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労働新聞 2023年7月15日号 トピックス

世界のできごと

(6月30日〜7月9日)

イエレン訪中、「対話継続」のみ成果
 米国のイエレン財務長官は7月6から訪中し、李強首相らと会談した。米国にとっては6月のブリンケン国務長官に続く重要閣僚の訪中。イエレン氏は最終日の9日、「継続的な対話の確認で前進があった」と成果を強調、「長期的に互恵的な経済関係を実現することは可能」とも述べた。だが具体的内容に乏しく、「冷戦後最悪」とも言われた状況から「対話継続」までこぎつけたことだけが成果だ。今年の米中貿易は7000億ドル(約100兆円)に達するとみられ、また米国債の発行残高約24兆ドル(約3400兆円)のうち中国は8690億ドル(約123兆円)を保有している。バイデン政権は来年の大統領選挙を前に過度な対中融和姿勢には転じられないものの、中国との関係の必要にも迫られる難しい立ち位置にいる。

SCOイラン正式加盟、影響力高める
 上海協力機構(SCO)は4日、オンラインで首脳会議を開催した。今回の会議でイランの正式加盟を承認し、またベラルーシも加盟に向けた覚書に署名した。SCOは中ロと中央アジア4カ国、インド、パキスタンにイランを加えた9カ国体制となる。今年の議長国を務めるインドのモディ首相は「他国がSCO加盟に関心を示しているのはSCOが重要だとの証し」と、さらなる拡大への意欲を語った。会議後に発表された共同声明「ニューデリー宣言」では、西側諸国による経済制裁を念頭に「一方的な経済制裁は国際法の原則に矛盾し、第三国や国際経済に悪影響を与える」とした。拡大したSCOは国際政治上の影響力と存在感を一段と高める結果となった。

仏少年射殺事件抗議、政権揺さぶる
 フランスのパリ西郊ナンテールで検問中の警察官が北アフリカ系移民の少年を射殺したことへの抗議行動は仏全土に広がり、一部で暴動に発展、3日までに3000人以上が逮捕された。これを受けてマクロン大統領は2〜4日に予定の独への国賓訪問を中止した。暴動による被害総額は10億ユーロ(約1560億円)を超えるとされ、年明けから半年以上続いた年金改革反対闘争の直後でもあり、抗議行動への対応はマクロン政権の新たな火種となり政権を揺さぶっている。

米が非人道兵器をウクライナ供与へ
 米政府は7日、ウクライナに対しクラスター弾を含む総額8億ドル(約1150億円)の追加軍事支援を発表した。バイデン大統領は「過渡期に限った対応」と強調、正当化した。クラスター弾は内蔵した小型爆弾の不発弾による民間人被害が多発するため、使用や生産を禁じる国際条約に100カ国以上が署名しているが、米国やロシアは署名していない。米国はこれまで「ロシアがクラスター弾を使用」と批判してきたこともあり、今回の決定には与党・民主党内や多くの人権活動家から厳しい非難の声が上がり、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の英国やスペイン、カナダも反対を表明している。米バイデン政権の手前勝手で偽善的な本質があらわになった形だ。

イスラエルが西岸地区で大軍事作戦
 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区でのユダヤ人入植者によるパレスチナ人襲撃が相次ぐなか、イスラエル軍は7月3〜5日、西岸地区ジェニンで02年以来最大といわれる軍事作戦を展開した。住宅約900戸が破壊され、約3000人のパレスチナ人が自宅を追われた。西岸併合を主張する極右政党と連立を組むネタニヤフ首相の狙いは、入植地の拡大で西岸支配権を確立し支持基盤を固めることだ。この戦争犯罪に対し、米バイデン政権は不快感を示す程度の対応にとどまっている。ロシアのウクライナ侵攻への対応と比べ、二重基準との批判は免れない。

人民のたたかい

(6月30日〜7月9日)

カナダの国際港湾倉庫労働組合(ILWU)に所属する約7000人の港湾労働者は1日、30の港で30年ぶりのストライキに踏み切った。労働契約や賃金を巡って2月から続けてきた交渉が決裂したため。
 韓国ソウルで8日、福島原発の汚染水放出を巡る日本政府の計画に反対するデモが行われ、民主労総メンバーを含む数百人が街頭で抗議した。日本の後に訪れた国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は7日夜、金浦空港に到着したが、汚染水放出に反対するデモ隊が出口に殺到するなどしたため、8日未明まで約2時間足止めされた。


日本のできごと

(6月30日〜7月9日)

沖縄知事が訪中、平和構築に寄与
 中国との経済交流を目的とする日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の訪中団は5日、北京の人民大会堂で李強首相と会談した。訪中団の一員として参加した玉城沖縄県知事は「沖縄県民は平和を希求する沖縄の心を国内外に積極的に発信している。日本と中国の友好強化、アジアの繁栄と安定に貢献したい」と表明、李氏に新型コロナウイルスの影響で停止している沖縄と中国の航空便再開などを求めた。日米両政府が沖縄・南西諸島で中国対抗の軍事要塞(ようさい)化を進めるなか、沖縄県知事の訪中と交流は平和な地域づくりと緊張緩和につながる重要な取り組みだ。

消費税収23兆円、物価高で過去最高額
 財務省は7月3日、2022年度の国の一般会計決算概要を発表した。税収は約71兆1373億円と過去最高を更新、20年度から3年連続で過去最高となった。税収増をけん引したのは消費税で、23兆792億円と21年度から5%伸び、3年連続で所得税収を上回り最大の税目となった。1989年の導入以来で最も多く、10%に引き上げる前の2018年度の17兆6809億円から31%増えた。円安や資源高による物価上昇で食料品や日用品など幅広い商品やサービスの価格が上がったことが要因だが、庶民からより広く深く搾り取った結果とも言える。

実質賃金14カ月連続減、生活悪化鮮明
 厚労省は7日、5月分の毎月勤労統計(速報)を発表した。実質賃金は前年同月比1・2%減、22年4月から14カ月連続のマイナスとなった。所定内給与は1・8%増で1995年以来の伸び幅だが物価上昇に追い付かなかった。総務省が同日発表した5月の家計調査では、2人以上の世帯の消費支出は28万6443円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比4・0%減少、マイナスは3カ月連続となった。労働者の生活悪化は鮮明で、消費税率引き下げなど庶民減税が必要だ。

子どもの貧困と老老介護、深刻な現状
 厚生労働省は4日、2022年の国民生活基礎調査の結果を発表した。21年の子どもの貧困率(18歳未満の相対的貧困率)は11・5%で、3年前の14・0%から改善した。だがひとり親世帯では44・5%と、前回48・3%からは改善したが、依然半数近くが困窮にあえぐ状況が続き、経済協力開発機構(OECD)平均の31・9%を大幅に上回っている。また要介護者が65歳以上で同居して介護する家族や親戚も65歳以上の「老老介護」の割合は63・5%と過去最高となった。75歳以上同士も35・7%と20年でほぼ倍加した。

安倍銃撃1年、統一教会問題解決遠く
 安倍元首相が遊説中に銃撃され死去してから8日で1年が経過した。事件は安倍氏を筆頭に自民党議員と旧統一教会との長年にわたる深い癒着関係を浮き彫りにしたが、岸田政権は教会と自民党議員との関係調査をアンケート程度にとどめ、安倍氏との関係に至っては「故人で調査に限界がある」と調査さえ拒んだ。教会の名称変更が 年の安倍政権下で文化庁に認められた経過も不明のままで、「教会との関係を絶つ」との自民党方針も掛け声だけにとどまっている。教会と政治との関係一掃や、教会による被害根絶と救済など、問題は山積したままだ。

土地規制、原発や空港を初指定
 政府は6月30日、安全保障上の重要な土地として10都県161カ所を規制区域に追加した。8月に施行の予定。今回了承された区域は、沖縄県の石垣、宮古島、与那国の各駐屯地など南西諸島の基地や、川内原子力発電所(鹿児島県)や新潟空港(新潟県)で、原発や空港周辺の指定は初めて。施行されれば反基地・反原発運動などが監視対象となり得る。弾圧強化に対する警戒を高める必要がある。

米軍オスプレイ訓練の高度制限緩和
 日米両政府は7月7日の日米合同委員会で、米海兵隊オスプレイが沖縄県以外の日本国内の山岳地帯で行う低空飛行訓練での最低高度を現行の500フィート(約150メートル)から200フィート(約60メートル)に引き下げることで合意した。従来の日米合意は、人口密集地以外の地域で最低安全高度を150メートルとする日本の航空法に準じ、500フィート以上としてきた。国内法が定める安全基準を無視した危険な低空飛行訓練を放任するもので、国民の生命と生活、安全を脅かす許しがたい決定だ。

処理水放出「合格」、漁業者置き去り
 原子力規制委員会は7日、政府が8月にも始める東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に関し、関連設備の使用前検査の「合格」を示す終了証を東電に交付した。政府は放出に向けた安全性の評価作業を全て終えた。また国際原子力機関(IAEA)は4日の報告書で「処理水の放出が人と環境に及ぼす放射線の影響は無視できるほどわずか」と評価した。福島などの漁業関係者が放出に反対の意を示し、中国など他国からも批判や懸念の声があるが、国はそうした声を置き去りに放出を強行しようとしている。


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