ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2023年5月25日号 トピックス

世界のできごと

(5月10日〜5月19日)

米韓首脳会談、中朝抑止に日韓利用も
 米国のバイデン大統領と訪米した韓国の尹錫悦大統領は4月26日、ホワイトハウスで会談し、「ワシントン宣言」で合意した。宣言は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対抗し米国の戦力で韓国の防衛に関与する「拡大抑止」の強化、弾道ミサイルの搭載可能な原子力潜水艦の韓国派遣などが柱だが、韓国が独自の核兵器開発計画を追求しないとの新たな誓約も盛り込まれた。尹大統領を国賓としてもてなした米政権は、日韓を抱き込み中朝抑止に利用しながらも、核戦力は独占し東アジアの覇権を維持する思惑だ。

相次ぐ米銀破綻、予断許さない米経済
 米国の地方銀行ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が5月1日、経営破綻した。2008年のリーマン・ショック以降では最大の米銀破綻となった。3月のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻で信用不安が広がり、直後にシグネチャー・バンクも破綻、わずか2カ月弱で3行が破綻する連鎖となった。米連邦準備制度理事会(FRB)は記録的なインフレを抑制するため22年3月から利上げを続けてきたが、急ピッチの利上げで米銀破綻が相次ぎ景気悪化懸念が強まっている。これらを受けて銀行は融資に慎重な姿勢を強めており、 1〜3月の米企業の破産は183件と前年同期比で倍増した。バイデン政権は債務上限問題も抱えており、米経済の先行きは予断を許さない状況だ。

習・ゼレンスキー、侵攻後初の電話会談
 中国の習近平国家主席は4月26日、ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアの侵攻開始後初の電話会談を行った。習氏はウクライナに特別代表を派遣して危機の解決を目指す方針を示し、早急な停戦に向けた努力を言明した。その上で「傍観することも火に油を注ぐこともしない」と述べ、ウクライナへの武器供与で戦争を長引かせる米欧との違いを鮮明にした。ゼレンスキー大統領も会談を「ウクライナにとり公正かつ持続可能な平和の達成に向けた協力の可能性を協議した」と評価した。サウジアラビアとイランの国交回復仲介など、中国の積極外交は具体的に成果を上げて世界平和に寄与しており、今後の動向が注目される。

アラブ連盟にシリア復帰、中東好転
 アラブ連盟(21カ国・1機構)は5月7日、エジプトのカイロで外相会合を開き、11年に連盟の参加資格を停止したシリアの復帰を決めた。同年始まったシリア内戦では、サウジなどアラブ諸国とイランが支持するアサド政権と対立、米欧と共に反体制派の支援に回っていた。サウジは3月にイランと国交回復し、シリアとの関係改善も進めている。今回の決定は中東での緊張を緩和する動きだが、米英はこれに反対、引き続きシリアに全面的制裁を続けるなど横やりを入れている。

英与党、インフレで統一地方選敗北
 英国の中心・イングランドの統一地方選挙が4日投開票され、与党・保守党が敗北した。230自治体の約8000議席を争う今回の地方選は昨年10月に発足したスナク政権にとって初の審判となったが、保守党が議席の過半数を獲得した自治体は選挙前の81から33に落ち込み、全体で1000議席以上減らした。最大野党の労働党は71の自治体で議席の過半数を獲得し、全体で500議席以上増やしたほか、野党第2党の自由民主党も全体で400議席以上増やした。先進国で突出した物価上昇が続き、賃金の大幅引き上げを求める空前のストライキが広がるなかの選挙となり、スナク政権には大打撃となった。記録的なインフレと賃上げを求める労働者の闘いは欧州各国の政権を激しく揺さぶっている。

人民のたたかい

(5月10日〜5月19日)

米国のハリウッドやニューヨークで全米脚本家組合に所属する約1万1500人が5月2日から開始したストは3週目に入り、17日にも脚本家らが行動した。これほど大規模なストは15年ぶり。組合は公平な契約を求め、ネットフリックスやアマゾン、アップル、ディズニー、ワーナーなどを傘下に置く映画テレビ制作協会(AMPTP)と交渉を続けたが合意に達しなかった。難航の背景にはストリーミングなどの視聴方法の急速な拡大や脚本家には死活問題となる人工知能(AI)の使用規制などの課題があり、ストは長期化する見通しだ。


日本のできごと

(5月10日〜5月19日)

「広島ビジョン」で核抑止を正当化
 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)が5月19日、広島市で開幕し、同日「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発表した。被爆地・広島から「核軍縮」を世界にアピールする狙い。だが「広島ビジョン」は、ロシアに対し「核兵器のいかなる使用も許されない」と批判、また中国も「透明性や対話が欠けている」などと非難する一方で、米英仏の核保有は「存在する限りにおいて防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、戦争と威圧を防止する」などと「核抑止」を正当化した。被爆者から「写真を撮って献花するだけでは意味がない」「核の傘の下で戦争をあおるような内容」などと厳しく批判されるのも当然だ。

英軍を自衛隊の「武器等防護」対象へ
 岸田首相は18日、広島市で英国のスナク首相と会談し、共同文書「広島アコード」を発表した。自衛隊が他国の艦艇などを守る「武器等防護」の対象を英国軍にも広げる方向で検討することを盛り込んだ。安保関連法で自衛隊の任務となった武器等防護は現在米国とオーストラリアのみが対象で、英国も対象となれば3カ国目。英国の環太平洋経済連携協定(TPP)加入が実質合意されたことも踏まえ、両国間での閣僚級会合創設も明記された。両国は空自次期戦闘機の共同開発や両軍が互いに国を訪問する際のルールを定める円滑化協定(RAA)で合意するなど関係強化が続くが、中国対抗のための関係強化では国益につながらない。

米原子力空母が佐世保に9年ぶり入港
 米原子力空母ニミッツが19日、米海軍佐世保基地がある佐世保港(長崎県佐世保市)に入港した。米原子力空母の入港は2014年8月のジョージ・ワシントン以来およそ9年ぶり。ニミッツは今年3月に太平洋と東シナ海で自衛隊と共同訓練を行い、5月には東シナ海で日米韓共同訓練に参加、その後は南シナ海でも対中国を念頭にした訓練を実施している。米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港とするロナルド・レーガンと合わせて日本周辺で事実上原子力空母2隻態勢がとられている。中国を念頭に置いた米軍基地強化の一環であり、危険だ。

与党のLGBT法案、むしろ差別助長
 自公与党は18日、性的少数者への理解増進を目的とする議員立法「LGBT理解増進法案」の修正案を衆院に提出した。修正案は、自民党保守派などに配慮し、21年に超党派議連がまとめた法案にある「差別は許されない」との文言を「不当な差別はあってはならない」に変更、「性自認」の表現も国際的な疾病の分類から削除された「性同一性障害」に近い「性同一性」に置き換えた。日本はG7で唯一同性婚が認められず、また性的少数者の差別禁止を明記した法律もないことから、与党は体面を保つために修正案のG7サミット前の国会提出にこだわっていた。だが修正案はむしろ差別を助長しかねない内容で本末転倒。そもそも与党議員ら自身が「理解」とは程遠い現状で、顔を洗って出直すべきだ。

改定健康保険法で後期高齢者の負担増
 改定健康保険法が12日、参院本会議で可決・成立した。出産育児一時金の財源を75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度からも捻出するため、保険料の上限額を段階的に引き上げる。24年度は年金収入211万円超、25年度は同153万円超を対象とし、75歳以上の約4割が対象となる見通し。別途高齢化などに伴う保険料増が行われれば、合計で加入者1人当たり年平均1万円近い負担増となる見込み。生活に余裕のない高齢者にさらなる負担を強いることになり、「現役世代の負担抑制」を口実に世代間対立をあおる点でも問題が多い。

マイナカードで深刻なトラブル頻発
 厚労省は12日、マイナカードと保険証を一体化したマイナ保険証をめぐり、別人の情報を間違って本人の資格情報にひも付ける誤登録が21年10月から22年11月までの1年2カ月間に7312件確認されたと発表した。医療事故を招きかねない深刻なトラブルが多数起きていたことの責任は重大。マイナカードを使ったコンビニでの証明書発行サービスでも別人の住民票や印鑑証明が交付されるトラブルが頻発している。国の個人情報保護対策が安全性を確保できていない状況の中、保険証をマイナカードに一体化させる保険証廃止法案を審議するなど言語道断だ。

家庭向け電気料金さらに値上げへ
 岸田政権は16日、「物価問題に関する関係閣僚会議」で電力大手7社の6月からの家庭向け規制料金の値上げ幅査定方針を了承した。値上げ率は北陸電力が42%、沖縄電力が38%など大幅で、最小の東京電力でも14%。電気料金は電力会社の裁量で上げられる分はすでに値上がりしており、国民生活の大きな痛手となることは避けがたい。電力大手は3月にはカルテルを結んでいたとして公取委から課徴金支払いを命じられるなど公益企業としての社会的責任を果たしておらず、また原発に巨額の費用を投じている問題もあり、値上げは撤回されるべきだ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2023