ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2022年11月25日号 トピックス

世界のできごと

(11月10日〜11月19日)

米中間選挙結果、上下両院でねじれ
 11月8日に投票された米中間選挙は16日までの開票作業の結果、下院で野党共和党が4年ぶりに過半数の218議席を制した。上院は民主党がかろうじて多数を握る結果となり、両院のねじれに直面するバイデン大統領は、残りの任期2年間、厳しい政権運営を強いられることとなった。一方、事前の予想に反し民主党が善戦、支援した候補が軒並み苦戦したトランプ前大統領は次期大統領選への出馬表明をしたものの、共和党内に不信感が広がっている。党派対立の激化で内政の混迷はさらに進む。極端な貧富の格差拡大やインフレなど経済問題だけでなく人工妊娠中絶問題や銃規制、薬物汚染、人種・宗教対立など米国社会の荒廃と分断はますます深刻になっている。

米中首脳会談、衝突回避一致も平行線
 米中首脳は14日、インドネシアで対面会談した。3年5カ月ぶりで、バイデン政権発足後では初。両首脳は偶発的な衝突を回避するためのハイレベル対話継続で一致したが、バイデン氏は台湾問題での「中国の威圧的で攻撃的な行動に反対」と一方的に攻撃、これに対し習氏は「台湾問題は中国の核心的利益中の核心で越えてはならないレッドライン」と強く警告した。衝突回避に向け最低限の成果はあった会談だが、双方の主張は平行線に。だが中国への対抗をエスカレートさせ軍事的緊張を高めているのは米国の方だ。

G20首脳会議、宣言採択し閉幕
 インドネシアで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議が16日、首脳宣言を採択して閉幕した。ロシアへの一方的非難を続ける米欧と中国や新興国との対立で、今年複数回あった閣僚会合では成果文書を出せず機能不全が指摘されていた。ウクライナ戦争をめぐって「ほとんどのメンバーは戦争を強く非難した」と記したものの、議長国インドネシアやインド、トルコなどの働きかけでロシアの主張を取り込み「他の見解や異なる評価もあった」との表現も入れられ、宣言にこぎつけた。国際社会における米欧の影響力が薄れる一方、新興国・途上国の存在感と役割は一段と大きくなっている。

ASEAN、中心的役割確保めざす
 東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議と関連諸国会議が10日からカンボジアで開かれ、「ASEANのインド太平洋構想(AOIP)」を具体的に推進するための首脳宣言を採択した。AOIPは特定の国をけん制したり排除したりしない「開放性」と「包摂性」を強く打ち出し、対中抑止を目的とする日米の構想とは大きく異なっている。アジアをめぐる米中ロの競争激化などで地域が大国間競争の場にならないよう、ASEANは中心的役割確保をめざして結束を強めている。

世界の総人口80億人に、環境破壊も
 国連によると世界の総人口は15日、80億人に達した。1950年に約25億人だった人口は3倍以上に。アジア圏が約44億人で55%に上り、インドの人口は来年には中国を抜き世界最多となる見通し。国連は報告書で人口の急速な増加が「地球温暖化や気候変動などさまざまな環境劣化を引き起こしている」と指摘、森林の消失、干ばつなどよにる食料不足・飢餓、海面上昇などに警鐘を鳴らし、「化石燃料への過度の依存から脱却する必要がある」とした。環境劣化はまた経済的格差拡大や難民増加などの問題も生み出しており、これまでの産業活動で環境を破壊し続けてきた先進国の責任は重い。

人民のたたかい

(11月10日〜11月19日)

 フランス全土で10日、公務員や公共交通で賃金引き上げを求めストライキが行われた。運輸・教育・医療部門の6万人の労働者が参加した。またマクロン大統領の年金受給開始の65歳引き上げ表明への抗議の声も上がった。
 ドイツ西部のリュッツェラート村に12日、約1000人の環境活動家が集まり、露天掘り炭鉱の拡張計画に抗議した。ドイツはロシア制裁による天然ガスの供給減少を受けて休止していた石炭火力発電所の一部再稼働に踏み切っている。抗議行動では顔に「石炭をやめろ」とペイントした活動家たちが露天掘り炭鉱を占拠した。
 米国のコーヒーショップ大手スターバックスの労働者数千人が17日、全米25州100以上の店舗で労組との誠実な交渉や労働条件改善を会社側に求めて一斉にストライキを行った。
 南米ウルグアイで15日、右派政権が進めている「年金改革」法案に反対する全国ストが行われ、法案を審議中の議会に圧力をかけた。


日本のできごと

(11月10日〜11月19日)

日中首脳会談、緊張緩和に腐心
 岸田首相と中国の習近平国家主席は11月17日、タイの首都バンコクで会談した。対面の日中首脳会談は2019年12月以来およそ3年ぶり。両首脳は安全保障分野の意思疎通強化で一致、経済協力や人的交流の推進でも合意した。防衛当局間のホットライン早期運用開始や日中安保対話の再開方針を確認、林外相の訪中調整も申し合わせた。岸田首相は「台湾問題について日本側が日中共同声明で行った約束に変更はない」と明言、米国の先兵となって台湾問題であおった緊張の緩和とリスク管理に腐心した。しかし国交正常化 年に言及しないなど友好回復とは程遠い現状。独立・自主の外交なくして真の両国間の平和は構築できない。

米のお膳立てで3年ぶり日韓首脳会談
 岸田首相と韓国の尹錫悦大統領は13日、訪問先のカンボジアの首都プノンペンで会談した。日韓首脳の正式な対面会談は19年12月以来およそ3年ぶり。両首脳は朝鮮民主主義人民共和国への対応で日韓や日米韓の緊密な連携を確認、また懸案の元徴用工問題について早期に解決する方針で一致した。会談は米国がお膳立てし、日米と米韓の2カ国間の会談、日米韓3カ国の首脳会談を連続して開いた後、最後に日韓会談が行われた。米国の対中国対抗策に沿った日米韓連携強化の一環にほかならず、元徴用工問題でも具体策は何もない。これでは真の過去の清算に向かうことは期待できない。

日米共同演習、南西諸島を前線基地化
 自衛隊と米軍による日米共同統合演習「キーン・ソード」が10日から主に沖縄・鹿児島の南西諸島で行われた。ほぼ2年に1度国内各地の自衛隊や在日米軍施設で実施する最大規模の実動演習で、今回は自衛隊約2万6千人、米軍約1万人を動員、また北大西洋条約機構(NATO)加盟国として英軍の艦艇も参加した。中城湾港(沖縄市)では防衛省がチャーターした民間船に積み込まれた自衛隊車両などが陸揚げされ、また戦闘車両を与那国空港に空輸し公道を使って与那国駐屯地に移動するなど、南西諸島全域で大掛かりに民間の施設や土地を演習に利用した。さらに初めて米海兵が与那国駐屯地で訓練するなど日米の軍事的一体化も進められた。南西諸島を前線基地化する危険な動きだ。

閣僚辞任ドミノで政権運営困難に
 岸田首相は11日、自身の職責を「死刑(執行)のはんこを押す地味な役職」などと発言した葉梨法相を事実上更迭した。また後日、政治資金の問題が相次いで発覚した寺田総務相も事実上更迭した。閣僚更迭は1カ月間で3人目。責任追及を求める声で国会審議が滞り、首相の辞めさせる判断が遅いとの声は与党内からも続出していた。物価高騰と経済低迷に苦しむ国民を救うどころか足を引っ張る政権への不信や怒りは高まる一方で、政権運営は今後いっそう困難とならざるを得ない。

物価高騰・円安でGDPマイナスに
 内閣府は15日、7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値を発表、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・3%減、年率換算で1・2%減だった。マイナス成長は4四半期ぶり。主因は輸出から輸入を引いた外需の減少で、輸入が5・2%と大幅に増え全体を押し下げた。内需も低調で、柱である個人消費は前期比プラス0・3%の微増も、実額は298兆円と19年10月の消費税増税前の300兆円台を下回ったまま。経済の悪化が改めて鮮明となったが、岸田政権が決めた総合経済対策は大企業の懐を潤すものばかり。貧窮する国民や中小零細企業に直接届く支援で国民経済を活性化させ、実体経済を立て直す政治が求められている。

コロナ新規感染 万人、第8波へ
 厚労省は15日、新型コロナウイルスの感染者が新たに全国で10万人以上確認されたと発表した。10万人を超えるのは約2カ月ぶり。北海道は新たに1万人以上の感染を確認、初めて1万人を超えた。こうした状況に日本医師会の釜萢常任理事は16日に「第8波」に入ったとの認識を示し、感染リスクの高い行動への慎重な判断と積極的なワクチン接種を呼び掛けた。また政府は18日にコロナ対策本部で第8波対策として都道府県知事が宣言を出して大人数の会食自粛などを要請できる仕組みなどを決めた。インフルエンザとの同時流行も危惧されており、保健所と公的医療機関の縮小を進めてきた国や自治体の姿勢転換が求められている。

原発事故の賠償基準見直しへ
 文科省の原子力損害賠償紛争審査会は10日、賠償基準となる中間指針の見直しに関する専門家の最終報告を公表した。指針の見直しは13年12月の第4次追補以来9年ぶり。現行指針では避難による精神的損害として1人月額10万円の慰謝料が目安だが、今年3月に指針を上回る賠償を命じた7件の高裁判決が確定、報告では新たに故郷の喪失・変容や自主的避難による精神的損害を考慮、慰謝料増額や対象地域拡大などを求めた。これまであまりに不十分だった賠償を改善するため、国は見直し作業を速やかに進めるべきだ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2022