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労働新聞 2023年1月1日号 トピックス

世界のできごと

(12月10日〜12月19日)

米欧で利上げ幅縮小、薄氷踏む調整
 米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は12月14日、これまで4会合連続で行ってきた0・75%の利上げを見送り、0・5%の利上げを決定した。また欧州中央銀行(ECB)も15日、米国同様に9、10月の0・75%から0・5%に縮小した。これまでの利上げによってインフレ改善の兆候が見られる一方、景気への悪影響も受けた決定。FRBとECBは今後もインフレ抑制に取り組む一方、金融政策の影響が実体経済に及ぶまでの「ラグ(遅れ)」に配慮しながら利上げペースを調整する、薄氷を踏む難しいかじ取りを迫られる。世界は米欧を震源とした巨大な経済危機と隣り合わせの状況が続いている。

米「チャイナ・ハウス」、対中政策強化
 米政府は16日、国務省内に「チャイナ・ハウス」(中国調整部)を発足させた。国務省東アジア・太平洋局の中国担当部署に代わるもので、国際安全保障、経済、技術、多国間外交、戦略広報などの担当部局から60〜70人のスタッフを集めた横断的な部署。一貫した対中政策の立案・実施を図り、同盟諸国との調整も担う。米政府は15日、中国の半導体メーカー長江存儲科技(YMTC)など36の企業や団体を新たに禁輸リストに追加すると発表した。手綱を緩めない米国の中国包囲網強化策は、米一極支配秩序が崩れることへの焦りの表れにほかならない。

ASEANとの首脳会議、EUの挑発
 欧州連合(EU)と東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議が14日、ベルギーのブリュッセルで開かれた。双方の首脳が一堂に会する形での開催は初。EU側はASEANのインフラ支援に100億ユーロ(1兆4400億円)を拠出すると発表、連携強化を図った。このインフラ支援はEUの戦略「グローバル・ゲートウェイ」の一環で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗して2021年に発表した投資計画。だがASEANには政治体制が異なる国が混在、親中国も多く、EUの対抗策成功の保証はない。

欧のウクライナ支援に足並みの乱れも
 ロシアによるインフラへの攻撃が続くウクライナへの支援を議論する国際会議が13日、フランスで開かれ、日本や米国を含む約70の政府・国際機関の代表が出席した。会議はフランスのマクロン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が11月の電話会談で開催に合意したもので、仏政府が主催した。エネルギー、水道、食料、医療、輸送の5つの主要インフラに総額10億ユーロを超える支援が表明された。しかし会議にはドイツのショルツ首相、イタリアのメローニ首相、英国のスナク首相など欧州主要国首脳が参加を見送り、閣僚すら派遣しない国も。ウクライナへ支援を巡る欧州内の足並みの乱れを顕在化させる結果となった。

米、アフリカに触手を伸ばし首脳会議
 バイデン米政権は13〜15日、アフリカ カ国とアフリカ連合(AU)をワシントンに招いて米・アフリカ首脳会議を開いた。米・アフリカ首脳会議の開催はオバマ政権が14年8月に開催して以来、8年ぶり2回目。バイデン氏は会議での演説で「米国はアフリカのために全力を尽くす」とアピールし、AUが求めているG20参加への支持などを表明、また食料供給網の多角化などに向けて20億ドルの追加支援を約束した。会議にはアフリカで影響力を広げて中国やロシアに対抗するバイデン政権の狙いが露骨ににじんだが、アフリカ諸国には米欧の身勝手で独善的な外交に振り回された経験から不信感も根強く、巻き返し策動は前途多難だ。

人民のたたかい

(12月10日〜12月19日)

 英国では13日、全国的な鉄道ストが始まった。また15日には看護師10万人が初のストを実施した。ストは救急隊員や消防隊員など公共サービスも含めた多業種に波及している。一連の大規模ストで英国はサッチャー政権時の1989年以来33年ぶりの様相に。発足したばかりのスナク政権は早くも窮地に陥っている。
 南米ペルー最大労組のペルー労働者総同盟(CGTP)は16日、弾圧を糾弾する声明を発表した。同国では左派のカスティジョ前大統領が反逆容疑などで罷免され、ボルアルテ副大統領が新大統領に就任した。それ以降「クーデター議会を閉じろ」といった横断幕を掲げ、新大統領辞任や議会の解散・総選挙などを求める大規模なデモが首都リマをはじめ各地で起きている。


日本のできごと

(12月10日〜12月19日)

「専守防衛」捨て去る安保3文書決定
 岸田政権は12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の新たな安保関連3文書を閣議決定した。中国を「深刻な懸念事項」「これまでにない最大の戦略的な挑戦」などと異常に敵視し、5年で約 兆円の防衛費、うち5兆円ほどで反撃能力(敵基地攻撃能力)を日米一体で確保するとした。また司令部の統合強化や南西諸島方面の機動的防衛力整備、サイバーから宇宙まで統合的な作戦能力向上、弾薬などの備蓄増加で戦闘継続能力増強、などを掲げた。岸田氏はこれを手土産に1月に訪米、バイデン大統領との首脳会談を行う予定。「専守防衛」と「全方位・アジア重視外交」を中心とした戦後のわが国安全保障政策を大転換させ、アジアの緊張を極度に高める危険な決定で、即時撤回すべきだ。

臨時国会閉会、成果乏しく支持率下落
 第210臨時国会が10日、閉会した。岸田首相は「経済立て直し」を最優先課題と意気込んだものの、開会早々に旧統一教会問題や安倍元首相国葬問題で野党から集中放火を浴び、また旧統一教会との癒着や政治資金問題などで3閣僚が相次ぎ辞任するなど、開会期間を通して政権支持率を下げ続けた。当初は最優先とした経済問題には無策で、「総合経済対策」は国民支援に乏しい内容に終わり、新型コロナウイルス対策に絡む法案は見送られた。何とか最終日に成立にもちこんだ旧統一教会の被害者救済法も、マインドコントロール(洗脳)などの禁止行為や取消権の対象となる行為の範囲が非常に狭く、旧統一教会被害の救済にほとんど役立たないものに。岸田首相が「成果」と言い張るなど言語道断の中身で、国民のガマンは限界だ。

与党税制改正大綱、不公正手つかず
 自公両党は16日、2023年度税制改正大綱を決定した。閣議決定された安保3文書で打ち出した防衛費を確保するため、27年度までに所得税、法人税、たばこ税の増税で1兆円強の財源を確保すると明記、また東日本大震災を受けた復興特別所得税を事実上半分近く防衛費へ転用することも決めた。また「貯蓄から投資へ」を後押しする少額投資非課税制度(NISA)の制度恒久化や投資枠上限の引き上げ、トヨタなどを潤すエコカー減税延長、さらには個人事業主などから大増税だと批判が集中するインボイス制度の導入に向け「激変緩和措置」も盛り込まれた。一方、かつて岸田首相が「新しい資本主義」として言及した金融所得税増税への言及はなく、また高額所得者の「負担の適正化」を掲げたものの、所得税を追加されるのは年間所得が30億円を超す超富裕層だけで、年間所得が1億円を超すと所得税負担率が下がる「1億円の壁」打破にはつながらない。米国や大企業、資産家のための政権であることが顕著に示された。

日銀国債保有、初の5割超、泥沼に
 日銀が19日に公表した資金循環統計によると、日銀による国債保有割合が22年9月末に時価ベースで初めて5割を超え、過去最大となった。国庫短期証券を除く時価ベースの国債発行残高は1065兆6139億円、日銀の保有額は535兆6187億円で、日銀による保有割合は50・3%と6月末の49・6%を超えた。日銀は金融緩和のために長期金利をゼロ%程度に抑えているが、金利上昇圧力の高まりで国債購入が膨らみ、中央銀行が発行済み国債の半分以上を保有する異常事態に。第2次安倍政権時代から加速した日銀による政府の借金肩代わりがますます泥沼にはまっていることを示すもので、将来的にこのツケが国民大多数に押し付けられることは許されず、大企業や資産家が尻拭いすべきだ。

国際賢人会議初会合、成果乏しく
 核軍縮に関する日本政府主催の「国際賢人会議」初会合が10〜11日、広島市で開催された。22年1月に岸田首相が施政方針演説で「核兵器国と非核兵器国、核兵器禁止条約参加国と非参加国からの参加者が立場を超えて知恵を出し合い、核兵器のない世界の実現に向けて自由な議論を行う場を」などとと提起した肝いりの会議だが、識者が議論するだけの場に近く、何より岸田首相が核兵器禁止条約に完全に背を向けている状況では具体的な成果は乏しい。「被爆地選出の首相」を内外にアピールするためだけの会議であれば血税の無駄遣いにほかならない。

被爆2世の請求棄却も影響否定せず
 原爆で被爆した親を持つ被爆2世に対する十分な援護策を取らなかったとして、被爆2世らが国に1人当たり10万円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が12日、長崎地裁で出された。被爆2世への遺伝的影響を争う裁判で初めての司法判断。判決では、原告側の請求を棄却したものの、放射線被害の遺伝的影響の可能性については「知見が確立しておらず、その可能性を否定できない」とし、被爆2世を被爆者援護法の対象に加えるかどうかなどは「立法府の裁量的判断に委ねられる」とした。これ以上の放置は許されず、援護対象の被爆2世への拡大に向け、国は真摯(しんし)に対応すべきだ。


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