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労働新聞 2022年10月25日号 トピックス

世界のできごと

(10月10日〜10月19日)

米国家安全保障戦略、中国を最警戒
 バイデン米政権は10月12日、外交・軍事戦略の指針となる「国家安全保障戦略」を発表した。トランプ前政権下の 年末以来5年ぶりで、侵攻を続けるロシアを「国際社会の平和と安定への直接的な脅威」としたものの、中国を「米主導の国際秩序をつくり替えようとする唯一の競争相手」と位置付け、中国対処を最優先に据える方針を明確にした。その上で、日米豪印(クアッド)や米英豪(オーカス)などの枠組みを「国際秩序を強化する互恵的な協力の基盤」とした。台頭し自らの世界覇権を脅かす中国に対する敵意が全面ににじむ内容だ。

中国共産党大会開催、米を強くけん制
 中国共産党は16日、第20回党大会を北京で開幕した。党大会は5年に一度開かれる同党の最重要会議。政治報告を行った習近平総書記は自らの任期10年間を振り返り、中国の特色ある社会主義が新たな時代に入ったことや貧困を脱却し小康社会(ややゆとりのある社会)が実現したと達成点に言及した。また台湾については、名指ししないものの「覇権主義や内政干渉に反対する」と米国を批判、「外部勢力の干渉とごく少数の『台湾独立』分子とその分裂活動」に対し「武力の行使を放棄しない」と前回大会では使わなかった表現で強くけん制、「祖国完全統一は必ず実現しなければならないし、実現することができる」と自信を示すなど、党としての姿勢を鮮明にした。

米のサウジ批判、中東は米に距離
 バイデン米大統領は11日、石油輸出国機構(OPEC)の盟主・サウジアラビアとの関係見直しを検討すると表明した。先にOPECとロシアなど非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」が11月からの大幅減産を決めたことに対し、米政権は「価格の上昇を引き起こし、ロシアの石油収入の増加を招きかねない」と批判、サウジへの武器売却を含む協力凍結などを検討するとした。米国は戦後一貫して自らの石油利権を守るためにサウジなど中東諸国と強い関係を築いてきたが、中東諸国は米シェール革命や脱石油の流れを受けて米国の中東への関心が薄まることを見越し、中国やロシアを中心とする上海協力機構にも接近している。バイデン氏の意思表明は米国の焦りの表れだが、米中心の世界秩序から次の世界秩序をにらんで独自外交を強める各国の動きは止まらない。

G7やG20で米利上げに批判集中
 米ワシントンで12日に日米欧主要7カ国(G7)が、翌13日に20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が続けて開かれた。G7ではロシアへの経済・金融制裁で一致したが、ドル独歩高とその背景となる米連邦準備理事会(FRB)の急速な利上げに対して各国が強い不満を表明、会議後に発表する声明文をめぐっても米国の責任を盛り込みたい各国と回避したい米国との間で押し引きがあった。またG20ではロシア制裁や米利上げで批判の応酬が繰り広げられ、4月と7月に続いて3回連続で共同声明を出せず閉会した。ロシアや中国に対抗する国際枠組みを強化する思惑の米国だが、各国はむしろ自国のインフレ対策ばかりに気を配り他国に輸入物価の上昇などの悪影響を押し付ける米国に対する不満を募らせており、米中心の国際的協調はいっそう揺らいでいる。

EUさらなるウクライナ軍事支援
 欧州連合(EU)は17日、ルクセンブルクで外相会議を開き、ウクライナ軍に対しEUとして大規模な軍事訓練を実施することで合意した。これまでもEU一部加盟国は供与した武器の使い方などについて個別に訓練をしてきたが、大規模な軍事訓練でウクライナとの軍事協力体制がさらに深まる。またウクライナに対する軍事支援の5億ユーロ(約730億円)増額も決定、2月のロシアのウクライナ侵攻以降の支援総額は31億ユーロとなる。戦争を長引かせウクライナ国民の被害を拡大させるEUは米英に次いで罪が深い。

人民のたたかい

(10月10日〜10月19日)

 フランスのパリで16日、物価上昇に抗議して数千人がデモを展開した。仏では製油所で賃上げを求めて数週間にわたるストが実施されており、ゼネストを呼びかける声が高まっている。急進左派政党「不服従のフランス」のメランション党首や主要労組の民主労働同盟(CFDT)もデモでゼネスト実施を呼びかけた。
 南アフリカ共和国の港湾都市ダーバンで運輸公社トランスネットの従業員の半数が所属する全国運輸連帯労働組合(UNTU)は17日、3年間の賃金協定を締結した。賃上げを求めて6日から無期限ストライキに入っていた。


日本のできごと

(10月10日〜10月19日)

政権窮地、初の質問権行使へ
 岸田首相は10月17日、旧統一教会に対し宗教法人法に基づく「質問権」行使に向けた手続きを進めると表明した。質問権は1995年のオウム真理教事件を契機とした法改定で規定され、宗教法人に解散命令の請求などに該当する疑いがある場合、所管省庁が法人の業務や管理運営について報告を求めたり質問したりできるが、これまで行使された例はない。旧統一教会に対しては、霊感商法や高額献金などの数々の反社会的活動から、解散命令を求める国民の声が高まっているが、14日には解散命令請求は十分慎重に判断すべきだとする答弁書を閣議決定するなど、岸田政権は自民党とズブズブの関係である旧統一教会擁護に終始していた。質問権行使に向けた動きは国民からの怒りや批判に耐え切れず追い込まれたものだ。その後も岸田首相は、18日には請求が認められる法令違反の要件を「刑法罰に限定」と答弁したものの、批判を受けて翌日には「民法の不法行為も該当」と解釈を覆すなど、場当たり的対応が批判を浴びた。しかしひとたび請求に向けて動いた以上、中途半端に終えれば旧統一教会の活動に国がお墨付きを与えたことになり、国民のいっそうの批判からは逃れられない。旧統一教会問題対応で岸田政権の前途はいっそう危うくなっている。

現行保険証廃止しマイナ一体化へ
 河野デジタル相は13日、2024年秋に現在の健康保険証を廃止しマイナンバーカードと健康保険証を一体化する方針を発表した。法律上「任意」であるカード取得に対し、相次ぐ国の情報漏えい事件などにより国民の不安は根強く、国は最大2万円分付与するマイナポイントなどで取得を「誘導」してきたが、今回の決定は国民同意なくそれを「義務」に転換するもの。医療機関と患者双方に負担を強いることになる言語道断な方針だが、国の真の狙いはマイナ制度によって国民の個人情報をひも付けし国民監視・管理強化推し進めることであり、今後方針撤回と制度廃止に向けた運動が求められる。

「第8波」前に相次ぐ旅行振興策の愚
 国内旅行を対象とした政府の観光促進策「全国旅行支援」が11日に始まった。また同日からはインバウンド(訪日外国人客)取り込みも念頭に入国者数の上限撤廃や海外からの個人旅行解禁など水際対策も緩和された。コロナ禍で打撃を受けた日本の観光産業の再生に向けた施策だが、20年に実施された「GoToトラベル」同様、大手旅行代理店ばかりに利益がいく制度で、地場の零細事業者は蚊帳の外だ。欧州でコロナ第8波が始まりつつある時期の水際対策緩和にも疑問符が付く。円安・物価高に対する対処法を欠きインバウンドにすがるだけの岸田政権の下では国民の生活も健康も守れない。

土地規制法の区域初提示、実績めざす
 政府は11日、土地利用規制法に基づく規制区域の候補地を初提示した。無人の国境離島など北海道、青森、東京、島根、長崎の5都道県の58カ所で、これらを第1弾とした理由を「安全保障上の優劣ではなく、準備が整ったところから順次指定する方針」と説明、米軍基地が集中し自衛隊配備も進む沖縄は「後回し」にし、実績積み上げを先行させる思惑が透ける。今後1カ月程度かけて地元自治体の意見聴取を実施し年内に最初の指定を行う思惑だが、やりとりはすべて非公開で、指定まで住民の意見表明の場はない。今後は着々と指定を進め、住民監視や密告奨励などを通じて沖縄などの運動弾圧を強化する思惑だ。

倒産3年ぶり増、コロナ返済も重荷
 東京商工リサーチは11日、全国の4〜9月の倒産件数を発表した。前年同期比7%増の3141件で、9月単月では599件と前年同月比19%増えた。22年に入って最も多く、6カ月連続で前年を上回った。6カ月連続増となるのは消費税増税にコロナ禍が追い打ちをかけた20年4月以来。コロナ関連融資の返済が始まったところに燃料や原材料高が直撃、運輸や建設業で行き詰まる企業が増加した。以降も円安と物価高騰が続くため、コロナ融資返済が本格化すれば倒産の増勢が強まると予想される。円安で輸出大企業や商社は暴利をむさぼる一方で、多くの中小零細企業が苦境に追い込まれている現状を国が放置することは許されない。

自殺対策白書、矛盾が若者や女性に
 岸田政権は14日、22年版自殺対策白書を閣議決定した。自殺者数の動向についてコロナ禍前の15〜19年までの5年間平均と21年を比較して分析、昨年の白書では5年間平均と20年を比べ、男女とも20歳代以下で自殺者数が増加したが、今回も同傾向となった。また女性の自殺者は、コロナ感染が拡大した20年は女性の自殺者が19年と比べ935人と大幅に増えたが、21年はさらに42人増え2年連続で増加した。全体や男性の自殺者数が減少しているなか、若者の孤立や女性の失職や収入減など、コロナ禍の矛盾が若者や女性に集中している背景がうかがわれる。生活困窮対策や社会的セーフティーネット拡充などが不十分であることは明白で、国の対策は待ったなしだ。


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