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労働新聞 2023年7月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月10日〜7月19日)

NATO首脳会議、域外へ関与拡大
 北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が7月11日からリトアニアで開催された。ウクライナへの軍事支援を「複数年の計画にする」などといっそう強化し、ウクライナのNATO加盟については時期を明示しないものの加盟手続きを簡素化、加盟国の軍事支出を国内総生産(GDP)比2%を「下限」として軍備拡張を進めることなどが確認された。首脳会議に先立つ10日にはスウェーデンの新規加盟についてトルコが容認する姿勢に転じた。一方、中国に対して「中国の野心と威圧的政策は、NATOの利益や安全、価値観への挑戦だ」と明記し名指しでけん制した。日本を含むアジア太平洋地域のパートナーとの連携強化など域外への関与拡大をもくろむが、NATO東京事務所の開設がマクロン仏大統領の反対で延期されるなど、中国を含むアジア太平洋への関与をめぐり内部での足並みがそろってるわけではない。

ASEAN、地域の平和と安定強調
 東南アジア諸国連合(ASEAN)と日韓米中ロ印EUなど26カ国・1機関の外相級が参加するASEAN地域フォーラム(ARF)が14日、インドネシアのジャカルタで開かれた。会合ではロシアのウクライナ侵攻や中台関係をめぐる意見の対立が相次いだ。またフォーラムに先立ってASEANと日米中ロなど周辺8カ国の東アジアサミット(EAS)外相会議も開かれた。フォーラム議長国であるインドネシアのルトノ外相は米中・米ロの対立を念頭に「対立が激化し、この地域は分断されている」と危機感を表明、「ARFが予防外交の新たな段階に移行し、地域の安全保障上の課題に迅速に対応すべき時期がきている」と訴えた。世界の分断・対立があおられるなか、東南アジア地域の平和と安定を望むASEANの姿勢が強く示された。

仏印首脳、防衛協力強化など合意
 フランスのマクロン大統領とインドのモディ首相は14日、パリで会談、防衛協力やインド太平洋地域での連携強化で合意した。共同声明では「両国のパートナーシップは一層重要に」とし、インド太平洋地域での協力に関する行程表に安全保障分野での連携やインドの防衛産業への技術協力などを盛り込んだ。インドが仏製戦闘機や潜水艦を購入することでも合意した。中国と対抗しながら外交の多角化を進めたいインドと、米国と距離を置きながら独自に新興・途上国への影響力を確保したい仏の思惑が一致した形だ。

米韓「NCG」初会合で朝鮮けん制
 米韓両政府は18日、朝鮮半島有事を想定した米国の核戦略について協議する「核協議グループ(NCG)」の初会合をソウルで開いた。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核兵器使用を抑止する口実として、核攻撃があった場合の対応を具体化していくことで合意した。在韓米軍は同日、核ミサイルを搭載できる米戦略原子力潜水艦(SSBN)ケンタッキーを釜山に寄港させた。SSBNの寄港は約40年ぶりで、所在を明らかにするのは異例。今回は米国から政府高官や専門家が約30人参加するなど、米韓による朝鮮へのけん制と挑発が一段と強まっている。

デジタル課税ルールの大枠まとまる
 日米欧中印など138カ国・地域は12日、国内に事業拠点を持たない巨大IT企業などにも各国が課税できるようにする国際課税のルールを改める多国間条約の大枠をまとめ、交渉事務局の経済協力開発機構(OECD)が成果文書を発表した。年末までに署名、25年の発効を目指す。だが巨大IT企業を多く抱える米国が批准しなければ事実上発効できない条件で、米国次第では世界を巻き込んだ「100年に1度」の税制改革は漂流しかねない。

人民のたたかい

(7月10日〜7月19日)

 ハリウッドの俳優ら約16万人が加盟する全米映画俳優組合(SAG・AFTRA)は14日、報酬引き上げやAI(人工知能)を通じた画像使用の規制などを求めて過去43年で最大規模のストに突入した。組合員は同日、映画・テレビ番組製作会社や動画配信会社の前で、全米脚本家組合(WGA)と共にピケを張り、街頭デモも行った。5月からストを続けるWGAとの同時ストは63年ぶり。
 韓国の医師・看護師らでつくる民主労総傘下の全国保健医療産業労組が医療スタッフ増員や公共医療強化を求め、全国で13〜14日にストを行った。一部の医療機関ではスト終了後もストを継続、釜山の最大規模の釜山大病院ではストが17日で5日目に入った。


日本のできごと

(7月10日〜7月19日)

岸田首相訪欧、日欧「戦略対話」創設
 岸田首相は7月13日、欧州連合(EU)のミシェル大統領らEU首脳と会談した。定期的に安全保障を議論する外相級の「日EU戦略対話」創設で合意するなど、安全保障分野での緊密な協力体制構築で一致した。また岸田氏は先立つ11日に北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席、合意した日・NATO間の新文書「国別適合パートナーシップ計画」には、中国を念頭に置いた共同訓練などの軍事交流の強化が明記された。これらは米国の対中統合抑止戦略の補完外交で、日本の国益にはならない。

岸田首相中東歴訪、中国対抗むき出し
 岸田首相は16日から中東3カ国を歴訪した。日本の首相の中東訪問は3年半ぶり。サウジアラビアのムハンマド皇太子やアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領、カタールのタミム首長と相次いで会談、岸田氏は、中東地域を次世代エネルギーの供給拠点にするため、脱炭素に向けた日本の先端技術を提供することなどを提起した。今回の中東訪問は、中国の影響力拡大が進む中東において、薄れる米国の存在感を埋め合わせる狙いがあったが、狙いには程遠く、日本側に大きな成果はなかった。

マイナめぐりデジタル庁立ち入り検査
 マイナンバーの公金受取口座に別の人の口座が登録されるトラブルが相次ぐなか、政府の第三者機関である個人情報保護委員会は19日、所管するデジタル庁にマイナンバー法に基づく立ち入り検査を実施した。システム全体を管理する同庁の対策が不十分だった可能性があるとして事実関係を直接調査した。同委の中央省庁への立ち入り検査は今回で2件目。すでにマイナ誤登録により医療・介護関連の給付費が別人の公金受取口座に振り込まれた事案が発生、今後も国民生活に深刻な悪影響・被害を生じさせかねないトラブルが多発している以上、少なくとも徹底した全容解明とシステムの一時停止・総点検、それを受けた再発防止策が必要だが、岸田政権に危機感は皆無だ。

23年上半期、物価高倒産が過去最多に
 東京商工リサーチが10日発表した23年上半期(1〜6月)の全国企業倒産(負債額1000万円以上)は、件数が4042件で、前年同期比32・0%増加した。件数は2年連続で前年同期を上回り、上半期としては20年以来、3年ぶりに4000件台となった。「物価高」に起因する倒産は300件で、前年同期(90件)の3・3倍に急増した。また帝国データバンクが同日発表した23年上半期(1〜6月)の全国企業倒産集計(負債額1000万円以上、法的整理のみ)では、国内企業の「物価高倒産」が375件に達し、通年での過去最多(22年の320件)を半年で上回った。業種別では「建設業」が83件で最多、建築資材や人件費の上昇による影響が目立った。「製造業」(79件)では食材価格の高騰を背景に食品関連産業で増加した。

文科白書、「働き方改革」の限界明白
 文科省は18日、22年度の文科白書を公表した。学校教育において教職の魅力向上と多忙解消が喫緊の課題だとして「長時間労働の是正は待ったなし」と言明、教員志望者の減少が教育水準の低下につながることへの懸念も示した。白書では「学校における働き方改革」について「何か一つをすれば解決するものではなく、特効薬のない総力戦」などとしているが、職員定数改善や少人数学級実現、教員1人が受け持つ授業数削減といった予算を伴う施策は軒並み先送りしている。月給の4%を教職調整額として支給する代わりに残業代を払わない給特法の残業代不支給制度も依然手付かず。学校における働き方改革の限界は明白だ。

最低賃金の伸び、世界に見劣り
 経済協力開発機構(OECD)は11日、23年の雇用見通しを発表した。最低賃金制度をもつ30カ国のデータを集計、日本は20年12月から23年5月の伸び率が名目6・5%増、物価変動を考慮した実質で0・7%増だった。一方、米国を除く29カ国の平均では名目29・0%増、実質2・3%増で、日本はいずれも平均の3分の1にも届いていない。岸田政権は6月に決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に23年に全国加重平均で最賃1000円を達成する方針を明記したが、それが達成できても最賃の伸びは他国と比べて大きく見劣りすることが統計で改めて浮き彫りになった形だ。

コロナ「第9波」も政府の危機感薄く
 厚労省は14日、新型コロナウイルス患者の入院体制の整備を各地方自治体に要請、地域で症状の度合いに応じた受け入れ病院の役割分担を明確にするよう求めた。コロナ感染は、5月8日に感染症法上の位置付けが「5類」に移行された後では初めて大きく拡大、約2カ月で週当たりの感染者数は全国で3・5倍となっている。「第9波」の到来とみる専門家は少なくないが、岸田政権は「現段階で新しい流行の波とは認識していない」(後藤経済再生担当相)などと危機感が薄い。政府の対応の遅れは許されない。


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