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労働新聞 2022年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

対中政策で米国と距離置く欧州
 バイデン米大統領は12月1日、バイデン政権初の国賓として訪米したマクロン仏大統領と会談した。英米豪の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)創設を機に悪化した米仏関係の修復をアピール、対中政策での協調などを確認したが、マクロン氏は米国が進めている北米産に限ったEV優遇策を「西側の分裂をもたらす」と強く非難した。一方、中国の習近平国家主席は同日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領と会談した。ミシェル氏は会見で中国との経済関係について「投資協定のプロセスを引き続き後押ししたい」と意欲を述べた。対中抑止に欧州を取り込みたい米国だが、欧州は独自に利益を追求している。

中国、サウジや中東との関係拡大へ
 中国の習近平国家主席は8日、サウジアラビアを訪問しムハンマド皇太子らと会談した。投資推進や水素エネルギーに関する戦略的包括協定を締結、また原油の貿易規模拡大や資源の調査開発での協力などを進めることで合意した。習氏は「サウジは多極化する世界における重要な独立勢力」と述べ、ムハンマド氏は「両国関係をさらなる高みに押し上げたい」と応じた。また9日にはアラブ諸国20カ国の首脳を招いて初の中国アラブ首脳会議も開催した。7月に訪問したバイデン米大統領への応対とは対照的な習近平主席への歓迎ぶりが、中東における米国の存在感の低下を物語っている。

効果疑われる新たな対ロ制裁
 主要7カ国(G7)やEU、豪州が5日、ロシア産原油の取引価格について、1バレル60ドルを上限とする新たな対ロ制裁を発動した。上限価格を超える取引には原油を運ぶタンカーにかける保険の引き受けを禁じる。しかし、世界景気の減速懸念から原油価格はウクライナ侵攻前の水準に下がっており、制裁が取引を減らす効果は少ないとの見方も。OPECプラスも4日、現行の日量200万バレルの協調減産の維持を再確認、米欧の対ロ制裁の帳尻合わせはしない立場を改めて示した。米欧の度重なるロシア制裁だが、その主導的な効果は乏しい。

ゼロコロナ口実に米欧日が中国批判
 中国政府が7日に一斉にゼロコロナ政策を緩和したと米欧日などで報道され、「中国政府が抗議デモを受けてあわてて緩和した」との論調を広げている。だが実際には緩和策は2021年1月から段階的に実施されている。ゼロコロナと「人権弾圧」をこじつけて中国を批判する米欧日だが、中国国内の感染者数・死者数は極めて少なく、感染者数・死者数ともに世界で一番多い米国こそが自国民の人権を最もないがしろにしている国だと言える。

EU、西バルカンの加盟促進で合意
 EUは6日、EU加盟を目指す西バルカン6カ国との首脳会議をアルバニアの首都ティラナで開き、加盟プロセスの促進で合意した。EUによるエネルギーやインフラ整備、政府機能強化などの支援も確認した。西バルカン諸国からのEU新規加盟は13年のクロアチアが最後。EUは西バルカン諸国と関係の深いロシアや中国への対抗の狙いもあり、ロシアのウクライナ侵攻以降は戦略的に重要視して加盟議論を加速させている。だがEU加盟には「民主主義」や市場経済機能など厳しい基準があり、西バルカンの現状との差は大きい。EU域内に慎重論もあり、加盟には曲折が予想される。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)

 米国の有力紙ニューヨーク・タイムズの労働組合は、8日午前0時から24時間ストに入った。ストには約1100人が参加した。最低給与水準の引き上げなどで経営陣と合意できなかった。この規模のストは約40年ぶり。経営陣が株主還元や他社の買収に資金を投じるなか、「インフレと米国の平均賃金上昇率に大きく後れを取っている」と労組は指摘している。
 モンゴルの首都ウランバートルで、物価高騰や中国への石炭輸出を巡る汚職の発覚などに抗議して、汚職の実態解明やインフレ対策を求めて、数千人が政府庁舎前に集まり抗議デモを行った。4日に始まったデモは7日も断続的に続いた。
 ベルギーでは11月28日から12月1日まで複数の鉄道労組が、低予算、不十分なインフラ、労働条件、人員不足などをめぐり政府に抗議するストを行った。オランダ・ベルギー間の国際鉄道の運行にも影響を与えた。


日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

2次補正成立、国民直接支援わずか
 2022年度第2次補正予算が12月2日、参議院本会議で自公与党と国民民主の賛成多数で可決、成立した。一般会計の歳出総額は28兆9222億円。物価高騰への総合経済対策が柱で、電気・都市ガス代の抑制策とガソリン価格などの上昇を抑える補助金の延長などに計6兆1345億円を計上した。だが部分的・一時的な対策でしかなく、貧窮する国民に直接届く支援も乏しいため、効果には疑問符が付く。また予備費と基金への歳出が総額の47%を占めるが、緊急対策の名目で編成される補正予算の趣旨に合わず、国会の監視が及びにくいため政権の恣意(しい)的な利用も懸念される。8割を国債発行という国民の血税で賄う予算だが、物価高騰に苦しむ国民生活や国民経済を支える内容とは程遠い。

参院でも内政干渉の中国「人権決議」
 参議院本会議は5日、「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」を、自公与党や野党の賛成多数で可決した。2月の衆議院本会議での決議に続くもので、「新疆ウイグル、チベット、南モンゴル(内モンゴル)、香港」に「深刻な人権状況への懸念」があるとし、中国の名指しは避けながらも「当該国政府が説明責任を果たすよう強く求める」とした。「自治区」を外して中国の一部であることを事実上否定する表現を使うなど、衆議院よりも内政干渉の度合いを増した反動的な決議だ。また与党以上の対中強硬論を唱える共産党は、決議には賛成したが、委員会では「中国と明記すべき」として共同提案を拒んだ。日中関係をいちだんと悪化させるだけの決議は全面的に撤回されるべきだ。

大企業は収益堅調も内部留保と配当へ
 財務省は1日、7〜9月期の法人企業統計を発表した。金融・保険業を除く全産業の経常利益は前年同期比18・3%増の19兆8098億円で、前年を7四半期連続で上回り、同月期としての利益額は過去最高を更新した。円安のため輸出が好調、製造業は35・4%増と全体の伸びをけん引した。業績を反映し内部留保の指標である利益剰余金はコロナ前の19年同期に比べ12・5%増えたが、資本金10億円以上の大企業で15・0%増えた一方、同1000万〜1億円の中小企業は7・1%増にとどまった。また年次調査では21年度の経常利益が10年間で1・9倍、配当金は2・5倍に増えた一方、人件費はわずか3・3%増にとどまった。

コロナ在宅死、7波は大幅増加
 厚労省は7日、新型コロナウイルス感染流行「第7波」の7〜8月、自宅での死者が全国で少なくとも776人いて、「第6波」(1〜3月)の555人を超えていたと公表した。同省が都道府県を通じて調査した。医療機関へ搬送中もしくは搬送直後の死者も含む。80代以上が58%、70代が21%で、69%が基礎疾患をもっていた。死亡直前の診断時の症状は「重症」が7・1%で、6波の2・2%より大幅に増加、7波では重症化しても入院治療できずに自宅で亡くなった人が急増したことが示された。今回の調査には高齢者施設で感染し入院できず命を落とした人は含まれておらず、犠牲は氷山の一角。岸田政権の失政は明白で、8波に向けた入院体制整備は急務だ。

意義認めるも大学生の生活保護見送り
 厚労省は6日、社会保障審議会の部会で、5年に1度の生活保護の見直しに向けた報告書案を了承、生活保護を利用しながら大学などに進学することを認めない現在のルールを変えない方針を確認した。経済的理由で進学を断念したり在学中に生活に困窮して退学せざるを得なくなる若者は多く、ルールの見直しが求められていた。しかし同案では、奨学金やアルバイトで学費・生活費を賄っている「一般世帯との均衡」を理由として今回の見直しを見送った。利用を認めれば「相当数の大学生等が保護の対象となる可能性がある」と、保護費の増大を回避したい国の本音もにおわせた。だが同案では、生活保護世帯の子どもの大学等への進学は「貧困の連鎖を断ち切り、子どもの自立を助長することにもつながる」と、保護の意義を認めてもいる。であれば国は速やかに見直すべきだ。

姑息なインボイス「激変緩和」与党案
 自公両党の税制調査会は11月30日、23年10月から導入をもくろむインボイス制度について、時限的「軽減」などの「激変緩和措置」方針で合意した。措置は23年度与党税制改正大綱に盛り込まれる見込み。現在年収1000万円以下の免税事業者が課税事業者に転換した場合、3年間は納税額を売り上げにかかる消費税の2割を上限とする。また売上高が1億円以下の事業者について、制度施行から6年間は1万円未満の仕入れにはインボイスを保存しなくても帳簿の記録で控除を可能とする。これらの措置で事業者は一時的には納税額を減らすことができるが、大幅に負担が増すことには変わりない。抜本的な解決とは程遠く、むしろ免税事業者を課税事業者に誘導しようとする姑息な手段だとも言える。零細事業者やフリーランスで働く者に経済的・事務的に大きな負担を強いるインボイス制度は中止されるべきだ。


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