と、これまで最高だった2016年3月の記録を上回った。異常な熱波により各地で大規模な山火事が次々と発生、8日に起きた米ハワイ・マウイ島の山火事は主要都市ラハイナの大部分を焼き尽くし、100人以上の死者を出し、1000人以上の行方不明者の捜索が続く。膨大なエネルギーの消費など資本主義的生産様式の悪循環を断ち切る以外に解決の道はない。

人民のたたかい

(7月30日〜8月19日)

 米国ロサンゼルスの市職員が8日、賃上げや人員増を求めて40年ぶりの24時間ストを行った)。ストを行ったサービス業国際労組(SEIU)721支部には、公立学校や空港などで働く清掃員、監視員、整備士、シャトルバス運転士など、約1万1千人が加盟している。
 米国スターバックス社で労組結成を進めるスターバックス・ワーカーズ・ユナイテッドは16日、ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学が、学内の食堂でスターバックスのコーヒーを販売する契約を25年以降更新せず、他社に切り替えることを決めたと発表した。同大学の学生らが労働者と連帯、組合つぶしを行うスターバックスの撤退を求めて座り込みや集会などの運動を続け、大学当局がこれに応えた形。


日本のできごと

(7月30日〜8月19日)

日米韓首脳会談で「同盟制度化」宣言
 日米韓3カ国の首脳会談が8月18日、米国のキャンプデービッドで行われた。発表された共同声明では「日米韓の安全保障協力を新たな高みへと引き上げる」と宣言された。また関連して開催された日米首脳会談では、極超音速ミサイル対処用の迎撃ミサイルの共同開発で合意した。米国の狙いは、日米韓同盟をいわば「太平洋の北大西洋条約機構(NATO)のように制度化することで、岸田政権はその軍事同盟強化に率先して取り組むことを買って出た形だが、東アジアの軍事的緊張をあおる蛮行にほかならない。

麻生氏が台湾で中国への内政干渉発言
 自民党の麻生副総裁は8日、台湾を訪問し、講演で「いざとなったら台湾のために防衛力を使う」「日本、台湾、米国をはじめとした有志国に覚悟が求められている」などと、中国と「戦う覚悟」に言及した。この発言に対し、麻生氏に同行した党幹部は「政府内部を含めて調整した」と明言、「戦う覚悟」が岸田政権の総意だと述べた。中国への内政干渉で、危険な戦争挑発でもあり、撤回と中国への謝罪が求められている。

中国が希少金属輸出規制、米日に対抗
 中国政府は1日、半導体素材として使う希少金属のガリウムとゲルマニウムの関連製品の輸出を許可制とした。米国を中心に先端半導体などの対中輸出規制を強化する動きへの対抗措置。日本は世界最大のガリウム消費国で、国内供給の4割超をスクラップなどから調達するが、残る6割弱は輸入に頼る。このうち中国からが7割を占め、対中供給依存度は約4割に及ぶ。日本にはガリウムを使った加工品に強みを持つ企業が多く、今後悪影響が及ぶことは必至。輸出規制の応酬を回避するため、日本は米主導の中国デカップリングから距離を置くべきだ。

健康保険証「資格確認書」でまた迷走
 岸田首相は4日、2024年秋に現行の健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一体化する方針について、現段階で維持すると表明しながらも、保険証に代わって発行する「資格確認書」の有効期限を1年から最長5年に延ばす考えを示した。マイナカードをめぐるトラブル続出による国民の不安と怒りで事実上の方針転換に追い込まれた形。マイナ制度をめぐり、政府は現在データの総点検を急いでいるが、トラブルの多くは国が制度普及を急いだため実務を担う自治体の対応が追いつかなかったことにあるため、点検作業がさらなる負担とトラブル増加につながりかねない。岸田政権の迷走で国民生活はいっそう脅かされている。

GDP高い伸びも物価高で個人消費減
 内閣府は15日、23年4〜6月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表した。物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1・5%増、年率換算で6・0%増だった。プラス成長は3四半期連続。半導体不足の緩和により生産が回復した自動車などの輸出がけん引、輸出に分類されるインバウンド(訪日外国人)消費の回復もプラスに寄与した。一方、個人消費は0・5%減と3期ぶりのマイナスで、物価高の影響などで飲食料品や家電製品の購入が減少した。総務省が18日に公表した7月の消費者物価指数(20年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105・4となり、前年同月比で3・1%上昇、11カ月連続で上昇率が3%を超えた。国民経済と国民生活は悪化の一途だ。

生活保護申請増、高額役員報酬も増
 厚労省は2日、被保護者調査について発表した。5月に申請された生活保護の件数は2万2680件で、前年同月と比べ2327件、率にして11・4%増えた。前年同月を上回るのは5カ月連続、2桁の伸びは4カ月連続に。生活保護の利用世帯は164万8101世帯で、前年同月比8596世帯増。前年同月を上回るのは昨年5月以来13カ月連続。コロナ禍の影響長期化に加え、物価高騰が国民生活を直撃、生活困窮世帯の増加に拍車をかけている。一方、東京商工リサーチは1日、22年度に1億円以上の役員報酬を開示した上場企業は474社(994人)で、前年度の434社(928人)を超え、社数・人数ともに過去最多を更新したと発表、格差拡大が際立った。

国連が日本の人権状況に多数注文
 国連人権理事会の「ビジネスと人権」ワーキンググループは4日、12日間の訪日調査を終えて会見した。大手芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」の創設者・故ジャニー喜多川氏による性暴力について「調査の透明性に政府が責任を負うべき」と指摘、同事務所による被害調査が適切ではない疑いを表明した。また各分野の課題では、男女賃金格差の解消やセクハラ是正、LGBTQなどの権利尊重、障害者の職場の確保、労働組合のストライキや集会の障壁除去などを挙げ、独立の国家人権機関(NHRI)を設置するよう求めた。外国人技能実習制度も調査、仲介手数料の廃止や同一労働同一賃金の確保など、明示的な人権保護規定の必要性を指摘した。


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