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労働新聞 2023年8月5日号 トピックス

世界のできごと

(7月20日〜7月29日)

イスラエル「非常事態」、分断深刻
 イスラエル国会は7月24日、政府に対する裁判所のチェック機能を弱める法案を可決した。最高裁判所が不合理と判断した政府の行為を無効にできないようにする内容で野党は最終投票をボイコットするなど猛烈に反対した。これに対する国民の抗議行動は収まる気配がなく、長期の混乱は必至。ヘルツォグ大統領は政治指導者らに対し「国家非常事態にある」と警告している。イスラエルの後ろ盾となってきた米国のバイデン大統領も「分断を招く」と批判、改革を延期すべきだ訴えるが、米政権の影響力は縮小の一途で、中東の緊張を止める力がない。

世界経済不安、米欧利上げも一因
 国際通貨基金(IMF)は25日、四半期に1度の「世界経済見通し」を公表した。世界経済は2023〜24年を通して3・0%の低い成長を見込んだ。コロナ禍後の急回復で6・3%に達し足元まで堅調と見られた景気は、高インフレや米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)の相次ぐ利上げなどが下押し圧力となっている。ゼロコロナ政策終了で回復のけん引役を期待された中国経済も思わしくない。米銀破綻などによる世界金融不安はひとまず落ち着いたものの、高インフレ、世界的な気温上昇による干ばつ、ロシアの穀物輸出合意停止などが影響し、世界経済全体の見通しは今後さらに悪化する可能性が高いとしている。今後のFRBやECBの舵(かじ)取りはとりわけ新興国・途上国にさらなる大打撃を与え得る。

国防権限法で米が台湾に武器初供与
 米政府は28日、台湾への約3億4500万ドル(約480億円)の軍事支援を発表した。国防権限法に基づき米国が台湾に初めて無償で武器を供与する。携帯式地対空防衛システム(MANPADS)のほか、情報収集・警戒監視能力の強化策が含まれる模様。米議会で超党派の合意で成立した国防権限法では、台湾に5年間で最大100億ドルの軍事支援を行うことが明記された。米軍の備蓄から年間最大で10億ドル分の武器を無償供与することも決まっている。台湾への軍事支援を拡大し、中国への内政干渉と挑発を強めるきわめて危険な動きだ。

人民元の取引決済、初のドル超え
 中国が取引相手となる貿易や資本取引などの2国間決済で、中国の通貨・人民元の利用が広がっている。日経新聞社が25日、中国国家外貨管理局が公表する統計資料を基に、企業や個人、投資家の越境取引を通貨別に集計し発表した。人民元建ての割合は23年4〜6月期に49%となり、初めて米ドル建てを上回った。米国はドルの地位を武器に戦後世界を支配し続け、昨年来のウクライナ危機でもロシアに金融制裁を実施したが、これが一部の国々に脱ドルを促す契機となった。中国は3月にブラジルとの貿易や投資で米ドルを介さず人民元とレアルを交換することで合意、アルゼンチンも4月に中国からの輸入品の決済を米ドルから人民元に切り替えると発表、同様の動きは中東の産油国でも起きている。米ドルへの依存を減らしたいと考える新興国は多く、ドル離れは今後も進む見通し。

地球沸騰時代、問われる先進国の責任
 世界気象機関(WMO)は27日、今年7月の世界の平均気温が観測史上最高となる見通しだと発表、国連のグテレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球が沸騰する時代」と語った。だが28日までインドのチェンナイで開かれた20カ国・地域(G20)環境・気候相会合では、温室効果ガス(GHG)排出削減目標を巡り合意に至らなかった。先進国側は30年までにGHG排出の絶対量を43%削減することを提案したが、途上国側は「インフラ整備や成長能力が制限される」として、温暖化に大きな責任のある先進国側により大きな負担を求めている。

人民のたたかい

(7月20日〜7月29日)

 イスラエル国会が24日、司法制度改革関連法案を強行可決したことに対し、29日には全土で20万人以上が抗議に参加するなど、各地で大規模な行動が続いている。
 韓国・釜山一帯の市民団体でつくる「福島核汚染水投棄反対釜山運動本部」の代表7人が26日に来日した。一連の抗議活動のほか、福島市で開かれた原水爆禁止世界大会にも参加した。
 ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が28日からマクデブルクで全国大会を開いたが、ナチスの犯罪容認や移民・難民排除を主張する同党に抗議して数千人が大会会場付近に結集してデモを行った。


日本のできごと

(7月20日〜7月29日)

防衛白書、敵基地攻撃能力正当化
 防衛省は7月28日、2023年度版の防衛白書を閣議報告した。昨年12月の安保3文書改定を受けた初の白書で、これまで以上に中国の「脅威」をあおった上で、日本は「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境」にあるとし、相手のミサイル発射基地などを攻撃できる反撃能力(敵基地攻撃能力)の必要性を強調した。また「日米共同の統合的な抑止力をより強化」と明記、「核抑止力を中心とした米国の拡大抑止」で中国に対抗する姿勢も示した。日米の軍事一体化と大幅軍拡を進めるための布石となる内容で、誤りであり危険だ。

植田日銀が緩和「維持」も微修正へ
 日銀は28日の政策決定会合で、金融緩和政策は維持するとしたものの、長期金利をゼロ%程度に抑える政策をより柔軟に運用、変動幅を1%まで緩める修正を決めた。植田新総裁のもとで開かれた初会合だったが、大幅な政策転換とはならず、アベノミクスの下で10年に及んだ異次元緩和からの出口戦略の難しさが浮き彫りになった形だ。今後も薄氷を踏む舵(かじ)取りを迫られる植田日銀だが、利上げによる急激な円高や景気悪化、財政悪化などの反作用のツケを政府が国民に押し付けることは許されない。

最賃目安、過去最大増も全く不十分
 厚労省の中央最低賃金審議会は28日、23年度の最低賃金について、全国平均を現在の961円から1002円にするとの目安をまとめた。引き上げ幅は41円、引き上げ率は4・3%超で、ともに過去最大。だが目安額の根拠は、現行の最賃が発効した昨年10月から消費者物価指数が前年同期比4・3%上昇していることで、過去最大の上げ幅も物価高騰の後追いでしかない。地域ごとの引き上げ額は、Aランク(6都府県)41円、Bランク(28道府県)40円、Cランク(13県)39円で、現在219円の格差は221円に広がった。地域区分は4から3に減少したが、目安額の地域差は昨年の1円から2円に拡大した。岸田政権が目標とした平均1000円は達成したものの実際に1000円を超えるのは8都府県にとどまり、かつ週40時間働いて年収200万円程度の水準でもあり、物価高騰の中で全く不十分だ。

消費者物価、電気代値上げで伸び拡大
 総務省は21日、6月の全国消費者物価指数(2020年=100)を発表した。価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105・0と、前年同月比3・3%上昇、22カ月連続上昇に。大手電力が家庭向け規制料金を値上げした影響で電気代が押し上げられ、上昇率は5月の3・2%から拡大した。生鮮食品を除く食料の価格は9・2%上昇で、1975年 月以来の高い伸び率だった前月と同じに。国民大多数の生活苦は深まる一方だ。

オスプレイ報告書、陸自飛行見合わせ
 米海兵隊は21日、昨年6月にカリフォルニア州南部で発生し5人が亡くなったオスプレイ墜落事故の調査結果をまとめた。原因はエンジンとプロップローター(回転翼部分)をつなぐクラッチの作動不良(HCE)による「壊滅的かつ予期せぬ機械的故障」だと説明、人為的ミスの可能性を否定し、機体そのものに問題があったと結論付けた。これを受けて防衛省は24日、陸自オスプレイの飛行を当面見合わせると表明した。だが報告書ではHCE発生の根本的な原因は依然として不明とされ、構造的欠陥除去にめどが立っていない以上、米軍基地を含む日本全国から撤去し、佐賀空港などへの配備計画も白紙に戻すべきだ。

沖縄・先島へのシェルター配備加速
 松野官房長官は22日から3日間の日程で沖縄県の石垣島や与那国島を訪問、シェルターなど避難施設の整備について検討を加速させる方針を表明した。政府は宮古島に住民用の避難シェルターを設置するための予算案を2024年度概算要求に盛り込む方向で調整を進めているが、石垣と与那国でも動き出した形。岸田政権は「台湾有事」をあおって沖縄・先島諸島へのミサイル配備など軍事要塞(ようさい)化を進めているが、シェルターは軍事要塞化で「島が戦場になる」と危機感を抱く島民に「安全」を演出するためのもの。だがそれで住民の生命は守れないことは79年前の沖縄戦で県民は経験済みだ。シェルター配備の裏にある狙いを広く暴露する必要がある。

日本人、全都道府県で初の減少
 総務省は26日、住民基本台帳に基づく人口動態調査を発表した。23年1月1日時点の外国人を含む総人口は約1億2542万人で、前年を約51万人(0・4%)下回った。日本人に限ると約80万人(0・7%)減の約1億2242万人で14年連続減。沖縄県は人口が調査対象となった1973年度以来初めて減少に転じ、東京も2年連続で減少、初めて全都道府県での人口減少となった。一方、外国人人口は前年比約29万人(11%)増の約299万人で過去最多に。全都道府県で増加し、経済や社会の担い手として日本を底支えしている現状が改めて示された。


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