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労働新聞 2022年9月25日号 トピックス

世界のできごと

(9月10日〜9月19日)

SCO「多極的世界秩序」強化目指す
 ウズベキスタンのサマルカンドで開かれていた、中国、ロシア、インドなど8カ国で構成する上海協力機構(SCO)の首脳会議が9月16日、サマルカンド宣言を採択し閉幕した。宣言には、「SCO拡大は地域の安定化に寄与」とした上で、「多極的世界秩序」を強化することも盛り込まれ、米欧による支配に対抗する姿勢を示した。今回の会合ではイランが正式に加盟、ベラルーシの加盟手続きも開始された。トルコやサウジなど地域大国も加盟へ向けて動いている。米欧日など7カ国首脳会議(G7)の国際的影響力が低下する中、BRICSやSCOなどの新たな国際的枠組みや地域統合拡大の動向が注目される。

スウェーデンで8年ぶり政権交代
 スウェーデンの総選挙(1院制、定数349)が11日に行われ、右派の野党陣営が179議席を獲得し僅差で勝利、極右の民主党は第2党に躍進した。「左派」陣営は173議席にとどまり、与党・社会民主労働党のアンデション首相は敗北を受けて辞意を表明、8年ぶりの本格的な政権交代に。選挙戦では増加する犯罪の取り締まりや移民対策、物価高騰対策などが争点となった。北大西洋条約機構(NATO)への加盟方針は維持される見込みだが、ロシア制裁により加速した物価高騰でまた一つ政権が崩壊したことで、欧州連合(EU)の対ロ政策にも影響が及ぶことも予想される。

米上院外交委「台湾政策法案」可決
 米上院外交委員会は14日、「台湾政策法案」を超党派の賛成多数で可決した。台湾の防衛力強化を支援するため、台湾を「主要なNATO同盟国」に指定、従来は売却していた武器の無償譲渡も可能にする。また事実上の大使館である「台北経済文化代表処」を「台湾代表処」に改称し、米側の責任者を駐外大使と同等にする。台湾への敵対行為を認めれば中国の主要金融機関に制裁の発動を政府に要求することも掲げた。バイデン政権は法案の年内成立を目指す。台湾を事実上の独立国として扱う、中国に対する内政干渉と挑発を強めるものだ。

4年半ぶり米韓戦略協議、朝鮮けん制
 米韓両国は16日、ワシントンで朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核問題を外務・防衛の次官級で議論する拡大抑止戦略協議を開いた。同協議は今回が3回目で、文前政権時代に中断、2018年1月以来4年8カ月ぶり。共同声明では、米国は韓国に「核、通常戦力、ミサイル防衛などあらゆる分野の軍事的能力」を提供すると表明、韓国に「核の傘」を拡大する方針を示した。尹政権発足以降、合同軍事演習が強化されるなど、米国の圧力に対して「核を放棄しない」と表明する朝鮮に対する圧力が強まっている。

女王の死去で「英連邦」にも変化
 英女王エリザベス2世の死去によって、英国だけでなく、英連邦(コモンウェルス)でも権力の移行が起きている。英連邦は旧英国植民地を中心に構成された国際組織で、加盟する56カ国は連邦の一員として英王室との関係を維持してきた。うち15カ国は現在も英国王を君主とする英連邦王国(コモンウェルス・レルム)だが、女王の死去がもたらす変化が特に鮮明に表れた。死去から数日のうちにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどは、女王の後継者であるチャールズ3世を正式な君主とし新国王への忠誠を誓う声明を発表した。一方、英連邦王国の一つであるカリブ海のアンティグア・バーブーダは、英国君主を引き続き自国君主とするかどうかについて国民投票を行う方針を明らかにした。英連邦加盟国のうち、英国君主を自国の元首としないインド、シンガポール、ケニアなど41カ国にとっても英女王の死去は新たな時代の幕開けとなり得る。

人民のたたかい

(9月10日〜9月19日)

 米国ミネソタ州で12日、米国史上最大の民間看護師ストライキが展開された。同州の16病院で州看護師協会に所属する1万5千人が賃上げと人員配置条件の改善を求め3日間のストライキに入った。MNAは声明で「病院幹部が人員や体制維持の危機への対処を拒んできた。現在も人員不で過労状態だ」と訴えている。
 スペインの女子プロサッカーリーグ・リーガFの審判が男子のリーガ・エスパニョーラ(スペインリーグ)の審判と同等の報酬を要求しストを行い、10、11日の第1戦全試合が中止となった。審判たちは「現在の労働条件と経済状況ではトップリーグの試合の審判をしない」と宣言した。


日本のできごと

(9月10日〜9月19日)

日米防衛相会談、攻撃能力向上へ
 浜田防衛相とオースティン米国防長官は9月14日、ワシントンで会談した。浜田氏は、相手方の脅威圏外から対処する「スタンドオフ能力」を向上させる長射程のミサイル保有を念頭に、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や軍事費の大幅増額などに「決意」を示し、オースティン氏は「強い支持」を表明した。また極超音速ミサイルに対抗する技術の「共同研究」で一致、これまでの「共同分析」からさらに踏み込んだ。米国は同盟国などと一丸となって抑止力を働かせる「統合抑止」を安全保障の基本戦略とし、それに合わせ岸田政権は年末に向け国家安全保障戦略・防衛計画大綱・中期防衛力整備計画の「安保関連3文書」改定作業を進めている。今回の会談はそうした日米の軍事的一体化の一環で、中国攻撃能力を高める危険な動きだ。

沖縄の玉城知事再選、民意さらに明確
 沖縄県知事選が11日、投開票され、新基地建設断念を訴える玉城知事が再選された。前回知事選も立候補し、岸田政権が全面支援した佐喜真候補は、前回は新基地建設への態度を一切語らなかったが、今回は「容認」を明言した。佐喜真氏が前回以上の大差で敗北した結果は、新基地建設反対が県民の民意であることをいっそう鮮明に示すものだ。国は、2023年度予算の概算要求で沖縄振興費を2798億円に決定、県が要望していた3000億円台から大幅に削り、なかでも県が使途を決定できる一括交付金は 年度の概算要求に盛り込まれた981億円から219億円も減らすなど、玉城県政と県民に圧力をかけ続けているが、手痛い反撃をくらう結果となった。

沖縄・先島に避難シェルター配備計画
 沖縄県の先島諸島などで住民避難用のシェルター整備を検討していることが判明したと、16日に沖縄地元2紙が報道した。既に内閣官房は23年度予算の概算要求で武力攻撃に耐えられるシェルターに関する調査費を計上している。国は沖縄県を含む南西諸島で自衛隊のミサイル部隊配備や弾薬庫建設などの「基地化」を加速させているが、一方で有事の際に住民が巻き込まれる危険性も増す。離島からの住民避難は陸続きの本土に比べて時間を要することを前提とした整備だが、瞬時に飛来するミサイルからシェルターが住民を守れるかは大いに疑問で、配備計画は南西諸島の基地化に不安を抱く住民に対する形だけの対応策に過ぎない。国は南西諸島の基地化をやめることで住民を守るべきだ。

岸田政権の対中政策に財界から異議
 日本経団連など日中両国の政官財関係者は12日、日中国交正常化50周年の記念シンポジウムを東京と北京を結ぶオンライン形式で開催した。あいさつした経団連の十倉会長は、正常化以降両国の企業が貿易や投資の拡大を通じて互恵的な関係を構築したと評価、「政治と経済を分けて考えることが難しい情勢下にあり、両国首脳を含むハイレベルな対話と意思疎通が何より大事」と述べ、早期の首脳会談を求めた。日本政府は、米国とともに「台湾危機」をあおり政治的・軍事的に中国挑発を続けるだけでなく、米国が主導する新経済圏構想・インド太平洋経済枠組み(IPEF)で中国排除に参画するなど経済的にも対中関係を悪化させている。経団連会長の発言はこうした姿勢に対する危機感の表れ。支配層を含めた各界各層からの異議申し立ては今後強まることが必至だ。

貿易赤字最大、縮む経済に国は無策
 財務省は15日、8月の貿易統計速報を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8173億円の赤字で、東日本大震災の影響が大きかった2014年1月を上回り、比較可能な1979年以降で単月の過去最大額に。エネルギー価格高騰や円安で輸入額が前年同月比49・9%増の10兆8792億円に膨らみ、輸出額の伸びを上回った。急速な円安に歯止めをかけようと、日銀は為替介入の準備のための「レートチェック」を実施、当局者が市場の動きをけん制する「口先介入」から一歩進めたが、金融緩和のもとで円安の基調が変わる可能性は乏しい。1ドル=140円換算であれば、22年の名目国内総生産(GDP)は30年ぶりに4兆ドル(約560兆円)を下回り、4位のドイツとほぼ並ぶ。日本経済は縮む一方だが、岸田政権は何ら有効な手立てを打っていない。

岸田政権、不支持が支持を逆転
 報道各社の9月の世論調査で、岸田政権を「支持しない」と答えた割合が「支持する」を上回る結果が相次いでいる。17〜18日の共同通信社による調査では「不支持」が8月から18・3ポイント上がり46・5%で、「支持」は40・2%。御用マスコミ筆頭の読売新聞社や産経新聞社の調査でも同様の結果で、旧統一教会をめぐる問題や安倍元首相の国葬、物価暴騰に対し国民大多数が不満を抱いていることの反映。岸田政権は低所得世帯への5万円給付など新たな物価高対策以外に目ぼしい手立てを打っておらず、政権浮揚策と踏んだ安倍国葬も完全な逆効果に。支持回復の糸口は見えず、政権維持もおぼつかない状況に陥りつつある。


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