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労働新聞 2023年3月25日号 トピックス

世界のできごと

(3月10日〜3月19日)

中国仲介でイランとサウジ関係正常化
 中東で長年敵対してきたイランとサウジアラビアが3月10日、中国の仲介で外交関係の正常化に合意した。両国政府は2カ月以内に外交を正常化し、双方の大使館を再開する。両国は2016年にサウジによるシーア派聖職者の処刑をきっかけに断交、中東全体の緊張を高めてきた。イラン、サウジ、中国3カ国の共同声明には「主権の尊重と互いの内政への不干渉を強調する」と米国を念頭に置いた内容も。中東への米国の関与が低下する中、中国の影響力が増すのは必至で、米国にとっては外交的打撃だ。

中国で3期目習政権始動、米意識
 中国の全国人民代表大会(全人代)が13日、今年の経済成長率目標などを定めた政府活動報告案などを採択して閉幕した。前日の12日には、新たに就任した李強首相の指名に基づいて、副首相など国務院(政府)の人事案も承認された。習近平国家主席が3選後初めての演説を行い、「安全こそ発展の基礎であり、安定は強さの前提」として安全保障体制増強の必要性を強調した。また「外部勢力の干渉と台湾独立の分裂活動に断固反対する」と述べ、米国による「台湾有事」策動などの内政干渉や軍事・経済面での包囲網形成に対抗する姿勢を改めて示した。

豪州への原潜導入合意、周辺国は懸念
 米英豪の首脳は13日、安全保障枠組み「AUKUS」として、豪州に原子力潜水艦を配備する計画で合意した。第1段階として27年に原潜部隊を豪州に巡回配備する。第2段階で、豪州に最新鋭の原潜を売却し、最終的には40年代に独自開発の新型原潜を配備する3段階の計画である。これに対して、マレーシア外務省が14日、「軍拡競争や、地域の平和と安全に影響を与える可能性のある挑発を控えることを強調する」声明を発表した。東南アジア各国は、米中対立を拡大させて域内の平和と安全に悪影響を与えることや、非核化の努力も損なう恐れがある動きに対して警戒と懸念の声を上げている。

世界の武器輸出、米4割、シェア拡大
 ストックホルム国際平和研究所は13日、最新の「国際武器移転に関する報告書」で、ロシアのウクライナ侵攻以来、欧州諸国の武器輸入が急増していることを公表した。18〜22年の間、世界全体の武器輸入は前回比(13〜17年)で5・1%減少したが、欧州の輸入は47%増加した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国に限ると65%増加した。ウクライナへの武器輸出はロシアの侵攻以来急増し、22年では世界第3位の武器輸入国となった。世界第2位の武器輸出国であるロシアは前回比で輸出が22%から16%に減少した。一方で、米国のシェアは33%から40%に増加した。米国は欧州の武器輸入急増の最大の受益国となっている。

米銀行破綻相次ぐ、利上げ副作用
 米国のテック企業を主な取引先とするシリコンバレーバンク(SVB)が10日、事業停止となった。破綻規模はリーマン・ショックの08年以降最大で過去2番目。12日にはシグネチャー・バンクも経営破綻した。中銀が大規模金融緩和から急速な引き締めに転ずる中で金融機関の経営が悪化している。バイデン大統領は緊急に会見し預金保護を表明するなど事態の鎮静化に追われた。SVB破綻は欧州に飛び火し、かねて信用不安のあったスイス大手銀クレディ・スイスが経営不安に陥り、スイス最大手のUBSに買収されるなどの事態となっている。

人民のたたかい

(3月10日〜3月19日)

 ドイツの反原発団体や自然保護団体は東京電力福島第1原発事故から12年となった11日、ドイツ国内100カ所で反原発を訴える集会を開いた。
 英国で15日、賃上げを要求して教職員、公務員、地下鉄運転士ら計40万人がストを決行、全国7万カ所以上で抗議行動やデモが行われた。
 マクロン政権の年金改革法案強行採決に抗議して16日、パリで約6000人が抗議行動した。
 ニュージーランドで16日、教員ら約5万人が賃上げや職場環境の改善などを掲げ全国的なストライキを行った。
 韓国・ソウル市庁前で18日、約1万人が尹政権の対日外交を批判する大規模集会を開いた。参加者は「政府は強制労働の被害者の権利を犠牲にすることで韓日首脳会談を実現させた」「元徴用工問題の被害者と韓国国民を屈辱する行為」と非難した。


日本のできごと

(3月10日〜3月19日)

日韓首脳会議、米戦略下で関係強化
 岸田首相は3月16日、来日した韓国の尹錫悦大統領と会談した。韓国大統領の単独来日は12年ぶり。両首脳は、韓国前政権が一度破棄を通告した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化や、両首脳が相互に両国を訪れて会談を重ねるシャトル外交の再開で一致した。また17日は日韓の財界人を集めた催しも行われ、両国の財界代表が勢ぞろいした。両国は米国の軍事的・経済的な対中敵視の東アジア戦略の下で協力強化を迫られており、今回の一連の動きはそれに沿ったもの。しかし米国の意に従った日韓関係強化は、両国の真の関係強化にも、東アジアの平和と発展にも寄与しない。

独側要請で日独政府間協議を初開催
 日本とドイツは18日、首相と外務、財務、防衛など双方の6閣僚による新しい定期協議の枠組み「日独政府間協議」を初めて開いた。エネルギーやデジタル、経済安保などの分野を軸に意見を交わし、共同声明を出した。これはドイツ側から持ちかけられた枠組みの協議で、ドイツはロシアのウクライナ侵攻を機にエネルギーや鉱物資源の供給網の強化・多様化に迫られており、また米国が中国経済とのデカップリングを進めていることもあり、日本との連携を呼びかけた形。欧州連合(EU)の柱でもあるドイツとの多角的な協力深化は、日本の隣の大国である中国を敵視・排除する「脱中国」を強めるものであってはならない。

大手賃上げ高水準も物価上昇に及ばず
 連合は17日、2023年春闘の第1回回答集計の結果を公表した。定期昇給と基本給を底上げするベア分を合わせた賃上げ率は平均3・8%で、過去の最終集計と比較すると1993年(3・9%)以来、30年ぶりの高い水準に。しかし物価上昇率には及ばず、またドル建てでは先進国で低い水準であることには変わらない。何より中小企業や非正規雇用を含めた十分な底上げには程遠い。こうした中で岸田首相は、政府、経済界、労働団体の代表者が意見交換する政労使会議を8年ぶりに開催し賃上げに意欲を示した。しかしこれは統一地方選を前にした連合取り込みと財界の求める労働市場改革推進の布石でもある。大手の賃上げに満足し政権に協力するなど言語道断だ。

石垣ミサイル基地新設、「有事」訓練も
 防衛省は16日、ミサイル基地として陸上自衛隊石垣駐屯地を新たに開設した。18日には同駐屯地に12式地対艦誘導ミサイルなどの弾薬の搬入を住民の反対をよそに強行した。また17日には沖縄県が、国民保護法に基づく「武力攻撃予測事態」を想定した図上訓練を初めて実施した。「台湾有事」を想定して宮古、石垣、与那国など先島諸島の5市町村の住民や観光客ら約 万人を九州各県に迅速に避難させるための輸送手段の確保や経路などを確認した。岸田政権は米国の先兵となって中国を軍事的に攻撃する準備を着々と進めており、同時に住民が戦闘に巻き込まれる危険性は増す一方で、この策動を止めることは緊急の課題だ。

日銀次期総裁に植田氏、前途は多難
 参議院本会議で10日、日本銀行の次期総裁に経済学者の植田和男氏を起用するなどの人事案が賛成多数で可決された。植田氏は4月9日付で総裁に任命される。日銀は黒田総裁の下で10年に及ぶ「異次元の金融緩和」を続けた結果、国債発行残高の半分以上を保有する異常な事態に陥っている。植田日銀は遠からず「正常化」に舵(かじ)を切ることが迫られるが、金融危機を回避しながらの軟着陸は至難の業だ。このアベノミクスの負の遺産を労働者や国民大多数に押し付けることは許されず、警戒が必要だ。

袴田事件再審無罪へ、証拠捏造を断罪
 東京高裁は13日、1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの裁判のやり直しを認めると決定した。死刑確定判決の根拠とされた血痕付きの衣類について、捜査当局が捏造(ねつぞう)した可能性に言及するなど、事実上検察側の姿勢を厳しく批判する決定内容。その後、東京高検は東京高裁の再審決定に対する特別抗告を断念し、袴田さんの再審無罪がほぼ確定した。捏造証拠をもとに無実を訴える人の死刑を求め続けた検察側の責任はきわめて重い。国は狭山事件など他の冤罪(えんざい)事件の再審決定も急ぐべきだ。

東日本大震災12年、国は原発回帰加速
 11日、東日本大震災から12年を迎えた。東京電力福島第一原発の事故で避難指示が出された11市町村の地域の居住率は25%弱と住民の帰還は進んでおらず、原発の溶け落ちた核燃料デブリを取り出すメドも依然として立たないなど、事故の収束には程遠い状況が続いている。しかし岸田政権は「脱炭素」を口実に原発の実質60年以上の稼働を可能とする法整備を策動し、さらに原発の新増設にも踏み出そうとしている。福島原発の汚染水の海洋放出にも、漁業者の反対の声を無視して強行しようとしている。岸田政権は原発事故の被災者も教訓も踏みにじる原発回帰へと突き進んでいる。


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