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労働新聞 2023年4月5日号 トピックス

世界のできごと

(3月20日〜3月29日)

中ロ首脳会談、戦争終結模索も
 中国の習近平国家主席は3月20日、ロシアを訪問しモスクワでプーチン大統領と会談した。両首脳はウクライナ問題について意見交換し、2月に発表された「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」をプーチン氏が歓迎した。共同声明では、ウクライナ問題でロシアは和平交渉の早期再開に尽力すると表明、責任ある対話こそが問題解決への道筋だと強調、軍事支援を増やす米欧をけん制した。声明発表後にはウクライナのゼレンスキー大統領が習氏の訪問を要請するなど、ウクライナ側も中国の仲介に期待する姿勢を表明した。これらに対し、米国のブリンケン国務長官は「中ロのウクライナ和平計画に世界はだまされるな」などと悪態をついたが、これはイラク・サウジの関係修復などで見せた中国の外交的な存在感の高まりに対する焦りのあらわれでもある。

武器供与拡大で国土荒廃長期化も
 英国は20日、ウクライナに供与する主力戦車「チャレンジャー2」用に劣化ウラン弾を含む弾薬を供給する計画を表明した。劣化ウラン弾は米英軍がイラク戦争でも使用、現地で子供の先天性異常が多発した。北大西洋条約機構(NATO)の武器供与は加速の一途で、欧州連合(EU)は今後1年間で100万発の弾薬を供与する新たな支援策を決めた。スロバキアが旧ソ連製ミグ29戦闘機4機を引き渡し、ポーランドもミグ29供与を発表している。ドイツは主力戦車「レオパルト2」18両を届けた。米欧は度重なる武器供与でウクライナを捨て駒として利用し続けており、ウクライナの長期的な国土荒廃も懸念される状況となっている。

馬前台湾総統が訪中、蔡総統は訪米
 台湾最大野党・国民党の馬英九前総統が27日に訪中した。総統経験者の訪中は初。馬氏は「中台両岸の人びとは同じ中華民族。中台が協力し中華復興の目標を果たすのは責務だ」と述べ、米国にけしかけられて中国を挑発する蔡英文総統の姿勢を批判した。また両岸の緊張緩和に向け、学生ら約30人を同行させて武漢、長沙、重慶など各地の大学で交流も行った。一方、蔡英文総統は29日に訪米、現・前総統が米中を同時期に訪問する形となった。昨年11月に行われた台湾の統一地方選では、蔡総統の中国敵視姿勢への不満や不安も手伝い、与党・民進党が大敗した。馬氏の訪中はそうした台湾の民意を受けたものでもある。

イスラエル「司法制度改革」先送り
 イスラエルのネタニヤフ首相は27日、最高裁権限を制限する司法制度改革に必要な立法手続きを1カ月以上先送りすると表明した。改革反対の大規模な抗議デモやゼネストなどで内政や経済が混迷、ひとまず譲歩した形。改革を強行すれば混乱が深まるのは必至だが、連立政権に参加する極右政党は延期に反発も。事態をみた米ホワイトハウスは「譲歩案を見つけるよう強く促す」と伝えたが、イスラエルが拒否するなど、両国の溝も深い。イスラエル国内も対立解消の道筋は見えず、同国の混迷が続けば米国の中東政策にとって大きな足かせとなり、サウジ・イランの国交正常化に続く大打撃だ。

IPCC報告、目標上積み必須に
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は20日、9年ぶりとなる第6次統合報告書を公表した。産業革命前からの気温上昇を1・5度以内に抑える国際枠組み「パリ協定」の目標達成には、各国の従来の削減目標は「極めて不十分」と報告した。今のペースでは10年以内に許容量に達する恐れがあり、温暖化ガス排出量を30年に19年比60%減らす必要があると分析。だがウクライナ戦争によるエネルギー危機でドイツが石炭火力を再稼働させるなど、欧州諸国は温暖化ガス排出削減策を後回しにしている。ウクライナ戦争を早期に終わらせることは温暖化対策としても求められている。

人民のたたかい

(3月20日〜3月29日)

 米国ロサンゼルスで21日、スクールバス運転士や用務員、カフェテリア職員、クラスアシスタントなど教育従事者3万人が、平均給与が貧困水準だとして賃上げを求め3日間のストを闘い、学区との間で賃金の約3割増の合意を勝ち取った。
 ドイツ全土の公共交通機関で27日、大幅な賃上げを求め過去30年間で最大規模の24時間ストが行われた。
 マクロン政権による年金改革への抗議デモとストライキは23、28日も闘われ、全国で200万人以上が参加した。全国規模の闘いはこれで10回目。


日本のできごと

(3月20日〜3月29日)

岸田ウクライナ訪問、NATOに拠出
 岸田首相は3月21日、ウクライナの首都キーウを訪れてゼレンスキー大統領と会談した。5月に広島で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)前の訪問にこだわり、日本の首相として戦後初めて戦闘継続地域への訪問に踏み込んだ。ゼレンスキー氏をG7サミットに招待したほか、エネルギー分野などへの4億7千万ドル(約620億円)の無償供与を言明、北大西洋条約機構(NATO)信託基金への3千万ドル(約39億円)拠出も表明した。これについて岸田氏は用途を「殺傷性のない兵器に限定」としたが、方便に過ぎない。G7の足並みをそろえる形でウクライナ支援を拡大、戦争を長引かせる蛮行を強めている。

岸田訪印、中国対抗の思惑露骨
 岸田首相は20日、インドを訪問しモディ首相と会談した。今年の20カ国・地域(G20)議長国のインドをG7広島サミットに招待し、両議長として連携を確認した。開発金融や食料安全保障、気候・エネルギー問題、グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)への関与強化についても議論した。また現地で演説した岸田氏は「自由で開かれたインド太平洋」実現に向けた新推進計画を表明、グローバルサウスのインフラ整備へ2030年までに官民で750億ドル(約9兆8千億円)以上を投じると発表した。グローバルサウスの盟主格のインドを取り込み、中国の進める広域経済圏構想・一帯一路に対抗する思惑が露骨だ。

23年度予算成立、防衛費が大幅増
 23年度予算が28日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。一般会計総額は過去最大の114兆3812億円で、110兆円超は初。新規国債を35兆6230億円発行し歳入不足を穴埋めする。防衛費は6兆7880億円で22年度当初予算と比べて26%以上増え全体を押し上げた。政府は5年間で従来の1・5倍の約43兆円を充てる計画で、初年度の23年度は前年度から1兆4192億円増額した。一方、社会保障費は自然増を1500億円抑え込んだ。言語道断の予算だ。

物価高対策、国会経ず予備費から支出
 岸田政権は28日、22年度予算に計上したコロナ・物価高対策の予備費から2兆2226億円を支出すると閣議決定した。地方自治体に1兆2千億円を交付、LPガス料金や大規模工場で使う電気料金の負担軽減に充てる。低所得の世帯に一律3万円を給付する支援枠も設ける。自治体対応とは別に、低所得世帯の子どもへの給付や家畜の餌となる配合飼料の価格高騰対策、輸入小麦の政府売り渡し価格の激変緩和策にも支出する。低所得者への直接給付は不十分なうえに一度きりで、国会を経ず決定できる予備費を財布にした統一地方選前のバラマキとも言える。

公示地価 年ぶり上昇率もリスク高く
 国交省は22日、23年1月1日時点の公示地価を公表した。住宅地や商業地といった全用途の全国平均が前年比1・6%上昇した。上昇は2年連続で、リーマン・ショック前の08年(1・7%)に次ぐ水準。東京・大阪・名古屋の三大都市圏の商業地は2・9%上昇、コロナ禍からの回復や海外マネーの流入が後押しした。また大型再開発や交通インフラ整備が進む地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)は全用途平均で8・5%上がった。一方、地方県では価格下落が続いており、商業地ではおよそ半数の23県がマイナスにとどまった。地価上昇は、米欧の利上げによる景気後退や金融不安、あるいは日銀の利上げなどで「バブル」と化す危険と背中合わせだ。

小学校教科書検定、「愛国心」意見増
 文科省は28日、24年度から小学校で使われる教科書の検定結果を公表した。道徳で学習指導要領の「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」についての検定意見が13件あり、過去2回の検定と比べ大幅に増えた。愛国心教育を教科書会社の忖度(そんたく)で強化する思惑。また朝鮮半島からの動員や沖縄戦における「集団自決」の記述では強制性や軍の関与を薄める記述が踏襲された。背景には安倍政権時代の14年に行われた検定基準改定から政府見解に基づいた記述とすることが事実上合格の条件となっていることがあり、軍事大国化をにらんだ愛国教育と歴史わい曲が依然進められている。

イラク戦争20年も日本だけ反省拒否
 岸田首相は23日、開戦から20日で20年になったイラク戦争に関し、米主導のイラク攻撃を支持した当時の日本政府の判断は適切だったとの認識を国会で示した。また判断について改めて検証を行うことは考えていないとも述べた。イラク戦争をめぐっては、米上院が29日に戦争開始に向けた軍事行動を承認した02年の決議を廃止する法案を可決、大統領による軍事力行使の乱用に一定の歯止めをかけた。英国やオランダではすでに09年に独立調査委員会が検証を開始、当時の政権による判断の問題を指摘する報告書が出されている。イラク人民を地獄に落とした無法な侵略戦争に対し、日本政府だけが依然として検証と反省を拒んでいる。


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