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労働新聞 2023年6月25日号 トピックス

世界のできごと

(6月10日〜6月19日)

米国務長官が初訪中、敵視変わらず
 ブリンケン米国務長官は6月18日から就任以来初めて訪中し、秦剛国務委員兼外相、王毅共産党政治局員と相次いで会談した。双方の対話を継続していくことで合意、秦剛外相の訪米など相互訪問を行うことなども確認した。またブリンケン氏は訪問の最後に習近平中国国家主席とも会談した。今回の訪問は、中国敵視の行き過ぎから局面打開を迫られていたバイデン政権の一手だが、台湾問題や人権問題などを口実に中国への攻撃を強める米国の対中政策の基本は変わってはいない。

米欧、金融政策のかじ取り困難
 米連邦準備制度理事会(FRB)は14日、昨年3月以降続けてきた利上げを11会合ぶりに見送り、政策金利となるフェデラル・ファンドレートの誘導目標を年5〜5・25%に据え置くことを全会一致で決めた。一方、欧州中央銀行(ECB)は15日の理事会で、前回と同じ0・25%の利上げを決め、8会合連続の利上げとなった。欧州各国が景気後退に転落する中でもインフレ基調の高止まりが続き、次回7月の会合でも利上げを続ける姿勢を示した。銀行破綻など新たな金融危機の可能性が広がる中での米欧の中央銀行のかじ取りはますます難しくなっている。

ドイツ初の安保戦略、軍拡明確に
 ドイツ政府は14日、初の国家安全保障戦略を閣議決定した。ドイツが「欧州の中心に位置し、人口や経済規模最大の国として、平和と安全に特別な責任を負う」と、欧州の中心的な軍事大国を目指すこと表明、軍事費を国内総生産(GDP)2%に引き上げ、北大西洋条約機構(NATO)基準を達成するとした。ロシアを「欧州と大西洋地域の平和と安全にとって最大の脅威」と位置付け、国防軍の強化やエネルギー安全保障などを通じた自国の「強靱(きょうじん)性」を高め、欧州連合(EU)やNATOに依拠し安全保障を図るとした。中国に対しては警戒を表明する一方、「中国なくして多くの世界的な課題を解決できない」と協力を模索する姿勢も示した。

アフリカ7カ国首脳が独自に和平仲介
 南アフリカのラマポーザ大統領やアフリカ連合(AU)議長国コモロのアスマニ大統領らアフリカ7カ国の首脳が16日、ウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領と会談した。食料価格の高騰などに苦しんできたアフリカとして早期戦闘終結を望む立場を直接伝え、交渉による解決と無条件の穀物取引などを含む独自の和平案を示した。また19日にはロシアのプーチン大統領と会談し、同和平案を示した。米欧が和平へ動かない中でのアフリカ諸国の自主的・積極的な動きは、アフリカ各国の国力と国際的地位の向上、またそれに伴う自信の反映でもあり、画期的だ。

中国、パレスチナ和平に積極関与へ
 中国を公式訪問したパレスチナ自治政府のアッバス議長は14日、習近平国家主席と北京で会談した。習氏は、パレスチナ国家とイスラエルが共存する「2国家解決」を支持、積極的な役割を果たしたいとした。米国を最大の後ろ盾とするイスラエルと対立するパレスチナに対し、中国は長年経済支援を続けてきたが、パレスチナの和平交渉は静観してきた。中東に対する米国の関与が低下するなか、中国の中東への影響力はさらに拡大しつつある。

世界の難民1億人以上、途上国負担増
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は14日、内戦や迫害などで住まいを追われた難民・国内避難民数の年次報告で、22年末で過去最多の1億840万人に上ったと発表した。前年比1910万人増も過去最多の増加となった。最大要因はロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナ難民は22年末に570万人に。また難民を最も受け入れているのは低所得・中所得国で、富裕国ではないと指摘、世界の国内総生産(GDP)の1・3%にすぎない開発途上国46カ国が難民の20%以上を受け入れていると明らかにした。

人民のたたかい

(6月10日〜6月19日)

イタリアのローマで17日、市民ら約2万人が雇用の死守とウクライナ戦争への反対を訴えてデモを行った。デモ参加者らは、メローニ首相の経済・社会政策に抗議、ウクライナへの武器供与の停止を要求し、平和の旗と反ウクライナ戦争、反NATOのプラカードを掲げた。
 ドイツのハノーバーで12日、市民300人がNATO創設以降最大規模での空軍演習に抗議した。
 米国の全米脚本家組合(WGA)が5月2日に開始した15年ぶりのストは16日に7週目に入った。


日本のできごと

(6月10日〜6月19日)

骨太の方針決定、政権基盤の弱さ反映
 岸田政権は6月16日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。方針は2024年度予算についての概算要求や予算編成など経済政策の指針となる。転職促進などの「労働市場改革」、成長基盤としての「少子化対策」、防衛力の抜本的強化など「わが国を取り巻く環境変化への対応」が3本柱。リスキリング(学び直し)による能力向上の支援、企業の実態に応じた職務給(ジョブ型雇用)の導入、成長分野への労働移動の円滑化による「三位一体の労働市場改革」で「構造的賃上げ」を実現するなどとするが、これらは以前から財界が要求してきた政策にほかならない。少子化対策拡充と防衛力抜本的強化の2大歳出増については財源を明示できず結論を先送り、政権基盤の弱さをにじませる内容となった。

少子化対策決定、「異次元」と程遠く
 岸田政権は13日、少子化対策の強化に向けた「こども未来戦略方針」を閣議決定した。児童手当の所得制限を撤廃し、現在は中学生までの支給期間を高校生までに延ばし、第3子以降は0歳から高校生まで3万円を支給する。また、出産費用への保険適用導入の検討や、給付型奨学金を拡大する。育休給付率の引き上げや「こども誰でも通園制度(仮称)」創設も盛り込む。必要な予算は24年度からの3年間に年3兆円台半ばとしたものの、財源に関しては28年度までの歳出改革徹底と明記しながらも具体的な削減項目には触れていない。「異次元の少子化対策」を看板として掲げる岸田政権だが、部分的かつ小粒な対策で財源も示せず、看板倒れに終わることは避けられない。

増税先送りの「防衛力強化資金」創設
 防衛財源確保法が16日の参院本会議で可決、成立した。税金以外の収入を積み立てて複数年度かけて使う「防衛力強化資金」の創設が柱で、国が保有する資産の売却収入や特別会計の繰入金などの税外収入4・6兆円を活用する。政府は5年間の防衛費を43兆円にするために14・6兆円程度の追加確保を目指し、税外収入や歳出改革で上積みを図るが、防衛増税の開始は25年以降に先送りし、当面の国民批判をかわす姿勢。歳出削減にしろ増税にしろ、将来にわたる新たな国民負担は避けられない。そもそも米国と一体となった中国敵視の軍拡路線こそが誤りであり、労働者や国民は軍拡のための歳出削減や増税に反対し闘うべきだ。

初の宇宙安保構想、軍事利用強化へ
 政府の宇宙開発戦略本部(本部長・岸田文雄首相)は13日、宇宙軍拡に関する戦略文書「宇宙安全保障構想」を初決定した。昨年末に決定した安保3文書に基づくもので、また今後10年間の宇宙政策の基本方針である新たな宇宙基本計画も正式決定した。構想では、宇宙空間を「外交・防衛・経済・情報など、国力をめぐる地政学的競争の主要な舞台」と位置づけ、同盟国・同志国との連携強化を打ち出した。また計画では、「スタンド・オフ防衛能力(敵基地攻撃能力)の実効性確保の観点から、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーション(小型衛星群)を構築」と明記、他国領域内攻撃のための情報収集体制強化を盛り込んだ。「米国との連携可能性を踏まえ、衛星を活用した極超音速兵器(HGV)の対処能力向上」とも記した。米国と歩調を合わせて宇宙の軍事利用を飛躍的に強化する内容だ。

LGBT法成立、4党により内容後退
 LGBTなど性的少数者への「理解増進法」16日、参院本会議で可決、成立した。自民、公明、日本維新の会、国民民主党が取りまとめたもので、21年に超党派議連がまとめた法案から内容的に後退、「差別は許されない」の表現が「不当な差別はあってはならない」に、国に義務付けた「調査研究」も「学術研究」に、当事者が決めるべき「性自認」も多義的な「ジェンダーアイデンティティ」に置き換えられた。留意事項には「全ての国民が安心して生活できることとなるよう留意する」との条文も新設され、多数者の反対で性的少数者の人権・尊厳が制限されかねない内容に。むしろ性的少数者への差別を助長しかねない悪法を成立させた4党の罪は深い。

強制不妊で報告書、人権侵害あらわ
 旧優生保護法(1948〜96年)に基づき障害者らが不妊手術を強いられた問題で、衆参両院の調査室などが初めてまとめた報告書が19日、両院議長に提出された。不妊手術のピークは55年で、旧法下では約2万5000人が手術を受けたとされ、うち約75%が女性だった。「本人同意なし」の手術は全体の約66%を占めた。最年少はいずれも当時9歳だった男女2人だった。同意がなかったケースでは、医師らでつくる優生保護審査会が手術の適否を決定していたが、審査会が定足数を欠いた状態で開かれたり、書類の持ち回りだったりするなど、手続きが形骸化していた。国が別手術と偽ることを許容、福祉施設の入所や結婚の前提条件としたり、盲腸の手術とだまして受けさせたりした事例も確認された。放射線照射や子宮摘出など旧法にすら反した運用実態も明らかになった。


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