ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2023年2月15日号 トピックス

世界のできごと

(1月30日〜2月9日)

米大統領一般教書演説、苦境隠せず
 バイデン米大統領は2月7日、一般教書演説を行い今年の施政方針を説明した。ねじれ議会となって初の演説では内政面に時間の大半を割き、失業率低下や雇用創出などを2年間の政権実績として強調、楽観トーンを演出したものの、自らが直面する機密文書問題への言及はなかった。債務上限問題では、上限引き上げの条件として歳出削減を迫る下院多数派の共和党に対し「経済を人質にしている」「社会保障と医療保険は何百万人もの高齢者の命綱」と批判し対立姿勢を示したが、わずかに割かれた外交面では「中国との競争に勝つには団結しなければならない」と共和党に協力を呼びかけた。だが共和党にはウクライナへの「支援疲れ」もみられ、外交政策での一致も容易ではない。ねじれ議会に加えて内政と外交それぞれで難題を抱えながら来年の大統領選挙に向かうバイデン政権の苦境が反映した演説となった。

世界景気に薄日もリスク数知れず
 国際通貨基金(IMF)は1月30日、四半期ごとに出す世界経済見通しを発表、2023年の成長率予測を2・9%と前回より0・2ポイント引き上げた。予測は22年1月時点では3・8%だったが、ロシアのウクライナ侵攻後は3回連続で下方修正していた。物価高鈍化や中国経済回復への期待が理由。だがIMFは下振れリスクとして、ウクライナ戦争の激化や新興国・発展途上国の過剰債務、想定よりも根強いインフレの可能性、金融市場の波乱、国際システムの分断などにも言及した。世界景気を悪化させるリスクは数知れず、そのほぼ全てに関係する米国こそ世界最大のリスクだ。

中銀金購入高水準、ドル離れの傾向も
 国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシルは31日、22年の金取引の報告をまとめた。中銀による金の購入量は1135tと1967年(1404t)以来の高水準となった。67年は、金・ドル本位制が米国の財政赤字や英ポンド切り下げで揺らぎ、欧州中銀が大量に金を購入した結果、米国が金・ドル交換を停止した71年のニクソン・ショックにつながった。中銀の金買いは2008年のリーマン・ショック後から顕著だったが、ウクライナ侵攻後の経済制裁でロシア保有の米ドルが凍結されたことから各国が制裁下でも融通が利きやすい金へシフトした。中国やトルコなどの中銀が金を大量購入している一方、中国は人民元建てでの原油輸入を増やすなど、貿易や金融取引でもドル離れの動きがあり、基軸通貨ドルの影響力は弱まる一方だ。

気球問題で米国務長官が訪中延期
 ブリンケン米国務長官は3日、中国に対し2月上旬に予定していた自らの訪中を見送る意向を伝えた。中国の気球が米本土上空を飛行していた問題を受けたもの。翌4日には米戦闘機が気球にミサイルを発射し海に墜落させた。気球をめぐっては、中国空軍が19年に「外国の偵察気球」を撃墜した際には具体的な国名を明らかにしないなど、中国政府は事を荒立ててない姿勢に終始していた。中国側が今回の米国の行動を「過剰反応で国際的な慣例に反している」と批判したのは当然で、第三国からも、「米中が会合を開き意思疎通を行えば行うほど誤解が減る」(シンガポールのバラクリシュナン外相)などと、「中国の危機」をあおる米国に懸念の意が示されている。

人民のたたかい

(1月30日〜2月9日)

 英国では2月1日、公務員や鉄道員などによるストライキが行われ、この10年で最大規模の50万人が参加した。また同日、全国教育労働組合(NEU)に所属する教師も賃上げと予算拡大を求めるストライキを行い30 万人以上が参加した。6日には看護師や救急隊員など数万人の医療従事者が賃上げを求めて一斉ストライキに踏み切り、国民保健サービス(NHS)75年の歴史で最大規模となった。
 フランス各地で1月31日、年金改革案に反対する大規模な抗議行動が行われ、全国で計280万人が参加した。パリでは50万人がデモ行進、28年ぶりの歴史的な規模となった。
 デンマークで2月5日、ロシアによるウクライナ侵攻後、同国の軍事費を対国内総生産(GDP)比2%以上にするためとして、政府が財源として祝日のうち1日を廃止して労働時間に充てる案を打ち出したことに抗議する集会が行われ、5万人が結集した。


日本のできごと

(1月30日〜2月9日)

岸田首相、NATO事務総長と会談
 岸田首相は1月31日、東京で北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と会談した。昨年6月に日本の首相として初めてNATO首脳会合に出席して以来の顔合わせ。ストルテンベルグ氏はロシアのウクライナ侵攻を巡り「きょう欧州で起きていることはあす東アジアでも起こり得る」などと「中国の脅威」を強調、採択された共同声明でも中ロの軍事連携への懸念が明記された。またサイバーや宇宙、重要・新興技術等の新たな安保課題での協力を再確認し、日米共同統合演習(キーン・ソード)へのNATOのオブザーバー参加の拡大も明記された。米国は対中軍事包囲網に欧州各国を引き込もうと血道を上げているが、日本はその先導役を担うことで東アジアの軍事的緊張を高めている。

日比首脳会談、中国にらみ「財布役」
 岸田首相は2月9日、東京でフィリピンのマルコス大統領と会談した。自衛隊がフィリピンで人道支援や災害救援を行う際の手続きを簡素化する取り決めに署名、首都マニラの都市鉄道開発など計6000億円の官民支援も約束した。また共同声明では、東・南シナ海の状況に「深刻な懸念」を表明、名指しはしないものの中国の海洋進出を強くけん制した。岸田政権は軍事と経済の両面で関係を強化、米主導の対中包囲網にフィリピンを組み込もうと躍起だ。しかしフィリピンにとって中国は最大の貿易相手で、マルコス氏は今年に入り早々に訪中、首脳会談も行い228億ドル(約3兆円)の対比投資の約束を取り付けるなど、経済関係を深めている。フィリピンが米中対立下でバランス外交を行うのは当然で、強引に「財布役」を買って出る岸田外交は愚の極みだ。

首相が同性婚「有害視」発言
 岸田首相は1日、国会答弁で同性婚の法制化について「家族観や価値観、社会が変わってしまう」「極めて慎重に検討すべき」と同性婚を有害視する考えを示した。この発言を補足する形で3日、荒井首相秘書官は性的少数者について「隣に住んでいたら嫌だ」「同性婚なんか導入したら国を捨てる人も出てくる」などと発言、政権内が偏見に満ちていることを自己暴露した。首相は4日、荒井氏を更迭し問題鎮静化を図ったが、差別発言で性的少数者への偏見を広げた罪は消せない。

昨年の実質賃金、物価高で2年ぶり減
 厚労省は7日、2022年の毎月勤労統計調査(速報値)を発表した。物価の影響を考慮した実質賃金は前年比0・9%減で2年ぶりのマイナスとなった。賃金の実質水準を算出する指標となる物価(持ち家の家賃換算分を除く総合指数)が3・0%上昇と賃金の伸びを上回り、賃金上昇が物価高に追いつかない状況を映した。今年に入っても物価上昇は続いており、賃上げや国の対策は待ったなしだ。

農業資材価格過去最高、離農加速も
 農水省は1月31日、 年の農業物価指数(概数)を発表した。 年を100とした指数で生産資材は116・6と、2年間で資材価格が16・6%上がったことに。統計が残る1951年以降で最も高く、前年比でも9・3%上回った。肥料は130・5で同27・1%、飼料は138で同 ・4%上昇、資材価格全体の指数を押し上げた。資材費が高騰する一方、農産物価格の指数は101・4となり、前年比で0・6%の上昇にとどまった。コメが同9・7%低い80となるなど価格転嫁できていない実態が示された。生産費に占める飼料費の割合が高い酪農家の離農加速など影響は顕在化しており、国の対策加速も求められている。

再び東京転入超過、一極集中さらに
 総務省は30日、2022年の住民基本台帳人口移動報告を発表した。東京都は転入者が転出者を上回る転入超過が3万8023人で、超過幅は3年ぶりに拡大、コロナ禍の影響が薄れ21年に比べ7倍に増えた。また東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の東京圏の転入超過は9万9519人と1万7820人増え、日本人に限れば27年連続の転入超過。一方で雇用の選択肢が乏しい地方では22道県で流出が拡大した。コロナ禍でテレワーク普及や本社移転が進んだが、東京一極集中の是正には程遠い。地域衰退と表裏一体でもある過度な東京一極集中は地震や災害に見舞われた際のリスクも高める。国家的な対応に本腰を入れる必要がある。

土地利用規制の運用開始、日常監視へ
 政府は2月1日、重要土地利用規制法に基づき規制の第1弾として指定した58カ所で運用を開始した。昨年12月に指定された北海道、青森、東京、島根、長崎の5都道県の区域内にある土地・建物の不動産登記簿や住民基本台帳のデータベース化を進め、基地機能への「阻害行為」の有無を日常的に監視し、周辺住民からの「密告」も奨励する。政府は第2弾以降の選定も順次進め、24年秋ごろまでに600カ所以上の指定を完了させる方針。戦前の治安維持法に通ずる同法は沖縄などの運動弾圧強化が主目的で、廃止に向けた運動が求められている。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2023