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労働新聞 2022年9月15日号 トピックス

世界のできごと

(8月30日〜9月9日)

G20会合、機能不全の様相強める
 20カ国・地域(G20)は8月31日、インドネシアのバリ島で環境・気候相会合を開き、気候変動や海洋プラスチックごみの問題などについて協議した。9月1日にはデジタル相会合を開き、コロナ禍収束後の世界のインターネットの接続性、デジタル人材の育成などについて議論した。2日にはエネルギー移行相会合も行われ、脱炭素化に向けたクリーンエネルギーへの転換やエネルギーの安全保障などについて議論した。だがいずれの会合でもウクライナ問題で対立、共同声明の採択が見送られた。G20は7月の財務相・中央銀行総裁会議でも共同声明を採択できていない。米欧はウクライナ問題を持ち込めばロシアの反対などで共同声明採択に至らないことを承知で議題に上げ、G20を機能不全に陥らせている。一方でBRICSなど米欧が中心ではない枠組みは国際的な影響力を増しており、一連のG20会合は世界秩序の転換を印象づけた。

中ロの大規模軍事演習にインド初参加
 ロシアや中国などは1〜7日、極東地域で大規模な合同軍事演習「ボストーク2022」を実施した。今回は初めてインドも参加するなど参加国は軍事協力を拡大し、Quad(クアッド)やAUKUS(オーカス)などの米同盟国を中心としたアジア太平洋地域での軍事的影響力拡大に対抗した。5〜8日にはウラジオストクで東方経済フォーラムが開かれた。ロシアが極東地域や北極圏への投資を外国に呼びかける集まりで、インドや中国、ベトナムなど60カ国以上から代表団や企業家ら約7000人が参加した。インドなど新興国や世界の多くの途上国は、米欧が中心となった従来の世界秩序にも片足を置きつつ、中ロなどが新たに構築を目指す世界秩序にも参加するなど、自国にとっての実利や今後を見据え、したたかに外交の舵(かじ)取りを行っている。

英トラス政権発足、前途は難問山積
 相次ぐ不祥事で辞任に追い込まれた英国のジョンソン首相の後釜を決める保守党の党首選で5日、トラス候補が勝利し、翌6日に新首相に就任した。トラス首相は前政権の基本路線を踏襲、就任後最初にウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行うなど、ロシア対抗のウクライナ支援をいっそう強める姿勢を示した。しかし国民を襲う危機的な物価高と鉄道労働者をはじめとするストライキの頻発、北部スコットランドの独立派への対応、保守党内部の亀裂修復、外交面では欧州連合(EU)との関係改善など、政権の前途には難問が山積している。世論調査でも労働党のスターマー党首が支持率で上回るなど、24年までに予定されている総選挙で勝利し政権を維持する青写真は描けていない。

OPECプラス減産へ、増産ご破算
 石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えた「OPECプラス」は5日、10月に原油の減産に転じることを決めた。米国のバイデン大統領が7月にサウジを訪問したことを受けてわずかながら要求に応えた9月の小幅増産は早くもご破算となる。米欧日などがエネルギー高への懸念を強める冬を前にした減産決定は、OPECプラスが一致して相場を下支えするとのメッセージだ。また原油の需給が緩めばOPECプラスが自らの都合で介入する姿勢も示した形。米欧の国際政治上の影響力低下を印象付けた。

人民のたたかい

(8月30日〜9月9日)

 英国最大のコンテナ港、フェリクストウ港で約2000人の港湾労働者が21日から8日間にわたってストライキを行った。賃上げと労働環境の改善を求めている。また鉄道労組も 日にストを決行した。
 オーストラリアの鉄道・路面電車・バス労組(RTBU)は、外国製の鉄道車両の安全を問題視、改善を求めて8月31日午前0時から9月1日午前0時までシドニー都市圏の州営の鉄道とバスで24時間ストを敢行した。
 チェコのプラハで3日、7万人がデモ行進を行い、政府、EU、NATOの対ロシア政策に抗議し、エネルギー価格の上昇を抑制するよう要求した。抗議行動の主催者は、チェコ共和国は軍事的に中立であり続け、ロシアを含むガス供給者との直接契約を確保すべきだと主張した。
 インドネシアの首都ジャカルタをはじめ全国の主要都市で6日、インドネシア労働組合総連合が主導し、補助金削減に伴う3割超の燃料値上げに抗議するデモが実施され数万人の労働者、学生が参加した。


日本のできごと

(8月30日〜9月9日)

国民バカにする自民の旧統一教会点検
 自民党は8月8日、旧統一教会や関係団体との関係について、党所属国会議員379人から報告を受けた内容の結果を発表した。接点のあった国会議員は半数近くに及ぶ179人としたが、このうち121人の氏名を公表したものの、全面的には公表しなかった。また「点検であって調査ではない」(茂木幹事長)という自己申告に過ぎないもので、さらに「不足の点は個々の議員が説明を尽くす」などとして、党としての説明責任は放棄した。そもそも、点検は現職国会議員のみが対象で、衆参両院議長も「無所属」を理由に対象外、党所属地方議員も対象外とするなど形式的なもので、何より安倍元首相との関係について「本人が亡くなられており限界がある」(岸田首相)などと完全に実態解明に背を向けている。国民をバカにしたもので、引き続き厳しく追及する必要がある。

国葬費6・6倍も過少算出の疑い濃厚
 松野官房長官は6日、安倍元首相の国葬に要する経費の概算を公表した。警備に8億円程度、外国要人の接遇に6億円程度などを見込むとし、既に閣議決定した会場借り上げ・設営費約2億5000万円と合わせ総額約16億6000万円になるとした。わずか11日前に公表された費用が6・6倍にも膨張、国民の不信感は深まるばかり。しかも、2019年の現天皇の即位の礼では国内外から約2600人を招き警備・接遇費で約90億円の予算を計上したが、参列者約6000人と見込む今回の国葬では警備・接遇費などの見積もりはわずか約14億円。国民の批判をかわすための過少算出である疑いは濃厚。国葬の企画・演出を「桜を見る会」の会場設営に携わった企業が受注したことも併せ、岸田政権に対する国民の不信・不満は深まるばかりだ。

概算要求、軍事費は6兆円台半ばも
 財務省は5日、23年度一般会計予算の概算要求額を公表した。全省庁の合計は110兆484億円となり、過去最大だった23年度に次ぐ規模に。加えて今回は予算額を明示せず事業の項目だけを提示する「事項要求」が例年になく多く、特に防衛省は事項要求を100件以上盛り込んだ。同省は過去最大だった22年度当初予算を2260億円上回る5兆5947億円を計上、9年連続で過去最大を更新し、事項要求を含めて6兆円台半ばの予算獲得を目論んでいる。内容面でも、敵基地攻撃能力につながる「スタンドオフ防衛能力」や、地対艦ミサイル部隊の沖縄本島の陸自勝連分屯地(うるま市)への配備など、中国をにらんだ基地機能強化が中心で、F35AやBステルス戦闘機など高額な米国製兵器導入費も目白押し。巨額の血税を使い東アジアの軍事的緊張を高める二重の犯罪だ。

日印2+2、協力拡大も印第一主義
 日本とインドは8日、東京で外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。19年11月以来2度目の開催。海洋安全保障分野の協力を深め、自衛隊とインド軍の共同訓練を拡充するとしたほか、陸海空3自衛隊を束ねる統合幕僚監部とインド軍の統合国防参謀本部による統合幕僚協議の立ち上げや軍装備品の共同研究などで合意した。日本側にはロシアと安全保障上の結びつきが強いインドを日米同盟の側につなぎとめる思惑があり、中国の海洋進出を強調することで協力拡大を迫ったが、インド外交は伝統的に非同盟主義を貫いている。日本の思惑は空振りに終わる見込みだ。

経常利益や内部留保が過去最高に
 財務省は1日、4〜6月期の法人企業統計を発表した。金融・保険業を除く全産業の経常利益は前年同期比17・6%増の28兆3181億円で、利益額は過去最高となった。また 年度通期の法人企業統計ではいわゆる内部留保にあたる利益剰余金は516兆4750億円で過去最高を更新した。資源価格の高騰で商社は業績が好調、卸売・小売業は51・5%伸び、製造業は化学が24・8%増、電気機械は50・9%増に。輸出大企業を中心に円安の恩恵を受けているが、円安による物価高騰は中小企業や国民生活に大打撃で、厚労省が6日に発表した7月の毎月勤労統計調査では1人あたりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1・3%減で、4カ月連続マイナスに。これを放置する政治は許されない。

デジタル庁1年、官民癒着などの懸念
 デジタル庁が1日、発足1年を迎えた。同庁は説明会で政策の進捗状況や今後の方向性を報告したが、入札などの透明性を確保する目的で設置された情報システム調達改革検討会は議論を「民間企業からデジタル庁へ人が来なくなる弊害も懸念される」「民間の有益な知見が反映されなくなる」などとして「非公開」とし、また民間企業への便宜供与や利益相反とならない仕組みを議論するコンプライアンス委員会も「非公開」とした。同庁は22年度の情報システム整備・運用費が約4600億円と巨額であることに加え、IT関連企業との兼業や副業を行う職員が多いことから官民癒着や事業費の高止まりなどが危惧され続けているが、早くもその懸念が現実化しつつある。


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