ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2022年10月15日号 トピックス

世界のできごと

(9月30日〜10月9日)

OPECプラス減産拡大、米欧痛手
 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は、10月5日の閣僚会議で、11月に日量200万バレルの大幅減産で合意した。世界的な景気減速による原油価格の下落に歯止めをかける狙い。エネルギー高騰に揺さぶられる米欧にとっては痛手。非産油国を含む世界経済にも一段の重荷になる。7月にサウジアラビアを訪問して増産を働きかけたバイデンの「石油外交」は完全に空振りで、11月の中間選挙を控えた米バイデン政権には逆風。ロシア制裁の効果も減殺され、米欧の算段は大きく狂うことになった。

英新政権わずか10日でつまずき
 トラス英新政権のクワーテング財務相は3日、首相が発足直後に表明していた所得税の最高税率を45%から40%に引き下げることを柱とする減税措置を撤回すると表明した。この減税は年収15万ユーロ(約2400万円)超が対象となる富裕層減税だが、これに反発して1日には全国で鉄道や郵便などのストや街頭での抗議行動が行われるなど、国民の不満が爆発していた。英国ではコロナ禍で進めた賃金補償などの給付増で財政赤字が増大していた中での無謀な減税発表で通貨ポンドや英国債が急落、与党保守党内からも富裕層減税への反対論が相次いでいた。発表からわずか10日での「屈辱的な撤退」(ガーディアン紙)だが、公共サービスや福祉給付の大幅削減方針に変わりなく、国民の反発は続く。

欧州政治共同体、初の首脳会議
 マクロン仏大統領が今年5月提唱した欧州政治共同体(EPC)の初会合が6日、44カ国が参加してチェコのプラハで開かれた。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、欧州連合(EU)を超えた欧州全体の新たな協力が必要として提唱された。EUの全加盟国 カ国に加え、EUを脱退した英国とバルカン諸国、さらにロシアと友好関係にあるセルビアやトルコなど立場が異なる国も参加した。しかし会議では宣言や公式文書も発表されなかった。EPCの位置付けは定まっておらず、米中対立の激化など世界が不安定化する中、これが欧州の「自立」に向けた動きとなるか、今後に注目する必要がある。

米州機構総会、ロシア非難一致せず
 米州機構(OAS)の第52回年次総会が5日からペルーで開かれた。総会では、「ウクライナへの攻撃を終わらせ、軍隊を撤退させ、対話と外交に戻るよう」ロシアに要求する宣言が提案され、米国、カナダ、チリなど カ国が支持したが、中南米の有力国であるブラジル、メキシコ、アルゼンチンは支持しなかった。総会に先立ちブリンケン米国務長官はチリ、コロンビアなどを歴訪、中南米重視の姿勢を示したが、ロシア非難で一致させられず、6月の首脳会議に続いて中南米での米国の威信の低下があらわになった。

世銀、南アジアの成長予測引き下げ
 世界銀行は6日に公表した南アジアの半期経済報告で、インドの年間成長率見通しを7・5%から6・5%に大きく引き下げ、経済危機に陥っているスリランカの成長率についてはマイナス9・5%と予想した。南アジア全体の年間成長率見通しを6月時点の6・8%から5・8%に下方修正した。インドについて「海外需要の鈍化が輸出に痛手を与える一方、民間投資の伸びが抑制される可能性が高い」と指摘した。またパキスタンの自然災害が南アジア地域を痛めつけていると指摘、各国とも財政・金融面でショックを緩和する措置を強化する必要があるとし、国民を守るため「なけなしの」資源も投入するよう促した。世界的な対応が求められているが、米国の利上げなどで状況は今後さらに悪化しかねない。

人民のたたかい

(9月30日〜10月9日)

 英国で1日、鉄道、郵便、弁護士、看護師などの労働組合が、賃上げを求めて一斉にストライキを行った。鉄道ストは8日にも行われた。
 スペイン最大全国労組・労働者委員会(CCOO)と労働総同盟(UGT)は「世界ディーセント・ワークデイ」の7日、賃上げや使用者への交渉権強化を求め全国一斉行動を行った。
 ウルグアイで4日、国立大学予算削減に反対し教組がストを開始、全国各地の教組も連帯ストに突入した。7日には全国から首都モンテビデオに学生や教員が結集し国会まで行進した。
 西アフリカのブルキナファソで1日、9月に失脚したダミバ前大統領が国内の仏軍基地から反攻を指揮しているとして、仏大使館前に数百人が集まり、抗議活動を行った。


日本のできごと

(9月30日〜10月9日)

臨時国会開会、直後から運営座礁に
 第210臨時国会が10月3日、召集された。衆参両院での所信表明演説で具体的政策課題に入る前に旧統一教会問題に言及、異例の決意を表明し、自ら苦境にあることを示した。また8月に強調していた防衛力の強化は後回しにし、経済の立て直しを「最優先課題」として演説全体の約4割を割いた。国会では開始早々に旧統一教会問題や安倍元首相の国葬問題で野党から集中放火を浴び、さらに秘書官に自身の長男を起用し「公私混同」と批判材料を増やすなど、国会運営は開会直後からつまずいた格好だ。

社会保障負担増、一斉値上げも
 1日から社会保障に関する制度改定が行われた。75歳以上で一定の所得がある高齢者の医療費の窓口負担が1割から2割に引き上げられた。紹介状なしで大・中規模病院を受診した患者に窓口負担とは別に支払わせる追加負担金も引き上げられ、初診時は現行の5千円以上から7千円以上となる。マイナンバーカードを健康保険証代わりに使える施設では従来の保険証を使う患者の窓口負担の方が割高になる。中学生以下の子どもがいる世帯に対する児童手当制度の特例給付の対象を縮小、年収1200万円以上の世帯への支給を廃止する。同日からは食品の値上げも相次ぎ、帝国データバンクの調査では約6600品目と今年の月別で最多、家計負担は食品だけで年約7万円増の見込み。生活悪化はもう限界だ。

各地で日米軍事演習、朝鮮挑発
 日米韓は6日、日本海で合同演習を開始した。3カ国が2週連続で同海で合同演習を行うのは初めて。米国の原子力空母「ロナルド・レーガン」は再び日本海に派遣された。1日には北海道で陸上自衛隊と米海兵隊による国内最大規模の共同訓練が始まり、4日には九州西方空域で自衛隊と在日米軍による訓練も行われるなど、軍事演習を活発化させている。日本政府は目的の一つに「挑発を繰り返す北朝鮮をけん制」などと挙げているが、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の間近で軍事演習を繰り返すことこそ挑発であり、緊張を高める日米韓の側に非がある。

「危機」あおる5年ぶりJアラート
 政府は4日、朝鮮による弾道ミサイル実験に対し全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。2017年9月以来5年ぶり。発令は「日本の領土・領海に落下する可能性又は領土・領海を通過する可能性がある場合」とされているが、日本列島の上とはいえ最高高度1000キロの宇宙空間を飛行し公海に落下したミサイルに対する警報は明白に過剰。発令を受けた住民も対策のしようがなく、「脅威、危機」を印象付け軍事費増大につなげる思惑が露骨だ。発令に対する国民からの批判が求められている。

日銀短観、円安副作用中小企業ほど大
 日銀は3日、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表した。景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値である業況判断DIは、9月の大企業製造業で前回6月調査から1ポイント低下し3期連続の悪化となった。中小企業製造業は前回と同じマイナス4だった。円安による輸出増などのプラス効果が薄まり副作用が強まっている状況が浮き彫りになった。また中小企業製造業は仕入れ価格DIと販売価格DIに40の開きがあり、大企業の29と比べると、仕入れ価格上昇の影響を価格転嫁できていない実態が浮かんだ。国がこの状況を放置することは許されない。

介護事業の倒産最多ペース、支援急務
 東京商工リサーチは7日、22年1〜9月の「老人福祉・介護事業」の倒産件数が100件に達し、同期の累計として最多となり、年間の倒産件数も20年の118件を抜き最多を更新する見込みだと発表した。前年同期の倒産51件から倍増、コロナ倒産が4割超を占める状況について、「コロナ関連支援効果が薄れた。利用控えや感染防止費用の負担など、コロナ禍の影響が深刻さを増してきた」と指摘した。さらに「人手不足の顕在化で経営環境が悪化、また原油高や円安で介護用品、光熱費や燃料費など運営コストが大幅に上昇、新たな負担も生じている。コスト削減に向けた支援が急務」と、新たな国の施策の必要性を指摘した。

高等教育費の家計負担重い日本
 経済協力開発機構(OECD)は3日、日本の高等教育費のうち学生の家計が負担している割合はOECD平均の2倍超だと報告した。19年のデータを使い大学レベルの教育費の負担割合を分析、日本は家計負担が52%で、OECD平均22%の倍以上で、家計負担が公的支出(33%)よりも多かった。「私的支出が高ければ高等教育への参加をためらう学生が出る。また日本では大学卒業後に家族や本人がローンを抱えている問題も起きている。他国に比べ必ずしも財政的にいい施策があるとは言えない」(OECD教育スキル局長)との指摘もされた。高等教育費の家計負担偏重は教育や収入の格差拡大、また科学技術の衰退につながる重大な課題で、国の対策は急務だ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2022