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労働新聞 2023年3月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月1日〜3月9日)

G20外相会合、対立で機能不全さらに
  カ国・地域(G20)外相会合が3月1、2の両日インドで開かれた。議長国でグローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の代表格でもあるインドは、会合がウクライナ戦争をめぐる批判の応酬となることを避けようと、「途上国は食料・エネルギーの高騰や巨額の債務負担に直面している。グローバルサウスの声に耳を傾けよう」と呼びかけた。だが米欧はロシア批判に終始、提起された問題については各国が意見を交わした程度に。2月のG20財務相・中央銀行総裁会合に続いて共同声明採択は見送られ、議長総括の発表にとどまった。米欧の身勝手さでG20は機能不全に陥っている。

全人代開幕、米対抗の国家機構改革へ
 日本の国会に相当する中国の第14期全国人民代表大会(全人代)が5日から北京で始まった。政府活動報告では2023年の重点分野として、内需拡大や現代化産業システムの構築加速、経済・金融分野の重大リスク防止・解消などが挙げられた。またそれらを実現するべく示された国家機構改革案では、科学技術部の再編や金融管理監督システム改革、国家データ局の新設などが提案された。半導体など米国による中国への輸出規制強化に備えた自立自強、米国の制裁をにらんだ通貨・金融防衛、データ活用強化による経済成長促進と企業管理強化などを進める狙い。米国の対中包囲攻撃に対抗するための国家体制強化を急いでいる。

仏のアフリカでの影響力低下あらわに
 フランスのマクロン大統領は2〜5日、中部アフリカ諸国を歴訪した。最初の訪問地ガボンで森林保護に関するサミットに参加、またアンゴラやコンゴ民主共和国などを訪れ、投資促進や農業協力などで合意した。だがフランスは14年からサハラ砂漠南部のサヘル地域で展開した対テロ作戦に挫折、マクロン氏は歴訪前に駐留仏軍縮小を表明していた。中国やロシアがアフリカで経済的・軍事的に影響力を強めている中、今回の歴訪で「西側の代表」として影響力維持に努めたいマクロン氏だが、先の見通しは暗い。

米予算教書、議会内対立さらに激化
 バイデン大統領は9日、24会計年度(23年10月〜24年9月)の予算教書を公表した。トランプ前大統領の看板政策だった大規模減税を一部撤回、法人税率や高所得者の最高税率を引き上げ10年間で計3兆ドル近く財政赤字を削減する一方、歳出は6兆8830億ドルと前年度比で8%増やす。これに対し下院多数派の共和党は「歳入ではなく歳出が問題」(マッカーシー下院議長)と反発、予算案の議会通過は困難だ。米債務残高は法定上限の約31・4兆ドルに達し、7〜9月には債務不履行に陥る懸念もある。来年の大統領選をにらみ両党の駆け引きは激化せざるを得ず、政権の前途は難題だらけだ。

対中規制リスト強化、攻撃さらに
 米商務省は2日、遺伝子データを扱う中国企業30社を取引制限リストに加えた。また米上院情報委員会は7日、中国発の動画共有アプリ「ティックトック」の国内利用を禁じる超党派法案を議会に提出した。米国は19年に通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を禁輸対象に指定し、以降今年2月末までに639を超える中国拠点の企業・団体を取引制限リストに加えていた。米政府職員のティックトック利用禁止は決定済みだが、この米国お得意の「表現の自由」さえ侵害する措置には若者を中心とした1億人以上の一般利用者の反発も大きく、「35歳未満の票を永久に失う」(レモンド商務長官)との懸念の声もある。米国の「中国たたき」は自国民の反発不可避なまでにヒステリックになっている。

人民のたたかい

(3月1日〜3月9日)

 ギリシャの首都アテネで1日、列車の正面衝突事故に関連し政府当局や鉄道会社に対する抗議活動が行われ、約2000人が参加した。鉄道労働組合もストライキを実施した。
 フランスで7日、年金改革に反対するデモが全国260カ所以上で実施され350万人が参加した。6回目となる今回は最大の参加人数となった。
 韓国で6日、政府の「徴用工問題」の「解決策」に抗議する大規模な集会がソウルで開かれた。
 国際女性デーの8日には世界各地で女性の権利擁護を訴える取り組みが行われた。


日本のできごと

(3月1日〜3月9日)

徴用工問題「解決策」、背景に米意向
 韓国政府は3月6日、戦時中に日本の工場や炭鉱などで強制連行・労働を強いられた徴用工問題をめぐり、被告である日本企業の代わりに韓国の公益法人が賠償金を支払う解決策を発表した。2018年に韓国最高裁が日本の被告企業の新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業に対し元徴用工の被害者への賠償金を支払うよう命じた判決への対応で、1965年の日韓請求権協定で日本の経済協力を受けた鉄鋼大手ポスコなど韓国企業の寄付金が賠償金の財源。これを受けて日本政府は、韓国向け輸出管理の厳格化を解除する調整に入り、韓国政府は日本による厳格化措置を受けて進めてきた世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きを中断するとした。事態の背景には対中包囲網強化のために日韓関係を改善させたい米国の意向がある。米の東アジア政策下で日本が免罪される構図は約70年前と同じで、日本政府や企業には本来謝罪と賠償が求められている。

放送法解釈変更で言論弾圧
 松本総務相は7日、放送法の政治的公平の解釈変更をめぐる首相官邸と総務省のやりとりを記述したとされる文書について、総務省の行政文書だと確認したことを表明した。同文書は、第2次安倍政権下の2014年11月に礒崎首相補佐官が同省の解釈について説明を求め、高市総務相が15年5月に国会答弁で「一つの番組のみでも政治的公平を確保しているとは認められない」と放送法の解釈を変更させるまでを記録したもの。放送法の政治的公平は放送事業者の番組全体を見て判断するのがそれまでの政府解釈であり、安倍政権による解釈変更は言論弾圧のための権力乱用にほかならない。

改悪入管法案、2年前は批判で廃案
 岸田政権は7日、入管法改定案を閣議決定し、国会に提出した。21年に人権団体の反対などから廃案に追い込まれたものとほぼ同じ内容で、難民申請者を強制送還できる仕組みを新たに設け、また理由のない無期限・長期収容は維持するなどの内容。2年前に入管施設内でスリランカ人女性が亡くなった事件の後も、22年に東京入管で新たに死亡事件が発生するなど、非正規滞在とされた外国人に対する非人間的な扱いの横行は改められていない。排除から共生へと難民政策を根本的に転換し、人権保障の観点に立った入管行政の抜本的改革が求められている。

マイナ用途拡大へ関連法案を閣議決定
 岸田政権は7日、マイナンバー関連2法案(保険証廃止法案、アナログ規制撤廃一括法案)を閣議決定し、国会提出した。24年秋には健康保険証を廃止しマイナ保険証に一本化し、従来の保険証が引き続き使えるのは廃止後1年間だけとする。また現在は社会保障と税、災害対策に限定した利用範囲を、国家資格更新や自動車登録、在留外国人関連の事務などにも拡大する。マイナンバーと個人の銀行口座とのひも付けの促進に向けた公金受取口座登録法改定案も閣議決定し、行政機関が把握済みの口座について、登録事前確認で本人の不同意回答がなければ同意したとみなす。国家権力による個人情報の一元的な管理に向けて強引な立法化を急いでいるが、言語道断だ。

実質賃金10カ月連続減、下落幅拡大
 厚労省は7日、1月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。基本給と残業代などを合わせた現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金は、前年同月比4・1%減となった。マイナスは10カ月連続で、落ち込み幅は14年5月(4・1%減)以来、8年8カ月ぶりの水準。実質賃金の算出に用いる1月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は5・1%上昇、電気・ガス代、食品などの高騰が続く一方、名目賃金は労働者1人当たり平均で27万6857円と0・8%の増加にとどまった。物価の高騰に賃金上昇が全く追い付いておらず、国の無策の下で国民は生活悪化を強いられ続けている。

生活保護申請3年連続増、物価高騰も
 厚労省は1日、22年12月分の生活保護の調査結果を公表、また22年1年間の件数を集計した(速報値)。同年の生活保護の申請件数は23万6927件で、前年と比べて1850件(約0・5%)増えた。増加は3年連続。比較可能な13年以降、申請件数は減少傾向となっていたが、コロナ感染拡大後の20年からは増加に転じた。昨年は物価高騰に加え、コロナ禍の経済的な支援策が終わったことも件数を押し上げたと推測され、対策が求められている。

諫早干拓開門認めず、最高裁で確定
 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門を開けるよう命じた確定判決の無効化を国が求めた訴訟の差し戻し審で、最高裁は1日、漁業者側の上告棄却を決定した。開門は許されないとする国側勝訴の判決を言い渡した福岡高裁の差し戻し控訴審判決が確定した。憲政史上初めて確定判決に従わなかった国を免罪する、司法本来の役割を放棄した判決に。有明海再生に向け開門調査を求める漁民は7日、改めて農水省に開門調査を申し入れた。


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