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労働新聞 2022年11月15日号 トピックス

世界のできごと

(10月30日〜11月9日)

米中間選挙、対立激化、混迷さらに
 米国の中間選挙が11月8日に投開票された。米上院の3分の1(35議席)と下院全て(435議席)が改選され、36の州で知事選も行われた。40年ぶりという歴史的インフレなどでバイデン政権の支持率は40%前後と低迷、民主党の苦戦が予想されたが、トランプ前大統領の動きが目立った共和党も人工妊娠中絶問題などで支持を失い、両党は激しく拮抗している。残り2年となったバイデン政権の行方を左右する中間選挙だが、国内の分断と対立は激化し、政権運営は厳しさを増している。こうした国内矛盾が米国の国際的影響力低下につながることは必至で、米国主導の国際秩序がいっそう揺らぐことは避けがたい。

中独首脳会談、「デカップリング反対」
 訪中したドイツのショルツ首相は4日、習近平国家主席と会談した。コロナ禍以降、先進7カ国(G7)首脳が訪中したのは初。ドイツにとって中国は6年連続で最大の貿易相手国で、ショルツ氏には自動車大手フォルクスワーゲンやBMW、アディダスなど大企業の幹部がそろって同行した。習氏はこれを踏まえ「中国とドイツは影響力のある大国として手を携えて協力し、世界の平和と発展のため貢献すべきだ」と力説した。対中包囲網形成をもくろむ米国はドイツの中国接近を懸念するが、ショルツ氏は中国の李克強首相との共同記者会見で「われわれはデカップリングは支持しない」と述べ、米中対立とは距離を置いた。

ブラジル大統領にルラ氏、米に打撃
 決選投票となったブラジル大統領選挙が10月30日に投開票され、左派のルラ元大統領が右派のボルソナロ現大統領を破って当選した。ルラ氏は来年1月に就任、通算3期目となる。低所得層への社会保障重視の方針を訴え支持を集め、現職との大接戦を制した。僅差で敗北したボルソナロ氏支持者らは抗議デモを展開するなど、今後には難題が残されている。しかし中南米では近年相次いで左派政権が成立、米国と距離を置く外交姿勢が目立っている。ルラ氏はBRICSの強化も公約に掲げており、中ロ対抗陣営形成を急ぐ米国にとって打撃だ。

イスラエル元首相復帰、中東緊張激化
 イスラエル総選挙が11月1日に投開票され、ネタニヤフ元首相を支持する右派勢力が議席の過半数を獲得、元首相の返り咲きが確定した。総選挙ではパレスチナ自治区があるヨルダン川西岸併合やパレスチナ人追放を掲げる過激な宗教・極右政党も躍進したが、ネタニヤフ氏はこれらと連立協議に臨み、建国以来最右翼の政権となる見通し。新政権がパレスチナ和平や対イラン政策で厳しい姿勢をとるのは確実で、中東の緊張が高まるのは必至だ。

米さらなる利上げ姿勢、各国は不満
 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2日、「最近のインフレ関連指標は予想を上回る」と引き締め姿勢を崩さず、利上げ停止を「時期尚早」とした。これに対し3日、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は「米と同様のペースでの政策金利引き上げは難しい」との認識を示し、またイングランド銀行のベイリー総裁も「過去の景気後退と比べても経済が弱い状態が長期化する」と予測し、共に利上げ減速を示唆した。利上げを続けてきた欧州や新興国の中銀は景気低迷を受け利上げて減速に傾いているが、米の利上げ継続によって自国通貨安やインフレに悩まされている。発展途上国の状況はさらに悪く、米国への不満は世界中で増している。

人民のたたかい

(10月30日〜11月9日)

 韓国のソウルで5日、梨泰院の雑踏事故で死亡した若者たちへの追悼・抗議集会が「ろうそく勝利転換運動」などの市民団体主催で開かれ、数万人が参加し、政府の責任を追及した。尹錫悦大統領の退陣を求めるプラカードを掲げる人も多数いた。
 米国で最大規模の州立大学群であるカリフォルニア大学のもとで働く学生労働者が2日、賃上げや待遇改善を求めるスト実施に関する投票を行い、3万5千人超が承認した。ストが実施されれば国内のストで今年最大規模で、教育関係労働者によるストとしても史上最大となる。
 1979年に親米王政が打倒されたイランで、学生たちが米大使館を400日以上占拠してから 年となった4日、首都テヘランの米大使館跡地で反米集会が開かれた。またイラン各地で「世界的覇権主義との闘い」を掲げたデモが行われた。


日本のできごと

(10月30日〜11月9日)

首相が救済法に意欲も政権は依然窮地
 岸田首相は11月8日、旧統一教会問題の被害者救済に向けた新法案を今国会で提出する意を表明した。「悪質な寄付勧誘行為を禁止」「寄付取り消しや損害賠償請求を可能に」「子や配偶者に生じた被害を救済」などを挙げ、消費者契約法改正による霊感商法の契約を取り消す要件緩和や期間延長なども検討するとした。旧統一教会問題を巡っては、野党がマインドコントロールによる高額献金禁止を主張する一方、連立を組む公明党は寄付規制そのものに慎重で、岸田政権と自公与党には「被害者救済に後ろ向き」との批判が強まっていた。岸田首相は積極姿勢表明を迫られた格好だが、自民党と教団のズブズブの関係を示す事実も依然として断続的に発覚、岸田政権の窮地からの脱出はまるで見通せない。

日独2+2、「準同盟」へ布石
 日本とドイツの外務・防衛閣僚会合(2プラス2)が3日、ドイツのミュンスターで開かれた。両国の2プラス2は2021年4月のオンライン形式での開催に続き2度目。2プラス2の原則毎年開催や、物品役務相互提供協定(ACSA)を念頭に自衛隊と独軍の共同活動を推進する枠組みづくりに向けた調整推進で合意した。日本はドイツに英豪並みの「準同盟国」化を望み、アジアへの軍事的関与を拡大するよう働きかけている。しかしドイツはショルツ首相が4日に中国の習国家主席と会談するなど外交のバランスに腐心、米国の意そのままに対中敵視強化一辺倒の日本とは一線を画している。

「特定重要空港・港湾」で軍事利用拡大
 国家安全保障戦略など安保3文書改定に関する政府有識者会議の会合で9日、沖縄県の宮古・八重山地方を中心とした南西諸島の空港や港湾を「特定重要拠点空港・港湾」(仮称)に指定、集中的改修や機能強化に乗り出す方針だ。平時から自衛隊の訓練などで使用できるよう各空港・港湾の利用方針改定を狙う。民間の空港・港湾の軍事利用が拡大されれば生活が圧迫されるだけでなく、住民が戦火に巻き込まれる危険性も増す。南西諸島を丸ごと軍事要塞(ようさい)化する策動だ。

法人所得過去最高、大企業に増税を
 国税庁は10月30日、21年度に決算期を迎えた法人の申告所得総額が前年度比13・3%増の約79兆5千億円となり過去最高だったと発表した。増加は2年連続。しかし申告税額は約13兆9千億円で、過去最高だったバブル期の1989年7月〜90年6月の75%程度。当時は法人税の基本税率が40%だったが、現在は23・2%と大幅に下がっている。岸田政権は庶民増税をやめ、法人税率を上げて円安で利益を上げる大企業から徴収するべきだ。

実質賃金が半年も連続減、対策急務
 厚労省は11月8日、9月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1・3%減り、6カ月連続の減少に。名目賃金は緩やかに増加、9月の現金給与総額は27万5787円と2・1%増えたが、賃金の実質水準を算出する指標となる物価(持ち家の家賃換算分を除く総合指数)の上昇率は3・5%に。半年も実質賃金が下がり続けているが、岸田政権は労働者・国民に直接届く支援はせず、状況を放置している。

物価高倒産最多、コロナ禍倒産も増
 物価高や円安による収益悪化が原因で倒産する企業が増えている。帝国データバンクは9日、「物価高倒産」が10月に41件と4カ月続けて過去最多を更新したと発表した。「円安倒産」も7件と8月に並んで今年最多に。業種別では運輸業や飲食料品小売業が目立った。また東京商工リサーチは同日、10月の企業倒産件数(負債1000万円以上)を発表、前年同月比71件増の596件で、今年4月以降7カ月連続で前年水準超えに。倒産理由にコロナ禍が含まれるものは43%増の230件で2カ月連続で最多を更新した。

コロナ禍理由にずさんな支出横行
 会計検査院は7日、国の2021年度決算の検査報告を提出した。税金の無駄遣いや有効活用できていない状況を指摘したのは約455億円で、コロナ対策関連では病床確保のために医療機関に支払われる交付金で約 億円の過大支給があったと指摘した。またコロナ対策事業として国が19〜21年度に計上した約94兆5千億円の執行状況も調査され、約19%の18兆円が未執行だった。コロナ禍という非常事態を理由にしたずさんな支出の横行を改めることが求められている。

日本は3回連続「化石賞」の不名誉
 国際的環境NGO「気候行動ネットワーク」は9日、温暖化対策に後ろ向きな国に贈る不名誉な「化石賞」に日本を選んだ。エジプトで開催中の国連気候変動会議(COP27)で発表した。日本の化石賞受賞は3回連続。石炭や石油など化石燃料への投資を含む公的資金の拠出額が世界最多だったことを理由に挙げ、また岸田首相が会議に出席するのを見送ったことも消極的と指摘した。自公与党政権下での温暖化対策への遅れが改めて指摘された。


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