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労働新聞 2023年4月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月30日〜4月9日)

仏大統領訪中、経済面で関係強化
 フランスのマクロン大統領は4月5日から訪中、6日に習近平国家主席と北京で会談した。マクロン氏は中国がウクライナの平和解決に向けて仲介役を果たすことへの期待を示した。習氏は異例の厚遇で迎え、7日には地方視察中のマクロン氏が滞在する広州まで出向いて共同声明を発表、核兵器の不拡散や原子力エネルギーの平和利用で一致した。マクロン氏には仏大手企業のトップら50人余が同行し、欧州航空機大手エアバスの旅客機160機の受注やフランス産の豚肉など農産品の輸出拡大で中国と合意した。欧州連合(EU)はウクライナ情勢への対応で米国と歩調を合わせる一方、対中政策では経済面で中国を重視する国は多く、米国の姿勢とは違いがある。

民主主義サミット、米またも空振り
 第2回「民主主義サミット」は3月30日、2日間の日程を終え閉幕した。バイデン米大統領が呼びかけたオンライン会合で、今回は米国以外に韓国など5カ国が共同主催するなど「広がり」を演出したが、前回同様にトルコやサウジアラビアなど地域的影響力のある国が「権威主義」として招待されず、参加は約120カ国にとどまった。内容面でも、米欧がロシアのウクライナ侵略を非難した一方、新興国・発展途上国などのグローバルサウスはあえて触れないなど温度差が浮き彫りとなり、「民主主義を封じ込めの道具に使ってはならない」(インドネシアのジョコ大統領)との声も上がった。宣言に署名したのは結局73カ国・地域にとどまるなど、グローバルサウスを取り込む米国の思惑は前回同様空振りに終わった。

フィンランドがNATO正式加盟
 フィンランドは4月4日、北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟した。ロシアのウクライナ侵攻を受けてスウェーデンとともに加盟申請したが、先行して異例の速さで加盟が承認され、北欧の軍事強国は長年の中立政策を破棄したことに。同国はロシアと約1300キロで国境を接しており、ロシア西側国境の大部分がNATO加盟国となった。NATO東方拡大を抑止したいロシアにとって、侵攻は望まぬ結果を招いたことに。ウクライナを通じロシアを挑発してきた米国の思惑通りの結果だが、和平に逆行し戦争を長期化させる動きだ。

OPECプラス追加減産、米は反発
 石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えたOPECプラスは2日、サウジアラビアなど8カ国が5月から今年末にかけて自主的に減産すると発表した。OPECプラスが昨年11月から続けている日量200万バレルの減産に加えて、約115万バレルの追加減産となる。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「好ましくない動きだ」と反対の意向を表明したが、サウジは「石油市場安定のための予防的措置だ」と、米国を意に介さない姿勢を鮮明にした。サウジは昨年夏もバイデン米大統領の増産要請を断っている。米国の意に反し産油国がまたも追加減産を決めたことは、米国の中東での存在感のさらなる低下を浮き彫りにしている。

米下院議長が蔡総統と会談、中国挑発
 台湾の蔡英文総統は5日、米カリフォルニア州でマッカーシー下院議長(共和党)と会談した。米下院議長は大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職で、台湾歴代総統の過去30回近くに上る訪米で最高位の人物との接触に。米議会では、昨年8月にペロシ下院議長(当時、民主党)が台湾を訪問するなど、台湾問題で中国に介入する挑発を超党派で続けている。来年に行われる米大統領選をにらみ、両党がいっそう中国敵視を競い合うことが予想されるが、東アジアの軍事的緊張をあおるだけの危険な蛮行だ。

人民のたたかい

(3月30日〜4月9日)

 ドイツ統一サービス産業労組(ベルディ)傘下の郵便大手ドイツポストの労働者16万人は3月31日、ストなどにより最大16%の賃上げを勝ち取った。
 英国ロンドンで4月4日、グーグルの人員削減に抗議して数百人の従業員がストライキに立ち上がった。グーグルやメタ(旧フェイスブック)、マイクロソフトなどのテック企業大手は人員削減を世界で急速に進めている。
 フランスでは年金制度改革に反対する闘いが続けられており、5日にデモを率いる労働総同盟(CGT)など8労組の代表者らとボルヌ首相が初めて交渉したが、決裂。6日には11度目の大規模デモが行われ、仏全土で200万人が参加、労組側は13日に新たな大規模デモの実施を予告した。


日本のできごと

(3月30日〜4月9日)

日中外相会談、緊密な意思疎通で一致
 林外相は4月1〜2日、中国を訪問した。コロナ禍の影響もあり、日本の外相として3年3カ月ぶりの訪中。秦剛国務委員兼外相や李強首相、中国外交トップの王毅政治局委員らと代わるがわる4時間にわたって会談、関係改善について踏み込んだ話をした模様。前日には防衛省が日本と中国の防衛当局を緊急時に結ぶ「ホットライン」の設置が完了したと発表、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突回避への意思疎通の海空連絡メカニズムが築かれた。日本政府は米国と足並みをそろえた対中包囲網形成に前傾する中でも、緊密な意思疎通によって決定的対立を回避する点では中国と一致した。米国と距離を置き独自の対中対話を強めるべきだ。

半導体輸出規制で米に同調、損失大
 西村経産相は3月31日、先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の対象に追加すると発表した。事実上の中国への輸出規制強化で、米国要請に従った対応。米国は昨年10月に半導体および製造装置の対中輸出規制を大幅に強化したが、製造装置に強みをもつ日本やオランダを巻き込むことで中国の先端半導体開発を妨害する思惑。日本企業にとって中国は装置輸出先の4割を占める最大市場で、規制により市場を失ううえ、中国の独自開発で産業競争力も失う懸念もある。米国の対中包囲網への参加は失うものが大きく、アジアの共生・共栄に背く決定だ。

途上国を対中包囲網に巻き込むOSA
 政府は4月5日、国家安全保障会議(NSC)で「同志国」とみなした途上国の軍に防衛装備品などを提供する新たな枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」導入を決めた。昨年 月に閣議決定された安保3文書の「国家安全保障戦略」に沿うもので、政府開発援助(ODA)とは別の無償協力の枠組み。同様にODAの原則を示した開発協力大綱も今後国家安全保障戦略に沿って改定する見込み。すでに2023年度予算に20億円が計上され、フィリピン、マレーシア、バングラデシュ、フィジーなどへの警戒監視レーダーや警備艇の供与が検討されている。米国と歩調を合わせた対中包囲網形成に途上国を巻き込むもので、アジアの分断と対立をあおるものだ。

植田氏が日銀総裁就任も正常化は至難
 経済学者の植田和男氏が9日に日銀の総裁に就任した。日銀は10年に及ぶ「異次元の金融緩和」を続けた結果、国債発行残高の半分以上を保有する異常事態に陥っている。前総裁の黒田東彦氏は退任会見で「物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった」と胸を張ったが、植田総裁には「アベノミクスの後始末」が託された。遠からず正常化に舵(かじ)を切ることが避けられないが、米欧の銀行破綻連鎖が示すように、金融危機を回避しながらの軟着陸は至難の業。アベノミクスの負の遺産を労働者や国民大多数に押し付けることは許されない。

統一地方選前半戦、投票率軒並み最低
 統一地方選の前半戦にあたる9道府県知事選と41道府県議選が9日、投開票された。投票率は道府県知事選が46・8%、道府県議選が41・9%と、いずれも前回選挙(19年)を下回り過去最低に。知事選で日本維新の会以外の野党が対立候補を立てられたのは北海道と大分だけだった。県議選では自民党が半数を超える1153議席を獲得したが、改選前の1251を下回った。維新は大阪維新の会を含めて124人が当選、改選前の57人から倍増した。立憲民主党は185議席で改選前の200に届かなかった。共産党は75議席で改選前から24減、5県で県議がゼロとなった。

安保3文書に沖縄県議会が意見書
 沖縄県議会は3月30日、「沖縄を再び戦場にしないよう日本政府に対し対話と外交による平和構築の積極的な取組を求める意見書」を可決した。安保3文書に都道府県が懸念を示した意見書は初。同文書に盛り込まれた敵基地攻撃能力保有について「相手国からの報復を招くことは必至で、沖縄が再び標的とされるとの不安が県民の中に広がっている」と強調、政府に「外交と対話による平和の構築に積極的な役割を果たすこと」を求めた。また同文書による軍事強化が中国を意識していると言及、日中両国は緊張緩和と平和構築に努力すべきだと指摘し、日中平和友好条約など両国で確認された諸原則の順守を求めた。他の都道府県議会でも同様の意見表明が求められている。

食品値上げ、4月は前年同月比4倍に
 帝国データバンクは31日、食品主要195社の価格調査結果を公表した。4月の値上げ予定は前年同月の4倍の5106品目で、23年通年で累計2万品目を超える見込み。短期間で複数回の値上げも目立ち、同社は23年度の食費負担が22年度に比べ1世帯あたり年間約2万6千円増えると試算している。一方で、2月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)では1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比2・6%減で11カ月連続の減少となるなど、国民の生活悪化が続いている。


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