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労働新聞 2023年6月5日号 トピックス

世界のできごと

(5月20日〜5月29日)

G7よそに新興諸国は独自外交活発化
 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)が5月21日、閉幕した。サミット拡大会合にはグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の新興諸国6カ国も招待されたが、グローバルサウスを取り込みたかった米国などG7の思惑とは裏腹に、招待された新興諸国はサミット直後から活発な独自外交を展開した。直後の23日にインドネシアのジョコ大統領は米国と敵対するイランのライシ大統領を国賓として迎えて首脳会談を行い、中立的な独自外交を進める姿勢を鮮明にした。またブラジルのルラ大統領は、24日に習近平中国国家主席と、26日にはロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、ロシアとウクライナの和平協議を仲介する多国間の枠組みづくりを提唱した。G7のあては外れた格好だ。

ゼレンスキー氏、アラブ経由でG7に
 ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、G7広島サミットに参加するため来日したが、来日直前にサウジアラビアのジッダを訪問、開催中のアラブ連盟(22カ国・地域)首脳会議にも参加、ロシア・ウクライナ双方の間で中立的な姿勢をとるサウジなどアラブ諸国の「和平仲介」に応えた。ウクライナ和平をめぐっては、中国が2月に和平案を発表、その2日後にはサウジのサウド外相がウクライナを訪問、4月には中国の習近平主席がゼレンスキー氏と電話会談を行っている。ウクライナへの軍事支援で戦争を長引かせるばかりの米欧とは一線を画し、各国は独自に、あるいは協力して和平を仲介し、国際経済の正常化と自国の国際的地位向上をめざしており、G7の影響力は低下の一途だ。

トルコ、エルドアン氏続投決まる
 決選投票となったトルコの大統領選挙が28日投開票され、現職のエルドアン氏が得票率約52%を獲得、親欧米派とされる野党統一候補のクルチダルオール氏を破って再選を果たした。大統領の任期は5年、三選は憲法で禁止と規定されている。経済の悪化や地震対応などで政権批判が高まる中だったが、20年にわたって東西の地理的要衝で大きな影響力を発揮してきた実績も手伝い続投が決まった。政権交代を期待していた米欧にとっては打撃だ。地域大国トルコの今後の動向は、ウクライナ和平問題やシリア情勢など中東情勢の行方にも大きな影響が及ぶ。

IPEF始動、参加国の思惑にずれも
 米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合が27日、米国デトロイトで開かれた。日米や東南アジア諸国など14カ国が参加、重要物資のサプライチェーン(供給網)を強化する協定の策定で合意した。2022年5月のIPEF発足後、具体的な成果は初。米国は、離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)に代わり、IPEFを足がかりに中国排除のアジア太平洋の経済圏構築を進める構想だが、貿易、供給網、クリーン経済、公平な経済の4分野の軸のうち、供給網以外では米中対立の下で双方と一定の距離を保ちたい国との思惑のずれは埋まっていない。IPEFでは関税の撤廃や引き下げを協議しないため輸出を拡大したい東南アジア諸国などにとっては実利が見えにくく今後の協議進展の見通しは暗い。

米韓両軍、最大規模の実弾演習開始
 韓国軍と米軍は25日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)からの「全面攻撃」を想定した実弾演習を開始した。同演習は11回目だが、米韓同盟70周年の節目となる今回は過去最大規模。韓国軍は朝鮮対抗のため、先制打撃・迎撃・大量報復の「3軸体系」を強化すると打ち出すが、朝鮮はこれを「戦争挑発者の狂気」と批判している。

人民のたたかい

(5月20日〜5月29日)

イスラエルでネタニヤフ政権が打ち出した司法制度改革に対する抗議デモが20週目に入り、20日も10万人のデモ隊がテルアビブの幹線道路などを埋め、最高裁判所の権限を制限する同改革をやめるよう訴えた。
 英国の労働組合会議(TUC)は22日、ロンドンの議会前広場で、保守党が導入を狙うスト制限法案反対の緊急集会を開いた。参加者は「労働者の権利を守れ」「スト権を奪うな」などのプラカードを掲げて抗議した。
 オランダのハーグで27日、環境保護団体「エクスティンクション・レベリオン(絶滅への反逆)」のデモ隊が政府の化石燃料への補助金廃止を求めて高速道路の一部を封鎖した。同団体は今年に入って欧州各地の空港などでも抗議行動を敢行している。


日本のできごと

(5月20日〜5月29日)

G7広島サミット閉幕、成果乏しく
 広島市で行われていた主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)が5月21日、首脳宣言を採択し閉会した。宣言ではロシア批判を前面に押し出し、また会議にウクライナのゼレンスキー大統領や韓国、オーストラリアに加えてインドやブラジル、インドネシアなどグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)主要国も招待することで、「ロシアと中国に対抗する世界横断的な陣営形成」を国際的に印象付ける狙いだったが、招待国からG7サミットを盛り上げる発言は乏しく、会議の成果よりG7の国際政治上の影響力低下が目立つ結果となった。会議の開催と新たなウクライナ支援策などに国民の血税を注ぎ込んだ岸田政権だったが、成果は若干の内閣支持率上昇にとどまった。

景気判断、3年3カ月ぶり「回復」
 政府は25日まとめた5月の月例経済報告で、国内の景気判断を「緩やかに回復している」に上方修正した。「回復」の判断は、新型コロナウイルス禍前の2020年2月以来3年3カ月ぶり。景気の先行きについては「雇用・所得環境が改善する下で、緩やかな回復が続くことが期待される」との見方を示し、また注意が必要な要因から「供給面での制約」を削除した。個別項目の判断では、内需の柱である個人消費を「持ち直している」に上方修正、10カ月ぶりに引き上げた。外食や旅行などサービス消費の回復に加え、部品供給制約の緩和で自動車生産が増加し新車販売台数が伸びていることが背景。コロナ禍からの経済活動の正常化が進む今こそ、企業は労働者の大幅賃上げを実施するべきだ。

こども金庫創設案も財源批判不可避
 自民党の茂木幹事長は27日、岸田首相の掲げる「異次元の少子化対策」を巡り、関係予算を一元管理する特別会計「こども金庫」を創設すると表明した。「どんぶり勘定にならぬよう、費用負担の見える化をはかる」と狙いを説明、これをもって国民に対し負担増への理解を求める思惑だ。岸田政権は24年度から3年間の対策集中期間に、歳出削減を軸に公的医療保険の上乗せ徴収などで年3兆円規模の追加財源を捻出するなどの対策内容を、6月にまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」で大枠を示す予定だが、財源の細部をめぐる議論は与党内でも迷走を続けている。政権が看板とする少子化対策と防衛力強化のための防衛費増はともに財源をめぐる国民からの批判を回避できる見通しはなく、岸田政権の解散総選挙戦略を困難にしている。

朝鮮衛星打ち上げに「破壊措置命令」
 浜田防衛相は29日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が人工衛星の打ち上げを通告したことに関連し、沖縄県に展開する自衛隊の部隊などに破壊措置行動命令を発出、日本周辺の公海や日本の排他的経済水域(EEZ)上空での迎撃を命じた。また岸田首相は同日、「人工衛星と称したとしても弾道ミサイル技術を用いた発射は安保理決議違反であり、国民の安全に関わる重大な問題」と危機感と敵視をあおった。人工衛星の打ち上げは朝鮮の正当な権利で、また「ミサイル技術と同じ」との批判はそのまま日本にも当てはまり、正当性はない。命令は朝鮮の人工衛星打ち上げに便乗した危機あおりと軍拡キャンペーンにほかならず、国民はこれにだまされてはならない。

農業白書、食料安保確保へ「転換点」
 岸田政権は26日、22年度の農業白書(食料・農業・農村の動向)を閣議決定した。「食料安保の強化に向けて」という特集を組み、従来の気候変動や人口増などに加え、特に22年2月から続くウクライナ侵攻で穀物や肥料などの価格高騰や輸出の停滞などが発生、食料安保のリスクが増大していると指摘した。また日本が食料や肥料などの多くを輸入に依存する実態が「ターニングポイントを迎えている」として、海外依存の高い品目の生産拡大などを通じて輸入依存構造の転換を着実に推進するとし、麦や大豆などの国内生産拡大や、肥料として畜産由来の堆肥や下水汚泥を活用する取り組みを紹介した。このような施策は必要だが、こんにちの日本の食料自給率低下と生産基盤弱体化をもたらした米国と多国籍大企業のための政治の抜本的転換は、食料安保の強化に向け避けて通れない。

半導体装置の輸出厳格化、中国は批判
 経済産業省は23日、法令を改定し、7月23日から先端半導体の製造装置23品目の輸出管理を厳しくする措置を行うと発表した。これにより輸出は許可制となり、友好国などとして包括許可とする米国や韓国、台湾、シンガポールなど42カ国・地域向け以外は経産相の個別の許可が必要となる。米国は22年10月に中国向け輸出を厳格化、半導体製造装置に強みを持つ日本とオランダにも足並みをそろえるよう迫っていた。日本政府の対応に対し中国政府は「中国の利益を深刻に損なうならば黙って見過ごすことなく断固とした対応をとる」とした。中国は22日には米半導体大手・マイクロンテクノロジーの製品調達禁止を発表、米国に対し事実上の対抗措置に踏み出しており、今後は米要請に従ったがゆえの不利益を日本企業が被ることも危惧される。


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