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労働新聞 2022年11月5日号 トピックス

世界のできごと

(10月20日〜10月29日)

米新核戦略、中国対抗を最優先
 米政府は10月27日、新たな核戦略の指針となる「核体制の見直し(NPR)」を公表した。「中国が核戦力を拡大し、インド太平洋地域での軍事威嚇に核兵器を使うおそれがある」と危機感をあおり、米国の核戦力で「拡大抑止」を強化する「核の傘」を、個別対話から日本・韓国・豪州との多国間対話へ広げる方針を示した。バイデン政権がNPRを作るのは初。また「国家防衛戦略」と「ミサイル防衛の見直し(MDR)」も公表した。先に発表した「国家安全保障戦略」でもロシアより中国への対抗を最優先とし、政治・経済面で台頭する中国を核を含む軍事力で抑え込む思惑が露骨だ。

中国共産党大会閉幕、新指導体制確立
 中国共産党第20回全国代表大会が22日、閉幕した。大会最終日には新たな中央委員・同候補などを選出し、また「台湾の独立に断固として反対」などを盛り込んだ党規約の改正案を決議した。続いて23日に開かれた1中全会では、3期目となる習近平総書記をトップとし、24人の政治局員と7人の政治局常務委員が選出された。米国が体制転覆策動を強める中、これに対抗する新指導体制が確立された。

英トラス首相辞任、スナク新首相へ
 トラス英首相が20日、辞任を表明した。トラス氏は、在任期間が44日間と英国史上最短の首相になった。英誌「エコノミスト」は「トラス氏の在任期間はレタスの消費期限以下」と皮肉った。後任の首相にはトラス氏と保守党党首選を争った元財務相のスナク氏が就任した。スナク新内閣は、景気対策優先で失速した前政権から一転して財政再建を最優先課題としているが、増税や歳出削減策に対する国民の抵抗・反発は必至である。ジョンソン元首相辞任をめぐる保守党内のしこりも解消しておらず、保守党政権の不安定な政権運営は避けられない。

伊で極右のメローニ氏が首相就任
 9月の総選挙で第1党になった極右「イタリアの同胞(FDI)」のメローニ党首は22日に首相に就任、右派「同盟」と中道右派「フォルツァ・イタリア」との連立政権を発足させた。閣僚人事では国際協調派や実務派を要職に起用、対外的に穏健路線を強調し、欧州連合(EU)各国との協調姿勢を演出した。また深刻な債務問題を担当する経済財務相にドラギ前政権で経済開発相を務めた穏健派を配置するなど、前政権が重視した財政再建にも目配りする姿勢を示したが、インフレ対策など課題は山積しており、国内政治が安定するかは未知数だ。

欧州中銀連続利上げ、景気後退一段と
 欧州中央銀行(ECB)は27日の理事会で、政策金利の0・75%引き上げを決めた。通常の3倍となる大幅利上で、前回9月から2会合連続。ユーロ圏の物価上昇率が米国を上回る過去最高の10%近くとなり、インフレ抑止のために景気後退リスクにもかかわらず利上げに動いた。ウクライナ危機の長期化でユーロ圏の来年の実質成長率はマイナスになると見込まれ、インフレと景気後退が同時に進むスタグフレーションのリスクも高まっており、政治への影響も避けられない。

人民のたたかい

(10月20日〜10月29日)

 スペインのマドリードで22日、労組や医療団体が医療の民営化推進に抗議し、「公共医療を守れ」と5万人がデモを行った。マドリードではこれまで右派・国民党の州政府が財政赤字削減を名目に公共病院の閉鎖と民営化を進めていた。医療団体は声明で「州政府は民営化による企業の利益を優先している」と批判している。
 ギリシャ・ピレウスの船舶労働組合は、賃上げなどを要求して25日午前0時から全ての船種を対象とした24時間ストライキの実施した。
 韓国の市民団体「ろうそく勝利転換運動」は22日、ソウル中心部で集会を開き、約2万人が尹大統領の退陣を求めデモ行進を行った。主催者は、尹政権が米国に無批判に従い「対外関係を台無しにしている」などと外交の失策を指摘、併せて尹氏の妻に対する株価操作疑惑などへの特別検察法制定も要求した。
 アフリカのスーダンで軍事クーデターから1年となった25日、首都ハルツームをはじめ全国各地で軍政に反対し民政移管を求めるデモが行われた。デモには数万人が参加、今年1月以来最大規模となった。デモ参加者は「権力は人民のものであり、軍の居場所は兵舎だ」と声を上げた。


日本のできごと

(10月20日〜10月29日)

山際再生相「更迭」、辞任ドミノも
 岸田首相は10月24日、山際経済財政・再生相を事実上更迭した。山際氏は、旧統一教会との接点が次々と指摘されるも「資料がない」「確認できない」など不誠実な言い逃れに終始、国民の批判が高まり国会審議もままならなくなり首相が追い込まれた形に。しかし萩生田自民党政調会長など教団と関係の深い党役員や閣僚は多く、一人を切れば次々と波及する「辞任ドミノ」に発展し得る、自らを窮地に追い込む決断でもある。教団が党議員と交わした推薦確認書問題や解散請求問題もこれからが山場で、政権の前途はいっそう厳しさを増している。

総額ありきの総合経済対策決定
 岸田政権は28日、総合経済対策を閣議決定した。国・地方の歳出と財政投融資を合わせた財政支出は39兆円程度、民間支出などを含む事業規模は72兆円程度に。財源となる2022年度第2次補正予算案は一般会計で29兆円程度。物価高騰対策・賃上げ促進に12・2兆円を計上したのが柱で、来年1月以降の電気料金について、標準的な家庭で月額2800円程度支援するなどの内容。政権の目玉とする「新しい資本主義」加速として新生児1人に10万円相当給付なども盛り込んだ。補正予算での財政支出が当初の25兆円程度から自民党からの要求で一晩で4兆円積み増されたとの報道もあり、政権の弱さを反映した総額ありきの内容だが、苦境にある国民や中小零細企業に直接届く支援は乏しく、国民経済を守る経済対策とは程遠い。

1ドル=150円台も大規模緩和維持
 20日の外国為替市場で円相場が一時1ドル=150円台と約32年ぶりの円安水準に下落した。翌日財務省は実施を公表しない「覆面介入」に踏み切ったが、日銀は 日に大規模な金融緩和策を維持する方針を決定、米連邦準備理事会(FRB)が大幅な利上げを継続する中、今後もさらなる円安は避けがたい。21日に総務省は9月の消費者物価上昇率を発表、3・0%と31年ぶりの水準となるなど歴史的物価上昇が続くが、政府・日銀は金融緩和政策から脱却する道筋を描けぬままだ。

連合5%賃上げ要求、スト構え闘いを
 連合は20日、23年の春季労使交渉で、ベースアップ分3%程度と定期昇給相当分2%程度を合わせ、賃上げ要求を5%程度にする方針を中央執行委員会で確認した。5%目標は1995年に5〜6%を掲げて以来の水準。しかし近年掲げ続けた4%程度の要求も実際の賃上げ率は2%前後しか達成されず、企業・業種間の格差も開いている。東京商工リサーチの調査では来年度5%以上の賃上げ実施予定の企業は4・2%にとどまり、ストを構えた断固たる闘いなくして要求実現は考えられない。世界的な物価高で実質賃金が下がり続ける中、各国で労働者・労組は闘っており、連合も労働者・国民の声に応えて断固として闘うべきだ。

日豪首脳会談、「準同盟化」さらに
 岸田首相は22日、オーストラリア西部のパースでアルバニージー首相と会談した。両首脳が対面するのは5カ月で4回目。日本にとって米国以外で初めて緊急時の態勢協議を盛り込んだ新たな安全保障に関する共同宣言に署名した。宣言には、LNG(液化天然ガス)やレアメタルなどの資源エネルギーの安定供給に向けた連携を含む、経済安保分野での協力や、サイバー攻撃対策や宇宙空間面での協力も盛り込まれた。豪州を米国に次ぐ「準同盟国」として位置付ける動きの一環で、米国の意に沿って中国対抗の軍事的包囲網を強化する狙いであり、危険だ。

トマホーク検討、「反撃能力」早期に
 日本政府が米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診していることを報道機関は28日に一斉に報道した。日本政府は保有を目指す「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の手段として国産巡航ミサイルの改良計画を進めているが、運用は2026年度以降になる見込みで、トマホーク配備で早期に敵基地攻撃能力を導入する思惑。こうした「政府筋」からの情報を基にした報道は、国が内外の反応を見るための「観測気球」であり、また導入の既成事実化でもあるが、「台湾有事」を当然視し日中間の軍事的緊張を高める、警戒が必要な動きだ。

不登校やいじめ最多、コロナ禍背景
 文科省は27日、全国の学校を対象に21年度実施した「問題行動・不登校調査」の結果を公表した。病気や経済的理由などとは異なる要因で30日以上登校せず「不登校」と判断された小中学生は24万4940人で、9年連続で増加し、過去最多となった。また小中高と特別支援学校のいじめの認知件数も過去最多となり、生命や心身などに重大な被害が生じるなどのいじめの「重大事態」の発生件数も前年度から大幅増加した。同省はコロナ禍による行動制限などで人間関係や生活環境の変化が影響したとし、心のケアを中心とした早期の対策が必要だと分析している。教育格差なども含め、コロナ禍が子どもたちに与えた悪影響は大きく、国の対応は待ったなしだ。


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