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労働新聞 2023年6月15日号 トピックス

世界のできごと

(5月30日〜6月9日)

南米首脳会議、「左派」主導で再開
 南米12カ国は5月30日、ブラジルの首都ブラジリアで首脳会議を開いた。南米諸国は2008年5月に南米諸国連合(UNASUR)設立の条約を採択、域内協力を進めてきたが、10年代に右派政権が増えると分裂状態に陥った。しかし19年末以降アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、ブラジルなどで「左派」政権へ交代、約10年ぶりに首脳会議が再開された。議長を務めたブラジルのルラ大統領は域内の再団結を呼びかけ、経済活性化や、貧困・飢餓などの課題解決と地域統合に向けた協議を進めることで一致した。米国と距離を置いた左派政権が主導する地域統合の動きは米国にとって打撃だ。

BRICS拡大の流れ、影響力さらに
 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカでつくるBRICSの外相会合が6月1日から南アフリカのケープタウンで開かれた。共同声明では8月に予定されている首脳会議までに加盟国拡大についての指針をまとめることが盛り込まれた。またBRICS間の貿易などで米ドルではなく各国通貨の使用を奨励することも明記された。現在19カ国が新規加盟に意欲を示し、2日に開かれた拡大会合にはイランや、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、キューバ、コンゴ、カザフスタンなどの代表が参加した。BRICSが「開発途上国の擁護者」(南アのパンドール外相)として国際社会で台頭する一方、主要7カ国(G7)の存在感は一段と薄れている。

米史上初のデフォルト、薄氷の回避
 バイデン米大統領は3日、連邦政府の借金限度額を定める債務上限の適用を25年1月まで停止する法律に署名、成立した。米政府の債務総額は1月に法定上限に達し、5日にも政府の資金繰りが行き詰まる懸念が生じていたが、米国債の史上初のデフォルト(債務不履行)はかろうじて回避された。債務上限の停止を24年11月に行われる大統領選挙の先まで延ばしたことで、大統領選において債務上限が「政争の具」となる事態は避けられたが、対立の背景にある貧富の差の拡大など国内矛盾の激化と分断は深まる一方で、今後も債務問題は国際政治・経済の危機への着火点としてくすぶる。

米がサウジ接近もサウジは両にらみ
 米国のブリンケン国務長官は6日、サウジアラビアでムハンマド皇太子らと会談した。サウジとの関係を立て直し中東での影響力回復を探るブリンケン氏は、中東の安全保障やエネルギー分野での協力拡大を協議、7日にはペルシャ湾岸6カ国でつくる湾岸協力会議(GCC)の閣僚級会合にも参加した。一方、サウジは中国への接近をテコに米国を揺さぶり、米国からの原子力協力など実利を狙うが、核開発につながりかねない技術提供に米国は及び腰だ。中国の仲介で中東では長年の対立関係を解消する動きが広がっており、この地域での失地回復をもくろむ米国にとって中国は煙たい存在だ。

NATO東京事務所に仏大統領が反対
 北大西洋条約機構(NATO)は24年中に東京に連絡事務所を設置する方向で日本と調整、中国に対抗する狙いだが、この動きに対しフランスのマクロン大統領は5日、「NATOは北大西洋のためのもので、地理的な観点から拡大すれば誤りとなる」と反対した。事務所が設置されれば、中国との関係悪化によって外交・貿易の両面で仏が不利益を被ることは避けがたい。マクロン氏は4月に訪中した際、台湾情勢に関して「欧州は米中の追随を避けるべきだ」と発言しており、中国対抗を強める一方の米英との外交姿勢の差はいっそう鮮明となった。

人民のたたかい

(5月30日〜6月9日)

韓国労働組合の全国組織、全国民主労働組合総連盟(民主労総)が5月31日、ソウルで大規模な集会を開き、建設労組幹部のヤン・フェドン氏を焼身自殺に追い込んだ事件や、年初からの国家保安法違反容疑での家宅捜査など、尹錫悦政権の労組弾圧を糾弾し、謝罪を求めた。
 ポーランドの首都ワルシャワで6月4日、「ロシアの影響」を受けたと認定された公務員らの追放を可能にする新法を打ち出した保守与党に抗議する大規模なデモが行われ、約50万人が参加した。
 フランスでは6日、年金改革に反対する14回目の大規模デモが全土で実施され、約28万人が参加した。


日本のできごと

(5月30日〜6月9日)

防衛産業支援法成立、国家丸抱え支援
 防衛産業支援法が6月7日、参院本会議で自公与党や維新・国民民主の「準与党」に加え、立憲民主も賛成し可決、成立した。昨年閣議決定した安保3文書の具体化で、防衛産業を「防衛力そのもの」と位置づけ、生産・技術基盤を強化する。防衛装備品の海外輸出などを助成金で促進する。部品の国内調達を増やすサプライチェーン(供給網)強化への財政支援も行う。事業継続が困難となった際には製造ラインの国有化を可能とする。契約企業の従業員に守秘義務を課し、刑事罰の対象にする。国家丸抱えの軍需産業支援は米追随・中国対抗の軍事大国化と一体できわめて危険であり、これに賛成する立民は野党として言語道断だ。

改悪入管法成立、人権侵害むしろ悪化
 外国人の収容・送還ルールを改める改悪入管難民法が9日、参院で可決、成立した。入管施設での人権侵害横行から2021年に廃案に追い込まれたものとほぼ同じ法案で、難民申請が3回以上になった場合は原則強制送還できるようにするなど、外国人の人権侵害を拡大し生命を危険にさらす内容。国会の法案審議では、難民を保護すべき難民認定審査のずさんな実態が露呈、法案の前提となる立法事実が根底から揺らぐ事態となり、また大阪入管で常勤医師が酩酊(めいてい)しながら診療していた問題も発覚、デタラメと横暴がまかり通った。国際人権基準の実現には程遠く、入管行政と難民認定審査の根本的見直しが必要だ。

GX電源法成立、原発60年超運転可に
 原子力発電所の運転期間の60年超への延長を盛り込んだGX(グリーントランスフォーメーション)電源法が5月31日、参院本会議で可決、成立した。同法は原子力基本法など5本の関連法を束ねたもので、11年3月の東京電力福島第一原発の事故後に定められた「原則40年、最長60年」という原発運転期間が、安全審査などによる停止期間を除くことで事実上 年超も可能となる。「脱炭素」を名目に原発事故の反省と教訓を踏みにじり、事故後の原子力政策を180度転換する内容。「安全神話」を事実上復活させる岸田政権の原発推進政策は、国民の生命や財産をいっそう危険にさらす。

トラブル多発もマイナ保険証義務化へ
 健康保険証を廃止しマイナンバーカードに一本化する改定マイナンバー法が6月2日、参院本会議で可決、成立した。現行の保険証は来年秋以降、1年の猶予期間を経て使えなくなる。しかし同法の国会審議中にもマイナカードをめぐるトラブルが多発、マイナ保険証への同姓同名の別人情報の誤登録や、公的受取口座への別人のマイナンバー登録、マイナポイントの別人への付与などが次々と明らかになった。マイナ保険証のトラブルは医療からの除外など、国民の健康と生命に直結する問題で、国は来秋廃止を中止、システムを全面的に見直すべきだ。

開発協力大綱を改定、中国対抗あらわ
 岸田政権は9日、政府開発援助(ODA)の基本方針にあたる開発協力大綱の改定案を閣議決定した。改定は15年以来8年ぶり。途上国に巨額インフラ支援を打ち出す中国に対抗、質を重視した社会インフラ整備や医療・教育分野などに力を入れ、相手国の要請を待たずに提案する「オファー型」のODAを導入するなどの内容で、援助を通して南半球を中心とした新興・途上国「グローバルサウス」を引き寄せる狙い。だが23年度のODA予算は5708億円と、ピークだった1997年度の1兆1687億円と比べて半分程度で、中国の20分の1程度という統計もある。中国対抗の思惑からの援助ならば本末転倒でやめるべきだ。

倒産14カ月連続増、物価高が経営圧迫
 東京商工リサーチは8日、5月の企業倒産件数を発表、前年同月比34%増の706件と、14カ月連続で前年同月を上回った。産業別では、建設業の132件(40%増)や卸売業の96件(55%増)の倒産が目立った。同社によると、円安による仕入れコストの上昇が経営を圧迫、人件費上昇で人材も確保しにくくなっており、業績回復を見通せない中小企業が事業継続を断念するケースも増えているという。またコロナ禍での実質無利子・無担保「ゼロゼロ融資」の返済は7月から2024年4月に集中するとみられ、今後いっそう倒産が増える可能性が高い。政府はコロナ禍から「景気は回復」と判断するが、一方で物価高騰を価格転嫁できていない中小企業の苦境は増しており、対策は待ったなしだ。

同性婚訴訟で「違憲」主流、法制化を
 同性婚を認めない民法などの規定は憲法に違反するとして、福岡市と熊本市に住む同性カップル3組が国を訴えた訴訟で、福岡地裁は8日、現行規定を「違憲状態」とする判断を示した。同様の訴訟は19年に全国5地裁で起こされたが、今回の福岡で一審判決が出そろい、札幌と名古屋で「違憲」、東京と福岡で「違憲状態」となり、違憲判断が主流となった。カップルにとって家族と承認されない不利益は重大で、同性婚の法制化は政治の責務だ。


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