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労働新聞 2023年5月15日号 トピックス

世界のできごと

(4月20日〜5月9日)

米韓首脳会談、中朝抑止に日韓利用も
 米国のバイデン大統領と訪米した韓国の尹錫悦大統領は4月26日、ホワイトハウスで会談し、「ワシントン宣言」で合意した。宣言は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対抗し米国の戦力で韓国の防衛に関与する「拡大抑止」の強化、弾道ミサイルの搭載可能な原子力潜水艦の韓国派遣などが柱だが、韓国が独自の核兵器開発計画を追求しないとの新たな誓約も盛り込まれた。尹大統領を国賓としてもてなした米政権は、日韓を抱き込み中朝抑止に利用しながらも、核戦力は独占し東アジアの覇権を維持する思惑だ。

相次ぐ米銀破綻、予断許さない米経済
 米国の地方銀行ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が5月1日、経営破綻した。2008年のリーマン・ショック以降では最大の米銀破綻となった。3月のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻で信用不安が広がり、直後にシグネチャー・バンクも破綻、わずか2カ月弱で3行が破綻する連鎖となった。米連邦準備制度理事会(FRB)は記録的なインフレを抑制するため22年3月から利上げを続けてきたが、急ピッチの利上げで米銀破綻が相次ぎ景気悪化懸念が強まっている。これらを受けて銀行は融資に慎重な姿勢を強めており、 1〜3月の米企業の破産は183件と前年同期比で倍増した。バイデン政権は債務上限問題も抱えており、米経済の先行きは予断を許さない状況だ。

習・ゼレンスキー、侵攻後初の電話会談
 中国の習近平国家主席は4月26日、ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアの侵攻開始後初の電話会談を行った。習氏はウクライナに特別代表を派遣して危機の解決を目指す方針を示し、早急な停戦に向けた努力を言明した。その上で「傍観することも火に油を注ぐこともしない」と述べ、ウクライナへの武器供与で戦争を長引かせる米欧との違いを鮮明にした。ゼレンスキー大統領も会談を「ウクライナにとり公正かつ持続可能な平和の達成に向けた協力の可能性を協議した」と評価した。サウジアラビアとイランの国交回復仲介など、中国の積極外交は具体的に成果を上げて世界平和に寄与しており、今後の動向が注目される。

アラブ連盟にシリア復帰、中東好転
 アラブ連盟(21カ国・1機構)は5月7日、エジプトのカイロで外相会合を開き、11年に連盟の参加資格を停止したシリアの復帰を決めた。同年始まったシリア内戦では、サウジなどアラブ諸国とイランが支持するアサド政権と対立、米欧と共に反体制派の支援に回っていた。サウジは3月にイランと国交回復し、シリアとの関係改善も進めている。今回の決定は中東での緊張を緩和する動きだが、米英はこれに反対、引き続きシリアに全面的制裁を続けるなど横やりを入れている。

英与党、インフレで統一地方選敗北
 英国の中心・イングランドの統一地方選挙が4日投開票され、与党・保守党が敗北した。230自治体の約8000議席を争う今回の地方選は昨年10月に発足したスナク政権にとって初の審判となったが、保守党が議席の過半数を獲得した自治体は選挙前の81から33に落ち込み、全体で1000議席以上減らした。最大野党の労働党は71の自治体で議席の過半数を獲得し、全体で500議席以上増やしたほか、野党第2党の自由民主党も全体で400議席以上増やした。先進国で突出した物価上昇が続き、賃金の大幅引き上げを求める空前のストライキが広がるなかの選挙となり、スナク政権には大打撃となった。記録的なインフレと賃上げを求める労働者の闘いは欧州各国の政権を激しく揺さぶっている。

人民のたたかい

(4月20日〜5月9日)

 メーデーの5月1日、世界各地で労働者がデモや集会を行った。
 フランスではマクロン政権による年金改革への反対が根強く、大規模動員につながった。デモ参加者は全土で230万人、パリは55万人に上り、昨年に比べて7倍近い労働者が参加した。
 ドイツではドイツ労働組合総同盟(DGB)が全国398カ所で集会を開き、約30万人が参加した。
 英国のチャールズ国王の戴冠式が6日、ロンドンで行われたが、これに反対する抗議行動も行われ、「私の国王ではない」と訴えたデモも行われた(写真)。英調査会社によると、君主制支持者は12年7月には75%だったが、今年4月には62%と大幅に下落、18〜24歳に限れば支持率は3割前後にまで落ち込んでいる。


日本のできごと

(4月20日〜5月9日)

統一地方選後半戦、低投票率顕著
 統一地方選後半戦が4月26日に投開票され、衆参5補選と政令市以外の市区町村長・議員選挙が行われた。衆参5補選で自民党は4勝1敗とし補選前から議席を増やしたものの接戦が多く支持の広がりを欠いた。日本維新の会は衆院和歌山1区補欠選で自民との争いを制し、また統一選前後半で奈良県知事をはじめ自治体首長や地方議員に計599人が当選、地域政党・大阪維新の会も含め非改選と合わせて774人となり、目標としていた600人を上回った。一方で共産党など老舗政党は大きく後退、歴史的低投票率と合わせて政治不信の広がりをにじませる結果となった。

首相・外相の連休外遊、中ロ対抗
 岸田首相は29日からエジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークのアフリカ4カ国に加えシンガポールを訪問した。林外相も同日からトリニダード・トバゴ、バルバドス、ペルー、チリ、パラグアイの中南米5カ国を歴訪した。岸田政権はアフリカや中南米で影響力を強める中国やロシアへの対抗心を隠さず、主要7カ国(G7)議長国として米欧の側にグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)をひき付けようと血眼になった。国際的影響力の低下する米国を支えながらG7広島サミットで「西側の結束」を演出しようと躍起だ。

日韓シャトル外交12年ぶり再開
 岸田首相は5月7日、韓国を訪問して尹錫悦大統領と会談した。日本の首相として5年ぶりの訪韓で、両首脳が互いの国を訪問し合う「シャトル外交」を12年ぶりに再開させた。岸田氏は尹氏をG7広島サミットに招待しており、2カ月間で3度顔を合わせる。両首脳は日韓関係について「未来志向で関係を」との認識で一致、半導体のサプライチェーン(供給網)の構築など経済安保での連携も確認した。元徴用工をめぐっては岸田氏が「心が痛む思い」と述べて歴史的な責任をうやむやにした。米国の東アジア戦略・中国包囲網強化の一環として進められる、歴史を無視した「未来志向」では真の日韓関係改善に寄与しない。

自衛隊と海保連携強化へ統制要領決定
 政府は4月28日、防衛相が有事の際に自衛隊法に基づき海上保安庁を指揮下に置く手順を定めた「統制要領」を決定した。去年12月に改定された安保3文書の「国家安全保障戦略」には自衛隊と海保の連携を強化する方針が明記されており、その具体化。閣議や国会に諮らず自衛隊と海保による内部の申し合わせとして決定、また役割分担など明らかにできない部分があるとして正式文書は非公表。人命救助や海上交通の安全確保を主任務とする海保の軍隊化とも言える危険な動きだ。

コロナ「5類」移行、患者の負担増も
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日、「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。特例的なコロナ対応は大きく変わり、検査費や外来でかかる医療費は公費負担が原則終了する。感染対策や待機期間は個人や企業の判断に委ねられる。水際対策としての入国時の陰性証明やワクチン接種証明の提示は終了する。5日には世界保健機関(WHO)が緊急事態の終了を宣言、3年以上にわたったパンデミック(世界的大流行)は大きな節目を迎えたが、専門家からは感染「第9波」の可能性も指摘されており、「第8波」で感染しても医療を受けられない「医療崩壊」を招いた岸田政権には医療体制強化の責務が依然残されている。

実質賃金減と保険・税負担増の二重苦
 厚労省は9日、3月の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。1人あたりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比2・9%減と12カ月連続のマイナスに。労働者の生活をめぐっては、22年度平均の全国消費者物価指数(20年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が103・0と上昇、第2次石油危機があった1981年度の4・0%以来41年ぶりの高い伸びとなる一方、22年度の家計調査では、直接税(所得税や住民税)と社会保険料を合わせた非消費支出(2人以上の勤労者世帯)は月11万7750円と、この20年間で1・4倍となった。大幅賃上げが何よりも喫緊の課題であることは政府統計からも明かだ。

円安で貿易赤字が過去最大21・7兆円
 財務省は4月20日、22年度の貿易統計(速報)を発表した。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は21兆7284億円の赤字で、貿易赤字は2年連続。赤字幅は前年度の3・9倍に膨らみ、比較可能な1979年以降で過去最大に。輸入額は過去最大の120兆9550億円で、火力発電などに使われる石炭は輸入量が1・9%減少したものの輸入額が139・5%の大幅増、穀物類も輸入量が1・2%減ったものの輸入額が37・5%増加した。輸出額も過去最大の99兆2265億円となったが、これも円安で円建て金額が膨れただけで、自動車や電気機器などの輸出量は伸び悩んだ。異次元緩和による円安の弊害が深刻さを増している。


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