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労働新聞 2023年1月25日号 トピックス

世界のできごと

(12月20日〜1月19日)

米、ウクライナ軍事支援を強化
 ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年12月21日、米国を電撃訪問した。戦時下の首脳が外国を訪問するのは異例で、米軍機に搭乗しての訪米も異例。ウクライナ戦争の長期化で、米議会では下院多数派の共和党や民主党急進左派から巨額の軍事支援を疑問視する声も出ている。ゼレンスキー氏の電撃訪問は米世論喚起が狙いで、これを受けてバイデン大統領は迎撃ミサイル「パトリオット」の供与を含む18億5000万ドル(約2440億円)規模の新たな軍事支援を発表、軍事支援を質量ともに強化している。

米下院、「対中国特別委員会」設立
 米議会下院で1月10日、「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」を設立する決議案が可決された。下院で多数派の共和党だけでなく民主党からも賛成が多数あった。委員会は経済面での中国依存の見直しや、米国内のサプライチェーン(供給網)の強化や知的財産の保護などに向けて調査や政策提言を行うとしている。来年に迫った大統領選挙に向けて、両党ともこれまで以上に対中政策で強硬姿勢をとるようになると見られ、米国の対中国の悪あがきは一段と強まる。

世銀が経済見通しを大幅下方修正
 世界銀行は10日、新たな「世界経済見通し」を発表、2023年の世界全体の経済成長率を前年比1・7%と予測し、昨年6月時点からマイナス1・3ポイントと大幅に下方修正した。それによると「インフレの高進、金利の上昇、投資の減少、およびロシアのウクライナ侵攻による一連の混乱に直面して、世界の経済成長は急激に鈍化」「世界のほぼすべての地域で、1人当たりの所得の伸びがコロナ禍以前の10年よりも鈍化」と指摘した。また米国の利上げ継続などで新興国と発展途上国は「多額の債務負担と投資の低迷により、数年にわたる低成長に直面」と指摘、「成長と投資の低迷は、教育や健康の向上、貧困の撲滅、インフラ整備における壊滅的な後退と、気候変動に必要な対応をさらに増加させることになる」と警鐘を鳴らした。

印、途上国の声代弁、地位向上狙う
 人口で中国を抜いて世界一になるインドが主宰したオンライン国際会議「グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)の声サミット」が13日、閉幕した。社会や経済の基盤が弱く物価高騰や気候変動の影響を受けやすい途上国中心に120カ国以上が招待された。モディ首相は物価高騰が途上国を直撃している状況などに触れ、「国際的課題の大半はグローバルサウスが生み出したものではないが、私たちは大きな悪影響を受けている」と強調、途上国の声を主要20カ国・地域(G20)会合などに反映させていく意向を示した。インドは今年、G の議長国を務めており、7カ国首脳会議(G7)に与(くみ)せず、途上国の代弁者としての独自の外交的地位と存在感を高めていくとみられる。

韓国、初の「インド太平洋戦略」
 韓国政府は12月28日、安全保障や経済政策の指針となる「インド太平洋戦略」を発表した。安保戦略を北東アジアや朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)にほぼ限定してきた韓国がインド太平洋地域に拡大して文書で発表するのは初。「ルールに基づく秩序」「自由の価値観」が重要だと記し、日米の外交戦略に歩調を合わせた。一方、中国について、19年から開かれていない日中韓首脳会議の再開をめざすと明記し、「日中韓3カ国の協力は地域の安定を構築し、平和を実現する上で不可欠だ」とした。韓国大統領府高官は「特定の国を排除する戦略ではなく、協力を含んでいる」と述べるなど、中国に対する配慮もにじませている。

人民のたたかい

(12月20日〜1月19日)

 フランスで1月19日、マクロン大統領が発表した年金改革案に反対して、大規模なストライキが行われた。ストは8つの大手労組が呼びかけ、およそ112万人が抗議活動に参加、フランス全土で鉄道など公共交通がマヒし、多くの学校が休校に。ストは今後も断続的に行われる見通し。
 米国ニューヨーク市で9日から3日間、2つの病院で賃上げや労働環境の改善を求めて7千人以上の看護師がストを行い、コロナによる人員不足解消や19%以上の賃上げで暫定合意した。
 イスラエルで対パレスチナ強硬派のネタニヤフ氏が政権に返り咲いたが、新政権が進めようとしている司法制度改悪に抗議して14日、10万人以上が参加する抗議デモが各地で行われた。


日本のできごと

(12月20日〜1月19日)

日米首脳会談、戦争体制づくり進める
 岸田首相とバイデン大統領は1月13日、ワシントンで首脳会談を行った。発表された共同声明では、岸田政権が先に閣議決定した安保3文書を「果敢なリーダーシップ」とし、また中国を「増大する挑戦」などと決めつけた。先立って11日に行われた外交・軍事担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同声明では「同盟におけるより効果的な指揮・統制関係を検討」とし、米軍指揮下での自衛隊による敵基地攻撃能力行使も視野に入った。また「日本における米軍の前方態勢の最適化」と在沖米軍の攻撃的改編方針も明記した。

岸田欧米外遊、中国軍事包囲網構築
 岸田首相は9〜13日、欧米5カ国を歴訪し各国首脳と会談した。フランスのマクロン大統領との会談では、対中国を念頭に「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分」と強調、同地域での日仏共同訓練の強化などで合意した。また英国のスナク首相との会談では日英部隊間協力円滑化協定に署名、軍事連携強化を一歩進めた。さらに「インド太平洋戦略」を発表して同地域への関与を強化するカナダのトルドー首相とは連携を一層深化することで合意した。米首脳との会談を前に、中国軍事包囲網の構築にしゃかりきとなった。

馬毛島で基地建設着工を強行
 防衛省は12日、馬毛島(鹿児島県西之表市)への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転を伴う自衛隊基地整備計画で、環境影響評価(アセスメント)の最終まとめとなる評価書を公告、基地本体工事に即日着手した。午前9時の評価書公表から約4時間後の午後1時に樹木の伐採を始める強行工事で、市民からは「縦覧する時間はない」「首相訪米の手土産だ」などの批判も。南西諸島の軍事要塞(ようさい)化が推し進められている。

日銀が模緩和修正、事実上の利上げ
 日銀は12月20日の金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和策を一部修正、長期金利の上昇を認める上限を従来の0・25%から0・5%に引き上げた。事実上利上げと同じ効果をもつ。黒田総裁は「利上げではない」としたが、異次元緩和の出口戦略をさぐる動きでもある。国民経済と生活に多大な打撃を与えるアベノミクスはいよいよ修正を余儀なくされている。

貿易赤字過去最大、円安・資源高で
 財務省は1月19日、2022年の貿易統計(速報)を発表した。輸出額から輸入額を引いた貿易収支は19兆9713億円の赤字で、比較可能な1979年以降で最大の赤字となった。円安と資源高で輸入額が大幅に増えたことが主因。貿易赤字は2年連続。14年の12兆8160億円を大幅に上回り最大の赤字となった。円安や資源高が影響した結果だが、日本経済のあり方そのものも問われている。

介護事業者の倒産、最多更新
 民間調査会社の東京商工リサーチは11日、2022年の介護事業者の倒産が143件となり、00年の介護保険制度の開始以降で最多を更新したと発表した。従業員 人未満の事業者が8割と小規模事業者が大半を占めた。同社は、21年はコロナ対策の資金繰り支援策などで倒産件数が低く抑えられたものの、22年は物価高やコロナ禍、コロナ支援策縮小が影響したと分析、「コロナ禍でもサービスを継続する事業者への公的支援が必要」と指摘した。

コロナ死者、初の500人超
 国内では11日、新型コロナウイルスによる死者が新たに520人確認され、1日当たりで初めて500人を超えた。12月28日に初めて400人を超えてから2週間で激増した。感染拡大に医療体制が追い付かず、高齢者を中心に犠牲者が激増している。こうした中でも岸田政権は1月10日に「全国旅行支援」を再開、またコロナの感染症法上の位置づけ移行やマスク着用の緩和を検討するなど、国民の健康と生命に無責任な姿勢に始終している。

中国からの入国、水際対策を強化
 日本政府は中国からの入国者に対する水際対策を強化した。米欧と歩調を合わせて12月30日と1月8日に相次いで検査などを強化、これを中国政府は「非科学的」と批判した。国は1年前に米軍基地を中心にコロナ感染が拡大した際には何の手立ても打たなかった。「中国のコロナ対策の失敗」を印象付ける狙いからの差別的施策だ。

新指針で原発事故の賠償範囲拡大
 東京電力福島第1原発事故の賠償基準の目安となる中間指針を策定する文科省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は12月20日、指針を見直した第5次追補を決定した。指針は11年8月の策定だが、見直しは13年12月以来9年ぶり。故郷が事故によって変わったことによる「生活基盤の変容による精神的損害」に対して1人250万円を支払うことなど賠償範囲を拡大、また指針で示す損害額の目安については「賠償の上限ではない」とも明記した。相次いだ最高裁判決を受けた見直しだが、9年後の見直しは遅すぎる。


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