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労働新聞 2023年7月5日号 トピックス

世界のできごと

(6月20日〜6月29日)

米印首脳会談、印ほぼ「満額回答」
 国賓として米国を訪問したインドのモディ首相は6月22日、バイデン大統領と会談した。モディ氏は米国との防衛協力や自国の産業振興への協力、国連安保理常任理事国入りへの支持を取りつけた。また会談に合わせて米ゼネラル・エレクトリックとインド国営企業の戦闘機用エンジンの共同生産に合意した。米半導体大手のインド工場建設など供給網の多様化に向けた協力でも一致した。バイデン氏は「米印のパートナーシップは世界で最も重要」と誇示したが、インドは非同盟外交を堅持しており、今回は中国を「エサ」に米国からほぼ「満額回答」の実利を引き出した。米国のへりくだった対印姿勢は中国対抗への焦りの裏返しだ。

中国首相、独仏首脳と相次ぎ会談
 中国の李強首相は経済閣僚らとドイツを訪れ、20日にベルリンでショルツ政権との政府間協議に臨んだ。李氏は会見で「影響力のある大国として互いに手を携え、関係をより高いレベルに引き上げるべき」との意を示した。ショルツ首相は「危機の時代に直接対話はこれまで以上に重要」と述べて会談の意義を語った。続いてフランスを訪問した李氏は22日にマクロン大統領とパリで会談し、気候変動対応や食料安定供給などの世界的な課題で両国の協力が重要だの認識で一致した。中国をめぐっては、マクロン氏が北大西洋条約機構(NATO)連絡事務所の東京開設にも反対するなど、米英と独仏の間には姿勢の差が目立つが、李氏の訪欧はその差を印象づけるものだ。

独軍がリトアニア駐留へ、歴史的転換
 ドイツのピストリウス国防相は26日、ドイツ連邦軍の4000人規模の旅団をバルト3国のリトアニアに駐屯させると表明した。ドイツはすでにNATOの一員として約800人の部隊を常駐させているが、「ロシアの脅威」を理由に独自軍常駐化と大幅増強に踏み切る。ピストリウス氏は「欧州最大の経済大国として東方防衛に立ち上がることを確約する」と、経済力にふさわしい軍事的存在感を示す野心を隠さなかった。この常駐は戦後ドイツの安保政策の歴史的な転換となる。

ウクライナ復興特需狙い企業殺到
 英ロンドンで開かれたウクライナの復興支援に向けた国際会議が22日に閉幕した。ウクライナと共同議長国を務めた英政府は、参加各国・機関による総額600億ドル(約8兆5600億円)の支援金提供を表明した。世界銀行などの推計では復興必要額は4110億ドル(約58兆円)。ウクライナのシュミハリ首相が「第2次大戦後で最大のプロジェクト」と述べるとおり巨額で、英政府は投資や貿易、専門知識の共有といった形でウクライナの復興支援を約束する企業を事前に募り、署名した企業名を復興会議のウェブサイト上で公表、38カ国からインフラ、医療、農業など幅広い分野の21業種400社を超える企業が署名した。500人を超える企業人などが参加した会議を主催した英政府は、復興特需にありつこうと群がる企業の手配師だ。

人民のたたかい

(6月20日〜6月29日)

米国の映画・テレビ監督1万9千人を代表する全米監督組合(DGA)は23日、制作会社らとの新たな労働協約を勝ち取った。新協約は3年間で13%の賃上げや、海外からのアクセスで発生する再放送料を動画配信会社に支払わせること、AI(人工知能)からの保護策など。DGA議長は「協約は未来のために築かれ、全ての分野のメンバーに影響をもたらす」と指摘、またストを続ける全米脚本家組合(WGA)や米俳優組合(SAG・AFTRA)に「この業界を前に進める共通の闘いにいる脚本家や俳優と団結して立ち向かう」とエールを送った。
 米国ニューヨーク中心部のマンハッタンで25日、LGBTQなどの性的少数者ら7万5000人が差別のない未来の実現を訴えて「プライドマーチ」を行った。また、米大手コーヒーショップのスターバックスの店舗がLGBTQに連帯する虹色の旗の掲揚を禁止したことに抗議し、労組「スターバックス・ワーカーズ・ユナイテッド」に加盟する労働者が23日、全米各地の店舗でストライキを始めた。
 韓国で23日、地域漁業団体が全羅南道の莞島で東京電力福島第一原発の汚染水海洋放出計画に反対する集会を開き漁業関係者約700人が参加、漁船など約200隻で海上デモを行った。
 フランスのパリ郊外ナンテールで27日、検問中の警察官が北アフリカ系17歳の少年を射殺したことに対し、仏全土で抗議活動が行われた。


日本のできごと

(6月20日〜6月29日)

通常国会閉幕、解散戦略は不発
 第211通常国会が6月21日、150日間の会期を終えて閉会した。政府が新たに提出した法案60本のうち、防衛財源確保法や防衛産業強化法、GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法、改悪マイナンバー法、改悪入管法、LGBT法などの悪法を含む58本が成立した。主要7カ国(G7)広島サミット開催で政権支持率を上げて総選挙に踏み切る岸田首相の解散戦略は、続発するマイナンバーのずさん運用や首相秘書官だった長男の政治私物化で支持率が下落したため不発に。日本維新の会と国民民主党は政権補完勢力としての本性を鮮明にした一方、立憲民主党や共産党は対立軸をつくれなかった。野党の「敵失」で命脈を保った岸田政権だが、政権基盤は国会を通じていっそう弱まった。

天皇「国際親善」外交、即位以来初
 天皇・皇后は23日までインドネシアを公式訪問した。「国際親善」が目的の外国訪問は2019年の即位以来初めて。インドネシア独立戦争に参加した残留日本兵らが眠るカリバタ英雄墓地などを訪問した。インドネシアは 年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国で、2億7000万人超を抱える人口世界第4位、ASEAN最大の国。世界最大のムスリム人口を有する国でもある。今回の皇室外交の狙いは、中国対抗を強める米戦略とも歩調を合わせ、インドネシアとの関係強化を通じてASEANやイスラム圏への影響を拡大させることだが、インドネシアの最大貿易相手は中国で、同様にASEAN各国と中国との関係も深い。そこに横やりを入れるような外交であればやめるべきだ。

核拡大抑止協議、危険な「一体運用」
 日米両政府は28日、米ミズーリ州ホワイトマン空軍基地で、米国の「核の傘」強化に関する拡大抑止協議を実施したと発表した。同協議は10年以来定期的に実施されているが、今回は反撃能力(敵基地攻撃能力)を盛り込んだ昨年末の安保3文書の閣議決定や、5月に行われた日米首脳会談で拡大抑止に関する議論の強化で一致したことを受けたもの。協議には両国の外務・防衛当局審議官級が参加、自衛隊と米軍の一体的な運用について意見を交わし、有事の手続きなどに関する省庁間机上演習も行った。米担当者は「地域における米国の戦略資源の可視性を増大させる」と表明、中国や朝鮮に対し自らの核戦力を誇示したが、この危険な挑発行動への協力を進める日本政府の外交・軍事は許しがたい蛮行だ。

日韓財務対話、通貨交換協定再開へ
 日韓両政府は29日、東京で7年ぶりに財務対話を行い、金融危機の際に通貨を融通する通貨交換(スワップ)協定の8年ぶりの再開で合意した。同協定は、アジア通貨危機を受け、当初は韓国を支援する枠組みとして01年に運用を開始したが、日韓関係の悪化で15年に失効していた。今回結ぶ協定の期間は3年、融通枠は15年の失効時とほぼ同水準の100億ドル(1兆4000億円程度)に設定した。鈴木財務相は「いざという時の備えは円とウォンへの信認にプラス」と成果を強調した。また対話ではインド太平洋地域など第三国でのインフラ整備での協力でも合意した。日韓両国は、首脳のシャトル外交再開や韓国への輸出管理厳格化措置の4年ぶり解除など、政経両面で関係改善を進めるが、それが米戦略に沿った中国包囲網強化の範囲内のものであれば両国の国益とはならない。

消費者物価、食料高騰47年ぶり水準
 総務省は23日、5月の全国消費者物価指数(20年=100)を発表した。価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が104・8と、前年同月比3・2%上昇した。電気代の値下がりで上昇率は前月の3・4%から鈍化したが、上昇は21カ月連続。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数で見た物価は4・3%の上昇で、第2次石油危機当時の1981年6月以来、ほぼ42年ぶりの高い伸び。生鮮食品を除く食料の価格は9・2%上昇し、75年10月以来、47年7カ月ぶりの伸びに。鳥インフルエンザの影響で鶏卵は35・6%上昇した。電気代は、国による負担軽減策で17・1%値下がりしたものの、6月使用分から家庭向け規制料金が値上げされたため、今後上昇する見通し。国民負担は増加の一途だ。

男女平等で日本125位、過去最低
 世界経済フォーラム(WEF)は21日、男女平等の実現度合を指数化した「ジェンダー・ギャップ指数」を発表した。調査した146カ国のうち、日本は過去最低の125位。政治や経済分野での指数が悪化、前年調査(116位)より順位を落とし、G7では過去最低水準に。調査は、経済、教育、健康、政治の4分野でそれぞれ行われているが、日本は政治が138位、経済が123位となり、両分野で指数が悪化した。政治では、女性の議員数や閣僚数が他の国・地域と比べて大幅に少ないことに加え、これまでに女性の首相が誕生していないことなども指数や順位に織り込まれ、女性の権利を制限していると指摘されるサウジアラビア(131位)を下回り、世界で最も低い圏内にあると見なされた。


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