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労働新聞 2023年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月20日〜1月29日)

欧米各国、ウクライナへ戦車供与決定
 ドイツのショルツ首相は1月25日、主力戦車「レオパルト2」をウクライナに供与することを決めた。同戦車を保有する欧州各国が提供することも認めた。同首相は戦車供与に慎重だったが、米国が主力戦車「M1エイブラムス」の提供を表明し、足並みをそろえた。また英国も先に主力戦車「チャレンジャー2」の供与を西側諸国で初めて表明していた。欧米の北大西洋条約機構(NATO)加盟各国が軍事支援のレベルを一段引き上げたことにより、この戦争の背景にある「ロシア対NATO」の構図がいっそう浮き彫りになった形だが、これにより戦闘のさらなる激化は避けがたい。

ブラジルとアルゼンチン、共通通貨構想
 ブラジルのルラ大統領は23日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでフェルナンデス大統領と会談、貿易決済などに用いる「長期に南米で流通する共通通貨」創設に向けて協力することで一致した。今後メルコスル(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイによる南米南部共同市場)以外の中南米諸国にも参加を呼びかける予定。実現すれば中南米の貿易で用いられている米ドルへの依存脱却につながる。米ドル体制の今後にも影響する注目すべき動きだ。

ダボス会議、「世界の分断」あらわに
 スイスのダボスで開かれていた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会が20日、閉幕した。コロナ禍により3年ぶりの1月定例開催となった今回の会議のテーマは「分断する世界での協力」だったが、参加した欧州の関係者らからは世界の分断を癒やす処方箋は示されず、ロシアのエネルギー依存からの脱却ばかりを熱心に論じる姿勢に対しインドや南米からの参加者から「欧米はウクライナ支援ばかり」と不満が漏れた。会議には50カ国以上の首脳と経営者・専門家など約2700人が参加したが、主要7カ国(G7)首脳で現地入りしたのはドイツだけで、会議への関心低下がにじんだ。グローバル化の進展と自由貿易の拡大とともに存在感を増してきたダボス会議だが世界の分断を如実に示す場となった。

米で相次ぐ銃撃事件、米社会荒廃
 米西部カリフォルニア州ロサンゼルス郊外で21日、銃乱射があり11人が死亡した。23日にも同州サンフランシスコ近郊の2カ所で銃撃事件があり7人が死亡した。中西部アイオワ州デモインの教育施設でも同日銃撃があり2人が死亡した。さらにカリフォルニア州ロサンゼルスで28日銃撃事件があり3人が死亡した。非営利団体「ガン・バイオレンス・アーカイブ」によると、4人以上の死傷者を出した銃撃事件は米国で今年に入り既に40件以上発生しているといい、米国社会の荒廃ぶりの一端を示している。

イスラエルがパレスチナ武装組織襲撃
 イスラエル軍は26日、占領下にあるヨルダン川西岸の難民キャンプで武装組織「イスラム聖戦」の拠点を襲撃し、イスラム聖戦や他の武装組織のメンバーや高齢女性を含むパレスチナ人9人が死亡、少なくとも20人が負傷した。近年では異例の大規模な襲撃で、パレスチナ自治政府側は「イスラエルによる虐殺だ」と主張、イスラエルとの治安協力の停止を決めた。昨年 月に極右政党を含む連立政権を発足させたネタニヤフ首相はパレスチナに強硬姿勢を見せており、対テロ作戦を強化している。またイスラエルはイランへの攻撃も繰り返しており、28日に起きたイラン国防軍需省の工場への無人機(ドローン)攻撃もイスラエルによるものと見られている。ネタニヤフ政権の発足で中東情勢は激化の一途だ。

人民のたたかい

(1月20日〜1月29日)

 英国で25日、アマゾン・ドット・コム倉庫の労働者ら300人が賃上げと厳しい労働条件の改善を求めて24時間ストを決行した。
 米国南部テネシー州メンフィス市で黒人青年が交通違反の取り締まりを受けた際に警察官5人から暴行を受け死亡した事件で、同市が27日に現場映像を公開、これを見て各地で抗議デモが行われ、構造的差別撤廃を求めた。
 カナダの先住民が国の同化政策によって独自の文化・言語が奪われたとして起こした集団訴訟で、カナダ政府は21日、原告に28億カナダドル(約2710億円)を支払うことで和解した。カナダでは19世紀前半から20世紀末にかけ先住民の子供を親から強制的に隔離、カトリック教会が運営する寄宿学校で同化政策が進められていた。


日本のできごと

(1月20日〜1月29日)

通常国会開会、中国対抗前面に
 第211通常国会が1月23日、開会した。岸田首相は施政方針演説の冒頭、日本は「歴史の分岐点」にあると強調、重要課題として最初に「防衛力の抜本的強化」を挙げ、5年間で43兆円の防衛予算確保に向けた増税への理解を事実上求めた。首相就任以来の看板だった「新しい資本主義」の最初にも対中経済安保の必要性を匂わせるなど、軍事・外交・経済全ての面で米国と歩調を合わせ中国抑え込みに猛進する姿勢を鮮明にした。一方で物価高騰対策や賃上げなど国民生活の課題については簡単に言及する程度で具体的な打開策は示さなかった。

コロナ「5類」へ、政治的思惑優先
 政府の新型コロナウイルス対策本部は27日、感染症法上のコロナの分類を5月8日に「5類」に移行する方針を正式に決めた。現在は結核などと同等に危険度の高い「2類相当」だが、移行すれば行動制限や入院勧告などができる法的根拠がなくなり、またワクチン接種や患者の入院・外来診療、検査などによる国民負担も段階的に増す。マスクの着用ルールも緩和の方向に。5月の広島市での主要7カ国首脳会議(G7サミット)開催前に「収束」を演出する思惑だが、コロナ「第8波」のただ中で医療・救急体制は逼迫(ひっぱく)、1日の死者数が過去最悪の500人超となる深刻な状況の中での発表は、国民への誤ったメッセージとなり、感染を拡大させかねない。

半導体製造装置の対中輸出規制で合意
 米国、日本、オランダの3カ国は27日、半導体製造装置の対中輸出に一定の制限を設けることで合意した。複数の米欧メディアが報じた。米政権は昨年10月に半導体および製造装置の対中輸出規制を大幅に強化したが、製造装置に強みをもつ日本やオランダを巻き込むことで、中国の先端半導体開発への妨害を強める思惑。具体的な規制には米国や国内企業などとの調整や国内法改定などが必要で、最低でも数カ月かかる見通し。規制により、日本企業にとっては世界最大の中国市場を失う上に、中国の独自開発により産業競争力も失う懸念も予想される。中国側からの制裁も避けられず、米国の対中包囲網への参加は失うものが大きい。

賃上げ要求実現へ、春闘開始
 経団連の十倉会長と連合の芳野会長は23日、東京の経団連本部で今春闘について会談、23春闘が事実上始まった。労使トップともに賃上げに強い意欲を示したが、連合の掲げる5%要求については具体的に何も議論されなかった。総務省が20日に発表した2022年12月の全国消費者物価指数は16カ月連続上昇、41年ぶりの高い伸びとなり、項目別ではエネルギーが前年同月比15・2%上昇、生鮮食品を除く食料が7・4%上昇するなど、労働者・国民の生活はギリギリのところに追い詰められている。労組はストライキも辞さず要求実現を迫るべきだ。

年金、マクロスライドで物価上昇以下
 厚労省は20日、23年度の公的年金額改定で「マクロ経済スライド」を3年ぶりに発動することを発表した。年金額は、直近1年間の物価変動率と過去3年度分の実質賃金の変動率をもとに、毎年4月に改定する。23年度の改定額は、68歳以上は2・5%増、67歳以下は2・6%増になる計算だが、「年金財政の収支均衡」を名目に年金額を抑制するマクロ経済スライド発動で物価上昇分より実質0・3〜0・6%増額分が削減される。岸田首相は「インフレ率を超える賃上げの実現」を掲げるが、年金生活者にはインフレ率を下回る改定を強いる姿勢だ。

自殺者2年ぶり増、高止まり
 厚生労働省は20日、警察庁の統計に基づく22年の自殺者数(速報値)が2万1584人だったと発表した。前年確定値より577人(2・7%)多く、20年以来2年ぶりに増加した。自殺者はコロナ禍前は10年連続で減少していたが、コロナ禍で千人ほど増えたまま高止まりの状況が続いている。男性が前年比604人増の1万4543人で 年ぶりに増加、女性はわずかに減ったが、コロナ禍前より千人近く多い。厚労省は、40〜60歳代の男性のほか、失業者や年金生活者らで増加が目立ち、物価高や円安で経済状況が悪化した影響と分析している。

佐渡金山を世界遺産再推薦、韓国「遺憾」
 文科省は20日、世界文化遺産登録を目指す「佐渡島の金山」(新潟県)の正式版推薦書を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に再提出したと発表した。昨年2月に初めて推薦したが、ユネスコから説明の不備を指摘され審査が止まっていた。佐渡金山の推薦をめぐっては、昨年の推薦後に韓国政府は戦時の朝鮮人強制労働の歴史を認めぬまま推薦したと抗議、今回の再提出にも遺憾の意を示している。日本政府は15年の長崎の「軍艦島」を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の際にも、戦時の朝鮮人強制労働を含む「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」と表明したものの、実行を怠っている。登録推薦を行うのであれば「負の歴史」も認めなければならない。


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