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労働新聞 2022年12月5日号 トピックス

世界のできごと

(11月20日〜11月29日)

COP27、「損害と被害」基金創設合意
 エジプトで開かれていた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は11月20日、気候変動による損失と被害を受けた途上国を支援する基金の創設で合意し閉幕した。近年の異常気象による被害が社会基盤が弱い途上国に集中している状況を前に、気候変動への責任の大きい先進国が創設を受け入れざるを得なくなった形。だが基金の枠組みや制度設計などをめぐる対立点も残されており具体化には曲折も予想される。またウクライナ戦争などで世界のエネルギー事情が悪化、肝心の温暖化ガス削減についての具体的進展は乏しかった。

米が中国通信大手排除、分断に懸念も
 米連邦通信委員会(FCC)は25日、華為技術(ファーウェイ)など中国大手5社の通信機器の輸入・販売を禁止すると発表した。対象はファーウェイや監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、無線機大手の海能達通信(ハイテラ)などで、米市場から完全排除され、子会社や関連会社も対象となる。バイデン米政権は10月に最先端半導体の輸出規制を強化、中国関連産業をグローバルサプライチェーンから締め出す政策を強化している。米国は同盟国にも同様の措置を求めているが、サプライチェーン分断によって自国企業が悪影響を受けることに懸念の声もあり、米国の思惑通りに進むかどうかは疑わしい。

加が中国対抗「戦略」発表、米と足並み
 カナダ政府は27日、インド太平洋地域での経済・外交の包括的な戦略を発表した。中国を「既存の国際秩序を乱す破壊的なグローバルパワー」と位置づけ対抗姿勢を明確にした。この戦略のために5年間で約23億カナダドル(約2400億円)を投じるとし、軍事演習への参加などを通じて同地域でのカナダ軍の存在感を強める方針。カナダは経済安保面での中国対抗も強めており、中国系企業による投資規制を強化、また米国が主導する「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)への参加も目指している。米国と足並みをそろえて対中包囲網を強化している。

米軍が比で活動拠点拡大、台湾にらむ
 米国とフィリピンの両政府は21日、米軍がフィリピンで利用できる拠点を増やすことで合意した。フィリピンはドゥテルテ前政権が対中関係を重視し対米協力に消極的だった。6月末にマルコス政権が発足して以降、米国はフィリピンに外交攻勢をかけており、南シナ海や台湾海峡をにらんで防衛協力を拡大、日本や豪州、フィリピンを交えて4カ国での対中攻勢を目指す。一方、マルコス氏は23年1月に中国を国賓として訪れて習近平国家主席と会談する予定。マルコス氏は南シナ海の領有権問題では中国に譲れないが、中国は最大の貿易相手国でもあり、関係悪化は望んでいない。米国とフィリピンの協力がどこまで進むかは不明だ。

台湾地方選で民進党大敗、民意は平和
 台湾の統一地方選が全22県市(1市は12月に延期)で26日に投開票され、首長ポストが争われた。蔡英文総統の与党・民進党は大敗、5つ確保するにとどまった。18年の前回選挙の結果を下回る結果で、蔡氏は党主席を引責辞任した。一方、国民党は13を確保、重要とされる6直轄市のうち台北など4市でも勝利した。国民党はコロナワクチン調達不備や経済など地域や生活に密着した課題で市民の不満をすくい上げ勝利につなげたが、中台間の緊張をあおる民進党が平和と安定を求める民意に見放された結果でもある。

人民のたたかい

(11月20日〜11月29日)

 英国では記録的な物価高により多業界でストライキが頻発している。全国40万人以上の看護師らでつくる労働組合ロイヤル・カレッジ・オブ・ナーシングは25日、12月にストを行うことを発表した。組合設立から約100年で初の全国ストとなる。全国で郵便事業を運営するロイヤル・メール従業員のストも断続的に続いている。
 韓国のトラック運転手の労働組合民主労総公共運輸労組貨物連帯は24日、賃金と労働条件の改善を求めて無期限ストライキ(集団運送拒否)に突入した。スト開始から5日目に韓国政府は業務開始命令の発出に動き始めたが、労組はこの撤回を求めている。
 米国のネット通販最大手アマゾンでは倉庫従業員や配達ドライバーから待遇や労働環境の改善などを求める声が強まっていたが、25日の年末商戦セール「ブラックフライデー」に合わせて賃金改善などを求めるストライキやデモが行われた。行動は米国や英国、インド、日本、オーストラリア、南アフリカ共和国、欧州各国など世界約40カ国に上り、空前の広がりを見せた。


日本のできごと

(11月20日〜11月29日)

有識者報告書、国家総動員軍事態勢へ
 政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は11月22日、国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に関する報告書を岸田首相に提出した。報告書は「5年以内の防衛力の抜本的強化」に向け反撃能力(敵基地攻撃能力)保有は不可欠と断じた。また、防衛省や海上保安庁の予算を補うため、研究開発・公共インフラ・国際的協力・サイバー安全保障の4つの分野を総合的な防衛体制の強化に資する経費として計上、特別枠を設置することなどを求めた。「5年以内の2倍化」を視野に入れた軍事費の財源は「幅広い税目による負担が必要」として増税を主張したが、原案にあった法人税の記述は削除された。国家総動員の軍事態勢構築に向けた第一歩ともいえる危険な内容だ。

旧統一教会問題、救済新法に批判噴出
 旧統一教会問題に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会は29日、前日に政府が提示した被害者救済新法案の修正を求める会見を開いた。教団の寄付勧誘行為を規制する「配慮義務」について「加害実態に即していない」と批判、「カルトの実態を反映せず、このままでは救済されない」と危機感を示した。法案については野党からもマインドコントロール(洗脳)下での寄付の禁止などを求められているが、自公与党は及び腰。旧統一教会問題では、文科省が22日に教団に対し宗教法人法に基づく質問権を初めて行使、臨時国会内の救済新法成立と合わせて岸田政権の「実績」としたい思惑だが、自民党とズブズブの関係である教団を徹底的に追い詰めることができるのか、国民から厳しく問われている。

相次ぐ東京五輪談合疑惑、不正底なし
 東京地検特捜部と公正取引委員会は25日、東京五輪・パラリンピックのテスト大会関連事業を落札した電通などを独占禁止法違反容疑で家宅捜索、発注者である大会組織委員会の幹部宅も捜索した。組織委が2018年に発注したテスト大会の計画業務をめぐる26件の競争入札で、電通や博報堂など9社と一つの共同企業体が計5億円余りで落札したが、電通から組織委に出向していた職員などが受注を事前調整していた疑い。計画業務を落札した企業はテスト大会実施業務や本大会運営業務も随意契約で受注、総運営経費は数百億円規模に。大会総経費は1兆4000億円を超え、国と都から多額の公費が支出されたが、当初より膨張した経費と談合との関係は未究明。大規模汚職が相次いで発覚、東京五輪の不正は底なしで、全容解明が必要だ。

日銀保有国債、緩和下初の含み損
 日銀は28日、4〜9月期決算を発表した。9月末時点の保有国債の簿価は545兆5211億円、時価は544兆6462億円で、差額8749億円が含み損に。含み損が生じるのは13年の異次元緩和導入後では初。規模は現行の会計制度が始まった1998年以降で最大に。米欧の利上げで日本でも金利上昇(債券価格の下落)が進んだためで、満期保有が前提のため直ちに日銀の経営に影響は出ないが、政府が発行する国債を日銀が事実上無制限に引き受けて財政を担保するアベノミクスは矛盾を深め曲がり角に来ている。

日中デカップリングに経団連が異議
 日本経団連は28日、中国の政府系シンクタンクの国際経済交流センターと共同で両国の経営者らが参加する会合「日中企業家及び元政府高官対話(日中CEO等サミット)」をオンラインで開催、共同声明を採択した。声明では、国交正常化50周年を契機に互恵協力を拡大し、アジア地域と世界の平和と安定、繁栄と発展を共同で促進するとした。またアジア太平洋地域のサプライチェーンの安全・安定の保障の重要性を確認、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の適切な履行を通じて協力を深め、開放的かつ互恵的な国際環境を共に整備するなどとした。米国が「経済安保」を旗印に中国とのデカップリング策動を強めていることに対し、わが国財界の中にも強い危機感や不満があることを示している。

ウーバー配達員は労働者、初の判断
 東京都労働委員会は25日、飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員を労働組合法上の労働者と認定、運営会社に対し労働組合との団体交渉に応じるよう救済命令を出した。オンラインで単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を同法上の労働者とする法的判断は国内初。ギグワーカーをめぐってはスペインや韓国で雇用者としての権利を認める法律が制定されている。日本でも法整備を進めるべきだ。

富裕層 申告漏れ過去最高
 国税庁は24日、今年6月までの1年間に実施した所得税などの調査結果を発表した。高所得者や不動産の大口所有者ら富裕層の申告漏れ所得の総額は前年度比約72%増の839億円で、統計を始めた2009年以降で過去最高となった。うち海外投資や海外資産の保有で所得がある者の申告漏れは前年の2・5倍にあたる374億円で、タックスヘイブン(租税回避地)対策税制を適用するなどし、前年の3倍超となる141億円を追徴した。


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