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労働新聞 2023年3月5日号 トピックス

世界のできごと

(2月20日〜2月28日)

米大統領がウ電撃訪問、侵攻後初
 米国のバイデン大統領は2月20日、ウクライナを電撃訪問した。ロシアの侵攻以降で初。同国のゼレンスキー大統領と会談し、5億ドルの追加軍事支援や「ロシアを支援する企業」への新たな制裁を行うとした。ロシアの侵攻開始から24日で1年が経過するが、各国のウクライナ支援姿勢に温度差が出始め、米国内でも共和党から支援予算の見直し論が浮上している。電撃訪問には膨大な軍事援助でウクライナをたきつけ戦争を長引かせる思惑がある。バイデン氏は翌日にはポーランドを訪問、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する反ロ感情の強い中東欧9カ国の枠組み「ブカレスト9」の首脳と会談し、NATOの結束とウクライナへの揺るぎない支援を呼びかけるなど、戦争泥沼化策動を続けている。

国連総会、「米欧陣営」味方増やせず
  国連総会は23日、ウクライナ戦争1年に合わせて開催された緊急特別会合で、ロシア軍の即時撤退と戦闘停止を求める決議案を賛成141カ国で採択した。中国を含む32カ国が棄権し、ロシアのほか6カ国が反対した。国連決議は6回目だが、昨年3月に行われた1回目では35カ国が棄権、5カ国が反対だった。この1年、米欧各国はグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)を「自陣」に引き入れようと外交策動を続けたが、米欧の歴史的罪状や身勝手な二重基準を知り尽くしたグローバルサウスは冷静で、構図に大きな変化はなかった。

中国が独自の仲裁案、意義大きく
 中国外務省は24日、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する文書を発表した。「各国の主権、独立、領土保全は保障されるべき」との原則を示し、「各国は火に油を注がず、ロシアとウクライナが対話を再開し、停戦の達成を支持すべき」と主張した。バイデン米大統領はこれを「ロシア以外には無益な提案、仲介役として不適格」と一蹴、また「中国がロシアに兵器供与した場合は制裁を発動する」と筋違いな攻撃を繰り返した。だがゼレンスキー大統領は興味を示すなど、ロシアとの関係も深い大国・中国が停戦に向けた動きを見せた意義は大きく、ウクライナ戦争をめぐる情勢にも大きな影響を与え得る。

G20財務相会議、債務問題持ち越し
 インドで開かれていた主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が25日、閉幕した。途上国の債務問題に関する閣僚級の円卓会議が初開催され、コロナ禍による景気悪化や物価高騰に加えて、米国の利上げとドル高進行を受けて途上国の債務が急膨張し深刻化している問題が議論された。しかし米欧や中国など債権国は債務削減に消極的で互いの責任を追及し合い、また米国が自国のインフレ退治で他国の経済や金融市場に配慮せず急速な利上げを進めることへの途上国の不満も強く、グローバルサウスの盟主の座を固めたい議長国インドの思惑とは裏腹に4回連続で共同声明の採択が見送られる結果となった。米国の利上げは依然続いており、途上国の債務問題はいっそう深刻にならざるを得ない。

イスラエル入植拡大に安保理「失望」
 国連安保理は20日、イスラエルによる占領地での入植活動拡大に「深い懸念と失望」を表明する議長声明を全会一致で採択した。入植活動がパレスチナ国家の樹立を認める「2国家共存」の実現可能性を危険なほど脅かしていると指摘、「平和を阻害する全ての一方的措置に強く反対する」と批判した。イスラエル非難に米国が安保理で同調したのは過去6年で初だが、米国は法的拘束力のある決議案には反対、ロシアのウクライナ侵攻への対応と併せ見ると、米国の二枚舌があらわだ。

人民のたたかい

(2月20日〜2月28日)

 ドイツの首都ベルリンで25日、ウクライナへの武器供与に反対するデモが行われ、1万人が参加した。米国に次いで多くの武器を提供しているドイツ人民の危機感は強く、「悪化でなく交渉を」などの声が上がった。
 米国の労働省は22日、同国でストライキが大幅に増え、2022年のスト参加者は約12万600人と21年から5割増加したと発表した。人手不足が深刻な教育関係者が全体の約6割、医療関係者が3割。大手企業でも労組結成の動きが広がっており、22年にはアマゾンやアップルで労組が発足した。


日本のできごと

(2月20日〜2月28日)

侵攻1年でG7会議開催、追加支援も
 ロシアによるウクライナ侵攻から1年となるのに合わせ、岸田首相は2月24日、主要7カ国(G7)首脳によるオンライン会議を主催した。会議にはウクライナのゼレンスキー大統領も招待、資産凍結など新たな対ロ経済制裁を決めた。また日本として独自にウクライナに対し55億ドル(約7400億円)の追加財政支援を行うほか、食料支援や地雷除去の拡大などの支援も表明した。G7首脳会議の議長国として必死に「結束」を演出、5月に行われるG7広島サミットに向けて存在感を示そうと躍起だが、ゼレンスキー氏からは武器供与や同国訪問を求められる始末。ウクライナ支援が外交・財政上の重荷となる状況に陥りつつある。

4年ぶり日中安保対話、対話重視確認
 日中両政府は22日、外交・防衛当局高官が安全保障分野の課題を巡り意見交換する日中安保対話を日本の外務省で開いた。2019年2月に北京で開催して以来約4年ぶり。中国側は日本の安保関連3文書に「深刻な懸念」を示し、特に台湾海峡への言及を「域外勢力と結託している」と批判した。日本側は中国がロシアと日本周辺で軍事活動を活発にしている状況などに「深刻な懸念」を伝えた。双方が強く主張をぶつけ合う場面もあったが、偶発的な軍事衝突を回避するための電話によるホットラインの春頃の運用開始を目指す方針を確認、対話重視の姿勢でも一致した。同日には経済関係省庁による「日中経済パートナーシップ協議」もオンライン開催、気候変動や農産品の輸出入などについて意見交換した。日中間の対立・分断激化は国益にならず、対話をいっそう深めるべきだ。

物価上昇17カ月連続、41年ぶり高水準
 総務省は24日、1月の消費者物価指数(20年=100)を発表した。変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が104・3となり、前年同月比で4・2%上昇した。第2次石油危機が影響した1981年9月(4・2%)以来、41年4カ月ぶりの上昇率で、上昇は17カ月連続。生鮮食品を除く食料が7・4%上昇、食料の調査対象品目の9割が高くなった。エネルギーは伸び率が縮小したものの14・6%となお高く、電気代は20・2%、都市ガス代は35・2%上昇した。食料品やエネルギーなど生活に身近な品目が値上がりし続けているが、まだ山を越えていない。賃上げの確実な実施のみならず、減税など新たな施策も求められている。

インフレと失政で酪農家の離農加速
 全国の酪農団体で構成する中央酪農会議は24日、指定団体が生乳販売を受託する酪農家の戸数が2022年12月時点で前年同月比6・5%減の1万1202戸だったと発表した。酪農家は全国的に毎年4%ほど減り続けているが、都府県では6456戸で前年より8・2%減少、例年2〜3%減にとどまっている北海道でも4746戸で前年より4%減少するなど、離農が加速している。増産態勢が整った直後のコロナ禍で牛乳・乳製品の消費が急減、そこに円安による生産資材高騰が加わり、副収入を見込む初生雄牛の暴落も追い打ちをかけている。こうした中でも政府は世界貿易機関(WTO)協定に基づくカレントアクセス(現行輸入機会)として毎年13・7万トンの乳製品を輸入し状況を悪化させている。言語道断で、国が責任を持って全量買い上げるなどの方策が必要だ。

政権の苦境にじむ自民党大会
 自民党は26日、党大会を開いた。党総裁である岸田首相はあいさつで、「安倍元首相の強力なリーダーシップの下、大きく国を前進させた」などとと党内保守層を意識した発言を繰り返した上で、4月の統一地方選と衆参5選挙区で実施される見通しの補欠選挙に向けて結束を呼びかけた。しかし、政権支持率を落とした旧統一教会問題や4閣僚の相次ぐ辞任、首相秘書官の性的少数者差別発言についても言及はなく、失点におびえる様子がうかがえた。採択された運動方針には「連合並びに友好的な労働組合との連携を強化」と記された。労組との連携強化を書き込むのは統一地方選と参院選が重なった19年以来4年ぶりだが、当時は連合と明示しておらず、今回は強い秋波を送り労組票の取り込む思惑。しかし賃上げや物価高、少子化対策で新味のある政策は示されず、迫る選挙戦を前に苦境の打開策を見いだせない政権の弱さがにじんだ大会となった。

出生数初80万人割れ、歴代政権の失政も
 厚労省は28日、22年の人口動態統計の速報値を公表した。年間出生数は79万9728人で、前年と比べ4万3169人(5・1%)減少、1899年の統計開始以来初めて80万人を割り込み過去最少となった。国が17年に公表した将来推計人口では、外国人を含む出生数が80万人を下回るのは33年で、想定を上回る速度で少子化が進んでいることが明らかに。未婚・晩婚化にコロナ禍が重なり、20、21年の婚姻数は戦後最少を更新、22年の出生数に影響した。だがより根本的には、若い世代の賃金を抑え込む労働法改悪や貧弱な出産・子育て支援、育休や職場復帰を含む女性労働者の要望軽視など、大企業のための政治優先で少子化問題を放置してきた歴代政権の失政が背景だ。


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