労働新聞 2022年10月5日号 トピックス
主権侵害の4州併合、米欧にも責任
ロシアの支配下にあるウクライナの東・南部4州で9月23日からロシアへの編入の賛否を問う住民投票が行われ、賛成票が圧倒的多数となった。4州の要請を受ける形でロシアのプーチン大統領は事実上の併合を宣言した。プーチン氏は演説で「ロシアの領土の一体性が脅かされる場合にはあらゆる手段を行使する。脅しではない」と述べ、ウクライナとその背後にいる米欧を核兵器の使用も辞さない姿勢でけん制した。これによりロシアは支配地域へのウクライナ軍の反転攻勢を「自国の防衛」と位置付け直してこの戦争にいっそう本腰を入れようとしている。併合はウクライナへの主権侵害で到底許されないが、これまでウクライナに一国で総額162億ドル(約2・3兆円)相当もの軍事支援を行うなど停戦交渉を妨害し戦争を泥沼化させてきた米国をはじめ欧州各国の責任も重大だ。
伊総選挙で極右が第1党、戦後G7初
イタリア総選挙が25日に投開票され、野党の極右「イタリアの同胞」(FDI)が第1党に躍進した。FDIは旧ファシスト党の流れをくむ排外主義的な極右政党。主要7カ国(G7)で極右政党が第1党となるのは第2次世界大戦後初。イタリアでは欧州連合(EU)のロシア制裁の影響による深刻なインフレが国民生活を直撃、「私たちは(光熱費を)払わない」などのスローガンを掲げた市民運動も広がる中、FDIは「イタリア第一」などの反EU色の強い主張で国民の不満をすくい上げた。新政権は、ロシアに融和的とされる「同盟」と「フォルツァ・イタリア」との右派3党連立政権となる見通し。物価高騰を背景に欧州ではフランスやスウェーデンなどでも極右政党が議会の選挙で躍進、ロシア制裁の「返り血」を浴びているが、ウクライナ戦争が泥沼化すればいっそうの政治の流動化が避けられない。
続くFRB利上げ、各国経済に大打撃
米国の連邦準備制度理事会(FRB)は21日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の誘導目標を現状の2・25〜2・5%から0・75ポイント引き上げ、3・0〜3・25%とすると決定した。これは3会合連続で通常の3倍の引き上げ幅。この結果、米10年債利回りは28日に2010年以来12年ぶりに4%を突破した。米国の利上げはマネーの流出などで物価高に苦しむ新興国や途上国の経済を直撃、世界経済危機の震源地となっている。自国のインフレ鎮静化ばかり重視する米国に翻弄され続け、各国は「別の秩序」に目を向けざるを得ない。
米、太平洋島嶼国と初の首脳会議
バイデン米政権は28日から太平洋島嶼(とうしょ)国との初の首脳会議をワシントンで開いた。ソロモン諸島やパプアニューギニアなど14の国・地域のリーダーらが出席して「宣言」を採択し閉幕した。初開催の背景には今年4月にソロモン諸島と安全保障協定を締結するなどこの地域で存在感を高める中国に対抗する思惑があり、米国には島嶼国への支援を強化している。しかし宣言の安全保障分野で島嶼国は「安全保障協力を強化、深化させるという米国の約束に留意する」との表現にとどめるなど、米中をはかりにかけた。米欧などが主導してきた世界秩序がぐらつく下、各国は新たな秩序をにらみながら自主外交を行っている。
米韓また原子力空母投入の大規模演習
米韓両海軍は26日、日本海上では5年ぶりとなる原子力空母を交えた共同訓練を始めた。両軍は6月にも沖縄県南東沖の公海上で原子力空母を投入した訓練を実施していた。また29日にはハリス米副大統領が訪韓、尹大統領と会談し米国が核戦力も含めた対応をとる「拡大抑止」を韓国に提供することを再確認した。米国は朝鮮民主主義人民共和国のミサイル発射実験を「挑発」などと批判するが、米国こそが軍事的挑発をエスカレートさせている。
オーストラリア各地で22日、君主制廃止を求めるデモ行進が行われた。英連邦所属の同国は、エリザベス女王死去を受け同日を「国民服喪の日」と定めていた。各地で英歴代国王の人種主義による残虐な植民地支配を批判した。行動を呼びかけた「抵抗するアボリジニの戦士たち」は声明で「女王への追悼が呼びかけられているが、われわれは女王の支配が奪ったすべてのものを悼む。われわれの子どもたち、土地、愛する者の命、聖地、歴史だ」と指摘した。メルボルンでは600人が英領事館まで行進し、「君主制撤廃、国王打倒」と唱和した。
国葬強行で岸田政権に大打撃
政府は9月27日、安倍元首相の国葬を行った。首相経験者の国葬は戦後2例目で1967年の吉田茂元首相以来55年ぶり。少なくとも約16億6000万円の費用は全額国費で賄われた。国内の政財界や各国・地域・国際機関の代表ら約4200人が参列した。国葬は、戦前は26年制定の国葬令(戦後失効)によって皇族や軍人など「国家に偉勲ある者」を対象に行われ国威発揚・国民統合の手段とされた。岸田首相も今回の国葬を国威発揚と自らの政権基盤固めに利用する思惑だったが、最長在任期間に数々の悪政を尽くした安倍氏への弔意強要に国民の怒りが爆発、全国各地で反対・抗議の取り組みが行われた。安倍氏を筆頭に自民党と旧統一教会との深い関係に対する真相究明を求める声もやまず、岸田政権の支持率は無残に急落し続けている。
岸田政権、弔問外交も中国敵視に利用
国葬には海外から首脳級を含めおよそ700人が参列、210以上の国・地域や国際機関の代表が出席し、岸田政権は弔問外交をこなした。26日にはハリス米副大統領と会談、安倍氏が提唱した中国敵視の「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を確認し、台湾情勢について意見交換した。また政府は国葬で参列者が献花する際に国や国際機関の名称を呼ぶ「指名献花」の対象に台湾を入れ、中国外務省から批判された。国葬を日米同盟強化と中国敵視扇動に存分に悪用、29日の日中国交正常化 年にも大いに水を差した。
野党や連合からも参加、安倍悪政免罪
27日に行われた国葬に、日本維新の会、国民民主党、NHK党、参政党は党代表らが参列した。国民の玉木代表は「8年以上にわたり首相を務めた安倍氏には民主主義に対する一つのリスペクト(敬意)としたい」などと安倍政権の悪政を免罪した。立憲民主党は執行部が欠席したものの野田元首相ら一部所属議員が参列した。また連合の芳野会長も「労働側代表としての責任」などとして参列、岸田政権に恭順の意を示し、労働者階級に分断を持ち込んだ。国葬参加によってガタガタの岸田政権を支える役割を果たす野党や連合執行部には厳しい批判が必要だ。
日中国交正常化50年も祝賀ムード低調
日中両国は29日、国交正常化50年を迎え、東京と北京でそれぞれ式典を開いた。東京で経済団体が中心となって行われた式典名には「記念」があるのみで「祝」の文字はなく、岸田首相も参加しなかった。45年を祝う2017年の式典には当時の安倍首相が出席した。また北京で人民対外友好協会などが開いた式典は釣魚台迎賓館を会場に200人規模で開催された。45年の式典は「格上」の人民大会堂・300人規模だった。節目にもかかわらず両国の祝賀ムードは低調に終わったが、責任は米国と歩調を合わせて中国敵視を強める日本側にある。また50年をめぐっては、日本共産党も何の声明や談話も出さないなど、与野党で足並みをそろえて日中友好に背を向けている。
岸田首相が国連総会演説、会場閑散
岸田首相は20日、米ニューヨークの国連本部で開かれていた総会で一般討論演説に臨んだ。首相はウクライナ侵攻を続けるロシアを名指しで批判、侵攻を止められない国連を「機能不全」とし、安保理改革について「文言ベースの交渉を開始すべき」とした。翌21日にはバイデン米大統領と懇談、バイデン氏が国連総会の一般討論演説で安保理改革に言及したことについて「高く評価する」とし、連携を確認した。首相はロシア批判のトーンを高めるなど米国の意に忠実に沿うことで安保理常任理事国入りへの道筋を付ける思惑だが、米国など常任理事国が自らの特権を弱める国連憲章改正案を批准するはずもない。そもそも岸田首相の演説会場はガラガラで、米国の手先に徹する日本の国際政治上の影響力低下をいっそう印象付ける結果となった。
24年ぶり円買い介入、過去最大規模
財務省は22日、24年ぶりに円買い・ドル売り介入を実施した。日銀が同日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を維持する方針を決め、為替相場が一時1ドル145円台となったことを受けたもの。介入額は2兆8千億円強と過去最大規模。円相場は一時140円台前半まで値上がりしたが、その後144円程度にまで戻った。日米金利差の拡大や貿易赤字という状況下での介入に持続的効果は期待できず、今後も物価高騰が避けられない。岸田政権の失政で国民生活への打撃は続く。
土地利用規制法全面施行、監視強化へ
土地利用規制法が20日、同法は米軍や自衛隊基地や原発などの周辺1キロメートルや国境離島を「注視区域」に指定、所有者や使用者を監視し、「機能阻害行為」があれば使用中止を勧告・命令できる。何が機能阻害行為に該当するかの法律上の規定がなく、恣意(しい)的な判断が危惧される。「情報収集」と称した住民間の監視・密告も懸念される。戦前の治安維持法に通ずる法で、沖縄などの運動弾圧強化に使われることは不可避。同法の廃止に向けた運動が求められている。
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