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労働新聞 2023年4月25日号 トピックス

世界のできごと

(4月10日〜4月19日)

米機密文書流出で同盟国の信頼低下
 米政府の機密文書がインターネットに流出した問題で4月13日、空軍州兵が容疑者として逮捕された。流出文書には、ウクライナの反転攻勢についての軍事機密や英国やフランスに関する情報のほか、韓国やイスラエルなど同盟国の通信を傍受していた記述もあり、米国の信頼は失墜した。米国は世界最大のスパイ国家で、これまでもエシュロンなどで世界中の通信傍受を行ってきたが、今回の流出に各国は改めて不信感をあらわにしている。米バイデン政権が進めてきた同盟関係の再構築にも大きな痛手となっている。

中国とブラジルが関係強化で一致
 訪中したブラジルのルラ大統領は14日、習近平国家主席と会談した。経済関係拡大で合意、ロシアのウクライナ侵攻についても「対話と交渉が唯一の道」との認識で一致し、両政府は貿易や投資、科学技術など15分野の2国間協力の文書に調印した。ブラジルは米欧との関係を優先してきたボルソナロ前政権に代わって、1月にルラ新政権発足し、中国との関係改善を進め、3月には貿易や金融で両国の通貨を使って直接取引できる仕組みの創設でも合意している。BRICSの一員であるブラジルは、インドと同様に、南半球を中心とした途上国「グローバルサウス」の主要国で、今回の会談はグローバルサウス取り込みで対中抑止を強めたい米国の思惑とは裏腹の動きだ。

シリアとアラブ諸国の関係修復拡大
 シリアのメクダド外相が12日、サウジアラビアを訪問しファイサル外相と会談、国交正常化で合意した。2011年に始まったシリア内戦をめぐって関係が悪化していた。会談で両国は大使館や航空便の再開に向けて手続きを開始することを合意した。シリア内戦はアサド政権の勝利で収まりつつあり、アラブ諸国は現実に対応した形でシリアとの関係修復の動きを早めている。14日のアラブ連盟外相会議ではシリアの連盟復帰が議論され、復帰も近いとみられる。サウジは3月、中国の仲介でイランと国交回復で合意しており、米国の存在感が低下する中、中東の地政図も大きく変わっている。

G20が5回連続で共同声明出せず
 ワシントンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議は13日、5回連続して共同声明を出せずに閉幕した。議長国インドはとりまとめの調整もできず、改めて機能不全が示された。インフレと経済減速、金融システム不安、新興国の債務問題などへの対処を迫られているが、主要7カ国(G7)など米欧諸国とロシアや中国との立場の隔たりが大きく、具体的な対処策で道筋を示せなかった。世界の国内総生産(GDP)の85%を占めるG20が政策協調できず、世界経済は大きなリスクを抱えたままだ。

ウクライナ産農産品禁輸の動き広がる
 ポーランドとハンガリーは15日、スロバキアは17日、ウクライナからの農産品の輸入禁止をそれぞれ発表した。ブルガリアも禁輸措置を検討している。ロシアのウクライナ侵攻で同国からの農産品が陸路で欧州に大量に流入していることが背景にあり、禁輸対象は穀物だけでなく他の広範な農産品に及ぶ。ポーランドやハンガリーの政権党は地方の農業者を支持基盤とし、またポーランドは年内に選挙を控えており、農業者らによる抗議デモも相次いでいた。禁輸措置は6月30日を期限としているが、欧州連合(EU)やウクライナは反発、ウクライナ対応でEUの結束に影響が出る可能性もある。

人民のたたかい

(4月10日〜4月19日)

 チェコの首都プラハで16日、エネルギー価格と物価の高騰に抗議して数千人がデモを行い、政権に退陣を求めた。「貧困に対抗するチェコ」と名付けられた抗議デモは、議会で議席を持たない政党PROが主催。同党はフィオラ政権のエネルギー危機対応を批判、また親ロシアではない立場を示した上でウクライナ和平促進を求めている。PROは政権を「安全保障上の最大の脅威」と呼び、ウクライナへの兵器供与をやめるよう求めた。
 ノルウェーの2つの主要労働組合は、賃上げをめぐる労使交渉が決裂したため、民間部門の約2万5千人が17日からストライキに入った。建設業や醸造業、フェリー運航会社、製造業などに影響が及ぶ見通し。これ以外の労働者についても、労使交渉がまとまらなければ21日からストを予定、最終的に約20万人が参加する可能性も。ノルウェーでは過去2年間、物価上昇率は賃金の伸びを上回っており、組合は実質賃金の引き上げを求めている。


日本のできごと

(4月10日〜4月19日)

G7閣僚15会合開始、「結束」演出
 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)に関連して日本国内で開催される一連の閣僚会合が4月15日、札幌市で行われる気候・エネルギー・環境相会合から始まった。18日には長野県軽井沢町で開かれていた外相会合で共同声明が採択され、中ロ対抗や南半球を中心とした途上国「グローバルサウス」との連携強化などで一致した。日米欧は台頭する中国やウクライナを侵攻するロシアを念頭に「結束」演出に余念がないが、国際政治上のG7の存在感は低下の一途で、一連の会合も結束確認以上に大きな意義はない。

23年版外交青書、中国対抗姿勢あらわ
 林外相は11日、閣議で2023年版の外交青書を報告した。日本周辺の安全保障環境を「戦後最も厳しい状況にある」とし、前年版にあった「展開次第では…」との文言を削除し、警戒感を最大限に表現した。中国に対しては「最大の戦略的な挑戦」とし、これも前年の「安保上の強い懸念」より敵意を引き上げた。グローバルサウスを初めて記載、「包摂的なアプローチでの連携が重要」とした。米戦略に沿った中国包囲外交の範囲内の内容だ。

大阪IRを政府が初認定も問題山積
 カジノを中核とする統合型リゾート(IR)で、大阪府・市が国に申請していたカジノ事業の計画が岸田首相を本部長とするIR推進本部の承認を経て、14日に正式に認定された。IRの整備計画が政府の認定を受けたのは初めて。25年国際博覧会(大阪・関西万博)の会場と同じ大阪市の人工島、夢洲にカジノ、国際会議場、展示場、ホテルなどを併設する巨大観光施設を建設する計画で、29年の開業を予定する。国・地方の巨額の公費がつぎ込まれる計画だが、経済効果への疑問に加え、ギャンブル依存症問題も大きく横たわる。計画は中止されるべきだ。

遅過ぎる技能実習制度の見直し
 外国人労働力のあり方を議論する政府の有識者会議は10日、技能実習制度の廃止を求める提言の試案をまとめた。同制度について「目的と実態の乖離(かいり)がある」と指摘、「現行制度を廃止し、人材確保と育成を目的とする新制度の創設を検討すべき」と提起した。技能実習制度は「国際貢献」を目的に掲げて発足・運用されているものの、実態は地方や中小企業の労働力不足をカバーする手段として利用されてきた面が強く、賃金未払いや長時間労働などの人権侵害が横行している。遅過ぎる制度見直しで、真っ当な制度創設を最大限急ぐべきだ。

企業倒産3年ぶり増、原材料高打撃
 東京商工リサーチは10日、22年度の企業倒産件数(負債額1千万円以上)を発表した。前年度比15・0%増の6880件と、3年ぶりに増加に転じた。産業別では、08年度以来14年ぶりに10産業全てで前年度を上回った。農・畜・林・漁・鉱業は肥飼料価格などの高騰を受け51・6%増の91件と大幅に増えた。運輸業は燃料費の急騰や人件費の増加が響き43・8%増の351件。人手不足に加え、原材料価格の高騰を価格転嫁できない中小零細の倒産が増加、またコロナ禍を受けた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化し、再建を断念するケースも増えた。国民生活・経済を支える産業を守る国の対策は待ったなしだ。

学術会議が勧告、改悪案見送りへ
 日本学術会議は18日、会員選考方法の見直しなどを盛り込んだ学術会議法改定案の今国会提出を見送るよう政府に勧告した。総会で決議した勧告を出すのは18年ぶりで、これまで会員任命拒否問題や政府の法改悪方針をめぐって出してきた「声明」より強い意思の表出と位置付けられる。こうした声も受け、岸田首相は改悪学術会議法案の今国会での提出見送りを決めた。安倍・菅政権時代から続いた学術界への介入・統制策動が今回は空振りに終わったが、今後とも警戒が必要だ。

人口12年連続減、生産年齢過去最低
 総務省は12日、22年10月1日時点の人口推計を発表した。外国人を含む総人口は21年10月と比べて55万6000人少ない1億2495万人だった。12年連続減で、2年ぶりに増加した東京を除く46道府県で減った。沖縄は1972年の本土復帰以降、初めて人口が減少した。労働の担い手となる15〜64歳の生産年齢人口は約30万人減の7421万人で、総人口に占める割合は59・39%と過去最低に迫る水準だった。今後、働き手不足による経済成長鈍化などが予想される。

電力大手に業務改善命令、「公正」遠く
 経産省は17日、競合する「新電力」の顧客情報を不正に閲覧した問題で、関西電力や九州電力、中国電力ネットワークなど大手5社に業務改善命令を出した。公正な競争環境を確保する電力自由化の理念を揺るがす重大な不祥事と判断した。電力大手は地域の電力市場を独占、その下で家庭向け電気料金はこの1年間で約3割、産業向け料金は約5割も上昇している。この間の値上げの正当性も揺るがす不正発覚で、各社が現在申請中の電気料金値上げは少なくとも当面凍結するべきだ。


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